Satoshi Kuwata
Satoshi Kuwata

ラグジュアリーの極地を目指して 「ゆっくりと着実にアップデートしていく」。SETCHUの桑田悟史が今日も釣りをする理由

Satoshi Kuwata

photography: Yuichi Akagi
interview & text: Miwa Goroku

Portraits/

1983年、京都府生まれ。SETCHU(セッチュウ)のファウンダーでありデザイナー、桑田悟史の成功への軌跡は、ブランドが始動する遥か以前から始まっていた。自身のルーツ、幼少期の経験、サヴィル・ロウでの修行、多彩なブランドで積み上げたキャリア、そして趣味の釣りまでも。彼が語る人生の断片は、そのすべてが SETCHU というメゾンを完成させるための不可欠な要素となっている。まるで精緻なジグソーパズルを組み上げていくように小さなピースを一つずつ、初めから絵が見えているような手つきで、桑田は丁寧に迷いなくはめていく。

「日本初のラグジュアリーメゾンをつくりたい」。SETCHUの名前に込めた思いを尋ねた時、彼はそう答えた。2020年のブランド立ち上げから3年で LVMH プライズのグランプリを受賞。2025年 Pitti Immagine Uomo (ピッティ・イマージネ・ウオモ) で初のランウェイショーを披露し、翌2026年春夏はミラノファッションウィークに初参加。続く秋冬は、新たに構えた自社社屋を会場にショー形式のプレゼンテーションを成功させたところだ。シーズンを重ねるたび、SETCHU は新たな話題を引っ提げて進化を見せている。

そんな彼の、服づくりに劣らぬ情熱の対象が「釣り」だ。一昨年、Dover Street Market Ginza (ドーバーストリートマーケット ギンザ) での朝食会で対面した時、彼がスマホをスクロールして見せてくれたのは、ジンバブエのヴィクトリアフォールズで巨大なタイガーフィッシュを釣り上げた時の写真だった。あまりに楽しそうに語る様子に惹かれ、「いつか一緒に」と交わした約束が果たされる日は、思いのほか早くやってきた。

昨年12月某日。彼の仕事仲間たちと仕立て船に乗り込み、品川から片道1時間半、カワハギが釣れるポイントへ。釣具を片手に、躍進するブランドの現在地と、その先の航路を聞いた。冷たい潮風に吹かれながらの対話は、他では得られない、濃密な時間となった。

ラグジュアリーの極地を目指して 「ゆっくりと着実にアップデートしていく」。SETCHUの桑田悟史が今日も釣りをする理由

—意外な趣味を楽しんでいるクリエイターの人はよくいますが、桑田さんの場合、それが公であるだけでなく、洋服の中に要素として入ることもあります。ファッションと釣りは、桑田さんの中でどんなバランスで共存しているのですか?共通点は?

洋服づくりって、道具が必要じゃないですか。たとえば生地を道具と考えるならば、夏はライトウェイトのウール、冬はツイードに置き換えるなど、いろんな組み合わせでつくることができますよね。釣りも一緒です。今日はカワハギを釣るので、こういうセットでやりますが、もしブリを釣りたいなら、糸はもっと太くなる。ロジック化して考えると、実はかなり似ています。それがすごく好きなんです。

—なるほど。ターゲットに合わせて最適解となる道具を選ぶ。シンプルに見えて、実は複雑な奥行きがある。

おっしゃる通りです。そもそも僕が洋服に興味を持ったきっかけが、実家にたくさんあったテーラリングのジャケットでした。子供の頃、解体して中を見てみたら、いろんなものが入っていて衝撃を受けました。そのレイヤードの複雑さに惚れたんです。

—考えてみれば、釣りもプロセスが長いですね。釣る魚の狙いを定めて、道具を選んで、準備して、実際に現地に行って、釣る。釣れたら、料理して食べる。何が一番楽しいですか?

