Nijiro Murakami
Nijiro Murakami

映画界が今熱い眼差しを送る俳優、村上虹郎 インタビュー

Nijiro Murakami

Photographer: Hiroki Watanabe
Writer: Sota Nagashima
Stylist: Ryohei Matsuda
Hair & Makeup: Kohei Morita

Portraits/

21歳、俳優、村上虹郎。主演作『銃』の鑑賞後、今の彼だからこそ出せる危うさとヒリヒリするような凄みを目の当たりにし、これはひょっとしてとんでもないものを観たのではと静かに胸の高鳴りを覚えた。続々と出演作品がアナウンスされ、注目を浴びている村上虹郎という才能。その中、今作は言わば”初期村上虹郎代表作”の一つと言えるのではないか。そんな期待感とと共に映画界が今熱い眼差しを送る時代の寵児へ聞いた。『銃』のこと、自身のアイデンティティについて、映画というものについて。

映画界が今熱い眼差しを送る俳優、村上虹郎 インタビュー

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

21歳、俳優、村上虹郎。主演作『銃』の鑑賞後、今の彼だからこそ出せる危うさとヒリヒリするような凄みを目の当たりにし、これはひょっとしてとんでもないものを観たのではと静かに胸の高鳴りを覚えた。原作は日本のみならず海外でも高い評価を受ける作家、中村文則による衝撃のデビュー小説。純文学作品として評価の高い本作は、どこにでもいそうな若さ故の不安定さを持つ青年が、偶然にも”銃”を拾ってしまったことに始まる。続々と出演作品がアナウンスされ、注目を浴びている村上虹郎という才能。その中、今作は言わば”初期村上虹郎代表作”の一つと言えるのではないか。そんな期待感と共に映画界が今熱い眼差しを送る時代の寵児へ聞いた。今作『銃』のこと、自身のアイデンティティについて、映画というものについて。

ー今回、村上さんが演じたトオルは本当に適役だなと思いました。かなり手応えもあるのではと感じたのですが、原作である中村文則さんによる『銃』は演じる前から読まれていたのでしょうか?

実は3年前に舞台で共演した方から「虹郎に合う『銃』という作品があるよ。」と言われたんです。気になって小説を買っていたのですが、読まずにいて。そうしたら、奥山さん(本作の企画・製作)からお話が来た。「あれ、それ持ってるぞ」って。普段あまり原作を読まないのですが、今回は待ち切れずに読んじゃいました。すぐ読み終わりましたね。

ーある意味、運命的な出会いの作品ということですね。監督の武さんは、映画を撮る上で村上さんと刑事役であるリリー・フランキーさんはなるべく野放しにしたかったと聞きました。演じてみていかがでしたか?

現場で演出が少ないなとは思っていました(笑)。野放しにしたかったというのは、撮影が終わってから後々知ったので。トオルの人物像などに対する演出はないなと思っていた。そういう意味では、すごく信頼されていたのかと思うので嬉しいですよね。

©吉本興業

©吉本興業

ーそんな野放しにされていた村上さんとリリー・フランキーさんの2人が喫茶店で対峙するシーンは痺れるものがあり、今作の中でもすごく印象に残っています。あのシーンはアドリブなども入っているのでしょうか?

この作品においてはアドリブはあまりなくて。その分、僕の台詞がすごく少ないんですよね。

ーなるほど。リリー・フランキーさんの他にも広瀬アリスさんなどが共演されていますが、印象に残っていることなどはありますか?

撮影期間自体が短かったこともあり、実はあまり話せてないんです。アリスさんからは撮影が終わった後、こんなに話す人とは思ってなかったと言われたんですよね。僕は普段、演じる役と自分自身を乖離させてしまうので、それにしても今回はトオルという役に引きづられていたんでしょうね。実際ニコチンやカフェインもたくさん摂取して、胸焼けが凄いし、重い。たぶんアリスさん的にはあまり話しかけられる雰囲気じゃなかったんだと思います。

ー逆にその短い期間でグッと撮っていることから、親密過ぎず皆が皆どこかで牽制し合っている、ある種の緊張感が生まれているのかもしれませんね。

それはあるかもしれませんね。”他人感”というのが今作のテーマでもあるかもしれないですし。実際みんな面識がなかった方々が多いと思います。

ーそんな中でも、よくご存知であるお父様の村上淳さんとも共演されていますよね。やはり意識はされましたか?

意識はしましたね。僕らが意識するというよりは、やはり観る人が意識しちゃうんじゃないですか?イコール、僕らも意識しなくてはいけないから。でも、特に親子だからどうこうというのはありませんでした。

ーかなり重要なシーンですよね。

センセーショナルなシーンですね。歴史に残るといいなと思っています。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

ー今回、”銃”がテーマになっていますが、主人公である青年トオルはたまたまそれを手にしただけであって、誰にでもある自分が何者かという葛藤や変化を促すトリガーの象徴として”銃”をテーマに描いていると感じました。そういう意味では、普遍的な青春映画なのではないかと思います。村上さん自身、そういったアイデンティティの葛藤を経験したことはありますか?

