俳優・Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン) インタビュー
Eddie Redmayne
Writer: Sakuya Konohana
幼少期から演技の世界で活躍し、スクリーンと舞台ともに高い評価を受ける英国人俳優 Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン)。『ハリー・ポッター』シリーズの原作者である J.K. Rowling (J.K.ローリング) が脚本を手がけ、新たなハリポタワールドを開拓したことで世界中で大ヒットしている『ファンタビ』シリーズでは、主人公ニュート・スキャマンダー役に抜擢され、さらにキャリアの幅を広げている。最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のプロモーションで来日を果たした彼に、役作りから映画の見所まで話を聞いた。
俳優・Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン) インタビュー
Portraits
2016年に公開されたシリーズ第1作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、ハリポタ第1作の約70年前、1920年代半ばのニューヨークを舞台にした物語だ。しかも、『ハリー・ポッター』の原作者である J.K. Rowling (J.K.ローリング) が初めて脚本を手がけ、新たなハリポタワールドを開拓し世界中で大ヒット。ハリー・ポッターと同じホグワーツ魔法魔術学校の卒業生で、対人恐怖症の魔法動物学者という一風変わった主人公ニュート・スキャマンダーを演じたのは、『博士と彼女のセオリー』(2015) でアカデミー賞主演男優賞を受賞した Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン)。ただ今公開中の最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、前作でニュートが捕らえた Johnny Depp (ジョニー・デップ) 演じる “黒い魔法使い” グリンデルバルドが逃亡したところからストーリーが始まる。彼を追う魔法使いに、若きダンブルドア先生 (Jude Law (ジュード・ロウ) が演じている) も登場し、舞台をパリへ移した本作は、前作にも増して社会的メッセージや心理サスペンスが盛り込まれた物語性の高い作品に仕上がっている。今回は、来日した Eddie Redmayne に、役作りから映画の見所まで話を聞いた。
トランクにまつわる「恥ずかしい思い出」
—今日は我が家にあるニュートのPOP人形を持ってきました。
わぁ、すごくキュートだね!でも、僕のソバカスを描き足さないと! (笑)。(POP人形にはエディのチャームポイントであるソバカスがない)
—じゃあ、後で描き足しておきますね (笑)。ところで、エディさんはニュートが持っている魔法のトランクとそっくりなものをお持ちだとか。今回日本にも持ってきたんですか?
ハハハ。日本にも持ってきましたよ!(笑)
—以前、そのトランクのなかに魔法の杖を入れて海外に行ったときに、杖が凶器だと税関に思われて大変な思いをしたと聞きました。
そうそう!でも、なぜか日本の税関では止められなかったよ (笑)。実はね、このトランクには恥ずかしい思い出があるんです。『ファンタスティック・ビースト』への出演が決まる前、David Yates (ディビッド・イェーツ) 監督と初めて会ったときに、僕がいつも台本を入れて仕事用に使っているトランクをちょうど持っていたんですよ。当時映画についてはトップシークレットで脚本もなかったから、僕自身も物語や役柄について何一つ知らなかった。そのうちに監督がニュートやトランクのことを話し始めて。「初めて会うのに、もう役になりきっている変な役者だと思われたらどうしよう!?」と慌てて、椅子の下にトランクを隠しました。このトランクは本当にいつも使っているんだけど、『ファンタスティック・ビースト』以来、「うわぁ、エディっていつもニュートになりきってるんだ!」なんて人に言われやしないかって、ついつい気になってしまいます(笑)。
役作りのインスピレーション
—そんなそっくりなトランクを昔から持っていたなんて、ニュートを演じることは運命だったみたいですね。さて、ニュートの独特の歩き方や顔の表情には彼の性格がよく表れているのですが、どのように役作りをしたのですか?
脚本の第一稿には、ニュートは Buster Keaton (バスター・キートン:1920年代~1950年代頃まで活躍したアメリカの大人気喜劇俳優) っぽいユニークな歩き方をしていると書かれてあったんです。ただ、それを “ニュートらしさ” に落とし込まなくてはいけない。魔法動物のことをよく知っているニュートを理解するために、動物と長い時間を過ごしたりアニマルトラッキングのコースを取ったりしました。そのコースでは動物の足跡から行動を探るんですが、静かにして周りに注意をしながら、こんな風にかかとから足を下ろして膝を曲げて歩くんですよ (と、席から立ち上がって歩き方を見せる)。その様子からニュートの歩き方を作り上げました。それから、ニュートは人とアイコンタクトができません。彼は魔法動物とは心を通わせることができるんですが、人間に対しては距離を置いているんです。だから、人と目を合わせないように髪の毛で顔を隠している。
—とはいえ、前作と比べて今作のニュートは自分自身をもっと受け入れているように見えます。
その通り。前作で知り合ったジェイコブ、ティナやクイニーが彼を変えました。とりわけティナのおかげで、彼は以前よりも心を開けるようになった。しかも、本作ではティナがニュートを翻弄したりするから、彼女に対するフラストレーションや怒りといった前には見せなかったような感情も見せるようになっています。それぐらい、ニュートは自分に自信がもてるようになったんじゃないかな。
—今回、ニュートは新たなチャレンジに直面しますよね。
ニュートは愛するティナに会おうとしますが、古い友人で恩師でもあるダンブルドアに操られそうになります。僕がおもしろいと思ったのは、ダンブルドアとニュートの師弟関係のなかに、絶対的な信頼があるところ。ダンブルドアがなにか隠していることは知っていながらも、彼を尊敬し敬愛しているからこそ、ニュートは彼についていくんです。
演じることの根底にある不安
—確かに、ジュード・ロウが演じるダンブルドアは謎めいていながらも、優しさを感じさせる魅力的な人物でしたね。ジュード・ロウを含めほかの俳優たちとの共演はいかがでしたか?
