shuhei nomura
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俳優・野村周平インタビュー

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photography: toshio ohno
text: sota nagashima

Portraits/

俳優、野村周平。枠に捕らわれることを嫌い、限りなく自由に、限りなく純粋に、信じることを突き詰めようとする彼はこの夏、単身NYへ旅立った。今回は主演作であり、親交の深いラッパーANARCHYの監督デビュー作『WALKING MAN』のプロモーションにて一時帰国。劇中では、気弱で口下手な少年アトムがラップで自分を変えていく姿を瑞々しく演じ、夢を追いかける若者を鼓舞する。ヒップホップやストリートカルチャーから培った今作への自信とプライド、真っ直ぐに物を捉えるその視線の先について話を聞いた。

俳優・野村周平インタビュー

―監督であるANARCHYさんとは元々お知り合いだったんですよね?

はい。友達に紹介してもらって知り合いました。3〜4年前ぐらいですかね。

―普段お二人が遊んでいる時、野村さんがANARCHYさんに向かってANARCHYさんの曲をラップするという話を聞きました(笑)。

実は昨日もクラブでそれをやっていました(笑)。DJがANARCHYさんの曲をかけたから、マイクが出てきたんですよ。でも、呼ばれていたのに彼が来なかったので、じゃあ俺が歌うわと言って。何故か僕が歌っていました(笑)。

―映画みたいですね(笑)。そんなANARCHYさんから映画を撮ると言われた時、最初どう思われましたか?

最初に聞いた時は、すごい良いじゃないですか、撮った方がいいですねという話をしていて。なんかあったら呼んでくださいと言っていたんですけど、当初は違う人に主演を頼んでいたみたいで。

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―主演で最初にお話しがあった訳ではなかったんですね。

全然違う人に声をかけていたので、それで絶対出てやらない!と思って(笑)。でも、その子ができなくなっちゃったーと、今の彼女と別れて元カノの方がやっぱ良いみたいな感じのテンションで来て(笑)。じゃあ、やりましょうかという形でやることになりました。

―真っ先にではなかったにしろ、ANARCHYさんの頼みなら仕方ないという感じでしょうか?

ANARCHYさんが監督で、もちろんヒップホップだけの映画ではないですけれど、それ知らない生半可な奴がやるよりは僕がやった方がいいかなと思いました。自分だからというよりは、この分野を知っている人がやらないと意味がないなと。最初に声を掛けられていた方もヒップホップに通じている子だったので、全然良かったんですけど。この後にもし僕もダメだった場合、誰がやるんだということを一緒に考えたとき、見当たらなかったもので。

―なるほど。世間からしたらラッパーが映画を撮ること自体、突拍子もない話かもしれませんよね。

そうですね(笑)。でも、ずっと温めていた企画みたいだったので。ANARCHYさんが映画をやるっていうのも面白いなと思ったし、どういうのを作るんだろうとも思ったし。これで全然ヒップホップじゃない映画とかでも逆に面白いなとかも(笑)。でも、ちゃんとANARCHYさんが撮るヒップホップの映画だったので、これはもう間違いないなと思いました。

―野村さんにとって、ヒップホップといえば昔からずっと馴染み深い音楽ですよね。

そうですね、ヒップホップやR&Bはずっと好きです。もう小学生ぐらいから聴いてたので。

―どんなアーティストを聴かれていたんですか?

リル・ウェインとか、T-ペイン、あとはスヌープ・ドッグとかも聴いていました。そこからNE-YOやエイコンなどを挟んで、今だったらエイサップ・ロッキーとかが好きです。時代と共に変わっている感じですね。

―USヒップホップがメイン?

日本人だとANARCHYさん然り、Zeebra、ECD、スチャダラパー、5lackは今すごい好きですね。日本語ラップは最近BIMとかイケてる奴らが多いので、楽しいですね。

―常に最新のヒップホップも追っかけているんですね。

ハウスやテクノとか、色々なジャンルの音楽も全然聴きますけど、結局ヒップホップに戻ってくるというか。やっぱテンション上げときたいんで。メロウなの聴いてると眠くなっちゃう(笑)。女の子口説く時ならいいんですけどね(笑)。

―ヒップホップや音楽によって人生観が変わったことなどもありますか?

