Goat Girl
Goat Girl

社会への疑問をなげかけるバンド Goat Girl (ゴート・ガール) インタビュ ー

Goat Girl

Photographer: Hiroki Watanabe
Writer: Ayana Takeuchi

Portraits/

類い稀な音楽センスだけでなく、知性、ルックスと三拍子そろった奇跡のギターバンド、Goat Girl(ゴート・ガール)。イギリスのサウスロンドンより世界を股にかけて活躍する彼女たちが、東京・大阪公演のために来日し、4人揃ってインタビューに答えてくれた。最新作についてから、揺れ動くイギリスの社会情勢、好きなファッションについてまでを語る。

社会への疑問をなげかけるバンド Goat Girl (ゴート・ガール) インタビュ ー

街の若者たちがこぞってラップミュージックに夢中になるなか、果たして今、ギターロックはクールなのだろうか?その疑問を爽快に打ち砕くのが、サウス ロンドンにある The Windmill(ザ ウィンドミル) でライブを重ねるバンドたちだ。Shame(シェイム)、HMLTD(エイチ・エム・エル・ティー・ディー)、Sorry(ソーリー) などジャンルは様々だが、そうした同志とともに世界へ挑む4人組、Goat Girl(ゴート・ガール) が東京・大阪公演のために来日を果たした。メンバーの Lottie Cream (ロッティ・クリーム)、Rosy Bones (ロージー・ボーンズ)、L.E.D (レッド)、Naima Jelly (ナイマ・ジェリー)の素顔に迫るインタビューをお届けしよう。

—アルバム収録曲『The Man』のミュージックビデオでは、男性ファンがあなたたちに熱狂するストーリーですね。実際に会ってみたら、かなりトムボーイな印象で男性が追いかけたくなるのも分かる気がしました。

Lottie Cream (以下、Lottie):ありがとう(笑)。男性アーティストに熱をあげる女性ファンというおなじみのストーリーがあるけど、性別を逆転させたら面白そうだったから、あのビデオでやってみたの。

L.E.D:The Beatles (ザ・ビートルズ) の『ハード デイズ ナイト』のミュージックビデオが元ネタなんだけど、行動自体がおかしいでしょ?それを逆にすることで、さらに面白みが増したわね。

Naima Jelly (以下、Naima):ジョークでもあるから、メッセージ性とか考えずに単純に楽しんでもらえたら嬉しいわ。

Rosy Bones (以下、Rosy): 観る人が私たちの伝えたいことを少しでも感じ取ってくれたら最高だけど、解釈はお好きにどうぞってスタンスよ。

—ミュージックビデオだけでなく、1stアルバム『ゴート・ガール』もリスナーに自由な解釈を委ねていますか?強いメッセージが込められているのではと思ったのですが。

Lottie:音楽を含めたアートは、自由な解釈があってこそだと思うわ。たとえ特定の意味があったとしても委ねるべきよ。もちろん社会に対して自分たちの意見があるけど、決してリスナーに説教したいわけではないの。このアルバムを通してファンと会話したいのよ。

Naima:固定概念が強いひとは他者と隔たりを作ってしまうけど、私たちは作品でオープンに気持ちをシェアしている。それを通してリスナーと会話して、理解し合いたいの。

—本作は「都市の退化」を歌詞にしたとのことですが、実際にロンドンではどんなことが起こっているのでしょうか?

Lottie:今のイギリスは、未来を見ようとしているんじゃなくて、過去に戻ろうとしているの。

L.E.D:イギリスだけじゃなくて、アメリカもそうね。人種差別や国境問題で家族が一緒に生活できない状況よ。

Rosy:ママの友達夫婦の旦那さんがイギリス国籍をもっていなくて、あるとき書面で移民申請を試みたそうなの。けど、記入の機会すら与えてもらえず、母国に帰されてしまったのよ。ひどい話でしょ。

Naima:ジャマイカからの移民は、60年代の労働力不足を補うために、迎え入れられたんだけど、都合が悪くなったから排除される。いろんな人種が混ざり合って築けた文化があるはずなのに、そのひとたちとの繋がりを避けようとしていることが私は退化だと思うの。

—政治に対してしっかりとした意見を持っていて、最新作で綴られた歌詞も20歳とは思えぬマチュアな内容ですね。

Rosy:イギリス人なら、今の状況に興味を持たない方が難しいわ。10代でも友達同士でディスカッションするくらいよ。若者にはエナジーもパッションもあるし、自分たちで何かを変えられるんじゃないかって希望もある。とても正直に少しでも環境を良くしたいと思っているの。

