土壌を耕すように「デザインとは何か」を問い続ける。デザインスタジオ OK-RM
OK-RM
photography: Yuichiro Noda
Interview & text: Runa Anzai
英語には「filling each other’s sentences」という表現がある。お互いの文章を完成させるという意味で、相手が途中まで言いかけた言葉を、もう一方が代わりに最後まで言うような状況を説明する言葉だ。ふたりの息があまりにもぴったりと合い、互いのことを深く理解し合っている関係性を表す言葉でもある。ロンドンを拠点とするデザインスタジオ、OK-RMの共同創業者であるRory McGrath(ロリー・マクグラス)とOliver Knight(オリバー・ナイト)の会話を聞いていると、まさしく互いの文章を完成させるような場面が何度もあった。
今回、ニューヨークと京都を拠点とするT.Tのウィメンズコレクションのローンチに合わせて制作された、書籍、映像、インスタレーションからなるエキシビション「IN THE BEGINNING WOMAN WAS TRULY THE SUN」の公開に合わせて来日したOK-RM。彼らにとってデザインとは、例えば写真集やポスターといった「もの」をデザインすることにとどまらず、それらを取り巻く背景や文脈、そこから生まれる体験や考え方までを含めて、ひとつの概念としてデザインしているように感じられるのだ。ひとりの言葉をもうひとりが受け取り、OKとRM、ふたりが持つさまざまな要素を掛け算しながら、唯一無二の答えを出していく。彼らの言葉から、その思考のプロセスを紐解いてみよう。
土壌を耕すように「デザインとは何か」を問い続ける。デザインスタジオ OK-RM
Design
― まずはお互いに自己紹介をお願いします。Rory は Oliver の紹介を、Oliver は Roryの紹介をしてもらえませんか?
Rory: 難しいね…。なんと表現したら良いかな。Oliver は、献身性、忍耐力があり、誠実さと意識の高さを持っています。また、注意深さや気配りをとても大切にしています。
Oliver: それ以上のことが言えるか自信がないのだけど…。Rory は、何に対しても意味を追い求める人です。常に世界を理解するための新しい方法を探し続けています。だからこそ、そこにはアイディアの進化や可能性の広がりが生まれるのだと思います。
― 先日、NONLECTURE books/arts でおふたりが主宰する出版プロジェクトIn Other Words の新刊「ILÉ AYÉ」の刊行記念トークショーが開催されました。当日は、Rory のみの登壇でしたが、その際に鼎談相手の佐脇礼二郎さんが「OK-RM はミステリアスな存在」だと言っていたのが印象的でした。デザインの哲学や思想について意図的に多くは語らないようにしているのでしょうか?
Oliver: 何をしているか、ということについては、比較的話していると思うのですが、具体的に何を作っているかについて話すことはほとんどありません。というのも、僕たちは、あるものが具体的にどう作られたかということよりも、その背後にある哲学や、世界を理解する方法について語ることが多いからです。今までもデザインそのものについてもっと話を聞きたいと言われたことがありましたが、僕たちにとってはそれよりもより大きな全体像について話すことの方が自然です。
Rory: コントロールできないものは、ミステリーの中に存在すると思います。そうでなければ、ミステリーというもの自体が成立しない。だから僕たちは、ある意味で、世界や文脈を信頼し、手放そうとしているのです。そしてその代わりに、僕たちの実践の土壌のようなもの、つまり、その根本にある原則に多くのエネルギーを注ぐ。そして、そこからは自然に育っていく成り行きに委ねるんです。
― 例えるならおふたりは農家ということでしょうか?
Oliver: そのようなものだと思います。
Rory: 農家であり、同時に土でもあるんです。だから、農家のように、土から生まれてくるものを大切に育てる一方で、その土自体がきちんと養われている状態を保つことにも気を配っています。
― 農家は、さまざまな種類の野菜の種を植えたり、土を耕したり、水をあげたり、天候を気にかけたりと、本当にやることが多いと思います。面倒を見なくてはいけない範囲が広いといいますか。
Rory: そうなんです。基本的に、僕たちの役割は、物事を大切に扱い、面倒を見ることなんだと思います。そこには、キュレーション的な側面もあります。例えば、目の前のアート作品など、題材そのものに問いを投げかけることもある。だから、必ずしもすでに存在しているものを守り、面倒を見るだけではなく、何に注意を向けるべきなのか、そして何を広げていくべきなのか、ということも考えています。
― おふたりは、大学で出会い、その後それぞれ別のデザインスタジオなどで経験を積んでから2012年に OK-RM をはじめられました。当時は、具体的な目標や目的はありましたか?
