Parcels
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スターダムを駆け上るバンド Parcels (パーセルズ) インタビュー

Parcels

photography: utsumi
text&interview: manaha hosoda

Portraits/

ファンキーなエレクトロサウンドにどことなく漂うノスタルジー。反復するリリックにどんどん惹き込まれていく。Duft Punk (ダフト・パンク) のプロデュースを受け、新たなステージに立った Parcels (パーセルズ)。音楽をこよなく愛し、楽しむオーストラリア出身ベルリン拠点のファンク・ポップバンドにの飾らない素顔を覗いてみた。

スターダムを駆け上るバンド Parcels (パーセルズ) インタビュー

Photo by UTSUMI

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ファンキーなエレクトロサウンドにどことなく漂うノスタルジー。反復するリリックにどんどん惹き込まれていく。Kitsuné (キツネ) のコンピレーションに収録されていた「Herefore」を聞いた時のことは、今でも強く覚えている。「Parcels」すぐにアーティスト名を Google (グーグル) で検索してみると、出てきたのはまるで若かりし Led Zeppelin (レッド・ツェッペリン) かのような風貌の5人組。見た目もオシャレだし、音楽もハイセンス。良いバンドを見つけた時のあの喜び、きっと誰もが経験したことあるはず。

それから2年経った今、彼らは Duft Punk (ダフト・パンク) のプロデュースを受けて、一躍スターダムへ駆け上った。キャッチーなサウンドにさらに磨きがかかり、新たなステージに立った彼らは、このポップナンバー「Overnight」をひっさげ世界ツアーへ。そして、ここ東京にも再び。甘いマスクに油断するなかれ。その成熟したテクニックと自信満ち溢れるパフォーマンスに度肝を抜かれてしまった。まるでセッションかのようにメンバーは自由奔放に動き回っているようにも見えるが、最初から最後まですべての音が計算し尽くされ、抜かりがない。Jules (ジュールズ) のリードボーカルに、メンバー全員がコーラスすることで、美しいハーモニーが生み出されていく。ファンクなグルーヴを生み出す Noah (ノア) のベース、躍動感のある Toto (トト) のドラム、冷静沈着に見事なテクニックを披露する Louie (ルイ) のキーボード、そして会場中が釘付けになる Patrick (パトリック) のサービス精神旺盛なパフォーマンス(キーボード)。5人が揃うことで完成される音楽から、彼らが音楽をこよなく愛し、楽しんでいるということが率直に伝わってくる。

会場となったユニットの楽屋で、リハーサルを終えた彼らにインタビューを敢行。答えてくれたのは、Louie と Noah のふたり。間近で見ると、予想以上にあどけない。ステージでは、既に DJ タイムが始まっており、ふたりともなんとなくソワソワ。ちょっぴり申し訳ない気持ちになりながらも、そんな彼らの飾らない素顔を覗きたくて。どんな日々を送っていて、どんなものが好きなのか尋ねてみた。

—昨日、東京に着いたんですよね。何したんですか?

Louie Swain (以下、Louie):パブへ行って、夜ご飯を食べたよ。すごく可愛い場所だった。名前は覚えてないな。ああいうパブってなんて言うんだっけ?とてもオーセンティックだったな。皆くつろいで、喋って。中でタバコまで吸えちゃうしね!

Noah Hill (以下、Noah):皆フレンドリーだったしね。メニューを読むのも手伝ってくれたんだ。

Louie:英語で書いてなかったからね。

—今回で2回目の来日ですが、東京のお気に入りのスポットは?

Louie:中目黒あたりにずっといるかな。すごく良い場所だよね。あと、渋谷も。

Noah:前回は3日間しか日本にいられなくて、今回も3日間だから、このあたりから出るのはなかなか難しくてね。また日本に戻ってこなきゃ。

—クラブとかも行きました?

Louie:前回は行ったよ。あるクラブに呼ばれてね。そこはテクノっぽい雰囲気だったな。ベルリンを少し思い出したよ。

—Contact (コンタクト) ですか?

Louie:そう!Contact。

Noah:ベルリンみたいだけど、誰もいなかったな。

Louie:後から盛り上がったんだよ。

—ベルリンといえば、Kitsuné と契約して、オーストラリアからベルリンに拠点を移したんですよね。どうしてフランスではなく、ベルリンだったんでしょう?