Naima:さっき自分の意見を話したけど、政治に影がさすのは悪いことばかりではないわね。それに反対する素晴らしいひとが現れたり、アートも良いものが生まれるから。俯瞰で見るとバランスがとれているのかもしれないわ。

—音楽の話に戻りますが、曲作りやレコーディング時によく聴いていたバンドをおしえてください。

Rosy:Country Teasers (カントリー・ディーザーズ) に Pixies (ピクシーズ)。それから Gun Club (ガン・クラブ) かな。

Naima:あとは、Fat White Family (ファット・ホワイト・ファミリー) と Bat-Bike (バット・バイク) も。

Lottie:どれもローファイで、コード進行がいい意味でめちゃくちゃなのが共通点かしら。

L.E.D:ポップな作品ばかりよね。曲が短いのもポイント。

—チャートに入っているようなポップ ミュージックについてはどう思いますか?

Naima:計算されてるみたいに同じようなものばかりで退屈だわ。

Rosy:10年くらい前はミュージックビデオも派手ですごく楽しかったけど、今は洗練され過ぎててつまらない。曲の構成は、煽って爆発しての連続だし、まるで“コピーアンドペイスト”して終了って感じよね。

L.E.D:Blossoms (ブロッサムズ) がチャートに入ってるのを目にしたんだけど、これをギターロックだと思っちゃうひとがいるかもしれないと想像したら、悲しくなったわ。

—ヒップホップも相変わらず人気ですよね。

Naima:そうね。私はヒップホップも好きよ。

Rosy:ヒップホップはニュー・パンクと言えるわよね。パンクは死んじゃったけど、今その役目を果たすのがヒップホップだと思うわ。

—対してロンドンのインディーシーンは、どうでしょう?

Rosy:うーん、そもそもインディーが何か定義が難しいわね。ギターバンドだけでも音楽性が様々だし、シーンでくくっていいのかもわからないわ。

Naima:インディーに変わる何かいい言葉があるといいんだけど。

Rosy:ポスト・インディーかな?ジャーナリストにお任せするわ。(笑)

L.E.D:ロンドンでは面白い音楽がジャンルを越えて奏でられていて、ときにクロスオーバーすることもあるんだけど、シーンで区切ることが難しくなっているの。

—では、最後にあなたたちのファッションスタイルについておしえてください。

Naima:ファッションのことは全然わからないけど、スマートに見えるもがいいわ(笑)。ブランドは、UNIQLO (ユニクロ) と MUJI (ムジ) が好きよ。あとは、Addidas (アディダス) のスニーカーもよく買うわ。クローゼットには、シンプルなものが多いわね。

Rosy:フォーマルだけど、抜け感のあるスタイルが理想よ。他人からしたらちょっとバカみたいなものとか、不完全なものをどこかに取り入れることが多いかしら。

Lottie:古着屋で90年代の服をよく手に取るわ。自分に自信がないときに履くのは、なぜかバギーパンツね。

L.E.D:私は街で見かけたおしゃれなひとの服装を真似してる(笑)。買い物はオークションサイトか、チャリティショップですることが多いわね。靴だけは良いものを手に入れたくて、ドイツの Kickers (キッカーズ) を愛用中。ママが昔ジュエリーデザイナーをしていたから、シルバーのアクセサリーはママが作ったものミックスして着けてるわ。

<プロフィール>
Goat Girl (ゴート・ガール)
様々なジャンルやスタイルを通して、続々と新しい才能が登場し、世界で最も勢いのある音楽シーンの一つに急成長しつつあるサウス・ロンドンを拠点に、その大胆不敵なサウンドで、かねてより注目を浴びてきた新鋭ガールズ・バンド。現在20〜21歳のクロティ・クリーム、ロージー・ボーンズ、ネイマ・ジェリー、L.E.Dの4人で構成され、Franz Ferdinand (フランツ・フェルディナンド) や The Kills (ザ・キルズ) を手がける Dan Carey (ダン・キャリー) をプロデューサーに迎え、Rough Trade Records (ラフ・トレード・レコード) よりデビューを果たした。2018年4月にセルフタイトルのデビュー作『Goat Girl』をリリース。2018年6月には、東京&大阪公演のため初来日を果たした。

HP: www.beatink.com