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サイケデリック ロックバンド・Temples (テンプルズ) インタビュー

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新世代のサイケデリック・シーンを牽引する、英国ケタリング出身の4人組 Temples (テンプルズ)。彼らにとって、音楽とファッションはどんな存在なのか? トレードマークの巻き毛をバッサリと散髪した James と、ギター&キーボードを担当する Adam Smith (アダム・スミス) の2人に、去る11月の東京公演の舞台裏でインタビューを敢行した。

サイケデリック ロックバンド・Temples (テンプルズ) インタビュー

新世代のサイケデリック・シーンを牽引する、英国ケタリング出身の4人組 Temples (テンプルズ)。2014年のデビュー・アルバム『Sun Structures』では12弦ギターとストリングスをフィーチャーし、初期 Pink Floyd (ピンク・フロイド) や The Byrd (バーズ) もかくやの万華鏡ワールドを展開してみせたが、今年3月にリリースされた2作目『Volcano』ではシンセやエフェクターを総動員、エレポップとプログレとサイケが闇鍋状態で煮込まれた異形のサウンドでファンの度肝を抜いた。

音楽家としての野心的なスタンスはもちろん、彼らの眉目秀麗なルックスも人気の秘訣だろう。過去にヴォーカル&ギターのJames Bagshaw (ジェームス・バッグショー) があの Hedi Slimane (エディ・スリマン) の被写体として選ばれ、ベーシストのTom Walmsley (トーマス・エジソン・ワームスレイ) が Burberry (バーバリー) のキャンペーン・モデルとして起用、果ては UNDERCOVER (アンダーカバー) と VANS (ヴァンズ) のコラボ・シューズにバンドの名曲「Shelter Song」の歌詞が引用されるなど、ファッション界からのラヴコールも熱い。

そんな Temples にとって、音楽とファッションはどんな存在なのか? トレードマークの巻き毛をバッサリと散髪した James と、ギター&キーボードを担当する Adam Smith (アダム・スミス) の2人に、去る11月の東京公演の舞台裏でインタビューを敢行。ゲスト出演した GLIM SPANKY (グリムスパンキー) の爆音リハが鳴り響く中、話題は「2ndアルバムのジンクス」からタワーレコードに至るまで、あちこちに飛び火した。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

—実は、7月にLAの FYF Fest でも Temples を見てるんですよ。

James Bagshaw (以下、James):へえ、ナイス!Iggy Pop (イギー・ポップ) が最高だったよね。

—しかも、現地で皆さんのインスタを拝見していたら、ACE HOTEL (エースホテル) でニアミスしていたみたいで……。ACE HOTEL はロンドンにもありますけど、居心地はどうでした?

Adam Smith (以下、Adam):ちょっとポッシュな雰囲気だったよね。

James:うん、まるで自分がヒップスターになったような気持ちだった (笑)。

—わかりました (笑)。今回はフジロックぶりの来日で、大阪・名古屋と終えてツアーも絶好調ですが、2ndアルバム『Volcano』の曲もすっかりライヴに馴染んできたのではないでしょうか。演奏していて特に楽しいナンバーってどれですか?

James:ギグによって全然違うかなあ。

Adam:僕は「Open Air」だね。すごくライヴ映えするナンバーだと思うし、あえてテンポを上げてヘヴィーに演奏していたりもするよ。

—まだ一度もライヴで披露されていない曲もありますよね? 「In My Pocket」とか、「Celebration」とか……。

James:そういえば、「Celebration」はレコーディング以来一度もプレイしてないかも (笑)。

Adam:特にこれといった理由があるわけじゃないんだけど、やっぱりセットリストでは前のアルバム (2014年の『Sun Structures』) の曲もハズせないし、新曲ばっかりだとついてこられなくなっちゃうオーディエンスもいるからね。

 

Temples Tour Video

 

—『Volcano』では、前作とは絶対に違うものを作ってやろうという想いを感じました。多忙なツアー続きの中で、どのように構想を膨らませていったのでしょうか?

Adam:ツアー中にまったくオフが無かったわけでもないんだ。だから、ライヴと曲作りはきちんと境界線を引きながら進められたと思うよ。

—なるほど。James はガッとソングライティングに集中するのと、日常の中でパッとアイディアが閃くのでは、どちらのタイプだと言えますか?

James:両方かな。頑張って頭の中から捻り出したものもあれば、瞬間的にメロディーやリリックがフッと浮かんでくることもあるしね。

—いわゆる「2ndアルバムのジンクス」というのは意識されましたか?

Adam:「2作目はディフィカルト (大変) だ」ってよく聴くけど、僕らはバンド人生において 2nd アルバムを作ること自体が初めての経験だったわけだし、強いて言うなら「ディファレント (異なる)」かな (笑)。デビュー作とはあらゆる意味で勝手が違っていたからさ。

—それは、おもにどんな部分で?

