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「ゴールを決めないでやり続ける」 バレエダンサー・飯島望未の日常と舞台裏

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photography: yuto kudo
styling: junko kobashi
makeup: tomohiro muramatsu
hair: tomo tamura
interview & text: miwa goroku

Portraits/

透き通るような美しさを生まれ持ち、バレエで鍛え抜いた体にはどんな洋服もよく似合う。名門ヒューストン・バレエ団で2019年3月、バレエダンサーの頂点といえるプリンシパルに昇格した飯島望未は、バレエの枠を軽やかに飛び越えて、ひとりのアーティストとして、またファッショニスタとしても世界中に名をはせる。同年CHANELのビューティ アンバサダーに就任し、ますます活動の場を広げる彼女に、バレエダンサーとしてのキャリアについて、また日々の過ごし方や美の秘訣についても話を聞いた。

「ゴールを決めないでやり続ける」 バレエダンサー・飯島望未の日常と舞台裏

― 今年3月、バレエ団のプリンシパルに昇格。1月からはCHANELのビューティ アンバサダーとしても活動。2019年は実り多い1年だったのでは。

そうですね。自分としては、やっとスタートにつくことができたなという感じです。プリンシパルになったことで、新しい課題もどんどん生まれてくる。バレエダンサーとして、一番大事な時期に入ったことを実感しています。

― 6歳でバレエをはじめておよそ20年。バレエの道は厳しいといいますが、ご自身としては計画通りのペースで?

いついつまでにプリンシパルになりたい、とか具体的な見通しを立てたことはないです。プリンシパルに絶対になるし、ならないとダメだと思って、ずっとやってきました。

― 飯島さんはInstagramの投稿も積極的でファンが多いですよね。自己プロデュースすることに対するこだわりはありますか?

バレエをもっと知ってほしい、広めたいという思いは、いつもあります。自己プロデュースに関しては、どうだろう。自分がしたいようにしているだけなので。こういうバレリーナもいるのかと気づいてもらうだけでもいいなと思っていて。それがバレエを見るきっかけになるかもしれない。

― バレエを続ける目標、目指す理想像はありますか?

私の場合、ゴールを決めないでやっていくことが、モチベーションかもしれないです。誰しもコンディションには波があるし、ベストも常に変わっていくから。自分に過度に期待しすぎると、結果が思うように出なかった時のダメージが大きいし、それを失敗と思いたくない。将来、過去を振り返る時に、あれは失敗じゃなかったと思える過程を作っていきたい。そのために、いつも目の前のことを一生懸命やります。

― 2016年に一度ヒューストン・バレエ団を退団し、スイスのチューリッヒに移籍したのはどんな思いから?

コンテンポラリーにずっと憧れと興味があったんです。一緒に仕事をしてみたい振付師もいて、もっとマニアックな作品に挑戦したい気持ちが強くなり、思い切って (チューリッヒに) 飛びました。行ってみてわかったのは、その時の自分の実力が全然合っていなかったということ。現実を叩きつけられて、自分に幻滅もしました…… チューリッヒでは、実は役がまったくもらえなかったんです。努力して何年も居続けたらいつかは舞台に出れたかもしれないけど、このまま自分がいるべき場所ではないのだと理解して、ヒューストンに戻りました。

― 求められる内容が違った?

バレリーナすぎる、っていわれました。あ、やっぱり自分はコンテンポラリーじゃないんだなって。どこかでわかっていたんだけど、改めていわれると悔しかったです。

― 飯島さんにとってコンテンポラリーとは?

ダンサーとして憧れていました。挑戦したのはよかったと思っています。自分が持っているものを、どうやって最大限に生かすかがわかったから。自分はクラシックが得意。だったらそれを、精一杯踊れるうちに、最大限に活かせる場所で、踊るべきだなと。コンテンポラリーはもっと後になっても踊れるし、またいつかチャレンジするかもしれません。

― 踊ることとの向き合い方がプロですね。

でも私、家に帰ったらバレエのことは一切考えないんですよ。中には本当にバレエ一筋で、バレエのことしか考えない毎日を送っているプロの方がいっぱいいます。そういう人たちと比べたら、私はそんなにストイックではないかも。

― でも、自分のことをよく理解している。

そうですね、そこは理解しようと思いました。コンプレックスが人より多いぶん、自分を客観視できないと、見る人にも伝わらない。私は、体はバレエダンサーっぽくないし。

― バレエダンサーっぽい体とは?

足が長くて、体が立体的である、とか。私は薄っぺらすぎるんです。チュチュを着たらごまかせるけど、衣装によっては貧弱に見えてしまう。ただ唯一、腕や首の使い方などは小さい頃からずっと褒められてきたんです。あ、やっぱり私は上半身が強みなんだって。気づいてからは、その違いを研究しました。

― ヒューストンは、どんなバレエ団なのですか?

