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save the duck
with nicholas bulge

生きとしいけるものたちへのリスペクトを。セーブ・ザ・ダックが切り開く豊かな未來

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model: nicholas bulge
photographer: yuko yasukawa
interview & text: yoshiko kurata

間一髪のところを逃れ、冷や汗をかきながら、口笛を吹くアヒルのロゴ。サステナブルアウターウェアブランド「SAVE THE DUCK (セーブ・ザ・ダック)」は、ブランド名のとおり、今日も人々の防寒のために羽毛をむしり取られてきたアヒルたちを救っている。その数、いま現在で4,400万羽だというから驚きだ。2012年に立ち上がった同ブランドは、動物由来の原材料を一切使用せずに、リサイクルしたペットボトルの微粒子をポリエステル繊維と配合した特許素材「プラムテック」を代わりに使用したダウンやアウターウェアを展開。2020年から日本でも数々の旗艦店やポップアップストアをオープンした。

イタリアを拠点に動物愛護だけではなく、生産背景や環境問題、人々だけではなく生きものが公平に暮らせる未来に向けての取り組みをさまざまに行なっている。ここ数年、そうした問題への意識は企業に限らず、消費者側からも買う選択肢として当たり前に考えられるものになっているが、ブランド創設当初は今ほど世間の問題意識が高くなかったはずだ。いや、むしろ12年前となると、ファストファッションが旋風を起こしていた時代。サステナブルを唱えるには強い逆風が吹いていた当時、 SAVE THE DUCK はどのような想いで未来を信じてアクションを続けてきたのだろうか?来日したCEOのニコラス・バルジ氏が、ブランド創設当初から掲げる強いパッションを明るくにこやかに話してくれた。

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生きとしいけるものたちへのリスペクトを。セーブ・ザ・ダックが切り開く豊かな未來

—ブランド創設当時、どのような想いで立ち上げられたのでしょうか?

まず最初に僕がこの業界に携わるようになったのは、90年代のことでした。父親の仕事をサポートするような形で、世界中のさまざまなブランドの生産管理を担当していました。年がら年中、世界各国の工場に行っては進捗状況を確認したり、サンプルを見たりしている中で、工場の環境や労働環境、そして動物素材の使われ方について無視できないほどに強烈に感じることが多々あったのです。そこで体感した想いがブランドを立ち上げる原動力になりました。その後、父親がリタイアする時に、従来の生産背景やビジネスのやり方をリセットして、イチからブランドを立ち上げたいと提案したことが SAVE THE DUCK の創設へと繋がりました。僕と同じ考えを持った人がこの世界に2%しかいない、と考えるのではなく、2%いるなら立ち上げる意味があるだろうと確信したのです。

—10年代前半となるとファストファッションの台頭もあったかと思います。ロールモデルがない中で、時代に逆行しながらも着実にビジネスモデルを描けたのはどのような背景があったのでしょうか?

僕自身はとてもシンプルに考えていました。当時、ファッション業界が向かう方向と全く真逆の方向へ少数で向かっていたと見えても、将来的にはその少数が大きな数になるだろうと。生産面でも、いつか将来的に動物由来の素材を使わない方法を現代のテクノロジーで見つけられると信じてきました。そしてそれはいずれファッション業界でも盛んになり、のちに業界が向かう方向を変える影響力が現れるだろうと考えていました。当時、業界ではさほどトピックになっていなかったとしても、一般的に見るとCo2排出量や環境問題について話している規模が大きかったのも背景にあります。そうした教育を受けた次世代の人々が10年後、20年後に消費者となった時にどのような考えを持って選択をするのか。いつの時代も親子間の考え方が異なるように、次の世代がもたらす考え方は新しいですよね?きっと前の世代で解決できなかった社会問題や環境問題について興味関心を持っていくだろうと彼らの将来の姿を想像してきました。

—たしかにそうですね。そこから実際に、社会の意識はどのように変化したと感じていますか?

予想していた通り、次世代の人々は学校でそうした問題に触れて、家に帰ってからもSNSや新聞で目にする機会も多いので考える層が増えている。一方で12年前と変わらず、気にしない人々も一定数いることも事実です。なので、ある消費者は敏感で、ある消費者は全く興味がない。これが現実だと思います。実際に、2年前にグローバルで SAVE THE DUCK のアイテムの購入意向者数を自社で調査した際には、50%の人々に於いて購入意向があるという数字が出ました。まだ100%ではないけれど、前向きに考えれば着実に従来よりも多くの人々が関心を持っているとも捉えられる数字だと思います。

—100%に近い数字、もしくは達成するには、どのようなアクションが必要だと思いますか?

