俳優・James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ) インタビュー
James McAvoy
予測不能の展開、観客を惑わせる巨大な迷宮。『シックス・センス』(1999) からそんな数々の称号と賞賛を浴びてきた、スリラーの鬼才 M. Night Shyamalan (M・ナイト・シャマラン) の新作『スプリット』が公開される。予告編から感じられる筆舌に難い不気味さは、劇場に入る前から既に観る者に大きなショックを与えている。
今回シャマランが描く「多重人格」という迷宮に観客を導くのは、スコットランド出身の演技派怪優、James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ)。『X-MEN』シリーズのプロフェッサーXから『ペネロピ』(2008) での少しお金にだらしない青年マックス、『ラストキングダム・オブ・スコットランド』(2006) で演じたアフリカの大地で翻弄される若い医師や『つぐない』(2007) での一途で真面目な青年など、その演技の振り幅の広さは実に怪優と呼ばれるにふさわしい。
俳優・James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ) インタビュー
Portraits
クラスメイトのバースデー・パーティの帰り道、突然謎の男に誘拐される3人の少女。彼女たちが監禁された部屋から聞こえてくる、ひとりの女性の声。その穏やかな口調から、少女たちは一筋の希望を抱く。しかし扉が開かれた瞬間、その希望は絶望へと変わる。少女たちの目に映る、混乱と絶望の正体とは…。
予測不能の展開、観客を惑わせる巨大な迷宮。『シックス・センス』(1999) からそんな数々の称号と賞賛を浴びてきた、スリラーの鬼才 M. Night Shyamalan (M・ナイト・シャマラン) の新作『スプリット』が公開される。予告編から感じられる筆舌に難い不気味さは、劇場に入る前から既に観る者に大きなショックを与えている。
今回シャマランが描く「多重人格」という迷宮に観客を導くのは、スコットランド出身の演技派怪優、James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ)。『X-MEN』シリーズのプロフェッサーXから『ペネロピ』(2008) での少しお金にだらしない青年マックス、『ラストキングダム・オブ・スコットランド』(2006) で演じたアフリカの大地で翻弄される若い医師や『つぐない』(2007) での一途で真面目な青年など、その演技の振り幅の広さは実に怪優と呼ばれるにふさわしい。
今回彼が演じるのは、24もの人格を持つ解離性同一障害 (以下、DID) 患者という、難解で奇怪な役どころ。「 James の役者としてのスキルに惚れ込んだ」と M. Night Shyamalan に言わしめたその演技で、これまで誰も演じたことのない”人格”という表現を、肉体を超えて私たちの目の前に差し出してくれる。
インタビュー会場に現れた彼は、そんなスクリーンの隅まで支配した不気味な空気からは全く感じられない、紳士的で穏やかな表情を湛えていた。いったいこの俳優の中には、なにが潜んでいるのだろうか。
—今回あなたが『スプリット』で演じた、”ケヴィン” について伺います。24の人格を内包するというこの複雑なキャラクターを理解するために、どのようなリサーチを行いましたか。
自分がこの役を演じるためには医学的な情報も必要でしたので、医師や専門家と話をしたり書物を読んだりするなどのリサーチを行いました。例えば医学的に証明されている DID 患者の事象で、こんな話も聞きました。ある DID 患者は、自分の身体の中にあるいくつもの人格の中のひとりだけが高血圧で、他の人格は同じ身体を共有しているにも関わらず、全く高血圧の症状が見られないのだと。そんな色んな情報をいくつも見聞きしましたが、でも結局自分にとって一番役に立った情報は、DID 患者の方々が実際にどうやって日常を生活しているのか、ということでした。YouTube で DID 患者の方達が自分たちのことを日記のように発信する素晴らしいプラットフォームがあるのですが、そういった映像を目の当たりにしたり、また彼らの日記を読んだり。彼ら自身の言葉でそういう情報を得ることが出来たということ。それこそが役作りにとって、とても有益なものだったんです。
—24の人格を持つという、常人の目線ではなかなか共感出来ない設定であるにもかかわらず、あなたが演じるケヴィンはどことなく憎みきれない、人間的な顔が見え隠れしています。それというのも、24もの各人格を抱えている重圧に苦しむ人間らしいケヴィンの姿があったからだと思いました。