Louie:Kitsuné と親しくなる前にもうベルリンにいたんだよ。でも、フランスの中心にいないっていうことは、良いことだよ。ドイツから行くっていうのが良い。外から見ることが出来るのが良いんだよね。

Noah:後から、フランスのシーンに巻き込まれたんだ。ベルリンは、アーティストとしてどんなにビッグになっても、道を普通に歩くことが出来るんだよね。

Louie:みんな、自分の小さな世界にいるからね。

Noah:ビッグなアーティストだったとしても、誰も気にしないよね。

—ベルリンと言えばテクノですが、好きですか?

Louie:テクノの大ファンとは言わないかな(笑)

Noah:トトは、好きだよね。良いテクノと悪いテクノの違いは、わかるかな。好きだけど、家では聞かない。

Photo by Erina Uemura

Photo by Erina Uemura

—ベルリンのユースカルチャーについても教えてください。

Louie:ベルリンは、なんだか不思議なんだ。オーストラリア人、イタリア人、アメリカ人、それぞれに大きな外国人コミュニティがある。みんな英語を話すんだよ。そして、ドイツ人のコミュニティがある。若くて、アーティスティックなシーンも確かにあるんだけど、両方とも小さな世界なんだよね。あとは、すごく大きなテクノのサイドがあるね。

Noah:テクノが街を吸い込んでるみたいなんだ。誰かがテクノに完全に吸い込まれていくのを見ると、たまに良くないものを見ているような気がしちゃうんだよ。

—そうした音楽シーンは、バンドの音楽に影響していますか?

Noah:何とも言えないな。ベルリンでバンドを始めたからね。最初からそこでサウンドを成長させて、進化させてきたし。

Louie:何かしらの形では影響したとは思うけど、あまり分からないね。

—11月からツアーが始めて、もう随分たちますね。何か思い出深いストーリーはありますか?

Noah:イギリスで Gash Bastards(?) っていうサポートバンドがいたんだけど、彼らが一番面白かったかも。7人のイスラエル人と1人イタリア人がクラシックなソウル・ディスコを演奏するバンドで、本当にワイルドだったんだ。泊まる場所がいつもないらしくて、ステージで「これが最後の曲だ。今夜、7人のイスラエル人を泊まらせてくれる人はいないかな?あと、マリファナある?」って言うんだ。大体、それで泊まる場所が見つかるらしい。あと、サウンドチェック中たまに「あいつらどこだ?」ってなると、彼らが「寝てないんだ!」とか言いながら来たこともあったな。

—長いツアーも遂に終盤を迎えて、もうすぐオーストラリアに帰れますね。今一番したいことは?

Louie:もう計画はたててあるんだ。

Noah:ドイツ人の友達も何人か連れてくんだ。マネージャーと、ツアーマネージャーとPA。彼らは、僕らの両親の家に泊まるんだ。そこまでドライブしたら、お母さんが朝ごはんを作ってくれる。あとは、そのままビーチに行って、コーヒー飲んで。オーストラリアで普通にやることをやるだけだね。

Louie:それを14日間続ける。

Noah:何度も何度も。いい感じの朝ごはん、ビーチ、朝ごはん、ビーチ。

—最高ですね!今回のツアーは、Daft Punk とのコラボ曲のリリースを記念していますが、彼らの曲を聞いたのはいつですか?

Louie:iPod に初めていれた歌の中に「Harder Better Faster Stronger」があったんだ。変なノベルティーCDがあってね。変なテクノもあったな。すごくハマってたよ。それで、その曲を音楽の期末テストで演奏したんだ。

Noah:みんな赤ちゃんみたいな顔で「Harder Better Faster Stronger」を演奏しているビデオがあるんだ。ヴォコーダーとか、全部あってね。僕は、「One More Time」かな。車のラジオで流れてたんだ。でも、彼らの音楽に共感出来たのは、「Random Access Memories」を聞いた時だったな。アルバム全体を聞いてたよ。

Photo by Erina Uemura

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—どうして彼らと一緒に仕事することになったんですか?