Rory: もちろん。
Oliver: 僕たちは、長いあいだ、ほとんど“練習”のようなことをしてきたんです。まだ自分たちが本当にやりたい仕事ができない若手の頃は、こういうものをつくりたい、というイメージだけは持っていたりしますよね。だから、スタジオをはじめて、仕事の機会が少しずつ増えてきた頃には、特に、カルチャーの領域で仕事をすること、そして、どちらかというとコミュニケーションより、アートやコンテンツの仕事に携わること、というビジョンがはっきりとありました。Rory はどう思う?
Rory: 僕たちはずっと、信じるひとつのモラルのようなものを守り、発展させ、思い描いてきたと思います。だから、自分たちは何を信じているのか、そしてどうありたいのか、ということを常に考え続けています。自分たちなりの美学をつくること、あるいは美的なイメージを思い描くことが目的ではありません。むしろ、どういうあり方で存在するべきかを思い描くことなんです。美しさは後から付いてくるはずですし、美学などのアウトプットを気にしすぎて、それに向かって仕事をしようとすると上手くいかないんですよ。
Oliver: 僕たちは、ある意味アイディア同士の二元性のようなものを大切に仕事をしています。あるものと、それとは対照的なものを組み合わせる。そして、それらを融合させることで、そこに緊張感が生まれる。それが、興味深い美学につながるんです。
― アートディレクションをするときに、ムードボードやカラーパレット、デザインの方向性などを資料にまとめて提案すると言うのが通例ではあると思うのですが、おふたりの話を聞いているとそうした資料ベースのやり取りよりも、よりディスカッションやブレインストーミングをするような時間が重要視されているように感じます。
Oliver: デザインのような具体的な形についてのリサーチというよりも、コンセプトの部分ですよね。
Rory: 僕は、そこで大切なのはつながりだと思います。物事の宇宙観というか、過去や現在に存在するものの中から、自分たちがつながりを感じるものを見つけていく。ただ、あらかじめ方向性を定めすぎて、そこに自分たちが入り込みすぎないように、注意する必要があります。
Oliver: 僕たちは、最終的にどのようなアウトプットにするのかを最初から細かく決めすぎないようにしています。たとえば、今回のT.Tとの取り組みでも、具体的にどのような映像や写真集になるのかを事前に決めていたわけではありません。おおまかなアイデアはありましたが、その日に起こることを、自由に受け入れるんです。
― 撮影当日にですか?
Oliver: そう。
Rory: 完全にそうですね。
Oliver: その場で、衝動的に、そして直感的に物事が決まっていくんです。もちろん、何を撮影する必要があるのかをまとめたリストはあります。でも、具体的にどういう完成系になるのかについては、本当にその場で。
― 現場で写真家や映像作家などのコラボレーターにも創作の自由を委ね、一緒に作り上げていくというのは良いですね。誰かと一緒に作品を作り上げる面白さも実感できると思います。おふたりはデュオとして活動されていますが、ひとりではなく、ふたりだからこそできることがあると感じますか?
Rory: ひとりで仕事をするというのは、幻想なのではないかと思います。むしろ、フラストレーションを生むだけなのではないかと。結局、人はどこまで行ってもひとりなんですよね。だから、その“ひとり旅”を少しでも孤独なものにしないために、僕たちは一緒にいるんだと思います。たとえばギリシャ哲学の考え方を借りるなら、ロゴスのように世界をどう理解するのかという感覚、あるいは自分にとっての神や意味のようなものを築いていく。 そして、「なぜ自分たちはこのプロジェクトをやっているのか?」、「これは一体何なのか?」、という問いの時間を持ち続けるようにしています。そうすると、最終的には「このプロジェクトを通して何をしたいのか、伝えたいのか?」という問いの答えに自然と辿り着くことができる。この対話のプロセスはふたりでいるからこそできることだと思います。
Oliver: そうだね。それによってアイデアがより早く進化していくのだと思います。それに、あるアイデアが行き過ぎているときや、逆にまだ足りないときに、お互いに指摘することができる。基本的には、ちょうどいいところ、中間地点を見つけるんです。
― おふたりの実践のほとんどが対話なのではないでしょうか?