自然と一緒になれる。原始時代の感覚に戻る。非現実を楽しめる。僕の場合、釣れなくても全然いいんです。子供の頃は、友達と一緒に泳ぎに行った延長でよく釣りをしていました。釣る目的ではなく、食べるために釣る目的でもなく、ただ遊ぶ目的で。家が貧しかったわけではないのですが、お小遣いがなかったので、遊びといえば自然と戯れることしかなかった。僕が覚えている人生最初の釣りは、本籍のある鳥取で父親が連れて行ってくれたサビキ釣りです。それは家族の思い出でもあって、3、4歳の頃だったと思います。

—釣りには、瞑想的な要素もありそうです。

かなりありますね。釣りしている間は、本当に他のことを考えないですから。糸を介して水の重さを感じたり、自然との対話を楽しんでいます。料理をするのも好きです。数日前も釣りに行っていて、知り合いの船長さんがいる明石で一緒にタイを釣りました。釣った魚は自宅に持ち帰って、マイ包丁で捌いて、家族でタイしゃぶしてきました。最高です。

—釣りに対するイメージがだんだん変わってきました。釣りにもいろいろありますが、特に好きな種類はありますか?

なんでも好きです。昔、ブラックバスが日本で流行った時は、僕も相当やりましたし。最近は夏になると、友人の家族宅にお邪魔してみんなで釣りをしたり、旅行中に一泊だけ海辺に立ち寄って、僕は釣りして、友人は本を読んで過ごすとか。意外とオシャレですよ。釣りのイメージって、一般的にあまりよくないですよね。

—そうですね。潮臭いし、濡れるし、汚れるし、今日なんかはめちゃくちゃ寒いし……

それが面白いというのもあるんですけどね。普通の生活では体験できないことじゃないですか。そこで新しい知り合いができたり、僕の知り合いがまた別の誰かとつながるのも面白い。

—桑田さんは、いつも東西南北を飛び回っている印象ですが、旅先はどのように決めますか?やっぱり釣りができるところ優先で?

釣りもそうですし、美術館も探します。あと、現地のものづくりを見ること。この3つのキーワードが満たせるところをいつも探しています。

—シーズンの合間に、大きい旅をする?

そうですね。必ずしも次のシーズンに向けてというわけではなく、いつか使えるかなと貯めておくこともあります。

2026-27年秋冬シーズンも、釣りから始まった

—最新のコレクションについて伺ってもいいですか?

今回、グリーンランドに行きました。15年ほど前に「ナショナル ジオグラフィック TV」を観て、釣れる土地だというのは覚えていて。ただ、そんな簡単には釣れないだろうと思っていたのですが、すごかったです。100投したら97匹釣れるくらい、タラがたくさん釣れました。どうやったらそんなに釣れるのって、地元の子たちが集まってきたので教えてあげたりしました。

—それは楽しくてしょうがないですね。やっぱり桑田さんは釣りが上手いのですね。

僕、上手くはないんですよ、釣りが好きなだけで。でも、グリーンランドではめちゃくちゃ釣れました。釣りをして、美術館に寄って、現地の人々がつくっているものも見て。予定通りの旅ができました。大変でしたけどね、暴風で。グリーンランドは、1週間で飛行機が2、3回キャンセルになるくらい、天候が悪くて過酷な環境なんです。夏でも今日みたいな(曇りで極寒)感じ。5日間の旅程でしたが、外に出られたのは2日半くらいでした。

SETCHU 2026-27FW

—2026年春夏は、南アフリカのジンバブエのトカ族(バトカ族)の人たちとコラボレーションしていました。今回も現地のクラフトを取り入れたりしていますか?

今回はできなかったです。というのも、グリーンランドには文化的に残っているものがほとんどないんです。先住のイヌイットの人たちとお話をする機会は得ることができて、工房を見せていただいたりしました。ちょっと深い話になるのですが、みなさんが今知っているグリーンランドの民族衣装には、ビーズが使われているのですが、アフリカとすごく似ているんです。どういうことかというと、植民地化された時代に入植者たちがビーズきれいでしょと現地の人に見せて、その代わりに金銀をちょうだいっていう、トレードが行われたた過去があります。それはあまり触れたいと思わない文化で、僕はもっと植民地化以前まで遡って、原住民の人たちが狩った動物の毛皮を着ていた頃のイメージがグリーンランドだなと思いました。同時に、何もない島の中で新しいものを探し、あるものに感謝して使うというのが、日本の昔の文化に似ているなとも思ったんです。