昔からやっていることもスノーボードやスケートボード、BMXとかばっかりだったので、自然とその繋がりでストリートの音楽を聴くようになっていったのはあります。だから、音楽で変わったというよりは、音楽と一緒に生きているみたいな感じですね。

―普段遊びでラップはやられたりするんですか?

いや、本当に酔っ払って好きな人の曲かけて歌うとか、カラオケで歌うとかその程度ですね。

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―ANARCHYさんは、今回野村さんへラップに関してそこまで指導しなかったと聞きました。

今回難しかったのはANARCHYさんのラップでもないし、主人公のアトムという男の子の気持ちがラップになっているので、アトムになって歌わなければいけない。そこはやはり難しかったですね。逆にANARCHYさんのラップは上手く歌えるんですよ、聴きまくっているので。だから、1日クラブ貸し切って缶詰め状態の中2人で動画撮って、ビール飲みながらこれ良いよねとか言い合って、練習はしました。クライマックスでのラップシーンはやっぱりカッコ良く見せたかったみたいなので、そこの練習は結構しましたね。

―実際ステージの上でラップしてみていかがでしたか?そのシーンではエキストラのお客さんも結構入っていましたよね。

普通のライブだったらお客さんを盛り上げたら良いと思うんですけど、映画の中なんで魅せるパフォーマンスをしなきゃいけない。だから、少し恥ずかしかったですね。アイツ何カッコつけてんのやろみたいに思われてたかもしれない(笑)。

―では、野村周平としてのラップというよりは、あれはアトムのラップ。

そうですね。でも、レコーディングで今回作曲などをしているChaki Zuluさんがラップの指導を入る時にANARCHY要素40%足そうか、ANARCHY60%にしようかとか意味の分からない指導をしてくるんですよ(笑)。初めてレコーディングというものをやらせてもらったので、それも楽しかったですね。Awichさんとも共演できましたし。

―Awichさんと共演?

主題歌で女の人が歌っているところ、あれAwichさんなんですよ。映画の中では昭和の歌手という設定で、その曲をサンプリングしてラップをしている。

―へー、すごい! 演技という点では、主人公のアトムはラップをする様になるまで喋るのさえも下手な少年という役どころでしたが、難しかったですか?

特徴を掴んでしまえば、逆にああいう役の方がやりやすいかもしれないです。もちろん難しいですけど、普通ではない役だとやり甲斐もあるし、生半可な気持ちでやっちゃいけないなという気持ちも出てくるので、そういうのを全て含めて楽しかったです。

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―今作は夢を見ることの大切さをストレートに描いている作品ですよね。主人公はラッパーになるという夢を見つけて前進して行く。普段ANARCHYさんの楽曲にも含まれていることが多いテーマだと思いますが、野村さんにとって夢を見るということはどういうことでしょうか?

夢かぁ…。。僕は毎日の様に見まくってますけどね。ただ、叶ってないんですけど。なんかいつも夢に描いた方向とちょっと違った方向に行っちゃうんですよね(笑)。別にまだ成功したと思ってはないですけど、この俳優という職業も最初からやりたかったことではなかったのに、いざ始めてみたらそこそこ順調にいって。夢に見て、夢と現実が違った時はショックですけど。でも、夢見ることは良いことだし、やっぱりヤル気が出る。ANARCHYさんも映画監督という夢を見て今回実現していますしね。

―俳優業は夢ではなかったんですね。

辞めれるものなら、今でも辞めたいぐらいです(笑)。今、子供達はみんなYouTuberになりたいって言うじゃないですか。それは日本の芸能界には夢がなくて、俳優という職業が魅力的に映っていないという事だと思うので、世間にニコニコ媚ばっかり売ってないで、俳優はみんなもっと自覚して強い存在でいて欲しい。

―それを変えたいという気持ちもある?

変えたいとは思っているんですけど、別にそういう風な発言をしていなくても、何故かいつも僕の尖った部分ばかり取り上げられてしまいますね。

―先ほど毎日の様に夢を見るとおっしゃっていましたが、野村さんにとっての今の夢って何でしょう?

日本にいる友達もみんなNYに来て、みんなであっちに永住することですかね(笑)。それと、僕もいつか映画を撮れたらと思っています。キャストには俳優じゃなくて、全員スケーターを起用して。彼らは顔も生き方もカッコイイので。でも、女の子だけ広瀬すずちゃんを使いたい(笑)。お願い焼き肉奢るから友情出演でも…という感じでやろうかなと思っています(笑)。