これほどスケールの大きな映画だと、俳優たちが自分のパートを演じるだけでは上手くいかないんです。お互いのことをよく知り合って打ち解けなければ難しい。イェーツ監督は本当に優しく素晴らしい人で、チームワークを一番に考える人なんですね。だからとても楽しい撮影になりました。撮影が終わった後も、キャストが一団となって映画をプロモートするのがとても楽しいんですよ!この作品に出演している俳優たちはそれぞれに異なる素晴らしいクオリティをもっているんですが、特にジュードとの共演は最高でした。彼とは昔からの友人で、ハリウッドでも旧友と共演できるチャンスなんて滅多にないんですよ。ジュードとは一瞬にしてリラックスできる。演技をするということは自分のイマジネーションを働かせることなんですが、それが上手くいくときもあれば、上手くいかないときもある。そこには、「自分がバカに見えてしまうかも」という不安が根底にあって。しかし、ジュードの前ではそんな不安は吹き飛んでしまった。童心に返ったような気持ちで撮影を心から楽しめました。
ニュートから学んだ「心」とは?
—笑いに満ち溢れていた撮影だったということがよく分かりました。エディさんはこれまでのキャリアで様々な役を演じていらっしゃいますが、役を通じて “新たな自分” を発見するというようなことはありますか?
毎回演じる役柄からなにかを学ぼうと努めています。例えば、『リリーのすべて』(2016) の Lili Elbe (リリー・エルベ) や『博士と彼女のセオリー』の Stephen Hawking (スティーヴン・ホーキング) は非常に勇敢な実在の人たちです。彼らから学んだことは、人生に立ちはだかる障害が例えどんなに困難であっても、勇気を出して立ち向かうこと。そして、ニュートから学んだことは、“共感の心” をもつこと。彼はどんな人間や動物にも良い面を見出して、批判せずに理解しようとします。なぜ、この人はこんな行動を起こすのか。先入観をもたずに、誰かを理解しようとする “共感の心” は、現代社会において必要とされているんじゃないかな。
—確かに、この作品には人生へのメッセージがたくさん含まれていると思いました。それほどまでに思い入れのある作品に出演した後は、いったいどんな気持ちになるのですか?撮影が終わった後は役からすぐに抜け出すことができるのですか?
それについては僕の妻に聞いてみてください (笑)。彼女が言うには、僕はしばらく役から抜け出せないタイプみたいなんです。次の映画の役作りを始めるまでは、その前に演じた役柄が乗り移っている感じかな。演じた役のある一部分は、ずっと僕に残っているような気がします。
ファンタジーはリアリティを映し出す鏡
—『ファンタスティック・ビースト』シリーズはあと3作制作されるようですが、次の作品についてなにか教えていただけますか?
先日、J.K. Rowling が、次の映画はリオデジャネイロが舞台になると発表したみたいですが、そのニュースを聞いて僕も初めて知ったぐらいで、キャストはなにも知らされていないんですよ。僕は秘密事が苦手だから、知らなくてよかった!そうじゃないと、嬉しくてペラペラしゃべってしまうから (笑)。
—最後に、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』から、観客になにを感じてほしいですか?
映画を観てくださる皆さんには、ハリー・ポッターの世界観が味わえる魔法の世界へエスケープしてほしい。そして、僕たちが生きるリアリティにも通じるファンタジーの世界を感じてほしい。J.K. Rowling が語るファンタジーは、現代社会を映し出す鏡とも言えます。この世界における僕たちのあり方、僕たちはどこへ向かえばよいのか。なんていうことを少し考えながら、ドキドキわくわくするスリル満点のストーリーを目一杯楽しんでほしいですね。
<プロフィール>
Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン)
英ロンドン出身。舞台とスクリーンの両方で高い評価を受ける俳優。幼少の頃から演技のレッスンを受け、Sam Mendes (サム・メンデス) 演出の舞台「オリバー!」などに出演。2002年に舞台「十二夜」でプロの俳優としてのキャリアをスタートさせて以降、ロンドン・イブニング・スタンダード・アワードやローレンス・オリビエ賞、トニー賞など英米で名だたる演劇賞を受賞。Robert De Niro (ロバート・デ・ニーロ) 監督作品『グッド・シェパード』(2006) でスクリーンデビューを飾る。『マリリン 7日間の恋』(2011) で注目を集め、ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012) のマリウス役でブレイク。『博士と彼女のセオリー』(2014) で、英国アカデミー賞やゴールデングローブ賞 (ドラマ部門) などの主演男優賞に輝き、アカデミー賞でも主演男優賞初ノミネートにして受賞を果たした。続く『リリーのすべて』(2015) では世界で初めて性転換手術を受けた画家を演じ、再びアカデミー主演男優賞にノミネート。大人気作品「ハリー・ポッター」の新シリーズとして公開された『ファンタスティック・ビースト』シリーズでは主人公ニュート・スキャマンダー役を演じ、全世界でファンタビ旋風を巻き起こしている。
作品情報 | |
タイトル | ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 |
原題 | Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald |
原作者 | J.K. Rowling (J.K.ローリング) |
監督 | David Yates (デビッド・イェーツ) |
出演 | Eddie Redmayne (エディ・レッドメイン)、Katherine Waterston (キャサリン・ウォーターストン)、Dan Fogler (ダン・フォグラー)、Jude Law (ジュード・ロウ)、Johnny Depp (ジョニー・デップ) |
配給 | ワーナー・ブラザーズ映画 |
制作年 | 2018年 |
制作国 | アメリカ |
上映時間 | 134分 |
HP | wwws.warnerbros.co.jp |
©2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R. |
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11月23日 (金・祝) 3D/4D/IMAX (R) 同時公開 |