すごくありました。僕はわりと人生を逃げまくっていたタイプでした。すごくダサい時期があった。親がカッコいいと、それに反抗するものは何かと言うと、”ダサい”なんですよね。もしくは、”普遍”。親もベースは普遍なんですけど、じーちゃん、ばーちゃんがわりとすごく常識人だから、そこに生まれて反発してアーティスティックになった2人が両親で、そこに生まれてまた反発し”普通”に憧れた人間が僕なんです。

ーなるほど。

家にめちゃくちゃカッコイイものがあるからこそ、UNIQLO (ユニクロ) や GAP (ギャップ) が着たい。家で The Beatles (ビートルズ) がかかっても、学校では J-POP を弾くとか。でも、その時から Oasis (オアシス) が好きになって、Radiohead (レディオヘッド) が好きになって、Phoenix (フェニックス) が好きになって、Tom Waits (トム・ウエイツ) が好きになって。どっちも混在している感じですね。

ー人生で逃げてきたというのは?

この世界に入る前ですが、親からも逃げ、教育からも逃げ、色々なものから逃げ。それを正当化しようとして。このトオルもそうじゃないですか、自分のことを正当化しようとする。だからって、分かってないはずじゃないと思うんですが、意外と分かってないところもある。自分の愚かさとは何かということが。

ーそういう意味ではトオルに共感できる分も多い?

演じる上では、あまり違和感はなかったです。でも、共感というのとはまたちょっと違うんですよね。彼にはモラルや道徳観が完全に欠落している。もしかすると宗教の強い国からしたら、何コイツってなるかもしれない。日本人特有の無宗教だからこそなる、精神の弱さなのかなぁとも思います。

ーそういう見方もできますね。

自分にとって何がカッコイイかってことですよね。別にみんなと同じだからカッコイイとか、違うからカッコイイっていうのは間違いじゃないですか。

ー先程の普遍とマイノリティなものが混在しているという価値観にも繋がりますね。

そうですね。僕は天邪鬼でいたいという自分もいますが、別に違うからカッコイイの?って言ったら、それはちょっと違うかなと思います。

ー今作はモノクロで重いテーマを扱った映像作品。大衆的な作品と比べればもしかしたらマイノリティ側に位置する作品かもしれませんね。演じる上で意識したことはありますか?

お客さんに対して、あまりサービスのないお芝居の方向性だと思うんですよね。ただトオルがそこに生きているだけ。観る人たちのちょっとした能力や集中力が必要というか。だからこそ、劇場で観た方が観やすいと思うんですよね。完全な暗闇の中で凝視すれば色々な情報が入ってくる。テレビで何かしながらだと、見逃すわけです。逆に飲食店で流れてても面白いとは思うんですけど(笑)。

ー村上さん自身、集中力を必要とする映画の方が好きですか?

そういうものを作っていることが好きです。エゴかもしれないですが。でも、どっちも好きなんです。どっちもないとキツい。僕にとってはどちらも大事なものだから。そういう意味では、今作はどんどん立場が狭くなっていく絶滅危惧種のような。でも、まだいるよー、まだあるよーっていう。奥山さんはそういう映画を作り続けているプロデューサーなので。その強いコアみたいなものを受けとって欲しいなと思います。

ー村上さんがそんな普遍やマイノリティを横断する架け橋になっていくんじゃないかと思います。

確かに、なりたいなと思います。結局、人は自分が普段出会わないものに出会うときって、それを教えてくれる人が好きだったり。恋している人が教えてくれるものって観たくなるじゃないですか。本質的に興味がなくても、何となくその人を理解するために観たりもします。それが友人かもしれないし、仕事仲間かもしれないし。そういう流れで観てくれるのもいいですよね。あとは、自分が全然出会わないジャンルでも、かっけぇ、可愛い、すげぇって思ってもらえたらいい。結局そこしかないんですよね。

ーなるほど。最後に一つお聞きしたいんですが、村上さんにとって『銃』みたいな存在って何でしょうか?

さっき言ったように恋愛がその一つ。クサいことを言えば、映画かもしれない。映画というものに出会った時にブワーッと世界が開ける。全能感のような。銃というのは絶対的なもの、確固たるものですよね。銃という存在自体はブレていないから、人間がブレているだけで。

ーでは、映画はブレないものですか?

その答えの一つとして、今作を出しています。時代によっては間違っていると言われるかもしれないし、超カッケェと言われるかもしれない。映画は作ってしまえば、ブレないものだと思います。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

<プロフィール>
村上虹郎
俳優
1997年生まれ、東京都出身。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品『2つ目の窓』(14/河瀨直美監督)で主演を務め、俳優デビュー。主な出演作に、映画『ディストラクション・ベイビーズ』(16/真利子哲也監督)、TBSドラマ「仰げば尊し」、舞台「シブヤから遠く離れて」など。17年に公開された映画『武曲 MUKOKU』(熊切和嘉監督)で第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞など受賞。最近の出演作に、TBSドラマ「この世界の片隅に」、声優として出演した映画『犬ヶ島』(18/ウェス・アンダーソン監督)、『ハナレイ・ベイ』(18/松永大司監督)、公開待機作に映画『チワワちゃん』(2019年1月公開予定/二宮健監督)がある。また、来年5月には舞台「ハムレット」が上演予定。

作品情報
タイトル
監督 武正晴
出演 村上虹郎、広瀬アリス、日南響子、新垣里沙、岡山天音、村上淳、リリー・フランキー
企画・製作 奥山和由
原作 中村文則『銃』
配給 KATSU-do、太秦
製作年 2018年
製作国 日本
上映時間 97分
HP thegunmovie.official-movie.com
11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー