俳優・Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング) インタビュー
Ryan Gosling
静かな笑顔の奥に垣間見える情熱的な野心が胸を刺し、不遜な自信家の顔が時折見せる気弱な表情が心をくすぐる。そんなギャップで巧みに観客の心を揺さぶり続ける演技派俳優、Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング)。彼の知名度を一躍押しあげたラブロマンス『きみに読む物語』(2004) で演じた一途な青年、ちょっと変わったハートフル・コメディ『ラースと、その彼女』(2007) でのラブ・ドールに恋する引きこもりの青年、そしてカルト的人気を博したクライム・サスペンス『ドライブ』(2011) での寡黙な凄腕ドライバー。まるでカメレオンのようにくるくると表情を変えるライアンの、映画史上に残る代表的なキャラクターが生まれた。それは『セッション』(2014) で一躍脚光を浴びた気鋭の Damien Chazelle (デイミアン・チャゼル) 監督によるミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』でライアンが演じる、野心を胸に秘めたジャズ・ピアニスト、”セブ”だ。
俳優・Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング) インタビュー
Portraits
静かな笑顔の奥に垣間見える情熱的な野心が胸を刺し、不遜な自信家の顔が時折見せる気弱な表情が心をくすぐる。そんなギャップで巧みに観客の心を揺さぶり続ける演技派俳優、Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング)。彼の知名度を一躍押しあげたラブロマンス『きみに読む物語』(2004) で演じた一途な青年、ちょっと変わったハートフル・コメディ『ラースと、その彼女』(2007) でのラブ・ドールに恋する引きこもりの青年、そしてカルト的人気を博したクライム・サスペンス『ドライブ』(2011) での寡黙な凄腕ドライバー。まるでカメレオンのようにくるくると表情を変えるライアンの、映画史上に残る代表的なキャラクターが生まれた。それは『セッション』(2014) で一躍脚光を浴びた気鋭の Damien Chazelle (デイミアン・チャゼル) 監督によるミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』でライアンが演じる、野心を胸に秘めたジャズ・ピアニスト、”セブ”だ。
夢を叶えたい人々が集まる街、ハリウッド (LA LA LAND) で出会った、売れないジャズ・ピアニストのセブと女優志望のミア (エマ・ストーン) が紡いでゆく愛と奇跡の物語、『ラ・ラ・ランド』。ジャズが時代遅れになりつつあることに対して「LA の人は全てを崇拝するが、全ての価値を認めない」と嘆く不機嫌な皮肉屋の顔、デートに遅れてやってきた恋人ミアを見て嬉しさを隠しきれない笑顔、夢を語り合う時の少年のような瞳、ミアとの生活のために入ったバンドが成功したことでギクシャクするミアとの関係に戸惑う眉間の皺、そして夢をあきらめかけたミアを引き寄せる強引な腕。ライアンは”セブ”というひとりの男性の喜怒哀楽を、美しく軽やかなミュージカルの旋律に乗せ、全身でカラフルに演じきっている。
しなやかで長身な肢体を活かしたライアンの演技は、まるでミュージカル黄金期の Fred Astaire (フレッド・アステア) のように雄弁で、美しい。そしてデイミアンは滑らかなカメラワークでその動きを最大限に活かし、ライアンの魅力を一瞬たりとも見逃すことなく画面に描き出している。実際にデイミアンとライアンは、撮影の準備段階から敬愛する多くのミュージカル映画を観て研究していたという。例えばライアンとエマが満点の星空の下でワルツを踊るシーンは『踊るニューヨーク』(1940) でアステアが星降るステージでタップダンスを踊るシーンに影響されていることはミュージカルファンなら誰でも気づく嬉しいオマージュであるし、またハリウッドを見渡す丘でライアンとエマが踊るタップダンスは『バンド・ワゴン』(1953) で Cyd Charisse (シド・チャリシー) とアステアがセントラル・パークでダンスを披露する有名なシーンととてもよく似ている。
「映画の世界観を作っていく過程でデイミアン監督と一番話し合ったのは、”ミュージカル映画”というスタイルとジャンルをノスタルジックなものにしない、ということでした。いかに現代的な表現で、現代の人に共感してもらえるような世界を描けるか。キャラクター作りについても同じことが言えます。でも空に舞い上がるファンタスティックなシーンなどもあるので、そういうところとのバランスを取ることは僕らにとってのチャレンジでした」。
ミュージカルでのキャラクター作りでライアンが心がけたのは、歌っているときと演技をしているときのキャラクターが破綻しないようにすること。例えばセブが突然歌いだす時、突然別のキャラクターにならないよう、キャラクターの一貫性を崩さないように心がけていたという。
