Fear of God (フィアオブゴッド) デザイナー Jerry Loewnzo (ジェリー・ロレンゾ) インタビュー
Jerry Lorenzo
Photographer: UTSUMI
Writer: Hiroaki Nagahata
Jerry Lorenzo (ジェリー・ロレンゾ) のインスタグラムでシューズの全容が明らかになった瞬間、またたく間に世界中へ拡散された Fear of God (フィアオブゴッド) と Nike (ナイキ) のコラボコレクション。それがノスタルジックな復刻モデルを元にしたデザインではなく、全く新しいパフォーマンスシューズであることが、ファンたちの熱狂をさらに後押しした。近未来的なその形は息を呑むほどに美しい。12月15日の本リリースにあわせて来日したジェリーに、デザインの哲学を訊いた。
Fear of God (フィアオブゴッド) デザイナー Jerry Loewnzo (ジェリー・ロレンゾ) インタビュー
Portraits
Jerry Lorenzo (ジェリー・ロレンゾ) のインスタグラムでシューズの全容が明らかになった瞬間、またたく間に世界中へ拡散された Fear of God (フィアオブゴッド) と Nike (ナイキ) のコラボコレクション。それがノスタルジックな復刻モデルを元にしたデザインではなく、全く新しいパフォーマンスシューズであることが、ファンたちの熱狂をさらに後押しした。近未来的なその形は息を呑むほどに美しい。12月15日の本リリースにあわせて来日したジェリーに、デザインの哲学を訊いた。
─昨日あなたが『BUD』という原宿のヴィンテージショップを訪れていたのをインスタグラムで拝見しました。日頃から古着はよくチェックしているんですか?
うん、日本でも高円寺なんかには頻繁に足を運んでいるよ。ヴィンテージショップに行くと昔から馴染みのあるもの、アメリカ人である自分のルーツを再確認することができる。そして、そこに僕の解釈を加えることで Fear of God の世界観が完成するんだ。
─今回のコラボレーションについて教えてください。
「ラグジュアリーウェアはタイトすぎたり重すぎたりして快適じゃない」っていうイメージが強い中で、スウェットパンツもラグジュアリーになり得るんだっていう考え方があって、今回のコラボでは僕もラグジュアリーな視点からスポーツを再解釈しようと試みた。自分のカスタマーに「自分らしくいられるラグジュアリーがあるんだよ」っていうことを伝えたくて。高級感がありながら生活の解決策になるようなもの、つまり日々を快適に過ごせるものをつくりたいと常々思っているよ。
─人々はブランドのどういった部分に「ラグジュアリー」を感じると思いますか?
そのブランドの持つストーリーがしっかり構築されていること。そして、実際に洋服やシューズを触った時の質感がそのストーリーと合致していること。
─あなたが高校時代にもっとも夢中になっていたカルチャーは何でしょう?
ヒップホップ、スポーツ、グランジ、ロックンロール。自分にとって90年代のカルチャーからの影響はすごく大きい。次に80年代も。Fear of God ではそれらの要素を一つのメッセージに集約して伝えているつもりだよ。
─例えば、ヒップホップとロックンロールでは音楽の作法がまったく異なりますが、高校時代からその2つを同時に好きになったんですか?
高校生の頃、僕の白人の友達はロックンロール好きで、黒人の友達はヒップホップ好きだった。で、僕はどっちにもぴったりハマるわけじゃなかった。ハマるところがないという部分にハマっている、その感覚が自分のスタイルをつくるきっかけになったんだ。今は自分の周りにもコミュニティができたし、精神も落ち着いていられるよ。
─Fear of Godのデザインには全く派手さがなく、“大きなロゴ”とも無縁ですよね。あなた自身、シンプルさに対しては何か哲学を持っていますか?
僕はデザインを通してかすかに意見を伝える……つまり“意見がないような意見”を伝えたいと思っている。「意見をこそっと忍ばせる」っていうか。ただ、今もし「Fear of God ってどんなもの?」って聞かれたら、多くの人は「こんなものだよ」って答えられるとは思う。派手じゃなくても哲学を伝えることはできるはずだよ。僕は Ralph Lauren (ラルフローレン) のように時代を超えるメッセージを発信していきたい。シンプルさに対しては、必要なものだけを得られるように、常に余計なものを排除することを考えている。今回リリースしたスウェットだって当初はグラフィックをのせる案があったんだけど、結局アーム部分にロゴをつけるだけにした。いつもどおり「付け加える」よりも「取り除く」ことを重視したんだ。
─今回のコラボに際して設けられたテーマは「バスケットボール」でしたが、ご自身もプレイヤーだったんですか?
高校時代はバスケ、大学時代は野球をやっていた。僕もアスリートとして育ってきたんだよ。どの分野でもベストな選手になることはできなかったけれど、何をやってもだいたい器用にこなすことができた。サッカーでもアメフトでもね。
─コラボスニーカーに関してですが、現在にフィットする新しいシューズをイチから構築しているという意味で、真の「協業」という感じがします。
今回はスポーツをするためのソリューションにもなり得る、かなり実直なプロダクトに仕上がっていると思う。これでスポーツをすることを第一優先にはしていないけれど、「機能的なシューズをつくる」というのがコラボの起点であることは確かで。Fear of God でシューズをつくるときはとにかく格好良く見えることを重視しているから、そこは大きな違いかもしれない。まあ、どちらも高くジャンプすることができるとは思うけど。
<プロフィール>
Jerry Lorenzo (ジェリー・ロレンゾ)
ファッションデザイナー
1976年生まれ、アメリカ・カリフォルニア州サクラメント出身。プロ野球選手でありコーチだった Jerry Manuel (ジェリー・マニュエル) を父に持つ。学生時に Diesel (ディーゼル) や Gap (ギャップ) で経験を積んだ後、2013年より Fear of God (フィアオブゴッド) をスタートした。Kanye West (カニエ・ウェスト) や Justin Birber (ジャスティン・ビーバー)、Kenall Jenner (ケンダル・ジェンナー) らセレブリティらから大きな支持を得ており、ラグジュアリーストリートブームの火付け役としてカルト的な人気を誇っている。