tfp recommends books
for july

7月の TFP 的おすすめ本

tfp recommends books for july
tfp recommends books for july
Select/

7月の TFP 的おすすめ本

tfp recommends books
for july

「本は時代を映す鏡」とも言われている。さまざまなメディアから情報を得やすくなった昨今、紙をめくりながら文化に触れる味わいを体感してほしい。そんな思いから、代官山 蔦屋書店、Hi Bridge Books、flotsam books、BOUTIQUE ROMANTIQUE が “今” 読んでほしい本を独自の視点でピックアップ。今月は、パリを拠点とする『0fr. Paris』の東京店として書籍やファッション、アートなどを提案し、ローカルとグローバルの文化をつなぐ場として活動している BOUTIQUE ROMANTIQUE から4冊ご紹介。

PARIS est un LIVRE

「パリそのものが一冊の本。」というコンセプトのもと、626軒もの書店、450年以上の歴史を持つセーヌ川沿いのブキニスト、文学カフェ、図書館、出版社、作家ゆかりの場所などを巡りながら、本を軸に都市の姿を読み解いていく一冊。ガイドブックのように名所を紹介するのではなく、本が生まれ、人から人へ受け継がれ、街の文化を育んできた痕跡を辿る構成が印象的だ。ページをめくるたび、美しい街並みだけでなく、本を愛する人々の営みや、個性豊かな書店主たちの哲学、文学とともに積み重ねられてきたパリの日常が、写真とテキストを通して静かに浮かび上がる。文学好きはもちろん、書店文化や編集、デザイン、出版に関わる人にとっても、多くの発見と示唆を与えてくれる内容だ。近年、世界各地で独立系書店や出版文化への関心が高まるなか、本書は「なぜパリが世界有数の本の街であり続けるのか」という問いへの一つの答えを示してくれる。書店は単なる本を売る場所ではなく、人と文化が交差し、街の記憶を未来へ受け渡していく存在であることを改めて実感させてくれる一冊。パリを訪れたことがある人には新たな視点を、まだ訪れたことがない人には、本を片手に街を歩きたくなるような憧れを抱かせてくれる。

Lampoon 33 MECCANO

ミラノ発のカルチャー誌『Lampoon (ランプーン)』最新号、Issue 33「MECCANO」。本号では、システム、機械、テクノロジーが人間の認知や創造性に与える影響を軸に、AI 時代における文化的生産と思考のあり方を多角的に考察している。情報や効率が絶えず最適化される現代において、「思考すること」そのものを抵抗の行為として捉え、建築、アート、デザイン、理論、パフォーマンスを横断する多彩な視点を提示する。アルゴリズムは私たちの認識をどのように変えるのか。AI は「作者」という概念をどう更新していくのか。ダイアグラムはなぜ思考や政治を可視化する装置となり得るのか。理論的な論考から写真、デザイン、身体表現まで、多層的なアプローチを通して、テクノロジーと人間の新たな関係性を探る。寄稿には Romain Laprade (ロマン・ラプラード)、OMA/AMO、Goshka Macuga (ゴシュカ・マキュガ)、Yuko Mohri (毛利悠子)、Mat Maitland (マット・メイトランド) らが参加。さらに Hugh Herr (ヒュー・ハー) や Xiao Yang (シャオ・ヤン)、Ohad Naharin (オハッド・ナハリン) らが、義肢やポストヒューマン、身体性をめぐる新たな視点を提示している。編集長 Carlo Mazzoni (カルロ・マッツォーニ) は、Umberto Eco (ウンベルト・エーコ) や Miuccia Prada (ミウッチャ・プラダ) の言葉を引用しながら、文化的生産とは「学習・分析・批評的観察」の積み重ねであると提起。テキスト、写真、ダイアグラムを並列的に配置した編集構成を通して、知性と創造性の未来を問い直す、いま読むべき一冊。

Un été sans lunettes à suivre…

0fr. Paris が不定期に刊行するジャーナルであり、創設者 Alexandre Thumerelle (アレクサンドル・チュメレル) によるエッセイ集。都市への一極集中が進み、効率やスピードが優先される現代において、「豊かに暮らす」とは何か。その問いを、南フランスの小さな村で過ごす日々を通して静かに描き出した、ドキュメンタリーのような一冊。四季の移ろい、畑仕事、近隣の人々との交流を綴る一方で、水や土壌の汚染、農業を取り巻く現実、地域コミュニティの変化といった社会的課題にも鋭い視線を向けている。本書の魅力は、単なる田舎暮らしへの憧れや自然礼賛に終始しないこと。都市と地方、開発と保全、利便性と持続可能性という二項対立を超え、私たちはどのような価値観を持って生きるべきかを、自らの経験をもとに問いかける。そこには、消費や競争では測ることのできない幸福や、人と自然、人と人との関係の中に宿る豊かさが丁寧に描かれている。0fr. が長年、書店やギャラリーを通して発信してきた思想の根底にあるのは、「ゆっくり生きること」への眼差し。本を読み、誰かと語り合い、季節の変化を感じながら暮らす。そうした何気ない時間こそが人生を豊かにするという価値観が本書全体に息づいている。慌ただしい日常から距離を置き、本当に大切なものを見つめ直すきっかけを与えてくれる、現代への小さなマニフェストともいえる作品だ。

Galleria Paolo Roversi

Paolo Roversi (パオロ・ロヴェルシ) の創作の原点と約50年にわたる軌跡を収めた決定版作品集『Studio Luce』が、『Galleria Paolo Roversi』として新たに刊行。イタリア・ラヴェンナの MAR (Museo d’Arte della città di Ravenna) に2026年5月オープンした初の常設ギャラリーを記念し、2020–2021年の回顧展図録を新装版として再出版した一冊。420ページにわたり、初期作品から近年の代表作までを収録。Kate Moss (ケイト・モス)、Naomi Campbell (ナオミ・キャンベル)、Rihanna (リアーナ)、Natalia Vodianova (ナタリア・ヴォディアノヴァ) らのポートレートをはじめ、ファッション写真、ポラロイド、静物写真などを通して、Roversi が追い求めてきた「光」の表現を辿る。「スタジオは場所ではなく、心の状態であり、ものの見方そのものだ」という言葉の通り、本書は作品集であると同時に、創作が生まれる空間と思考を映し出すビジュアル・エッセイでもある。哲学者 Emmanuele Coccia (エマヌエーレ・コッチャ)、キュレーター Chiara Bardelli Nonino (キアラ・バルデッリ・ノニーノ) による寄稿に加え、Roversi 自身の詩的なテキストも収録。写真作品を通して、Roversi の創作哲学と美学に深く触れることができる。