Masahiro Higashide
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俳優・東出昌大インタビュー

Masahiro Higashide

Portraits/

モデルとしてキャリアを積んだのち、2012年に公開された『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。その後4年の間に連続 TV 小説、大河ドラマ、映画にと精力的に出演するなど、東出昌大 (ひがしでまさひろ) にインタビュー。

俳優・東出昌大インタビュー

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

実直でひたむき。そんな言葉を体現しているかのような俳優、東出昌大 (ひがしでまさひろ)。モデルとしてキャリアを積んだのち、2012年に公開された『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。その後4年の間に連続 TV 小説、大河ドラマ、映画にと精力的に出演し、作品を追うごとに俳優として深みを増してきた。そんな東出が今回挑戦するのが、世界中で大ヒットを巻き起こした『デスノート』の続編『デスノート Light up the NEW world』だ。前作の誕生から10年が経ち、6冊のデスノートが舞い降りた人間界で、さらなる混乱と壮絶なバトルが繰り広げられる。東出はデスノートを追う捜査官、三島創役として作品を引っ張っていく存在。そこに L の後継者・竜崎役の池松壮亮、夜神月を崇拝するサイバーテロリスト・紫苑役の菅田将暉が加わり、複雑にからみあう三つ巴の頭脳戦が展開される。東出を抜擢した佐藤貴博プロデューサー曰く「攻撃的でエキセントリックな2人に翻弄されながら物語を牽引する、ある意味 “受ける” 力が若手俳優の中で抜群」。そう言わしめる東出に、本作に対する意気込み、俳優業について聞いた。

—  『デスノート Light up the NEW world』は、俳優デビューへのきっかけとなった『桐島、部活やめるってよ』の佐藤貴博プロデューサーと再びタッグを組むことになりました。最初に話が来た時はどのような思いでしたか?

佐藤さん (=佐藤貴博プロデューサー) に声をかけていただいて、まず頭によぎったのは、恩返しをしたいということ。デビューのきっかけを作ってくださった方に成長した姿を見せて、感謝の気持ちを伝えたいと思いました。佐藤さんは日本テレビ映画部の第一線で活躍されていた方なのですが、実は本作で今の部署を離れてしまうので、これが最後の映画作品になります。なので、絶対にいいものにしたいな、と。

佐藤プロデューサーへの思いも強く重なって本作に挑まれたと。デビュー作は小説を元にした映画でしたが、本作は漫画、映画、その後ドラマ化も果たし、世界的にもともに圧倒的な人気を誇る『デスノート』の続編です。とはいえ、これまで誰も観たことのない世界で、オリジナルのキャラクターを作り上げることになりましたが、ご自身の役作りはどのように行ったのですか?

本作の台本以外にも、三島の過去が詳細に描かれた結構な量の準備稿がありました。上司を殴り、窓際と言われるデスノート対策本部に飛ばされるのですが、そこで捜査官として才能を発揮することになる。そういう過去の部分も含めてキャラクター設定が詳細に描かれていたので、そこもしっかりと役になじませて本作に挑みました。

東出さん演じる捜査官の三島はデスノートを使う人間ではなく、追う側の人間です。脚本を読んでご自身の役柄についてどのような印象を受け、また役を演じる上で意識したところはありますか?

三島はゆるぎない正義感をもち、清廉潔白ゆえに許せないものは許せない。世界的名探偵の竜崎やサイバーテロリストの紫苑が相手を欺こうと計算して立ち回る中で、三島は比較的、感情を表に出すキャラクターだと思います。それに竜崎、紫苑とは違って、組織の中の人間なので、組織の意思というものを前提に動いているのが特徴かなとも。紫苑は世を撹乱するため、竜崎はそもそも組織に頼る気もなく、独立独歩に捜査を進める。そうすると三島は一番常識人のように写るし、観客の目線にも近いところにいるのかな、と。

なるほど。組織の中の人間という意識が常にあったということですが、デスノート対策本部の方達をはじめ、共演者の方たちとは「部屋飲み」をして、結束を高めたとも聞きました。

「部屋飲み」は映画の現場ではよくあることで、今回は池松くんから声をかけたのが最初だったように思います。クランクインした頃から、遅かれ早かれいつか飲むだろうという感じていましたが、あんなに毎晩になるとは(笑)。しかも、毎晩僕の部屋で集まって、散々散らかしていくんです。翌日、早いときは空気を読んでさっと切り上げてはくれましたが (苦笑)。

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

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それは大変でしたね  (笑)。ただ、そういう部屋飲みがあったおかげで作品作りにもいい影響があったのでは?

