ADDICTION (アディクション) クリエイティブ ディレクター、AYAKO (アヤコ) インタビュー
Ayako
トレンドに頼るだけでなく、ひとりひとりが好きなファッションやメイクを楽しむようになった現代。様々な個性が溢れるなか、人々が今追い求めるのは、革新的な創造性を持つクリエイターやアーティストだ。ニューヨークを拠点に、海外ファッション誌のカバーや、大手ブランドの広告キャンペーン、ファッションショーなどでメイクアップ・アーティストとして活躍してきた AYAKO もまたその一人。
ADDICTION (アディクション) クリエイティブ ディレクター、AYAKO (アヤコ) インタビュー
Portraits
トレンドに頼るだけでなく、ひとりひとりが好きなファッションやメイクを楽しむようになった現代。様々な個性が溢れるなか、人々が今追い求めるのは、革新的な創造性を持つクリエイターやアーティストだ。ニューヨークを拠点に、海外ファッション誌のカバーや、大手ブランドの広告キャンペーン、ファッションショーなどでメイクアップ・アーティストとして活躍してきた AYAKO もまたその一人。2009年にスタートしたコスメブランド ADDICTION (アディクション) では、クリエイティブ・ディレクターとしての手腕を発揮し、繊細かつドラマティックなカラーと、肌馴染みのよいテクスチャーで、モードな世界観を表現し人気を集めている。
昨年の秋は「TOUGH LOVE (タフラブ)」をテーマに掲げた「THE EYESHADOW (ザ アイシャドウ)」を発表し、ベージュやブラウンといったベーシックなカラーから、濃淡で差異を出した絶妙なカラーまで、AYAKO ならではの世界観を99のカラーバリエーションで表現した。今年の秋はどんなコレクションで私たちを魅了してくれるのか。そんな期待を持ちつつ、ニューヨークから一時帰国した彼女に新コレクションのコンセプトや発表に至るまでの経緯について話をきいた。
— ADDICTION では毎回、旅をテーマにしたコレクションを打ち出していますが、今回の旅の舞台は?
新しいコレクションを思考する時は、毎回ゼロからのスタートなので旅をテーマに掲げることで、今の ADDICTIONにないキーワードやカラー、たくさんのアイデアが見えてきます。
秋のコレクション、LIPSTICK PURE(リップステック ピュア)は、「北欧への旅」がテーマです。それこそ1年前のテーマは「TOUGH LOVE」で、とにかく NY でパワフルに生きる女の子のイメージでしたから、ある意味 ADDICTION らしい部分でもありました。でも、一人の女性の中にもいろんな顔や感情があります。毎日、強いわけではなく時には憂をおびたような日もあるでしょう。そんな女性ならではの気持ちを、霞みがかったようなあえてはっきりしない色、なんとなく気だるい色として HAZY (ヘイジー) という、言葉で表現してみました。そして、このアンニュイなカラーを求めて旅に出かけるとしたら、いったい何処なんだろうと考え、行きついた場所が北欧だったんです。どんよりとした曇り空や、どこか懐かしいようなサイレントな空間、そうやって北欧のキーワードを探しているうちに、今回のインスピレーション源となったフィンランドの画家、Helene Schjerfbeck (ヘレン・シャルフべック) が描いた一枚の肖像画に出会いました。
— その肖像画に出会った馴れ初めと、はじめて観た時の気持ちを教えて下さい。
北欧をテーマに、いろいろ調べている中で、Helene が描いたある作品を見つけました。大きな瞳と白い肌、淡い髪色で全体的にドンヨリしたヘイジーな色調に、はかない印象を受けました。この作品をインターネットで見た瞬間、「これだ! この絵に会いに行こう!」とひらめきました。ただ、この作品に関してはどこに展示してあるのか検討もつかず、探しているうちにフィンランドの美術館に彼女の作品が所蔵してあることがわかり、さっそく問い合わせましたが肝心のこの1枚は展示していないとのことでした。こうなってくると、余計にその作品が気になってきてしまうものなんです。それからも、美術館の方とメールでやりとりをしているうちに、「あなたがこの美術館に来られるのであれば、この作品を出してお観せすることも可能です。」とおっしゃって頂いたんです。その頃、ちょうどパリにいたのでフライトをかえてフィンランドに行くことにしたのですが、その絵以外の彼女の作品のほとんどが日本で開催される展覧会に出てしまい、来年まで戻ってこないという知らせをうけました。すごくショックでしたね。でも、3月末まで日本で展示されているということだったので、今年のお正月に観に行くことができました。極端に言うと、世界的に有名な作品を見るよりも気持ちが高揚しました。自分が追い求めていた彼女の作品を生で見られることは、会いたかった人に対面できたような気持ちでしたね。いつか、今回のコレクション源となったあの1枚にも必ず会いに行くつもりです。
— 新作コレクションの発表会では、まさに美術館を思わせるようなディスプレイが印象的でした。やはりこれも一枚の肖像画との出会いからインスピレーションを受けたのでしょうか?
