冬スタイルの要、自分だけのピース。
my new wardrobe
seasonal haul vol.1
photography: keisei arai
edit: takuya kikuchi
TFPが注目する人にワードローブに欠かせないアイテムを訊くマンスリー連載。今回はメンズ3名にこの冬のスタイルを作るのに欠かせないアイテムとセレクトの理由をヒアリング。独自のスタイルを持った3名の、ファッションとの向き合い方をショートインタビューでお届け。
冬スタイルの要、自分だけのピース。
「CELINEのミッドスニーカー」
recommended by
KAZUHA
—CELINE (セリーヌ)のスニーカーを購入した理由は?
来年1月の2022AWパリ・メンズ・ファッション・ウィークへの挑戦を決意したので、パリに履いていける、自分自身に気合いが入る靴を購入しました。「素敵な靴は素敵な場所へ連れて行ってくれる」という言葉をこの靴を履く度に思い出して、気持ちを奮い立たせようと思います。普段は90’sやストリートなスタイルが多くオーバーサイズで楽なものが好きなのですが、これなら普段のスタイルにも合わせやすく、特別感もあります。クラシックと今っぽさが同居したフォルムも気に入っています。
—親しい人たちがデザインするブランドを着ることが多いそうですね。
このMA-1は kudos (クードス)の今季のアイテムで、kudos はヴィジュアルに起用していただいたのがきっかけで着るようになり、コレクションもデザイナーの工藤司さんの人柄も好きで毎シーズンオーダーさせていただいています。このMA-1はショルダー部分を摘むステッチが入っていたりと、ベーシックなアイテムに kudos らしいデザインを加えていて、オーバーなサイズ感も好みです。デニムは友人が働く古着店で購入した Levi’s (リーバイス)の550。ウエストとレングスがぴったりのものがなかなか見つけられないのですが、自分のサイズ感を知っている友人が見つけてくれました。Tシャツは DAN TOKYO (ダントーキョー) という文化服装学院時代の先輩が立ち上げたブランドで、学内でのショーでモデルを務めました。パリのインダストリアルデザイナー Raymond Loewy (レイモンド・ローウィ)が唱えた「最先端だが受け入れられるデザイン」をコンセプトにデザインしているそうです。周囲の人たちが創るクリエイションから、色々な刺激をもらっています。
—モデルとしてどんな将来像を描いていますか?
文化服装学院に通っていた学生時代からモデルを始めたのですが、その当時は自分の中に少し迷いがあって、モデルという仕事に正面から向き合えていなかった気がします。今年6月に今の事務所に移籍してからは新たな気持ちでモデルという仕事に取り組んでいます。パリ・メンズ・ファッション・ウィークは初挑戦で、最初にパリのエージェントを回って所属先を探します。パリでの所属先が決まらないとブランドのオーディションも回れないので不安もありますが、まずはパリコレクションのランウェイを歩くこと自体が目標です。ショーに出られるアジア人モデルの枠は増えつつありますが、その分アジア人モデルの数も増えているので競争率は高そうです。以前はコンサバなショートヘアだったのですが、今のブラントバングにしてからは周囲から「モデルらしくなったね」と言われるように。日本で所属する今の事務所の名前を広めるためにも、パリのランウェイを歩けるように頑張りたいです。
KAZUHA (モデル)
「JOHN MASON SMITHのロングコート」
recommended by
今成邦明
—ハイブランドからヴィンテージまで幅広い守備範囲の中からこのコートを選んだ理由は?
