Bo Burnham
Bo Burnham

SNS世代のリアルを体現するマルチクリエイター、ボー・バーナムインタビュー

Photo by Hiroki Watanabe

Bo Burnham

photographer: hiroki watanabe
writer: waka konohana

Portraits/

SNS 先進国であるアメリカでは、YouTube は新しいクリエイティビティを発掘する場となっている。YouTube チャンネルで自身の作品を発表し、プロデューサーに目をかけられて、エンターテイメント界に進出する YouTuber も少なくない。『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』で監督デビューした Bo Burnham (ボー・バーナム) は、そんな YouTuber のうちの一人だ。16歳のとき、ブラックジョークなピアノ弾き語りで YouTuber として世界中から注目を集め、高校在学中にスタンダップコメディアンの登竜門であるコメディフェスティバル『Just For Laughs』に出演。その時に、『40歳の童貞男』(2005) や『はじまりのうた』(2013) で知られるプロデューサー/脚本家の Judd Apatow (ジャド・アパトー) に目をかけられ、彼から脚本のいろはを教わり、それ以来、エンターテイメント界で彼の快進撃は続く。

インタビュワーが質問し終わる前にこちらの意図を読み取り、即座にジョークを交えて回答する Bo Burnham の頭の回転の速さと感覚の鋭さは、さすがにスタンダップコメディアンの名に恥じない。それなのに、終始にこやかで明るく、人を見つめる瞳はどこまでも優しく繊細。それはそっくりそのまま監督の映画に登場する “エイス・グレード (13歳)” を見つめる眼差しだ。

SNS世代のリアルを体現するマルチクリエイター、ボー・バーナムインタビュー

―初めての監督作の主人公はSNS世代。ご自身の体験が元になっている部分もあるのかなと思いましたが、同性ではなく異性の13歳に設定したのはなぜですか?

若者を主人公にした映画はたくさんあるけれど、その多くが大人目線で語られています。今の13歳が感じていることって、本当に13歳じゃないと分からない。13歳の女の子の設定にすれば、どんなに頑張っても異性である僕には分からないし、歳もかけ離れているから、上から目線で語ることはできないだろうと。

―といっても、映画の中の女の子はものすごくリアルです。

13歳の子供たちの動画をネットでたくさん見て脚本を書き、実際にキャスティングしたのも本物の13歳の子たちばかりです。今の13歳が話す言葉は、大人が書く言葉とは全然違う。撮影の現場でも、13歳のキャストの意見を聞いては脚本を変えるという作業を何度も繰り返しました。

―即興演技が多かったということですか?

即興というよりは、言葉遣いや身振り手振りを、彼らのいつものやり方に置き換えてもらった感じかな。リアルで突発的で本能的な感覚を大事にして、感じたままに動くようにと伝えました。

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

―ケイラを演じた主演のElsie Fisher(エルシー・フィッシャー)が本当に素晴らしかったです。どこで彼女を見つけたのですか?

10歳ぐらいの時の彼女がインタビューに答えている姿をネットで見つけて、オーディションに来てもらうように頼みました。オーディションに来た他の13歳の女の子たちはみんなシャイなフリをした自信たっぷりの子供たちだった一方、エルシーはその真逆で、自信たっぷりのフリをしたシャイな女の子だった(笑)。彼女は主人公ケイラそのものだった。彼女はこの映画で、昨年の最多新人映画賞を獲得しましたが、学校の舞台劇のオーディションには落ちてしまったらしいです……(笑)

―ケイラと父親の関係もリアルでした。

彼らの親子関係は、僕と母の関係によく似ています。特にドラマチックなことは起こらないけど、いつもどこかに緊張感がある。映画でよくある親子関係って、ものすごく酷い関係だったり、ものすごく仲が良かったり。それって嘘くさくないですか? そうではなく、もっとフツーの親子関係を映し出したかった。ラッキーなことに僕の両親は愛情深かったですが、それでもしょっちゅう小さな衝突がありました。若者を主人公にした映画の中で、大人はメッセージや教訓めいたものを語りたがりますが、僕はこの映画が映し出すものを”感じて”欲しいと思っています。映画もネットも今や誰かの “意見” や “メッセージ” だらけで疲れませんか? 僕たちは目にあるものを見て、そのまま受け入れて、他人の意見に左右されず、自分で考える自由が必要なんじゃないかな。

―監督が13歳の時はどんな子供だったんですか?