Oliver: そうですね。ほとんどが対話です。ふたりが常に同じ方向を向いている必要があるので。
Rory: 僕たちは、スケッチのような準備はしないんです。先ほど話したように、意味を通してものを組み立てていくような仕事を心がけています。そして、まだ準備ができていない段階で先を見すぎることで、その先の可能性を潰してしまわないように注意しています。大切なのは、アイデアで遊ぶこと。そして、これから生まれてくるクリエイティブの邪魔になるものが、何も入り込まないようにすることなんです。
Oliver: 例えば、『IN THE BEGINNING WOMAN WAS TRULY THE SUN』の書籍の中にテキストを中心としたページがあるのですが、こうしたページを入れるときに「こういうデザインにしたらどうだろう?」というようにアウトプット優先では考えません。
Rory: そもそも、このテキストを書籍に入れるかどうかも最初から決まっていたわけではありません。でも、素晴らしい脚本が上がってきたので、これを読者に共有することに意義があるという議論になりました。そして、幸運なことに、この脚本は、僕たちがデザイン的に求めているタイポグラフィックな要素でもあった。とても自然な流れです。
― T.T との取り組みがはじまり、6年が経つそうです。T.T とのコラボレーションはどのようにはじまったのでしょうか? また、今回お披露目された『IN THE BEGINNING WOMAN WAS TRULY THE SUN』についても詳しく教えてください。
Oliver: 大きなアイデアとしては、3年前に取り組んだ T.T の哲学を紹介するムービーをさらに発展させるというもので、ウィメンズコレクションのローンチに合わせて始動したプロジェクトです。今では、ウェブサイトやビジュアル面なども含めて、T.T 全体のアート・ディレクションに携わっています。
Rory: T.T のチームからは、時間をかけて、徐々に層が重なっていくようなプロジェクトにしてほしいと言われていました。さらには、直接的ではなく、代わりにミステリーを提示するような作品をつくってほしい、と。
Oliver: それから、T.T の精神的な本質にも触れるようなプロジェクトにしたいという目的もありました。
― こうした依頼もクライアントとの対話の中で自然と生まれるものなのでしょうか。T.Tのものづくりには、「応用考古学」という考え方がありますよね。過去のものを甦らせることで、未来の考古物を発掘する。つまり、古い服のなかに眠る形と知恵を掘り起こし、現代へと甦らせるという考え方だと思います。そうした思想は、コラボレーションにおいて、時間の積み重ねや共有してきた経験を大切にするという考え方にもつながっているように感じます。
Oliver: 面白いことに、この前ちょうど T.T とのプロジェクトが始動した時のタイガのインタビューを読み返していたんです。引用しましょうか。
Rory: 僕が読もうか? 彼はこう言いました。「日本庭園のようなもので、作ったら終わりではなく、完成を見るには50年、100年と待つ必要がある。OK-RM との取り組みが結実するまでも、同じだけの時間がかかる」。
Oliver: 当初から、常に反復しながら発展していくものとして考えていたんですよね。つまり、完成させるものではない。時間が必要なんです。どこかにたどり着くためには、アイディアや経験が進化していく必要がある。そして、時間が経ってから振り返ることで、はじめてそれを理解することができる。
Rory: 理解するだけではなく、最終的には、関係性をつくることも重要だと感じます。なぜなら、現実というものは、関係性によって成り立っているからです。何かが存在しようとするなら、そこには現実がなければならない。そして、その現実というものは、関係を持つことによって初めて積み上げられていくのです。そうでなければ、まるで手のひらからすり抜けていくように、存在しなくなってしまう。
― 単発の仕事ではなく、長期的にコラボレーションをすることについて、クライアントにリクエストをすることはありますか? あるいは、長期的な関係性に何を見出しますか?
Rory: そういうことをリクエストするわけではないんです。例えば恋人に「この関係を長く続けたい」とあらかじめお願いするようなものに似ていますよね。そんなことを言ったら、おそらく長くは続かない。むしろ、すぐに終わってしまうと思います。実際、何かを長く続けたいと思うなら、それに対する確信が必要です。そこにはある種の無理なく続けられる……
Oliver: ……楽しくて、面白いプロセスをつくらなければならない。予想外のことが起きたり、変化し続けたりするようなプロセスです。
Rory: 正直、単発の依頼だけを受けるのはあまり好きではありません。ときどき、自分たちが“使われている”ように感じてしまうんです。だから、できれば少しでも長い関係性を築けたら良いと考えます。でも、それが実現するかどうかは、もちろん事前にはわかりません。たまたま、そうなることの方が多い。でも、どんな関係もいつかは終わる。だから、結局いつも寂しい気持ちになるんですよ。
― 同じく、NONLECTURE books/arts のトークショーで Rory が「何をしないかをデザインすることも、アートディレクションの一部だ」と話していました。デザインにおいて何をするべきで、何をしないべきかということは、どのように決めているのでしょうか?
