STARCRAWLER
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新時代のロックバンド、Starcrawler (スタークローラー) インタビュー

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Photographer: Hiroki Watanabe
Editor: Kohei Ueno

Portraits/

新人離れした演奏力と、爆音&血糊にまみれた狂乱のライヴ・パフォーマンスにより、「ロックンロールの救世主があらわれた!」と騒がれてきた4人組、Starcrawler (スタークローラー)。即日ソールドアウトとなった先日のジャパンツアーの合間に行われたインタビューでは彼らの音楽的ルーツやライヴ、そしてファッションについて語ってくれた。

新時代のロックバンド、Starcrawler (スタークローラー) インタビュー

2015年にLAで結成された4人組、Starcrawler (スタークローラー)。新人離れした演奏力と、爆音&血糊にまみれた狂乱のライヴ・パフォーマンスにより、「ロックンロールの救世主があらわれた!」と騒がれてきた彼女たちが、1月にリリースしたばかりのデビュー・アルバム『Starcrawler』を引っさげて初のジャパン・ツアーを敢行した。ライヴの模様は筆者が執筆したレポートをご覧いただきたいが、追加公演を含む全5公演は見事ソールド・アウト。たった40分で駆け抜ける暴走機関車のようなステージはあまりにも壮絶で、SNSでは一夜ごとに興奮と感動の声がタイムラインを埋め尽くしていったことは記憶に新しい。

Starcrawler を特別なバンドたらしめているのは、やはり圧倒的なカリスマ性とスレンダーな身体を持つフロントウーマン、Arrow de Wilde (アロウ・デ・ワイルド) の存在だろう。その名前でピンと来た読者もいるかもしれないが、彼女の母親は Beck (ベック) や The White Stripes (ザ・ホワイト・ストライプス) など錚々たるアーティストを撮影し、近年は Prada (プラダ) のショート・フィルムも手がける写真家 Autumn de Wilde (オータム・デ・ワイルド) だ。Autumn が監督した Starcrawler の代表曲「I Love LA」のビデオは、この曲とバンドの魅力を完璧に捉えているといっても過言ではない。

また、幼少時代からモデル活動も行っていた Arrow だが、昨年TFPでもインタビューを掲載した The Lemon Twigs (ザ・レモン・ツイッグス) の弟くん=Michael D’Addario (マイケル・ダダリオ) と恋仲だった時期もあり、Starcrawler が音楽関係者の目に留まったのも、Lemon Twigs の前座を務めた時のパフォーマンス映像が YouTube に公開されたのがきっかけだったという。事実、70年代の Iggy Pop (イギー・ポップ) と Patti Smith (パティ・スミス) と Ozzy Osbourne (オジー・オズボーン) が憑依したかのようなその立ち振舞いは、新世代のロックンロール・アイコンとして充分過ぎるほどの輝きを放っていた。

そんな Arrow のただならぬオーラに何かを感じ、掛け持ちしていたバンドをすべて辞めたというのが、Starcrawler のメンズチーム=Henri Cash (ヘンリー・キャッシュ/ギター&ヴォーカル)、Tim Franco (ティム・フランコ/ベース)、Austin Smith (オースティン・スミス/ドラムス) の3人だ。今回は最年少 (17歳!) にしてムードメーカーの Henri と、長髪でメンバー間の兄貴分的な Austin の2人を、東京公演翌日の渋谷でキャッチ。限られた時間ではあったが、彼らの音楽的ルーツやライヴ、そしてファッションについての質問をぶつけてみた。余談だが、日本でしか買えないらしい「コカ・コーラ ピーチ」がバンド内で空前のブームとなっていたようで、このインタビュー中も2人が終始ガブ飲みしていたことをご報告しておきたい。

 

Starcrawler -「 I Love LA」

 

—Henri の指元がやたらゴージャスですね (笑)。これは Justin Davis (ジャスティン・デイビス) ですか?

Henri Cash (以下、 Henri):うん! 昨日原宿のお店でもらったんだよ。

—早速ですが、昨晩のライヴ本当に素晴らしかったです。Henri は最後、フロアの壁によじ登ってギターをかき鳴らしていましたけど、Starcrawler のライヴっていつもあんなに激しいんですか?

Henri:僕らも楽しめたし、あんなに熱狂的なショーになるとは思ってもみなかったよ。

Austin Smith (以下、 Austin):クラウドの反応も最高だったしね。

Photo by Kazumichi Kokei

Photo by Kazumichi Kokei

—Austin は Henri たちのパフォーマンスをいつも特等席から見ているわけですけど、メンバーがノッている時のライヴって、あなた自身も叩いていて気持ちいいんじゃないですか?