法律の制定は良いアクションだと思っています。すでに世界規模で改善しなければいけないと理解が揃っているので、あとは実際に未来の環境問題への具体的なアクションを取らなければいけないところに差し掛かっているからです。ここに至るまで、支えてくださるファンの方々とともに SAVE THE DUCK が従来のシステムに反対して活動し続けられたことを誇りに思います。サプライヤーの方々も僕たちの哲学に共感してくださっている人ばかりです。一方で、この問題は大きな集合体として取り組んでいかない限り、最終的に効果的なインパクトへは繋がりません。各々が微力だったとしても全員で働きかけることで、サプライヤー含めて業界全体に大きな影響力を与えることになるでしょう。このままみんなで希望の持てる未来へ進んでいきたいと感じています。

— SAVE THE DUCK では冒頭でお話しされた体験をもとに自然、人々への取り組みも行なっているそうですね。

私たちのブランドの中核を担っているのは、「 Respect (尊重)」です。それは動物、自然、人々すベての生きとし生けるものに、公平に尊敬の念を持って取り組む姿勢です。例えば自然のなかでも特に注力しているのは、水について。水は周知の通り、人類だけでなく、すべての生き物が生きるに欠かせないものです。以前、インドネシアに訪れた際にある村で、マラリアの問題を目の当たりにすることがありました。特に学校に行っていない子どもたちは、日々生活をするためにバケツを持って川へくだり、一日に数回村に水を汲む生活をせざる終えない状況でした。そこで私はなんとかこの現状を改善できないかと思い、実際に村に井戸を設置して綺麗な水を提供できるようにしたところ、去年と今年合わせて合計で約5,000人の方たちがマラリアに感染しなくなり、子供も含めて現地の方たちがこれまでよりも安心して生活を送れるようになりました。さらに現在取り組んでいることは、生産過程で使う水の排出量です。現状40%は再利用可能な水で、それ以外は排水となっていますが、前述のインドネシアでの事例と同じく、1年間で使用する水と、人々に還元する水の量を同量かもしくはそれ以上の水を還元するプロジェクトに取り組み始めました。すでに今年に入って人々に還元した水の量は、生産過程で使った水の量よりも多くなっています。

—生産背景の見直しだけではなく、地球に生きるすべてに対して多角的な取り組みをされているのですね。

そうですね。ほかにも会社の総売上高の1%を寄付に使っています。例えば服を持っていない人々への寄付やプロジェクトに対しての寄付など。そうしたすべての試みにおいて、時には自然、時には動物、そして人々に対してと言ったように3つの方向からポジティブに未来に働きかけをしています。

—2022年に日本の旗艦店をオープンしてから、今年には帝人フロンティアと共同出資で日本法人も設立しています。日本のマーケットについてどのように感じていますか?

私たちが51%の出資比率を持って経営権を保有したまま、帝人フロンティアにはローカルな文化的な側面で様々にサポートしていただいています。日本のマーケットは、2020/21年の秋冬シーズンと比較して、2023/24年秋冬シーズンの売上は3倍に増加しており、大きな成長を遂げています。今後5年の計画としては事業をさらに現在の5倍に拡大する予定です。現在、デザイナー・山根 敏史さんとのコラボレーションでPro-Techのカプセルコレクションの展開を行っていますが、また新たなコラボレーションの企画も行いたいと思っています。いま特に注力しているのは、店舗やEコマース、百貨店でのポップアップストアなどダイレクトチャンネルです。日本の皆さんはとても勉強熱心なので、一度興味を持ったら、しっかりとファンとして根付いてくださる方々が多いなと感じています。

—個人的な質問ですが、ビジネス視点とは関係なく、今回来日されてイタリアと日本で似ているなと感じるところはありますか?

たくさんあります。人々はとても素直かつ丁寧で、文化に深く、フレンドリーでいてハードワーカーであること。もし日本に住みたい?と聞かれたら、答えはYES。もちろんイタリアも大好きですが、なかなか同じくらい好きになる国は見つからないくらいに日本は素敵な場所です。

—今後のビジョンについて教えてください。

先ほどお話ししたブランドの理念に沿って、「 RESPECT 」というプラットフォームプロジェクトを立ち上げました。そこではさらにビジネスを拡大し、次の30年に向けてダイレクトチャンネルを含む2000アカウント、そして50店舗をオープンする計画を立てています。理由としては、これからよりグローバルブランドになるためには、やはりどんなアイテムを私たちが作っているのか直接人々に知ってもらう機会を増やすべきだと思うからです。私たちのメッセージを知って、より笑顔になるアヒルたち、生きものたち、人々が増えたら本望ですね。