俳優・Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル) インタビュー
Henry Cavill
Photographer: UTSUMI
Writer: Hiroaki Nagahata
かれこれ20年以上、エンターテイメント性の高いスパイアクション映画としてトップを走り続ける『ミッション:インポッシブル』シリーズ。ありえないほどの超人的な肉体と甘いマスクを兼ね備えた主人公イーサン・ハントの激闘の記録は、我々の期待を常に更新し続けている。先日公開した最新作で宿敵ウォーカー役に抜擢された英国人俳優 Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル) が TFP に登場。この全世界を熱狂させ続ける作品の魅力について語ってもらった。
俳優・Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル) インタビュー
Portraits
『ミッション:インポッシブル』シリーズはもう20年以上、全ての世代、国境、性別を超えて、最も面白いアクション映画であり続けた。エキサイティングなだけではなく、王道のユーモアがあって、シニカルな視点もきちんと含まれている。つい先日公開となった『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』では、その魅力にさらに磨きがかかっている。「最新作が最高傑作」なんてのは陳腐な謳い文句だが、このシリーズに関しては評論家よりも観客の反応がそれを証明し続けているのだから、映画界の奇跡という他ない。今も続いている “主人公の大ピンチに思わず笑ってしまう系” のアクション映画といえば、『ダイ・ハード』が思い浮かぶ。たまたま凶悪な事件現場に居合わせてしまうジョン・マクレーンは本当に運の悪い男だが、イーサン・ハントは正に「飛んで火に入る夏の虫」。執着心がガソリンになっているような男だ。
本作でも彼は、プルトニウムを奪った敵を驚くべきしつこさで追いかけ続ける。追いついた後にどうするかなんて全く考えていないように見える。とにかく距離を詰めるのみ。そのむちゃくちゃなひたむきさに、観客はリスペクトを込めながらも笑ってしまう。冗談みたいにスリリングな崖の上で繰り広げられる最後の死闘の頃には、観客は耐えきれず爆笑してしまっている。無理だ、無理にきまっている。でも観客は同時にイーサンがその不可能な状況をどうにか切り抜けることを知っている。そして、これはスタントでもCGでもない。イーサンがやっていることは、Tom Cruise (トム・クルーズ) がやっていることなのだ。今回、そのイーサンと最後まで渡り合ったウォーカー演じる Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル) が、本作についてのいくつかの質問に答えてくれた。
—トムさんはスタントなしで演じることで有名ですが、このシリーズ初登場のヘンリーさんはそれについていけたんですか?
いや、僕に彼ほどの身体能力はないから、全くもって無理でしたね (笑)。彼が序盤のシーンでヘイロージャンプ (地上からは視認できない8,000メートルの高さを飛ぶ航空機から飛び降りること) するのだって、僕は隣で眺めていたんです。僕が飛び降りているように見えるのは、絶妙なカメラのスイッチングのおかげ。だけど、今後同じようなチャンスが巡ってきたら、その時はきちんと訓練して、スタントに頼らず自分でやってみたいと思います。
—トムさんは飛行機も操縦していましたね (笑)。もはや本物のスパイよりも優秀なんじゃないかっていう。
初めて間近で見ていたけれど、彼のアクションスキルは想像をはるかに超えるものでした。もちろん彼だけではなく、そのアクションの安全性を担保する周りのスタッフも本物のプロフェッショナル。僕も俳優になってしばらく経ちますが、改めて世界一の映画学校に通い直しているような気持ちでした。
—そもそも、個人的に『M:i』シリーズへの憧れはあったんですか?
憧れというのはありませんでした。というか、自分の役どころがあるなんて思いもよらなかったんです。でも今回は心の底から楽しむことができたし、もし次回作のオファーがあればぜひ受けたい。その時までにフィジカルを鍛えておきますよ。
—これまでで一番好きな『M:i』シリーズは?