Austin:そりゃあ気持ちいいよ! 東京でプレイするのは初めてだったから緊張したし、多少は慎重になったりもするんだけど、日本のオーディエンスは節度を守りながらも思いっきり楽しんでくれてる感じがしたな。君も言うとおり、素晴らしい眺めだった (笑)。

—今日着てらっしゃる Sonic Youth (ソニック・ユース) のTシャツも素敵ですが、生で聴く「Pussy Tower」では Thurston Moore (サーストン・ムーア)&Kim Gordon (キム・ゴードン) の掛け合いを思い出させました。Austin から見て、「シンガー」としての Henri をどう評価していますか?

Austin:うん、優れたシンガーだとは思うけど、やっぱり Arrow とのコンビネーションがあってこそかな。あのコール&レスポンスというか、お互いのバランス感がすごく良い方向に作用していると思う。

Henri:昨日の夜はなかなかハードだったよね。Arrow やオーディエンスに負けじと叫びまくってたら、途中で息切れしそうになっちゃったよ (笑)。

Photo by Kazumichi Kokei

Photo by Kazumichi Kokei

—個人的に好きなシンガーっていますか?

Henri:僕は X (LAの大御所パンク・ロック・バンド) の John Doe (ジョン・ドウ) かな。というか、彼と Exene Cervenka (エクシーン・セルベンカ) のハーモニーが息ぴったりですごくロマンティックなんだ。かと思えば、それぞれの持つルーツがバラバラなところも面白いよね。ただ、僕としては “シンガー” って言われると Frank Sinatra (フランク・シナトラ) みたいな人を思い浮かべちゃうから (笑)、歌詞で描かれた世界をうまく表現できる人に憧れる。

—そういえば、アンコールの「Chicken Woman」で、AC/DC の「Thunderstruck」のギター・リフを混ぜていたのが印象的でした。あの曲はあなたのお気に入りなんですか?

Henri:いや、これと言ってフェイバリットな曲というわけではないんだ (笑)。でもパーティー・トリックっていうか、オーディエンスにウケるかなと思って。

Photo by Kazumichi Kokei

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—では、あなたたちにとって “音楽史上もっとも素晴らしいと思うギター・リフ” を挙げてもらえますか。

Henri:やっぱりハズせないのは MC5 だよね。Wayne Kramer (ウェイン・クレイマー/MC5のギタリスト)の生み出すリフは天才的だと思う。それに Ramones (ラモーンズ) と Sex Pistols (セックス・ピストルズ) も……(リフを口ずさむ)。

Austin:僕がパッと思いつくのは Nirvana (ニルヴァーナ) かなあ。あと、Sleep (スリープ) の「Dragonaut」は史上最高のリフのひとつだと思う。

Henri:そうだ、Magic Sam (マジック・サム※50~60年代にかけて活躍したブルース・ギタリスト/シンガーで、魔法のような指弾きが有名) も忘れちゃいけないよね。彼は僕が映像で見てきた中でも最高のテクニックの持ち主だと思う。まるで全部の指が生き物みたいに動くんだぜ! 一時期は彼みたいなギタリストを目指そうと思って挫折したぐらいさ。

—あとで YouTube でチェックします!ちなみに Austin は、インスタのストーリーズでタワレコ渋谷で見かけた Jamiroquai (ジャミロクワイ) のカセットテープを投稿していましたよね。

Austin:ハハハ (笑)。いや、ネタでも何でもなく、大ファンなんだよね。

—以前もインタビューで Jamiroquai がお気に入りだとおっしゃってましたが、彼らのどんなところが好きなんですか?

Austin:Jason Kay (ジェイソン・ケイ) はとにかくアメイジングなシンガーだし、「Cosmic Girl」を聴く度に幸せな気持ちになれるんだ。僕がDJをやる時は、毎回必ず1曲は Jamiroquai をかけてるよ (笑)。いつか彼と会えたら最高だな~。

—話は変わりますが、あなたたちのデビュー・アルバム『Starcrawler』はロックンロールの興奮が純度100%で封じ込められたアルバムでしたね。

Austin:ホント? 嬉しいな。

Henri:サウンド面ではもちろんなんだけど、僕らが頑張ったのはビジュアル面でのアプローチなんだ。最近はそういうバンドが少なくなっているし、リスナーとしてもその方が楽しいんじゃないかと思うんだよね。

—特にライヴでは非日常を求めて遊びに来るファンも多いですからね。では、録音物として永遠に残るレコードと、ライヴのように日々進化していくもの、それぞれにどんな魅力を感じますか?