Noah:パリのショーに彼らが来たんだ。少しだけ彼らと話したら、僕らをスタジオに呼んでくれた。2時間ぐらい話したんだ。小さく丸まってね。たくさんのデモを持って行ったら、彼らが聞きたいって言ってくれて。彼らが好きなデモを選んで、それを一緒にやることになったんだ。

—何か思い出深いことはありますか?

Louie:仰天したよ。

Noah:トーマスが手を音楽に合わせて動かしてて、ヘンテコなダンスしてたんだ。

Louie:お互いに歌い合ったりして、彼らも一緒歌ったりもした。

Noah:それが一番良かったよね。コーラスのメロディーを作ろうとしたんだ。

Louie:この時は、彼らが有名だってことは完全に忘れてたね。あの時は、ただ男同士でジャムしてるって感じだった。

—Kitsuné に所属してから色んな人にリミックスされる機会が増えたと思います。

Noah:最初は好きじゃなかったんだよ。コンセプトがあんまり好きじゃなくて。僕らは、これまでリミックスされたこと無かったしね。Parcels の前に作ってた曲は、今とは全然違ったからね。フォークソングはリミックスしないでしょ?でも、それはみんながすることだって後からわかったんだ。この業界の人はみんなリミックスするし、ある意味クールなことなんだ。リミックスは新しいことだよね。

Louie:最後のリミックスEPは楽しかったよ。友達や知り合いにリミックスしてくれないかって頼んだからね。知っている人や尊敬している人とスタジオに入らずとも、一緒に働けたんだ。

—個人的に Kraak & Smaak (クラーク&スマーク) は、すごく好きです。

Noah:彼らはオランダの友達なんだ。前にも、違う曲で一緒に仕事したことがあるよ。自分たちで人に頼んだほうが、全然良いね。

Louie:どんな音になるかって分かってたから、ワクワクしたね。

—音楽を通して何か表現したいことはありますか?

Noah:それは、まだ完全には概念化されてないんだ。コンセプトや包括的なメッセージはないと思う。良い音楽を作ることだけ考えてるんだ。一曲ずつに個人的なメッセージはあるけどね。でも、「これが世界へのメッセージだ」っていうのはないよ。自分らしく、楽しんでるだけ。それが僕らにとって良いことなんだ。僕らはまだバカな20代だからね(笑)

Photo by UTSUMI

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—確かに音楽を聴いていると、その楽しさが伝わってきます。メンバー同士、普段から仲良いんですか?

Noah:バンドの外で一緒にいることは、減ってきたね。ここ9ヶ月ぐらいは、音楽ばっかやってたからね。ルイと僕は一緒に住んでるんだけど、一週間のうち5日間は一緒にいるから、それ以外でコミュニケーションをとる必要はないんだ。バンドの外ではゆっくりしたいし、出来るだけ普通の人生を送ろうと心がけてるよ。

—若いのに、有名になるのって大変そうですよね。メンバーをひとことで紹介してください!

Louie:フルーツにたとえてみよう!(笑)ジュールズは、トウモロコシみたいだよね。

—トウモロコシってフルーツでしたっけ?

Louie:僕がフルーツって決めたんだ。

—なんでトウモロコシなんですか?

Louie:似たような形してるからね。ファンシーなグリーンの葉っぱを着て、皮を剥がすと彼のいろいろな部分が…。

Noah:パットはフルーツだと何かな?スイカかな。丸くはないけど、顔がちょっとぽっちゃりしてるし。

Louie:トトは、バナナみたい(笑)バナナってすごく甘いか、簡単にダメになっちゃうかのどっちかだよね?でも、バナナって大きく、しっかりした…(笑)

Noah:ルイは、すごくチルなフルーツだね。ルイがバナナかもな。すごく柔らかいからってわけじゃないよ!

Louie:リンゴはどう?ノアは…フルーツがなくなってきたな。スターフルーツ、いややっぱりラズベリーかな。

Noah:ラズベリーは好きだよ。

—ありがとうございました!(笑)今、一番関心あることは?