Rory: 多くは、直感です。僕たちはふたりとも、それぞれのやり方で、かなり世渡り上手というか、スマートで、起業家精神もあると思います。何をすべきかを判断するのが、得意な方です。たとえば、キャンプに行ったとして、何をすればいいのかわからなくて途方に暮れるようなタイプではない。臨機応変に対応できる。それが助けになっているんだと思います。
Oliver: それと、その時々で自分が興味を持っていることを探求する、ということも大切です。興味を追いかけていけば、「これをやろう」、「あれをやろう」と決めることも簡単になる。ある意味、それが自分たちの進むべき方向を定めてくれるのです。
― 自分の直感に従ったり、言葉ではうまく説明できないようなことを判断するためには、ある種の経験の積み重ね、あるいは、自分の中にある知識やリソースの蓄積が必要なのではないでしょうか。
Rory: 確実に。それは、何か“もの”をつくるときに必要な意識のひとつなのだと思います。たとえば、写真集をつくる場合、印刷会社に10種類も異なる仕様を試してもらい、そのたびに気が変わる、なんてことはできません。そんなことをしたら、印刷会社を疲れさせてしまうし、最終的には二度と仕事を受けてもらえなくなる。でも、相手が疲れているということは、実際に仕事を受けてくれなくなってはじめてわかるんですよね。そうなる以前に気づかなくては、自分たちがやりたいことの可能性そのものを危うくしてしまう。だから、やりたいことを整理しておく必要があるし、意思決定に対して自信を持たなければならない。それは、何をするか、しないか、という判断においても一緒です。
― OK-RM のウェブサイトのステートメントの中で、「デザインはコミュニケーションのひとつの方法だ」と書かれていますよね。デザインを通して伝えることが、特に難しいと感じるものはありますか? 逆に、デザインだからこそ伝えるのに適しているものはありますか?
Rory: 僕たちは、デザインは基本的には幅広いことを扱えると考えています。というのも、デザインは客観的なものではないですよね? 僕たちが考えるデザインの範囲であれば、ほとんどすべてのものを形にすることが可能だと思います。ただ、言葉にできないものや、詩のように明確に説明できないものを扱うことは難しいと感じます。
Oliver: 僕たちは、自分たちの実践についての本『A MEANINGFUL ORDER by OK-RM』を4年かけて制作し、2025年に出版しました。このプロジェクトを進めている途中、何度かデザインすること自体が不可能なのではと思い、ほとんど諦めかけていたんです。でも、最後までやり抜いてみると、最終的には道筋が見えてきた。この経験から基本的にはどんなものでもデザインすることが可能だと感じられるようになりました。
Rory: デザインする難しさも含めて、プロジェクトの一部。簡単なプロジェクトだとしたら、僕たちは楽しめなかったと思うんです。
― 出版プロジェクト In Other Words についてもお伺いしたいと思います。2017年に出版された『Disobedient Body』というジョナサン・アンダーソンがキュレーターを務めた展覧会の図録がありますよね。おふたりの手がけた写真集の中でも私が特に好きなもののひとつです。はじめてこの写真集を手に取った時、写真を“見る”というよりも“読む”という感覚が強く印象に残りました。写真を“読む”という感覚は、おふたりが手がけたその他の写真集を見ていても感じることがあります。写真集をデザインする際に、写真を“読む”という感覚を意識することはありますか?