13歳の時のほうが今より堂々として、もっとペラペラしゃべっていましたね。ドラマ部に所属して演劇にハマって……大人になった今のほうがよっぽどナーバスです (笑)。僕はたまたま外向的な仕事に就いていますが、実は内向的な大人というか。

―監督が内向的とは到底信じられません (笑)

いや、やっぱり本来の気質は内気ですよ。積極的で外向的じゃないと生きられない時代だから、無理矢理そうしているのかも。そういった両面性は、誰しもが持っているんじゃないかな。主人公のケイラも両方の性質を持っていて、実際に人と交わる時はシャイな一面を見せるけれど、YouTube に投稿する時は積極的。僕も人前でパフォーマンスをするのが好きだけれど、ひとりでいることも好き。

―監督は16歳でYouTuberになりました。その時の周りの反応は?

すぐに投稿を削除しなさいと母に怒られました。16歳の息子がバカな姿をネットにさらしているのが許せなかったみたいです。当時は2006年で、まだ誰も YouTube のことを知らなかった。母は「そんな下らない歌をネットにのせて!」とカンカンで、僕はいったん言いつけを守りつつ、後でこっそりとまたアップしたり (笑)。そんなやりとりの中、だんだんと理解してくれてサポートしてくれるようになったんですが。まあ、親として当たり前の反応ですよね。

―YouTuberとして、エンターテインメント界で成功した最初のひとりです。

なんでだろ。きっと僕の素晴らしい体臭のせいじゃない?(笑) そもそも僕は、YouTube がエンターテインメント業界に入る前の “訓練所” とか、そういう風には思っていません。僕にとっては YouTube と映画はまったく別モノ。YouTuber にとって映画を制作するのはとても難しいと思います。

―どうしてですか?

YouTuber は毎日のように動画発信しないといけないけれど、映画の脚本を書くには一人きりになる時間が必要だから。僕がこの映画を作る時、YouTube は2年ほどお休みしたんです。その間「ボーはどこへ行ったんだ?」「ボー、死んじゃった?」なんてずっとツイートされていたんですよ。YouTuber にとって、ネットで忘れられることは恐怖です。僕だって YouTube から好きで消えていたわけではなく、何度も「ああ、なんかアップしなきゃ」と焦っていました。だから YouTuber と映画制作の両立は本当にタフだと思います。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

―コメディアン、歌手、ライター、映画監督、詩人……とどこまでいくのでしょう。

まず、自分のことをマルチな才能とは思っていないです。エンターテインメントの業界にいるから、そう見えるだけなんじゃないかな。ひとつの職業の中にも、実は様々なスキルがあります。例えばシェフだって、素材を選び、切り、焼き、盛り付けますよね。文章を書いたり、ジョークを言ったり、撮影したり、歌ったり、というのはある意味、パフォーマーとしてのひとつの職業。これが、ライター兼大工だったりしたら、本当にマルチな才能だと思うけど。それに作品を作っている時は、毎回壁に頭を打ち付けたくなるほど、めちゃくちゃ迷っています。毎回「もう嫌だ! 二度とやりたくない! 」とか思っていますよ、本当に。

―監督のスタンダップコメディや YouTube を拝見しましたが、人種やセクシュアリティについてかなり際どいジョークを連発していらっしゃいます。今、特にアメリカではポリティカル・コレクトネスが声高に叫ばれていますが、この概念をクリエイターとしてどう捉えていますか?