そうですね、その日の撮影が終わればみんな素の顔になって、芝居の話をしたり、反省したり。「この部分どう思う?」と解釈を求めたり。そこでの会話が自分の役作りに少なからず影響していたと思いますが、でも、それ以上に純粋に楽しんでいた部分がありますね。部屋飲みがあったからこそ一人一人、映画との向き合い方が深まった。この映画は「一人で引っ張る」とか「誰かが引っ張ってくれる」ではなくて、みんながみんな、一緒に映画を作っていくという意識がすごく働いていたと思いますし、カメラが回っていないところでそういう団結力が培われ、いい仕上がりになったと。

特に思い出深いシーンはありますか?

池松くんと言葉の上で相手を威圧したり、押したり引いたりしたシーンは演じていてとても楽しかったですね。その瞬間にしか生まれないものが生まれたな、と思う印象的なシーンがあります。実はそのシーンを演じる前に、僕は監督に「こう思う」と自分なりの解釈を伝えていたのですが、池松くんはそれとは正反対のことを言っていたようで。でも、監督はそれぞれにこういう意見があるとは何も言わずそのまま本番にいったんです。お互い反対のことを言っているのだから、撮影中に見事にぶつかって。あわや一触即発、という状況になったんです。

というと?

台詞がないところで「テメェ、なんだよ。おい、殴れよ」みたいになって。そうすると「こっちも」って手が出そうになったところで、あわてて共演者が止めに入るという。

それはまったく台本になかったのでしょうか?

はい。でも、そのアドリブで発生したシーンが本作でそのまま使われていますよ (笑)。そのシーンを撮った夜の部屋飲みでは「いや、今日本当に際どかったね」という話になって。「俺、手が出そうになったよ」って話したら、「実は手出されたら、役を降りようと思っていた」って彼が言ってて。それくらいギリギリのところで演ってたんだなって。お互い本気でぶつかったから、あの瞬間にしか生まれないものシーンになったと思いました。

そのシーンがどこなのか、意識して観たいですね。それでは本作から少し離れて、俳優業についてお聞かせください。東出さんはモデルとして雑誌やコレクションを中心に活躍されていたわけですが、当時は「俳優」というものにどのような印象を抱いていましたか?

当時は自分が俳優になるなんて思っていなかったですね。きっとすごいことをやっているんだろうなって漠然と思っていました。実は、モデルのオーディションで一緒になった高良健吾とは16歳の頃から仲が良くて。彼はすぐに役者へ転向したのですが、お互い同じ年月を経ながら、僕はモデルしかやってなかった。高良は芝居をやっても良いし、ときどきモデルの仕事にも来るんですよ (笑)。『Men’s fudge』の表紙やったりとか。当時、自分はファッションの世界で第一線でやってるつもりなのに、高良はたまにモデルの仕事にも来るんで、それがすごく悔しかった。でも、それだけ特別なことをやっているんだろうなって。そう思っているうちに、自分も俳優の世界に足を踏み入れて、そこで改めて高良健吾の凄さを知りました。

どういうときに「こんな凄いことをやってたんだ」と感じたのでしょうか?

俳優とモデルの共通点を挙げる方もいますが、僕は逆にないと思っていて。モデルやファッションの仕事は基本的に、服ありき、なんです。スタイリスト、フォトグラファー、編集者が100点を決めて、そこにあとからモデルがキャスティングされる。現場では「これが100点だろう」とみんなが望む点数に近づけていくのがモデルの仕事なんだと思います。でも、俳優は台本を渡されて「お前、考えてこい」という世界。自分の演技によって10点にもなれば1000点にもなる。100点だからいいということは決してないですね。台詞もあるし、動きもある。モデルの仕事と比較するのは全然違うな、と思います。それを『桐島、部活やめるってよ』のとき痛感しました。そして役者という職業にぶつかって、ふっきれたのは『クローズEXPLODE』だったなと。

『クローズEXPLODE』が分岐点になったというのは?