Rory: 写真を“読む”というのは良い表現ですね。
Oliver: そうですね。僕も好きです。つまり、写真を本当の意味できちんと見るということですよね。もちろん、ページをぱらぱらとめくって見ることもできますし、本の中を行ったり来たりすることもできます。でも、僕たちの本の中には、ひとつのページをじっくり見ることで、そのページから次のページへと繋がっていくイメージ同士の関係をより明快に追っていくことができるものが多いと思います。
Rory: DJ をすることにも近いと思います。僕たちは大学で出会った頃、ふたりとも DJ をしていました。今でも、音楽は僕たちのカルチャーの一部で、ひとつの没入感のある体験を、いくつもの要素をつなぎ合わせながらつくっていく、という感覚があります。昔誰かに「DJ には必ずダンサーが必要だ」と言われたことがあります。そして、僕はそのダンサーが写真集で言うところの読者なのだと考えます。曲から曲へとつないでいきながら、一貫性や没入感を持続させたいのであれば、相手のことを深く理解し、共鳴しなくてはならない。写真集のシークエンスも似たような考え方ができると思います。リズム感やペース、そして予感や驚きも大事です。そして、なぜなのかは完全にはわからないけれど、それでも先へ進みたくなるような感覚も大切です。
― 今後、学校など、教育のプロジェクトを行う予定があると聞きました。どのような活動をされるのでしょうか?
Rory: 教育というよりも、 “インキュベーター”に近い活動です。まず、OK-RM がこれまで行ってきた数多くのプロジェクトは、教育的なものだったと考えています。たとえば、2021年から2024年まで行っていた Goldwin 0とのプロジェクトや、今回の T.T とのプロジェクトも教育的な要素を持っています。『IN THE BEGINNING WOMAN WAS TRULY THE SUN』の中には、リラ・マツモトが書いた脚本が入っていますが、それを書籍に組み込んだ理由のひとつは、このプロジェクトの制作過程を見てもらいたかったからなんです。僕たちは、この“インキュベーター”を「Entity」(英語で実体、存在の意)と名づけ、将来的には学校へと発展させたいと考えています。目指しているのはこれまでにやってきたよりもさらに深く、デザインを通して、「意味」がどのように生まれるのかを考えることです。そして、デザインを“自分の身体に取り込んでいくもの”として考えること。つまり、外側に向かって何かを強く押し出すものではなく、むしろ育てていくものとして捉える、ということなんです。
― 育てていく、ですか。
Rory: はい、その上で“わからないこと”がキーワードになると思っています。このプロジェクトには、哲学者や人類学者、建築家、出版関係者、振付家など、さまざまな背景を持ったチームが集まっています。そして、その全員が“わからないこと”に興味を持っているんです。だからこそ、自分たちも“わからない状態”でいるべきだと考えています。無責任に聞こえるかもしれませんが、実はとても大切なことなんです。しかし、“わからないこと”について、誰かに説明し、納得してもらうのは、簡単ではないんですよね。
― ましてや、それを実現するための資金を集めるのも。
Rory: そう。でも、これからは、このようなプロジェクトがより一層増えていくと感じます。高級車や高級ブランド品を買うことよりも、誰かと深い関係性を気づき、クリエイティブなプロジェクトを実現することの方がより大きな価値がある。人類にはクリエイティビティが必要で、これからは創造性に対する投資が、増えていくと思うんです。少なくとも僕たちの周りでは「これって本当に必要なことなの?」と問われることは、以前よりずっと少なくなっています。
― なぜ、このタイミングで教育的なプロジェクトをはじめることにしたのでしょうか?
Oliver: 『A MEANINGFUL ORDER by OK-RM』を制作する過程で、自分たちの活動についてより深く理解することができました。この本は、作品を見せたり、活動を宣伝するというよりも、自分たちの考えを共有するという意味では、教育的な役割が強くありました。
Rory: なぜなら、現時点では、僕たちを教育から遠ざける要素があまりにも多いからです。テクノロジーは暴走しています。家父長的で、極めて男性的な、客観的な世界観は、結局のところ、僕たちと世界や、自然とのつながりを破壊しつつあります。実際、それは人類を破滅へと追いやっているのです。だから、今この瞬間にこのプロジェクトをはじめることが極めて重要だと感じます。これは未来の話として先送りできるようなことではありません。目の前にいる巨大なドラゴンを倒すために何ができるのか? 私が考える唯一の方法は、多くの人に別の道を示し、今よりもより良い世界があるのだと、それを望んで良いのだと感じさせること、インスピレーションを与えることだと考えます。
― 同じ目的を持った人たちが集まる、コミュニティを作るようなイメージでしょうか?
Rory: コミュニケーションを取るというのは、まさしくコミュニティを作るということなんですよね。コミュニケーションとは、人と人をつなげ、新たな関係性を築いていくことなのだから。