前作 (『ローグ・ネイション』。本作と同じく Christopher McQuarrie (クリストファー・マッカリー) が監督と脚本を務めている。同シリーズで監督が続投したのは初) かな。彼の書く物語が好きで。実は、脚本が撮影中にもどんどん変わっていくんです。シーンの持つ意味もガラリと変わったりするので、僕もトムの行動にリアクションする形で、臨機応変に人物像を作り上げていきました。
—そういえば、ウォーカーはあまり邪悪な感じがしなくて、ピュアネスすら感じたんですよね。
正に、思わず共感しそうになるキャラクターだから、観客にとっては複雑だと思います。なぜなら彼の価値観は時に正しいともいえるから。実際に暮らしていて、この世界はどうもおかしな方向に進んでいるように感じるし、ウォーカーのようにその中で自分ができることがあるんじゃないかと思う人も多いはず。彼が間違えているのは手段であって、心意気までは否定できない。悪いとも良いともいえないキャラクターを演じるのは興味深い体験でした。トムと監督とはその部分について、だいぶ密に話し合いましたね。
—ヘンリーさんは『コードネーム U.N.C.L.E.』でもCIAのスパイを演じていましたよね。スパイを演じる上で強く意識していることは?
スパイは1人で隠密行動をしなければいけないので、ある意味では社会性に欠けたエキセントリックな性格の人がマッチしているような気がします。うーん、こう言うと本物のスパイに申し訳ないんですが (笑)。……つまり、優秀すぎるがゆえに変わり者になってしまうっていう、その感じを出すように努めています。
—ご自身が出演されたもの以外で、グッときたシーンはありましたか?
ルーサー (スティッケル:シリーズ初作から出演。演じているのは Ving Rhames (ヴィング・レイムス)) がイルサに、『イーサンがイルサに口酸っぱくこの世界から足を洗うように言うのは、彼が彼女を深く愛しているからに他ならない』と語るエモーショナルなシーンが好きです。
—最後に、このシリーズが王道のアクション映画にも関わらず時を経ても古臭くならない一番の理由は何だと思われますか?
そもそも現実のスパイはイーサン・ハントみたいに目立っちゃいけない。だって、群衆の中に彼みたいなハンサムな人がいたら一発で『あいつだ!』ってバレてしまうから (笑)。つまり、『M:i』はファンタジーなんです。でも、トム・クルーズは実際に超人的なアクションをやってのける。観客は「もしかしたら自分でもできるんじゃないか」と思ってしまう。実際はトムが超人なだけなんですが (笑)。このシリーズにはものすごく人間味があるんです。そこが他のアクション映画と異なるところだと思います。
<プロフィール>
Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル)
1983年5月5日、イギリス、チャンネル諸島、ジャージー島生まれ。Zack Snyder (ザック・スナイダー) 監督の『マン・オブ・スティール』(2013) でクラーク・ケントおよびスーパーマン役を射止める。アメリカ人以外で初めてスーパーマンを演じた役者となったことで話題に。その後、スナイダー監督のヒット作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016) にも出演。『ジャスティス・リーグ』(2017) では、Ben Affleck (ベン・アフレック)、Gal Gadot (ガル・ギャドット)、Ezra Miller (エズラ・ミラー) らと共演している。
作品情報 | |
タイトル | ミッション:インポッシブル/フォールアウト |
原題 | Mission: Impossible – Fallout |
監督 | Christopher McQuarrie (クリストファー・マッカリー) |
出演 | Tom Cruise (トム・クルーズ)、Simon Pegg (サイモン・ペッグ)、Ving Rhames (ビング・レイムス)、Rebecca Ferguson (レベッカ・ファーガソン)、Henry Cavill (ヘンリー・カヴィル) |
配給 | 東和ピクチャーズ |
制作年 | 2018年 |
制作国 | アメリカ |
上映時間 | 147分 |
HP | missionimpossible.jp |
©︎2018 Paramount Pictures. All rights reserved. | |
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