shota sometani
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俳優・染谷将太インタビュー

シャツ ¥36,000、TOGA VIRILIS | Photo by Hiroki Watanabe

shota sometani

photography: hiroki watanabe
text & interview: taiyo nagashima

Portraits/

歴史上の偉人、超能力者、右手に異形を宿した高校生。染谷将太は個性の際立つ役とシンクロしながら、染谷将太としての存在感を放ち続ける。虚構の中に入り込む現実そのもののような芝居は、観る者の感情をゆさぶり、真と偽の境を溶かしていく。11月1日公開の映画『最初の晩餐』で彼が演じるのはひとりのフォトグラファー。父の死をきっかけに明らかにされるのは、家族の複雑な事情。静かに、丁寧に、解き明かされていく物語の魅力と、演じることの裏側にある哲学について、語ってもらった。

俳優・染谷将太インタビュー

—いきなりなんですけど、染谷さんって、自分自身のことをどんな人だと思っていますか?

あー…いいかげんな人間だと思います。

—いいかげん?

そうですね。いいかげんだなあ自分は、っていうのと、良い加減でありたいという願望もあります。

—あ、なるほど。いいかげんと良い加減がかかっている。

希望としては、良い加減のほうです。

シャツ ¥36,000、TOGA VIRILIS | Photo by Hiroki Watanabe

シャツ ¥36,000、TOGA VIRILIS | Photo by Hiroki Watanabe

—染谷さんの演技ってすごく印象的で、逆に俳優としてではない染谷さん自身の普段の様子が想像できないと思っていたんです。演じるときと普段と、差はありますか?

かなりあります。基本的に、ある程度の人見知りなんですけど、最近は多少大人になってきて、人とコミュニケーションをとるってことを意識してやっています。自分の好きなこと、好きな話になるとすごい言葉がたくさん出てくるんですよね。

—好きなことって、映画だったりとか。

映画だったり、好きな食事だったり、好きな場所であったり…。ディズニーランド好きなので、その話になるとすごい高揚して喋ってしまいます。

—よく行かれるんですか?

年に一回は行ってますね。

—ディズニーのどんなところが好きなんでしょう?ミッキーファンだったり?

ミッキーも好きなんですけど、やっぱりウォルトディズニーって、映画じゃないですか。物語の世界がそこにある。感動ですよね。

—究極のフィクションですよね。

そうだと思います。映画をそのまま体験できる。そしてそれが完璧に作り上げられているっていうのが、かなり、尊敬。尊敬っていうとおかしいですかね (笑)。とにかく圧巻ですよ。

—俳優として、そこから学ぶことがあるという感覚ですか?

ひとりの観客として単純に楽しんでるんですけど、結果的に学んでることはあると思います。意識して、何かを学ぼうということではなくて。

—どういった部分を学ぶのでしょうか?

そこにあるのは虚構で、嘘なんだけど、すごいリアリティで、目の前にそれが起きているわけですよね。それって、演じることと通じると思うんです。僕自身そのディズニーの世界に没入するんですけど、逆に自分が役者としてお芝居をするときは、お客さんを没入させなくちゃいけない。そこに共通点があるかなって。

—物語を信じる力って、人の持つ最も素晴らしい能力だと思うんですけど、役者としてそこに臨むときはどんなことを考えていますか?

それは、永遠のテーマだと思っています。毎回ずっと考えていて、説得力のあるお芝居、佇まいでいたいんですけど、決まった正解があるわけではないので、きっといつまでも考えるんでしょうね。虚構を形作る上では、小さな説得力のない振る舞いが浮いてきてしまうので、細部にこそ危険があるのかなって。

—今作『最初の晩餐』を拝見して、戸田恵梨香さんとの「姉弟」という関係性がすごくリアルに感じられました。長い間時間を共有してきたような雰囲気があったんですが、どのようにその関係性をつくっていったのですか?