—グリーンランドも島。環境は全く違いますが、日本との共通点を感じたと。

はい。そこから掘り下げてつくったのが、今回のコレクションです。たとえば、袖が横ではなく前についた服。現地の美術館で見たのですが、袖がこういうふうに(肩から前に突き出すように)ついているんです。寒いからそうなるのか?なぜだろう?と思って、現地の人に聞いたりしたのですが、わからない。でも、後でわかりました。アザラシの1枚革は、足があった場所に穴が開きますよね。それを袖口にしようとすると、腕を前に出すしかなくなるんですよ。アザラシは神聖な存在で、イヌイットの人たちは今でもアザラシを狩って食べていいことになっています。その革が、現地のお土産コーナーに売ってあって。ワシントン条約で守られているので、たとえばアメリカ人は買って帰ることができませんが、僕はヨーロッパに住んでいるので、1枚だけ持って帰りました。

SETCHU 2026-27FW

—SETCHU の精緻なテーラードがどのように再構築されるのか楽しみです。

僕はコスチュームデザイナーではないので、パッと見てグリーンランドとわかるようなものにはしていませんよ。あとは、和洋折衷の「和」の要素として、ダウンジャケットのようで着物っぽい服や、靴もつくりました。東北に行った時に見つけたいろんな藁草履の中に、藁を筒状にして半分に折って履くものがあって面白いなと。それがヒントになりました。今回のテーマは、ないものの中に価値を見つけて、それをよりよくするということ。たとえば人間でもそばかすがある人って、すごくキレイだと思う。そういう価値を強調するようなシーズンです。

釣具と洋服をスーツケース1個に収めるために

—これまでの釣りで、服づくりに影響をもたらした体験を教えてください。

それはもうガボン(共和国・中部アフリカ)ですね。SETCHU を始めるきっかけになった旅行です。当時、僕は他のブランドのデザイナーをしていて忙しく、給料は貯めっぱなしだったので、ちょっとお金持ちでした。それで大きな旅行をしようと思って、いつか行きたいと思っていたガボンに行きました。ガボンには、ターポンという大きな魚が釣れる秘境があって、釣り人にとっては聖地です。ビジネスクラスで行ったのですが、ガボンに持ち込めるのはスーツケース1個までといわれて。僕は、釣りをする時も普段と同じオシャレをしたい。釣具もいっぱい持っていきたいので、そうするとスーツケース4個くらいになる。これをどうすればスーツケース1個にまとめることができるのか。考える中で、1着で何通りにも着ることができる服があったらいいな、とか、商品のアイデアがどんどん湧いてきて。それが折り紙ジャケットの出発点にもなりました。

—ブランドをつくることは幼少期からの夢だったと聞きましたが、実際のコンセプトはガボンで初めて閃いたと。

おっしゃる通りです。今、僕が着ているダウンもそうで、ファスナーを全て開けるとケープになります。アフリカは特に昼と夜の温度差が大きく、そういうところからもアイデアが膨らみました。実は先日、5年ぶりにガボンに行って、洗濯機で洗えるカシミヤでつくったTシャツのテストをしてきました。海水に触れたらどうなるかな、とか。速乾といえばポリエステルが挙げられますが、カシミヤもけっこう速乾性があるんです。動物性の毛なので、ただ温かいだけじゃなくて、体温調整をしてくれるという良さもある。それって旅行に最適ですよね。ただ、カシミヤは破れやすいので、そこをアップデートしたものを今つくっているところです。

—ちなみに今日の桑田さんのファッションは、全身 SETCHU ですよね。

そうです。今日はかなり寒いのでダウンを着てきましたが、冬場の釣りはだいたいカシミヤのロングコートを着ています。これは実験も兼ねていて、たとえばこのパンツも100%カシミヤですけど、釣りで履くのは今日が初めてで。船の上で何度も膝をつきましたし、海水で濡れましたが、全く汚れて見えないですよね?

—確かに……我々はわかりやすく汚れているのに、桑田さんひとりだけ乗船時のままできれいに見えます。

ダウンジャケットのほうはちょっと汚れてしまいましたが、これは傘用の素材でつくっていて、脱いだ後にどれだけ汚れが落ちるか見てみようと思っています。という感じで、あえて高価なものを着て、いろんな環境下での耐久性を研究するようなことをいつもやっています。そうすればお客さんにも実体験としてきちんと説明できますから。納得した上で、旅行に持っていきたいと思ってもらいたい。

—折り紙ジャケットをはじめ、デビュー当初から継続しているアイコン的アイテムがあります。SETCHU にとって、シーズンごとのアイテムに対する考え方は?