Noah:難しい質問だな(笑)

—何でも良いですよ。映画とか国とか、サッカーでも(笑)

Noah:実はサッカーが好きなんだよね。小さい頃は、サッカー選手になりたかったんだ。でも、こいつらに出会って、付き合うようになってから、サッカーの練習に行かなくなったんだ。いつも(サッカーの試合の)結果はチェックしてるよ。

Louie:僕は、ポッドキャストに結構ハマってる。最近バンドのポッドキャストを始めたんだ。楽しいよ。

Photo by Erina Uemura

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—ファッションについても聞きたいです。60年代と70年代の影響を強く受けているように思いますが、何かこだわりはありますか?

Louie:楽しむことかな。

Noah:やっぱり育った場所かな。僕らは、小さなサーファーの街で育ったからね。ある意味、60年代と70年代のカルチャーからこのバンドは始まったんだ。

Louie:よくショッピングには行くよ。ヴィンテージの服をたくさん買うんだ。

Noah:好きな服の理由を考えると、なんだか不思議だね。楽しむのが一番だよ。

—60年代と70年代で特別好きなところはありますか?

Noah:60年代と70年代のサーフカルチャーに刺激を受けてるね。サーフィンを始めた時、たくさんドキュメンタリーを見たんだ。彼らの服の着方は、本当に格好よかったんだ。そして、そのカルチャーに夢中になったね。

Louie:60年代、70年代のサーフィンでファッションアイコンっているのかな?

Noah:いや、ファッションアイコンはいないね。

Louie:ヒッピーだけ(笑)

Noah:時代的には少し後だけど、Bowie (ボウイ) のファッションと音楽も好きだね。

—カリフォルニアのサーフィンするユースを描いた映画ありましたよね。

Louie:『ロード・オブ・ドッグタウン』?

—それそれ!

Noah:それは僕らをうまく表現してるね(笑)

Louie:あそこまでクールじゃないけど。

Noah:バイロンベイの人達はみんな60年代、70年代っぽいファッションをするんだ。ラフな感じだけどね。ヨーロッパに行くと、それの上品なバージョンを見ることが出来るよね。ベルリンも僕らの何人かには影響を与えたよ。真っ黒で少しストリートな感じね。

—Kitsuné も勿論ですが、ファッションブランドがバンドをフィーチャーすることは面白いと思いますか?

Noah:良いことだと思うよ。そういう仕事も増えてくると思う。僕の姉妹が、アーティストとブランドを繋げたりしているんだ。自然なコンビネーションだから、もう起こってるよね。The Weeknd (ザ・ウィークエンド) と…

Louie:Puma (プーマ)。。。

Noah:Katy Perry (ケイティ・ペリー) と H&M とかね。。。

Louie:Loyle Carner (ロイル・カーナー) は Gucci (グッチ) だっけ?Burberry (バーバリー) だっけ?

Noah:Burberryだったね。あれは、クールだった。クールなアーティストとクールなブランドがコラボするのを見るのは、好きだな。いかにも「コマーシャル」っぽくないのがいい。

Photo by Erina Uemura

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—これからの Parcels のステップは?

Noah:もう来年のフェスにもブッキングされてるんだ。「この日、ノルウェーに行くから!」ってね。でも、今はオーストラリアに戻って、その後ベルリンでアルバムを終わらせる。そして、もっとツアーをする。(アルバムが出来たら)また東京にも来たいな。

—ついでに次のアルバムはについてちょっぴり教えてください。

Noah:分かんないんだ。

Louie:今は作詞作曲に集中してるよ。

Noah:別にミステリアスになろうとしているわけじゃないんだよ。本気で分からないんだ(笑)

<プロフィール>
Parcels (パーセルズ)
2014年に結成されたオーストラリア、バイロンベイ出身のファンク-ポップバンド。メンバー5人は、高校卒業後すぐに慣れ親しんだ海辺の故郷を離れ、ヨーロッパのインディーカルチャーの中心地であるベルリンへ移住。成熟したファンクディスコと、現代的なエレクトロミュージックが絶妙なバランスで混在したスタイルに注目が集まり、Kitsuné Label と契約を果たした。2017 年 1 月リリースされたデビューEP「Hideout」は、イギリスのガーディアン紙をはじめ、数多くの媒体から「2017 年を代表する楽曲になるだろう」と評されるなど、今業界で一番注目を集める若手バンドのひとつだ。

Translator – Lena-Grace Suda