初日の一番最初、冒頭のシーンで、戸田さんがもうお姉ちゃんだったんですよね。「あ、姉貴がいる」という感覚にさせてもらったので、僕はただそこに甘えればいいと思いました。逆に言うと、お姉ちゃんがそこにいるので、自分がそこに甘えることができなかったら姉と弟に見えないなと思って、甘えるということを気をつけました。

—それは戸田さんの演じる力、お芝居の力もあると思うのですが、現場全体の雰囲気も関係していたのでしょうか?

ありました。戸田さんと自分が撮影に入ったタイミングで、すでに何ヶ月も撮影しているような、現場のなじんだ雰囲気があったんですよね。僕らのシーンの前から撮影チームはずっと動いていたので、そういう理由もあったと思うんですけど、自然に入り込める現場でした。

『最初の晩餐』

—常盤監督は、今回が初の長編監督作です。どのような印象だったのでしょう。

今回、脚本を読んだ段階ですごく感動したんですね。これを書いた監督といっしょなら心強いなって。監督自身の経験が反映されていて、その繊細な感情の描写もすごくよかった。でも監督に、実体験の気持ちを聞くことはやめました。監督もそういうことは言わなかった。監督の演出をちゃんと理解して、その感情をていねいに描くということをしていきましたね。

—染谷さんは、脚本を読んでいち早くこの作品に手をあげたとのことですが、どういった部分が決め手に?

こんな家族物語初めてだなって思いました。食事を描いているんですけど、食べ物だけに頼るわけでもなく、複雑な家族を描いているんですけど、その複雑さに頼るわけでもなく、素直にひとりひとりの人物が描かれていて、そこにすごく感動しました。本当に誘ってくれてありがとうございます、ってかんじです。

—過去と現在を行き来する構成ですが、ご自身でご覧になって、どんな感想を抱きましたか?

過去の物語には自分が出ていないので、みなさん素敵だなって素直に思えました。この家族のもっと違うエピソードも見てみたい。過去と現在が描かれる中で、バラバラになってたパズルがちゃんと揃っていく。そのパズルが揃うのが、これ見よがしではなく、観る側にある程度託してくれるんです。確実に何かを伝えようとしてくれていて、そこにたしかな感情が描かれている。わかりやすいわけではないけど、暴力的に投げっぱなしでもない。丁寧に感情を提案している、絶妙な作品だなと感じました。

—たしかに、家族への複雑な思いを丁寧に、真摯に描いていますよね。染谷さん自身は自分のご両親に対してどんな思いを抱いていますか?

帰れるところであり、背中を押してくれるところなのかなと、ざっくりと思っています。現在は両親ともに健在なので、もしこの世から去ったら、また何か違う感情になるんだと思います。かなりシンプルですね。子役からこの仕事をしているんですけど、両親には勝手に好きにやりなさいって言われていて、そんな2人にすごく感謝しています。

—また、染谷さん自身が父として、2人のお子さんがいますが、責任を感じることは?

責任はものすごく感じています。とくにプレッシャーみたいなものを感じることはないのですが。家族はやっぱり、帰るところであり、外に向かって背中を押してくれるところです。責任を力に変えていく感覚です。自分の生活がないと、やりたいことってできないので。

—今後挑戦したい役、やりたい仕事ってありますか?

あのー、そうですね…。

—言いにくい役とか?

いえ。なぜか僕は、自分の想像を全くもって超えるような役のオファーが多くてですね。
「やりたかった」とか、思ってもみなかったものがほとんどなんですよ。やりませんか?って言われたら、それはやりたいです、ってなるような。

—それは染谷さんならではかもしれません。

空海役とか、やりたいって思うことはなかなかないですよ (笑)。

ーそうですよね (笑)。

もちろん尊敬してたし、ヒーローだな、カリスマだなって思ってましたよ。でも「やりたい」とは思わないじゃないですか。

ー教科書で見るっていう距離感ですよね、空海は。

そうなんですよ。今は織田信長をやっているんですけど、その役をやれるとも思ってなかったです。これからもそういう想像を超える役に恵まれたいですね。それは、この仕事ならではの喜びかもしれません。

シャツ ¥36,000、TOGA VIRILIS | Photo by Hiroki Watanabe

シャツ ¥36,000、TOGA VIRILIS | Photo by Hiroki Watanabe