では、そんなセブというキャラクターは、どのようにして生まれたのだろうか。作品公開に先駆けた記者会見でデイミアン監督は、ライアンにセブ役の素質を見出したわけをこんな風に教えてくれた。
「ライアンはなんでもできる素晴らしい役者です。多様性があるとでも言うんでしょうか。確かに彼はこれまで『ドライブ』などダークな役が多かった印象があるかもしれませんが、『ラブ・アゲイン』(2011) や『ラースと、その彼女』のようなロマンチックな役も経験がありますし、とにかく何でも出来る役者です。それに映画の知識も豊富で、ミュージカルにも愛情を持っています。つまり、必要な素質を全部持っているんです。彼と一緒なら、この映画を立体化できると思いました」。それを聞いてライアンは、少しおどけながら「今のは僕が書いた脚本の中のセリフだからね (笑)。出来ればもっと情熱的に読んで欲しかったな」と応じてくれた。
そんな仲の良さが見える二人だが、それもこの作品のために共有した濃密な時間がそうさせたのだろう。デイミアン監督は前作『セッション』でも若きドラマーを演じた Miles Teller (マイルズ・テラー) に特別レッスンを受けさせ、劇中のドラムはほぼテラー本人が演奏しており、サントラでも彼の演奏が4割ほど使われていうというほどメソッド演技を追求していることで有名だ。ここにはデイミアン監督が役者に対する要求の高さ、そして両者の信頼関係の強さが窺い知れる。ライアンも今作の準備期間として、実に3ヶ月もの期間に渡ってピアノの猛練習を行ったという。その結果、演奏シーンは手元クローズアップですら、代役の演奏者を使わずライアン自身が全て演奏したというから、その器用さには驚きだ。その演奏は、共演した著名なミュージシャン、John Legend (ジョン・レジェンド) すら嫉妬するほどの腕前だったという。
すでに周知の事実だが、彼らの見事なタッグが実を結び、本作はアカデミー賞6部門受賞という快挙を成し遂げた。取材時、ノミネートしたことについてライアンは次のように語ってくれた。
「映画自体をつくったこと自体が既に、賞を受けたくらい特別なことでした。良い評判を頂けただけでも、受賞と同じくらい僕にとってはうれしいことだと思っています。映画とは、チームみんなでコラボレーションして作るものです。ノミネートに名前が載っているのは1〜2人かもしれませんが、実際にはいろんな部門のスタッフみんなに対するものです。今回は大勢の人が認められたことが、本当に感慨深いです」。
次回作に、 SF映画の金字塔『ブレードランナー』続編への出演が決まっているというライアン。これからもどんな冒険を見せてくれるのか、大変楽しみだ。
<プロフィール>
Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング)
1980年、カナダ、オンタリオ州生まれ。『きみに読む物語』(2004) が世界的大ヒットを記録し一躍人気を獲得する。その後、『Half Nelson』(2006) でアカデミー賞®にノミネートされ、演技派俳優としても認められる。『ラースと、その彼女』(2007)、『ブルーバレンタイン』(2010)、『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』(2011) で、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされる。その他の出演作は、サンドラ・ブロック共演の『完全犯罪クラブ』(2002)、ケヴィン・スペイシー共演の『16歳の合衆国』(2002)、ジュリアン・ムーア共演の『ラブ・アゲイン』(2011)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督のカルト的人気を博した『ドライヴ』(2011)、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012)、エマ・ストーン共演の『L.A.ギャングストーリー』(2012)、『マネー・ショート華麗なる大逆転』(2015)、『ナイスガイズ!』(2016) など。最新作は、テレンス・マリック監督の『Weightless』(2017)、リドリー・スコットが製作を務める『ブレードランナー』の続編『Blade Runner2049』(2017)。
作品情報 | |
タイトル | ラ・ラ・ランド |
原題 | LA LA LAND |
監督・脚本 | Damien Chazelle (デイミアン・チャゼル) |
出演 | Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング)、Emma Stone (エマ・ストーン) |
提供 | ポニーキャニオン/ギャガ |
配給 | ギャガ/ポニーキャニオン |
HP | http://gaga.ne.jp/lalaland/ |
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. © 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. | |
2月24日 (金) TOHO シネマズ みゆき座他全国ロードショー |