James:制作のプロセス自体は大きく変わらなかったけどね。ただ、Adam からのインプットがより濃く反映されたアルバムになったんじゃないかな。もちろん前作でそれがゼロだったわけじゃないんだけど、今の4人編成になるよりも前の曲もあったわけでね。だから今回はメンバーそれぞれの影響がたくさん盛り込まれてるし、それを『Sun Structures』とは違う方向へ舵取りしていった感じだよ。

—あなたたちが所属する Heavenly Recordings (ヘヴンリー・レコーディングス) は、アーティストの裁量で自由にやらせてくれるそうですね。

James:うん、特にプレッシャーをかけられることも無かったし、リラックスして制作に取りかかれたのは良かったと思う。

—素晴らしいバンドも多いですよね。King Gizzard & The Lizard Wizard (キング・ギザード & ザ・リザード・ウィザード) は僕らも大好きです。

Adam:ああ、彼らはアメイジングだよ!

—ちなみに、アー写で Pink Floyd のオマージュをやったのは誰のアイディアだったんですか?

James:あれはTomのアイディアだよ (笑)。

—なぜイエローを選んだのでしょう (笑)。

James:わかんない (笑)。なんでだっけ?

Adam:とりあえずピンクは無いだろって話だったね (笑)。Pink Floyd が使ってるのはちゃんとした布だからラグジュアリー感があるんだけど、僕らのはただの紙なんだ。このアイディアも最初から決めていたわけじゃなくて、スタジオに置いてあるバックグラウンド用のペーパーが、ちょうどイエローだけが4人分ぴったりあったんだよ! ブルーだったらまたイメージが違ったのかもしれないね (笑)。

—自分たちの世界をサウンドとして表現するのと、アートワークや映像などで視覚的に表現するのは、それぞれどんな違いがありますか?

James:ビジュアル面では音楽よりも苦労することが多くて、アートワークっていつもギリギリまで決まらないんだよね。それぞれ好きなテイストがハッキリしているから、よりメンバーの個性が表れる部分とも言える。でも大前提として、僕らは「ミュージシャン」であって、「アーティスト」というのはちょっと違うと思うんだ。だから、音楽の部分において自分たちの気持ちがまとまっていること、コネクトできていることが大切だと思っている。

—では、ライヴのステージングにおいて強く影響を受けているミュージシャンや作品は何かありますか?

James:僕はAdamから影響を受けているよ (笑)。で、Adam はSam (サム・トムズ:Templesのドラマー) からの影響を受けているし……。

Adam:Sam は James から影響されているよな (笑)。

James:みんなバックグラウンドが全然違うからさ。

Adam:僕はたぶん、Les Dennis (レス・デニース:イギリスの人気コメディアン) のパントマイムだね……っていうのはジョークだけど (笑)。僕なんて、いまだに自分が楽器を弾いている姿を鏡で見ることさえ慣れてないから。お前はよくやるだろ?

James:昔はやってた (笑)。

Adam:鏡を見ながら色々と試行錯誤したものの、結局それをステージで実践することは無かったけどね。

—YouTube で自分たちのライヴ映像を見返したりはするんですか?

James:たまーにね。サウンドチェックとして聴くのが目的だけど。ステージ上で自分たちが聴いていた音がイマイチだなあと思っていても、いざ映像で見ると「意外と良いじゃん」って気付くこともあるよね。もちろん、その逆のパターンもあるんだけどさ (笑)。

—世界中を旅して色んなフェスに出演されていますが、特に思い出深い場所はどこですか?

Adam:これはリップ・サービスでも何でもなくて、日本だよ。アメリカにも何度か行ってるし、もちろん良い思い出もあるけどね。

James:日本のカルチャーはテイストが独特だし、クオリティが高いし、きめ細かく作られているものが多いっていう印象だね。ホスピタリティーにも溢れているし。

—そういえば、「Certainty」のビデオはJ-POPをイメージして作ったというお話でしたよね。

James:ホントは J-POP シーンで有名な監督に撮ってもらおうと思ってたんだよ! 結局あの話がどうなったのかわからないけど…… (笑)。

 

Temples - Certainty

 

—次回作ではぜひ (笑)。以前 Morrissey (モリッシー) が来日した際に、「どんな寺院や建物よりも渋谷のタワーレコードに興奮した」と語っていました。未だレコードショップが多く存在し、CDも売れ続けている日本の音楽マーケットをどう思いますか?

James:うん、素晴らしいことだと思うよ。

Adam:日本はテクノロジーが発達しているから、音楽もさっさとデジタル化が進んで、最初にフィジカルを手放すものだと誰もが予想していたよね。でも、実際はそうじゃないっていうのが面白い。日本では Spotify (スポティファイ) がまだそれほどビッグじゃないって聞くし、Spotify よりもタワーレコードの方が影響力があるっていうのは良いことだとも思う。もちろん、一緒に成長していけるのであればそれがベストさ。ただ、これは個人的な意見だけど、日本はおそらくフィジカルを手に取ること、自分の目でモノを見ることに価値を見出すカルチャーが根付いているのかなって感じるんだ。いつかタワレコがただのサイン会場になってしまう可能性だってあるけどね (笑)。

—もしフィジカルが無くなったら、我々はどこにサインをもらえば良いんでしょうね (笑)。

James:たぶん、iPadのスクリーンとかにサインするんじゃないかな (笑)。写真もサインもダウンロードで済ませる時代になるかもしれない (笑)。

—それも何だか寂しいですね (笑)。もうすぐ2017年も終わりますが、今年リリースされたアルバムで特に気に入ったものや、よく聴いていた作品があれば教えていただけますか?