Henri:そうだな、ライヴって “生き物” だし毎晩オーディエンスも会場も違うから、とある1人のお客さんの力ですべてがドラスティックに変わってしまうこともあるんだよね。昔はカメラ付き携帯なんて無かったし、フィルムとして残されなかったライヴはその場限りの出来事として終わっていたけれど、今はインターネットの時代だから海の向こうの人たちにもリアルタイムで見てもらえるようになったし、ライヴの在り方も昔とは違ってきているのかもしれない。そういう意味では、ライヴは “変わっていくもの” で、レコードは “変わらないもの” という考え方ができると思う。

Photo by Kazumichi Kokei

Photo by Kazumichi Kokei

—Ryan Adams (ライアン・アダムス) のプロデュースも相性バッチリでしたが、次回作では誰と仕事をしたいかなどの願望はありますか? 個人的には、Steve Albini (スティーヴ・アルビニ※NirvanaやPixiesの諸作で知られるレコーディング・エンジニア/ミュージシャン) が Starcrawler を手がけたらどんな化学反応が起きるのか興味があります。

Henri: えーっと……難しいな (笑)。

Austin:まあ、純粋に良い音楽を作れることが前提かな。エンジニアやプロデューサーに関しては、次回作の構想が固まってきたらゆっくり考えていこうと思ってる。でも、Albini の音は僕も好きだよ!

—最後に少しだけ、ファッションについても聞かせてください。Austin が履いているのは Ksubi (スビ) のジーンズですね。

Austin:ああ、ずいぶん前にフォト・シューティングか何かでもらったんだよね。

—HenriのタイダイTシャツはどこでゲットしたんですか?

Henri:テキサスにある「Buc-ee’s」っていうチェーン店さ (笑)。ガソリンスタンドとかスーパーマーケットが一緒になっていて、テキサスで一番キレイなトイレがあるんだ。このTシャツよりもっと大きいサイズが99セントで売ってるよ!

Austin:アメリカ・ツアーではトイレは死活問題だからね。今にも漏れそうって時でも、あと少し走れば「Buc-ee’s」がある! と思えば我慢できるくらい僕たちにとっては大事な存在なんだ (笑)。

Henri:ホテルで日本のウォッシュレットも試してみたんだけど、お湯が熱すぎるし、水圧もちょっと強かったかな……。あと、便座が温かいのも僕はあんまり好きじゃない。もっと簡単に調整できるようメーカーに伝えといてよ (笑)。

—トイレに対するこだわりがすごい (笑)。ツアー生活で多忙を極める中、みなさんは一体どこからファッションのインスピレーションを得ているのですか?

Austin:ニューヨークでもロンドンでも、もちろん東京でもそうなんだけど、その街をアテンドしてくれる人がいると刺激になるよね。

Henri:僕も日本に来るまで……というか、昨日まで指輪なんて着けたこともなかったからね。このTシャツだってテキサスに行ったから買えたんだし。

—脇腹のタトゥーは本物?

Henri:これはテンポラリー・タトゥーだよ!

—さっきもビジュアルについてのお話がありましたけど、ミュージシャンにとってファッションはどんな存在だと思われますか?

Austin:90年代のグランジが良い例だけど、大企業に搾取されないよう注意しなきゃいけないとは思ってる。あの時代だって、Kurt Cobain (カート・コバーン) が着ていたからって10ドル程度のネルシャツが120ドルぐらいで売られていたわけだろ? もちろん、ブランド側もきちんと素晴らしいものを作っている人たちはいると思うんだけど、どうしても “数字” で動いてしまう部分はあるからね。

Henri:ブランドの広告塔にさせられちゃうのってクソだよな。それでバンドの個性が無くなったり、消費されてしまうことは、“表現の自由” にも関わってくると思うんだ。僕たちはそうやってイメージだけを奪われるのはゴメンだし、自分たちが本当に着たいと思ったものだけを着ようと思ってるんだ。

<プロフィール>
リードボーカルの Arrow de Wilde が、地元LAのエコー・パークにある高校でギタリストの Henri Cash に出会ったことがきっかけで2015年に結成され、そのすぐ後にリズムセクションの Austin Smith (Dr) と Tim Franco (Ba) が加わり4人編成で活動をスタート。観客の度胆を抜く奇抜でインパクトのあるライヴ・パフォーマンスが RoughTrade の創設者 Austin Smith (ジェフ・トラヴィス) の目に止まり即契約を果たす。デビューシングル「Ants」は、海外の UNIQLO のCMタイアップ曲に選ばれ、British Arrows Gold Award 2017のBest Use of Recorded Music 賞を獲得。デビューアルバム『Starcrawler』を引っさげた初ジャパンツアーは各SNSでも話題を呼び、早くもフジロックフェスティバル’18での再来日が決定している。
HP: www.beatink.com

来日情報
イベント名 フジロックフェスティバル’18
会期 2018年7月27日(金)〜29日(日)
場所 NAEBA SKI RESORT
住所 新潟県南魚沼郡湯沢町三国202
HP www.fujirockfestival.com