ひとことでいうなら、テクニックよりも演技重視。アーティスティックというか、ストーリーテラー的な要素は、おそらく他のバレエ団より強いんじゃないかなと思ってます。見せ方がうまいダンサーが多いんです。手の使い方ひとつで表現できることがあるんだなって、私自身も学びが多いです。

― 海外に出て、改めて日本のバレエをどう見ていますか?

才能のある子がいっぱい出てきていますよね。出てきているということが、SNSや動画を通してオンタイムで知れるのもすごいなと。私の時代にはなかった環境が整って、食生活も変わって、スタイルいい子が増えて。留学のチャンスも増えて、すごくいいことだと思います。

― 一方で、文化としてのバレエはあまり定着していない印象もあります。

わかりやすい『白鳥の湖』のような古典バレエしかチケットが売れないのは、アメリカも同じなんです。ただ、日本の方が、よりバレエの敷居が高くなっているのは感じますね。日本人はなんでも理解したがるからかな。衣装かわいいな、とか、足長いな、とか。それでいい。それぞれの見方で間違いはないです、というのはちょっとみんなに伝えたいかな。

― 平均的な、1日の過ごし方を教えてください。

火曜から土曜が出勤。バレエ団は会社なので、サラリーマンです私。始業は10時。1時間半ウォーミングアップした後、6時間リハーサルします。

― それが毎日……。思っていたよりハードです。

舞台がある期間は日曜も加わるので、さらにタイトですね。月曜はいつもおやすみ。

― 舞台はどんなペースで。

1シーズン (1年) につき、7〜8演目。9月の頭がシーズン最初のプログラムです。たとえば『白鳥の湖』でスタートしたら。9月下旬にまた違う演目をやります。10月はツアーに出て、11〜12月は『くるみ割り人形』…… とか、月ごとに変わっていきます。

ジャケット ¥708,000、シューズ ¥106,000/ともにCHANEL (シャネル)

― そんなハードな日々を踊り抜くための、食のこだわりは?

ずっと1日1食のスタイルでしたが、怪我をきっかけに3食食べるようになりました。でも、食べなきゃ! と思ったらストレスで嫌になっちゃうので、最近は食べれる時に食べる、気付いた時に食べる、というスタイルに落ち着いています。リハーサルの合間の休憩は5分しかないので、その時にスナックをかじったり、バナナやドライフルーツを食べたり。あと私は鉄分が不足しがちなので、お肉を積極的に食べる、サプリで補うなども気をつけています。

― 体のメンテナンスやトレーニングは?

トレーナーにメニューを組んでもらって筋トレを。生まれつき筋肉が柔らかい方なので、故障しにくいし、凝ったりしないのはラッキーです。あとジャイロトニックもやってます。

― ファッションについて。好きなスタイル、ブランド、偏愛アイテムなどありますか?

なんだろう。特にコレっていうのはないです。

― そうなんですね。 Instagramを拝見していて、服好きの印象を受けていました

ファッションはすごく好きです。好きだから、なんでも着たいなと思っていて。ジャンルとか考えず、いつも気分でその日の服を選ぶので、クローゼットの中もごった返しです (笑)。あ、でも私はワンピースが好きなのかな。1枚でかわいいのがいい。

― CHANELのアンバサダーに就任。ブランドにまつわる思い出や接点はありますか?

母のクローゼットを開けたらCHANELの服や香水が並べてある、というのが子供の頃の原風景です。母からお下がりでもらったバックもCHANELだし、ずっと大事に使っています。何が偶然って、私の母は Coco Chanel (ココ・シャネル) と誕生日が同じなんです。8月19日。私も同じ獅子座で、8月6日生まれ。

― 運命のつながりを感じますね。

まさか自分がCHANELのアンバサダーになる日が来るなんて思ってもなかったので、最初お声がけいただいたときはびっくりして鳥肌が立ったし、嬉しかったです。

― バレエはメイクアップの負担が大きいイメージですが、そんなストレスを一切感じさせない、透き通るような肌の秘訣は?

皮膚は薄いけど、強い方かもしれません。ただ、舞台終わった後はすぐクリーム塗って保湿しないと、すぐカピカピになるので、保湿は心がけています。あと気をつけているのは、洗顔でゴシゴシこすらないこと。朝は水だけで洗顔すること。夜は、CHANEL「オー ミセラー」(拭き取りタイプのクレンジング) とローションとクリームだけ。最近は美白シリーズの「ル ブラン ユイル」というオイルがお気に入り。

― 定番のリップは?

最近ほぼ毎日つけている「ルージュ ココ フラッシュ」の56番 (モマン)。リップバームのように気軽に使えるし、シアーなブラウンが本当にかわいい。天才!

― 香りはどんな時につけますか?

もっぱら舞台の時ですね。演目や役柄によって使い分けるとテンションが上がるんです。大人っぽい役の時は「シャネル N°5」、エレガントなムードの時は「ココ マドモアゼル」、若くてフレッシュな役柄には「シャネル N°5 ロー」とか。もはやルーティンというか儀式になっています。ヘアメイクをして、舞台に出て行く直前に香りをシュシュっとつける。そうすると、一気にスイッチが入ります。

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