Adam:Thundercat (サンダーキャット) の『Drunk』って今年だっけ? あれはグレイトなアルバムだったよね。

James:(しばし考え込む) んーっと、The Lemon Twigs (ザ・レモン・ツイッグス) のレコードって去年だよね? それと、これも今年のアルバムじゃないんだけど Alabama Shakes (アラバマ・シェイクス) の『Sound & Color』(2015) も今になってジワジワと好きになったんだ。最初は「なんだコレ!?」って思ったんだけど、サウンドは聴けば聴くほど最高だし、ミックスもここ10年で一番の仕事だと思うよ。

—グラミーで「最優秀アルバム技術賞」も獲得していましたね。

James:あれだけ大胆な変化を遂げたアルバムなのに、きちんと結果を残したことが凄いよね。

—では、いちオーディエンスとして今年もっとも印象的だったライヴは?

Adam:真っ先に思いつくのは Metallica (メタリカ) かな。

—マジですか (笑)。

Adam:サンフランシスコの Outside Lands (アウトサイド ランズ) で見たんだけど、ブリリアントだったよ。Lars (ラーズ・
ウルリッヒ:メタリカのドラマー) は酷かったけど (笑)。あとは、ロンドンで見た Sparks (スパークス) も最高だった。

James:振り返ってみると、今年は結構良いライヴを見た気がするよ。アムステルダムの小さな会場で見た Bob Dylan (ボブ・ディラン) も素晴らしかったね。

Photo by Hiroki Watanabe

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—最後に少しだけ、あなたたちのファッションについてもお話を聞かせてもらえますか? Adam は最近、少しJohn Lennon (ジョン・レノン) に似てきた感じがしますが……(笑)。

Adam:ハハハ (笑)。

James:レノンじゃなくて、レジェンドの方じゃないの (笑)。

—お2人の中で、「これだけは譲れない!」というファッションのこだわりがあれば教えてください。Adam のベレー帽はいつも被ってるのですか?

Adam:いや、今まで帽子なんて被ったことなかったんだよ。これは東京で買ったんだけど、たまにはいいかなと思って。

James:東京に来てフランスの帽子かよ (笑)。

Adam:髪を短くしたから気分が変わったってのはあるかな。ロン毛の時は全然似合わなかったからさあ (笑)。

—James は2014年、Hedi Slimane が撮影した Saint Laurent (サンローラン) の写真集『SONIC』で被写体も務めていましたね。あれってどんな経緯で決まったのですか?

James:たしか Austin Psych Fest で初めて会ったんだけど、そこで「こんど写真を撮らないか」って話になったんだ。それから連絡を取り合うようになって、正直あまり乗り気じゃなかったんだけど……。知人から「Lou Reed (ルー・リード) も撮ってもらってるよ」と聞いて行くことにしたんだ。実は、その本自体は僕もちゃんと見られてないんだよね。Hedi はバンドのことをすごく気に入ってくれたみたいで、レコードのキャンペーン用にいくつか写真を撮ってもらえたのは良い経験だったね。

—ミュージシャンにとって、ファッションはどんな存在だと思われますか?

Adam:共存関係にあるものだと思う。ポピュラー・ミュージックの創世記からリンクし合っているものだし、僕だってもし音楽をやっていなかったら、今ごろ親父と同じような格好をしていたかも (笑)。

James:僕も Adam と一緒だよ。ステージに立つからって特別にドレスアップすることも無いし、これが普段着なんだ。ただ、「着心地」だけは大事だと思っていて、ステージの上でそれに違和感を覚えた瞬間、決まって何かトラブルが起きたりもする。それに、もしファッションが無ければ、僕らは素っ裸で演奏しなくちゃいけないからね (笑)。

Photo by Hiroki Watanabe

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<プロフィール>
Temples (テンプルズ)
UKミッドランズ出身の4人組サイケデリック・ロックバンド。12年に発表した「シェルター・ソング」が反響を呼び、NMEの “ベスト・ニュー・バンド・オブ・2013” リストに選出。Noel Gallagher (ノエル・ギャラガー) や Johnny Marr (ジョニー・マー) が彼らのライヴを絶賛し、The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) のハイドパークでの公演のオープニング・アクトにも抜擢される。13年には日本独自盤EP『シェルター・ソング e.p.』をリリースし、直後には Hostess Club Weekender にて初来日を果たし満員の観客を熱狂させるなど、アルバム・デビュー前から日本でも期待の新人として注目される。7月のフジロック ’14で再来日を果たすと、そのサイケ・サウンドを体感しようと押しかけたロック・ファンでレッドマーキーは超満員となった。今年セカンド・アルバム『ヴォルケーノ』をリリース。7月にフジロックに出演、11月にはジャパン・ツアーでの再来日を果たした。