個々のアイテムに関しては、急いで新しいものを出すつもりはないんです。日本にはいいブランドがたくさんあって認知度も高いですが、ラグジュアリーではないですよね。じゃあラグジュアリーブランドとして認知されるためには、何が必要なのか?というところを模索しながら今やっている感じです。若手ブランドの中で、我々のような価格帯でやっているところはまずない。圧倒的に高級衣料が多いですが、それだけではラグジュアリーではない。さらに何が必要かというと、旅であったり、趣味であったりに費やすことのできるお金と時間があるということ。本当の意味での裕福とは何か?について考えることが、ラグジュアリーにつながっていくと思っています。そういう意味で、我々がアップデートするのは、個々の商品というよりも、ラインアップという考え方です。SETCHU はファッションブランドではなく、ライフスタイルブランドとして、見えるものは全部デザインしたい。ゆっくりですけれど、家具も始動させています。釣具もデザインしたいです。焦らずにゆっくり、完成したら出す。というのをこれからも着実にやっていきます。

—釣りもラグジュアリーである。

そうです。釣りはゆとりがあってできることですから。ガツガツやるのではなくて、ゆとりを見せていくというのが、僕たちのアップデートと思います。いわゆる「超」がつくラグジュアリーブランドは、ずっと同じものをつくっていますよね。SETCHU でいうと折り紙ジャケットが当てはまりますが、フィットはそのままで、生地をアップデートするなど、つくりをどんどん良くしていっています。折り紙は角を完璧に合わせるのが難しいですが、それを我々は動く布で手づくりでやるわけで、ものすごく難しい。それを一緒にやってくださる工場と毎シーズン、どんどん極めていくというアップデートの仕方です。今あるものに感謝しながら、奥を深めていく方向に注力してやっていきたい。

フレグランスデビュー。注目は、アユの香り

—フレグランスもローンチしました。ファッションのフレグランスはブランド成功の証、と昔からよくいわれますが、SETCHU はデビュー4年目で早々に出してきた。めちゃくちゃ早いと思いました。

そうなのですか?確かにお金はかなりかかりますね。

—いつから計画していたのですか?LVMH の賞金を使ったとか?

実はブランドを立ち上げる時、香水で始めようと思っていました。釣り仲間で香水もつくれる方がいて、SETCHU を始める前から実際に相談もしていて。ただ、洋服ほど経験がなかったですし、業界に知り合いもいないし、お金もかかるしで、やっぱり洋服から始めました。

—なんと。サヴィル・ロウで経験を積んで、世界の様々なブランドを20年渡り歩いた末に、香水を?なぜ?

初めてロンドンに引っ越した時、国によって違う匂いにショックを受けたんです。同時にホームシックにもなりました。子供の頃、カセットプレイヤーで何度も同じ曲をかけていた、家族旅行の懐かしい景色が、その時パンと蘇ってきて。記憶を留める匂いっていいなと。ポエティックですし、目に見えない。それってラグジュアリーですよね。もともと自分で香水をたくさんつけていたわけではないのですが、香水に対して憧れは常にありました。

EAU DE PARFUM THURSDAY 1PM AYU

—先日、和光で香りを試してきたのですが、ハイエンドなメゾンフレグランスに引けを取らない完成度と思いました。MANE 社(マン/フランスの老舗香料メーカー)の Julie Masse (ジュリー・マッセ) が調香を担当したとか。しかも、最初のお披露目が Pitti Fragranze (ピッティ・フレグランス) だったとは、かなり本格的です。