毎シーズンたくさんの服を購入するのですが、この JOHN MASON SMITH (ジョン メイソン スミス)のロングコートは英国軍のモーターサイクルコートがベースのダブルフェイスで、セージともベージュともオフホワイトとも形容しがたい独特の色みとゆったりとしたシルエット、バージンラムウールカシミアの軽く柔らかな素材感が決め手となり購入しました。数えてみたら今季はアウター15着、ニット5枚、シャツとカットソーは合わせて10枚、パンツは4本、靴は4足購入していました(笑)。展示会でオーダーするのは全体の2割ほどでネットショッピングもしますが、基本的にはシーズンの立ち上がりにその時の気分で、お店で試着してから納得したものを購入するようにしています。購入したものはその日のうちに全身のスタイリングを組んで写真に撮っておいて、着る時にそれを見れば迷わずコーディネートできるので便利です。
—テイストやブランドに縛られないアイテム選びにオリジナリティを感じます。
スタイリングの参考にしているアイコンの一人が、 Lenny Kravitz (レニー・クラヴィッツ) の娘の Zoe Kravitz (ゾーイ・クラヴィッツ)。インナーの Iggy Pop (イギー・ポップ)がプリントされたヴィンテージTシャツを合わせたのも Zoe のスタイルに近いかもしれません。コーデュロイシャツは cristaseya (クリスタセヤ)でコットンカシミアの柔らかな素材感と深いグリーンの色が気に入っています。デニムはコペンハーゲンのブランド mfpen (エムエフペン)で、ツータックのワイドシルエットでトップスをインにして穿くことも。シューズは The Row (ザ・ロウ)のサイドゴアスリップオン。珍しいフラットソールが気に入って買いました。帽子は Hender Scheme (エンダースキーマ)のセーラーハット。トップが平らなバケットハットよりも丸みのあるセーラーハットが最近の気分です。
—アクセサリーも様々なテイストをMIXしていますね。
時計はカジュアルなスタイリングにドレスウォッチを合わせたり、スーツにあえて G-SHOCK (ジーショック)を合わせたりすることも。PATEK PHILIPPE (パテック フィリップ) の「カラトラバ」は30歳になるときに一生モノの時計が欲しくて、消費税が5%から8%に上がる直前にお店に駆け込んで購入しました(笑)。シルバーのリングとハートのネックレスとイヤーカフはハンドメイドジュエリーブランド frank and easy (フランクアンドイージー)、ゴールドのネックレスは18Kのヴィンテージ。ゴールドのリングは1920年代のイギリスのアンティークで14Kに小さなダイヤとパールがセットされています。ブレスレットはLAのアクセサリーブランド See Real Flowers (シーリアルフラワーズ) のもの。このブランドはデザイナーが世界を旅した時に見つけたビーズや貝殻などで作られていて、シルバー素材のビーズにコードを通した繊細なデザインが気に入ってずっとつけています。
今成邦明 (自営業)
「Maison MIHARA YASUHIROのMA-1」
recommended by
折見健太
—Maison MIHARA YASUHIRO (メゾンミハラヤスヒロ) のMA-1がユニークです。
三原康裕さんは学生時代からファッション誌などで拝見していたのですが、5年ほど前から親しくしていただいています。長い間世界を舞台に第一線で活躍されていて、デザイナーとして尊敬しています。このMA-1はいくつものスリーブを組み合わせていて、三原さんらしい唯一無二のデザインがさすがだなと、袖を通す度に思います。30代になってから服を買うときに重視するようになったのが、“アーカイブ性”があるかどうか。飛び抜けた個性やインパクトがあり、ずっと大切に取っておきたくなるピースであるかが購入する際の基準の一つです。
—ご自身の名前を冠した ORIMI (オリミ) を立ち上げたきっかけは?
ヴィンテージショップのバイヤーからキャリアをスタートして、3年前に神宮前に THE ELEPHANT (ジ エレファント) をオープンしました。これまでバイイングを通して自分の好きな世界観を表現していたのですが、それだけでは表現しきれない時もあり、服づくりを通してよりストレートに自分を表現するため ORIMI をスタートしました。21SSの1stコレクションは「DREAMING OUTSIDERS」がテーマで、21AWコレクションのテーマは「PHYCHO PURITANS」。「PURITANS」とは「規律を厳格に守る人たち」といった意味で、一見成功しているように見えるけれど、実は破綻している部分もある家族を、プレッピーな要素を加えたコレクションで表現しました。22SSは Marilyn Manson (マリリン・マンソン) や Avril Lavigne (アヴリル・ラヴィーン) のようなムードの架空のバンド「THE SPOOKS」をテーマに、そのメンバーが着ていそうな、ロックなコレクションを発表しました。次の22AWコレクションはあえてこれまでのようなテーマは設けずにデザインしようと思っています。
—今日着用しているデニムもORIMIのものだそうですね。
来年1月から立ち上がる22SSコレクションのデニムで、縦糸にシルバーの糸を使った独特の光沢感がある生地にウォッシュ加工を施しています。少しフレアなシルエットでブーツとのバランスもいいと思います。インナーは COMME des GARÇONS HOMME PLUS (コム デ ギャルソン オム プリュス) でブーツはヴィンテージ、グローブは VANSON (バンソン) です。ORIMI は最近では女性の方にも注目していただいていて、国内の取扱先も徐々に増えてきています。今後はヴィジュアルをパリのチームで撮影したり、海外での認知度をさらに高められるよう、新しい展開を考えています。
折見健太 (ORIMIデザイナー)