今思えば『桐島、部活やめるってよ』の時、吉田大八監督はよく使ってくださったなと思っているんです。僕は吉田監督の意のままに動いて、台詞をしゃべって。動きもぎこちなかったし、正直、何をやってるのかわからないまま終わってしまったという印象でした。そのあと、本腰を入れて役者になろうと決意して、俳優の事務所に入り、レッスンに通いました。それから決まった大きな作品が『クローズEXPLODE』だったのですが、現場に行ったら台詞は毎日変わるので、それが衝撃で。それまでは自分の頭でっかちな知識で「台詞から役の解釈が深まるのに」と思っていたので混乱しました。そんな独りよがりの考えや、人から聞きかじったことでいっぱいいっぱいになっていたんですね。そうやって最終日間近になって、監督に意を決して「台詞ってなんですか」って聞いたら、「それが台詞だ」って言われたんです。

というと?

自分の中から出てきている疑問や言葉。これが台詞なんだって。だから、台詞は「言えばいい」じゃないし、「言われた通りに動けばいい」じゃないってことなんです。そんな風に、お前、自分で考えろって痛感させられたのが『クローズEXPLODE』です。そこからはもう濁流のようで。あれがいいのか、これがいいのかと迷い、もがき、苦しみながら必死でこの4年間やってきました。そうする中で、今、ようやっと演じるということがほんの少しずつわかってきたという感じです。だから、これからも地に足をつけて、必死にもがいて、俳優として生き残っていきたいなと。

モデルの仕事は100点に近づける仕事、俳優は10点も1000点にもなる仕事、とおっしゃっていましたが、演じた後、今日やりきったなと思う瞬間はありますか?

自分で「これはよかったな」と思っても、人から見られたときにそれが必ずしも同じじゃない、というのが俳優業のおもしろいところでもあり、難しいところでもあります。ただ、自分の演技で1つの指標にしているのが事務所の社長です。最近になってようやく、映画の上がりをみて「やったな」と軽い言葉をかけてもらえるようになったので、そこでは成長しているのかなと感じられるようになりました。そういう近しい人の一言は物差しになりますね。それと、自分でもある程度は出来不出来は線引きをするのですが、結局のところ、観ていただいた方の評価というか感じるところに委ねています。ストーリーがどう転ぶかわからない状態で観て楽しんでもらって、真価をつけてもらうのが当たり前というか。演じる側の人間が出来不出来はつけられないかな。

これまでにもドラマや映画などさまざまな役を演じられてきましたが、今後やってみたい役柄や挑戦したいことがありましたら教えてください。

やってみたい役ややりたい作品については星の数ほどありますね。ホラー映画に出てみたいし、時代劇や舞台もやりたい。本当に言い出したらきりがないんです。ただ、どんな俳優になりたいかを言うなら「東出が出ているなら見たい」と思ってもらえるような俳優、ですかね。今はそう思ってくださる方が増えることを願いながら、必死にやっていくのみです。

<プロフィール>
東出昌大 (ひがしでまさひろ)。1988年生まれ。高校時代に第19回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。パリコレクションにも出演し、モデルとして活躍した後、2012年映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。同作にて、第67回「毎日映画コンクール・スポニチグランプリ」、第36回「日本アカデミー賞」など数々の新人賞を獲得。2013年にはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』、『ごちそうさん』と2作連続出演、大河ドラマ『花燃ゆ』では幕末の志士・久坂玄瑞を熱演し、人気を博す。2014年映画『クローズ EXPLODE』で映画初主演。その後も『アオハライド』、『寄生獣』と話題作に次々と出演。今年は本作をはじめ計6本もの映画出演作が公開。今後の活躍が最も期待される俳優の一人。

作品情報
映画タイトル デスノートLight up the NEW world
原作 大場つぐみ・小畑健(集英社ジャンプコミックス刊)
監督 佐藤信介
企画・プロデュース 佐藤貴博
脚本 真野勝成
出演 東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、中村獅童、戸田恵梨香、船越英一郎ほか
配給 ワーナー・ブラザース映画
HP www.deathnote2016.com
©大場つぐみ・小畑健/集英社 ©2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
10月29日 (土) より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国拡大ロードショー