そうですね。実際の医学的な情報も必要ではありましたが、それよりも僕は、DID患者の人たちが日々の生活の部分でどういう問題に直面しているのかというところに注目したのです。光熱費の支払いやスーパーでの買い物はどうしてるんだろう、とかね。僕が聞いたあるDID患者の話で、電気代を払えないという人がいたんです。彼にどうしてそうなったのかを聞くと、支払う予定日より前の日にもうひとりの人格が300ポンドも使ってレゴを買ってしまったので、お金が無くなっちゃった、と言っていました。そういった情報のほうが、自分にとっては役に立ちましたね。
—Shyamalan 監督があなたにこの役をオファーした理由は、「すべての人格を、それぞれ一人の人間として愛して」演じてくれる役者を求めていたからだと聞きました。あなたにはそれが出来ると期待したということも。
僕はいつも自分の演じるキャラクターを愛して演じていますし、好きになろうとも思っていますよ。
—24の人格のうち、デニスやバリーなどの成人男性設定のキャラクターもですが、女性のパトリシアや9歳の少年ヘドヴィグを演じているシーンは圧巻でした。最初に観客たちが彼らから感じる驚きや不気味さは相当ショッキングなのですが、途中からはまるで本当にそこに婦人や少年をいるような感覚が生じてくる変化は本当に素晴らしかったです。
僕自身が、とても変わったことが好きだということはあります。本作で僕が演じている設定やストーリーもとても奇妙なものだし、観客もそういうものを好むんだと思うんです。政府や社会という我々の住んでいるこの世界では、そういう変わった存在を好まないというように教えられがちですけれど、実はそういう奇妙なものでも、クオリティが良ければうまく受け入れられるということなんでしょうね。
—女性や少年など、目に見えない”人格”というものを、目に見える ”肉体” を使って表現するという、肉体を超えた表現はどうやって生まれたのでしょうか。例えば演劇では、このように年齢や性別の設定が実際の役者の肉体と違うということは多々ありますが、映画のスクリーンでそれを表現するのは、普通でしたら限界があると思います。あなたがそれを乗り越えて表現していた、その秘密を教えてください。
この映画の中での僕は、実際に女性の体を持っているわけではないんですよね。つまり考え方としては、ひとりの女性が男性の体の中に囚われていて、僕はその状況を、肉体で表現しているんです。同じく9歳の男の子も、成人男性の体に囚われている存在です。非常に奇妙で異質な状況ですが、状況としてはそれが真実であり、それを僕は自分の体で演じているということなんです。確かに、普通でしたらその状況を見て違和感を覚えるはずでしょう。でもそういう状況こそが、この映画を面白くする、興味をそそるポイントになるんだと思います。
<プロフィール>
James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ)
1979年スコットランド・グラスゴー生まれ。ロイヤル・スコティッシュ・アカデミーで演技を学び、1995年『The Near Room』(日本未公開) で映画デビュー。2005年の『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』で世界的に注目される存在に。そして「ラストキング・オブ・スコットランド」(2006) でイギリスやヨーロッパの各映画賞で称賛され、英国アカデミー賞ライジング・スター賞に輝いた。以降も『X-MEN』シリーズや『つぐない』(2007) など話題作に次々と出演し、若手実力派として有望視されている。
作品情報 | |
タイトル | スプリット |
原題 | SPLIT |
監督 | M. Night Shyamalan (M・ナイト・シャマラン) |
脚本 | M. Night Shyamalan |
製作 | M. Night Shyamalan、Jason Blum (ジェイソン・ブラム) |
出演 | James McAvoy (ジェームズ・マカヴォイ)、Anya Taylor-Joy (アニヤ・テイラー=ジョイ)、Jason Blum (ベティ・バックリー) |
配給 | 東宝東和 |
製作年 | 2017年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 117分 |
HP | split-movie.jp |
©︎2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. | |
5月12日 (金) 全国公開 |
<Staff Credit>
Photographer: UTSUMI
Makeup: Mariko Kubo
Writer: Asako Tsurusaki