よく勉強されていますね、ありがとうございます。洋服と一緒で、妥協は一切ないです。Julie さんは、Giorgio Armani (ジョルジオ アルマーニ) の香水ラインなどをつくられた方で、ピッティ・ウオモのゲストデザイナー選出がきっかけで出会えたパートナーです。ピッティのショーは、本番の2年ほど前から準備が始まったので、担当者とは何度も打ち合わせすることになるんですね。ある時、自然と香水の話になりまして、だったらピッティ・フレグランスにも行けばいいと誘っていただいて。恥ずかしながら、僕はその時まで、ピッティが香水でも有名だということを知らなかった。そこで何社も紹介していただいたうちのひとつが MANE でした。SETCHU のことを気に入ってくださって、お客さんにもなってくださって。「とりあえずお金の心配はしなくていい。つくれるかどうか、やってみよう。いいものができたら、助けてくれる人は絶対集まるから」とプッシュいただいて、具体的に動き始めました。運がいいことにチームワークに恵まれて、お互いにすごく納得できるものができました。そんな経緯から SETCHU は世界初のピッティ フレグランスの招待デザイナーとなり、発表に至ったわけです。

SETCHU PERFUME 5SCENTS

—理想的なパートナーシップですね。5種の香りでローンチしました。

アイデアでいうと、あと何百個もあります。香りの名前は、それぞれ曜日と時間がついています。それって、無限の組み合わせが考えられますよね。まだ火曜も日曜もないですし。SETCHU のフレグランスラインとして、今後も少しずつ発表していけたらと思っています。

—「Thursday, 1 pm」は、アユの香り。直球で SETCHU らしく、コンセプトとして革新的です。

魚をインスピレーションにした香りって、これまでなかったと思うので、業界や香水マニアの方に注目いただいています。並んで人気なのは、「Monday, 9 am」の玄米茶。「Friday, 2 am」は、アフターパーティーを畳の上で過ごす、ちょっとエロティックなムードで、これも好評です。

—アユは、透明感の中に甘さもあって、ラストはアクアティックで。全く魚臭さは感じませんでした。

アユって、もともと臭くないんですよ。苔を食べているので、釣りたてはウリ科の匂いがします、キュウリやスイカの皮のような。それをトップノートに「和」の要素として入れて、ボディとボトムには、南フランスの匂いを入れました。南仏の海の岩場には、エバーラスティングという黄色い花が咲くんです。その香りを「洋」の要素として加えて立体的に仕上げました。デザインも含めてかなりこだわっていて、業界の方からは、値付けを間違えていると指摘されるくらい。それでも高価な香水なのですが、SETCHU の世界観をいろんな人に楽しんでいただきたいので、がんばっています。

—ものづくりに関して、日本でのプロジェクトもありますか。

ちょうど今、日本製のジャケットをつくり始めています、素晴らしい出来栄えになっていて大感激です。僕は日本人であって、日本のブランドのレベルは高いですし、つくりたいものは山ほどあります。日本でしかつくれないものって、やっぱりあるんですよ。

—日本のテーラリングも SETCHU に合流しているのですね。

僕がサヴィル・ロウでつくっているコラボモデルの、廉価版のようなジャケットです。サヴィル・ロウでは1着作るのに、最低でも82時間かかります。SETCHU のモデルに関しては、さらに複雑なつくりなので100時間以上かかる。それに近しいものをイタリアでつくろうとしても、なかなか難しい。でも、日本の工場だったらできたりするんです。東北の工場から、うちでつくってみませんか? と声をかけていただいたことをきっかけに始まりました。それで今年は東北に何度か通っていたのですが、技術がすごくて、びっくりしています。

—サヴィル・ロウとイタリアン・クラシコに精通している SETCHU だからこそできる、まさに折衷的な進化となりそうですね。

はい。外側はイタリアで、中は日本の技術でつくられている、みたいな感じです。Tシャツやシャツなども、カテゴリーではなく、デザインの単位で考えて、これは日本のここでつくってみようかなというのは、いろいろ考えています。

—そろそろ品川に着きそうです。今日のカワハギ釣り、どうでしたか?

なかなか引っかからなくて、難しかったです。カワハギは実際、難しいんですよ。難易度を1から10でいったら、今日は10ですね。釣れなくて当たり前くらい。なので、ちょっと心配でしたが、釣れてよかったです。かなり寒かったですが、夏はアジとかサバとかを釣りに行くのも楽しいですよ。世界中いろいろ行っていますが、釣りは日本が一番です。大都会にいながら、1万円で船釣りができる日本はすごいと思う。日常からのスイッチになりますし、やっぱり仲間と一緒に過ごせるというのがいいです。またみんなで行きましょう。