コメディアンとしての第一の仕事は、世の中で起きていることをジョークにすることだと思っています。だから、ポリティカル・コレクトネスのような新しい概念が出てきたら、それはネタになる。もし世間に好かれようと思ったら、創造性を制限することになるだろうけど。みんなに好かれるようなジョークを意識して発するのは、コメディアンとしてやってはいけないような気がします。現代は SNS やネットを通じて、いろいろな人の批判がどうしても耳に入ってしまう。だから他人の批判や意見に対して、僕たちは昔よりずっと敏感になってしまった…… というよりは、本当は昔から批判を気にしていたけれど、SNS から聞こえるようになったことで過剰に反応するようになってしまったのかも。クリエイティブでいるには、他人の声を遮断して自分の声だけに耳をすませなければいけない瞬間があります。他人の反応をいつも気にしていたら、自分自身を見失ってしまうから。

―監督が次にトライしたいジャンルはありますか?

舞台をまたやりたいです。脚本を書いたりプロデュースしたり、シェイクスピアとかミュージカルとか、舞台でツアーを組みたいです。ただしミュージカルを作るなら、今度は7年間は姿を消さないと!

―今回の日本の滞在で、コメディに使えるようなネタは見つかりました?

ははは。ネタを見つけるほどまだ長く滞在していなので、どうだろう。ただ日本の人たちは、とてもユーモア好きとみた。よく笑う人が多いですね。たとえばさっき道で日本の人にぶつかってしまったんだけど、笑って許してくれました。ニューヨークで知らない人にぶつかったらめちゃくちゃ怒られますよ! とそんな感じで、日本に来てから本当にたくさんの “知らない人” と一緒に笑っています。アメリカではありえないです。いや、でもひょっとしたら僕が笑われていただけなのかも!? デカいバカなアメリカ人だってね (笑)。

―身長確かに大きいですよね。日本だと巨人になったような気がするのでは?

196cmあると、僕はどこの国へ行っても巨人です (笑)。

―最後に、日本で何をしたいですか?

東京はぶらぶら歩いて楽しめる街だと思います。チェックリストを片手に名所めぐりするより、ただただ歩き回って寄り道とかしたいです。今日は時差ボケで早く目が覚めたので、朝の6時半からホテルの周辺を歩きました。ニューヨークに似ているようで、全く違いますね。特に自動販売機! 美しくてびっくりです。デカくてヘンな外国人観光客に見えないように必死になって景色になじもうとしている、花柄シャツを着たクールな外国人観光客が歩いていたらそれは僕です (笑)。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

<プロフィール>
Bo Burnham (ボー・バーナム)
1990年、マサチューセッツ州ハミルトン生まれ。コメディアン、ミュージシャン、俳優、監督である。2006年に YouTuber としてキャリアをスタートさせ、彼のビデオは2008年までに3億回近く再生された。2009年にデビューEPアルバムをリリース。その翌年には、完全版のアルバムを発売。2010年には初のライブコメディーショー「Words Words Words」が放送され、世界最大の芸術フェスティバル、エディンバラ・フェスティバル・フリンジにて、エディンバラコメディー賞を受賞。2013年には2つ目のコメディーショー「what.」を Netflix と YouTube でリリース。3つ目となるスタンドアップコメディーショー「Make Happy」は Netflix がプロデュースし、2016年に独占配信された。俳優としては、『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』(2017・日本未公開)、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(2017) などに出演。MTVのテレビシリーズ「Zach Stone Is Gonna Be Famous (原題)」(2013) の12エピソードでは主演・製作・脚本を務め、2013年には初となるポエム集「Egghead: Or, You Can’t Survive on Ideas Alone」を出版。『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』は彼の映画監督デビュー作となる。

作品情報
タイトル エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
原題 Eighth Grade
監督 Bo Burnham (ボー・バーナム)
出演 Elsie Fisher (エルシー・フィッシャー)、Josh Hamilton (ジョシュ・ハミルトン)、Emily Robinson (エミリー・ロビンソン)、
配給 トランスフォーマー
制作年 2018年
制作国 アメリカ
上映時間 93分
HP www.transformer.co.jp
 © 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC
 9月20日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、シネクイントほか全国ロードショー
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