コレクションビジュアルを額縁に入れたり、暗い部屋での映像のインスタレーション、コンセプトをプロフィールのように展示したのは、Helene の作品を意識したからです。化粧品の発表会だけれど、美術館に行って作品を見ているような気分になるような空間作りを演出しました。一枚の肖像画がきっかけでフィンランドの美術館や、そこでいろいろ情報を教えてくれた人など、このコレクションを発表するまでにいろんな出会いと過程がありました。それをみなさんに体感してもらいたいという気持ちが、美術館というキーワードとしてカタチになりました。想像以上のプレゼンテーションができたと思っています。たった一枚の肖像画からはじまった、まさに ADDICTION の新たな旅のストーリーです。
— Helene Schjerfbeck が描くアンニュイな女性像は AYAKO さん自身、もしくは女性なら誰もが持ち合わせている部分なのでしょうか。同シリーズのTHE EYESHADOWの色合いもどこか物憂げな印象を受けます。
ブルーのようなグレーのような…はっきりしない色合いのムードって女性なら共感できますよね。赤なのか白なのか、そういうハッキリしたものでなく、日曜日の午後、雨が降ってる…みたいな気分を HAZY というあえて曖昧な色で表現しました。女性ならアンニュイな部分は誰もが奥にあるものだと思います。6色のTHE EYESHADOWは、北欧の物憂げなランドスケープを私なりに想像したものです。かすみがかった風景画のような、ノスタルジーでどこかHelene が描く色調にも似ています。絵画のような色彩の構成で、何十にも色を重ねています。1つ1つ異なる仕上がりなので、見た目にも楽しいコレクションになっています。
— 常に新しいクリエイションで、新作を楽しみにしている女性が多い中、9月2日に ADDICTION 初となる、OIL CLEANSING ADDICTION (オイルクレンジング アディクション) が発売されます。スキンケアアイテムを発表しようと思ったきっかけと完成するまでの経緯を教えて下さい。
これにはすごく時間をかけて商品化しました。スタートから2年以上は経過していると思います。開発を繰り返しながら途中、何度もギブアップしそうになりましたしね。それだけ妥協を許さずに思考を重ねて仕上げたものです。クレンジングは必要な油分まで奪ってしまうので洗った後、肌につっぱりや違和感を感じる女性が多いと思います。
OIL CLEANSING ADDICTION は、厚みのあるまろやかなオイル(ペースト状のオイルに粘度や厚みの異なるオイルを繊蜜に計算した新フォーミュラ)と、分子量の小さいオイルを配合しているので、スピーディーでキレのある洗いあがりが実感できると思います。7種類の植物オイルも配合しているので、あと肌もスキンケアしたみたいな潤いを感じることができます。W洗顔が不要というのもポイントです。肌への負担の軽減とバランスを駆使しているので、何回が使用してリピートして頂きたいですね。
化粧を落とすという最後のプロセスとして、ストレスなく気持ちよく美しく、メイクからオフするまでが ADDICTION のひとつのストーリーと考えてますから、今後もスキンケアアイテムには力を入れていきたいですね。できれば、フェイスマスクやセラムなども商品化できればいいなと思っています。
(若い世代のクリエイターとファッションショーで仕事をすると) ショーも見ずに、道具を片付けて帰ってしまう。
— AYAKO さんは商品開発はもちろん、常に海外の第一線でハリウッドセレブや、一流フォトグラファー、ブランドのクリエイティブ・ディレクターとお仕事をされてきています。そこから学んだものや、海外で日本人が活躍するために必要な条件を教えて下さい。
NY に夢を追いかけて渡米する人は日本人いがいにもたくさんいます。それだけたくさんのライバルがいる中だと、メイクアップ技術や感覚を研ぎ澄ますのはもちろんのこと、常に意識をして相手が求めるものや状況を察知しなければいけません。アンテナを張り巡らせて提案する引き出し、それこそ毎日が切磋琢磨な状態なわけです。
でも、最近はその様子が少し変わってきたようにも思います。若い世代の方たちに、あまりパッションを感じないことがあります。たとえば、ファッションショーでメイクアップが終わると、ショーも確認せず、道具を片付けて帰ってしまったりとか。彼らからすれば「僕たちがやった仕事はもう終わってますよね?」という感覚みたいです。でも、メイクアップを施して衣装を着たモデルがランウェイに立った時こそが、その仕事に命が生まれる瞬間ですし、一緒に仕事をしたスタッフと感動を分かち合える場だったりします。世代によって価値観が異なるのは当然ですが、少し残念な気持ちになることがあります。ただ、時代も変化しているので一概に頑張ればいいというものでもなくなってきています。でも、やり方は異なっても成功するうえで大事なものは変わりません。今までになかったものに挑戦する気持ちとパッション、そして恐れないことです。
ADDICTION 問い合わせ先/0120-586-683
HP: www.addiction-beauty.com