Nicola Glass
Nicola Glass

「ありのままの自分を表現する女性たちを応援」 ニコラ・グラスが引き継ぐケイト・スペードの哲学

Nicola Glass

photography: yuta kono
interview & text: makiko awata

Portraits/

6つのハンドバッグとともに1993年にニューヨークで誕生し、瞬く間に世界的ブランドへと成長した kate spade new york (ケイト・スペード ニューヨーク)。デビュー以来、同ブランドが描き続けているのは、オプティミスティックでフェミニンなスタイル。ウィットに富んだ遊び心を備え、女性が自分らしくあることを後押しする前向きなエネルギー、そしてハッピーな優しさに満ちた世界観だ。

「ありのままの自分を表現する女性たちを応援」 ニコラ・グラスが引き継ぐケイト・スペードの哲学

2018年、ブランドの新クリエイティブ・ディレクターに Nicola Glass (ニコラ・グラス) が就任。モダンなツイストを加えた、気負わずも洗練されたスタイルで、2019年春夏シーズンから kate spade new york の新たな魅力を引き出している。「2020年は特に、女性のありのままの個性を賞賛する年」と語る Nicola に、今春の最新コレクションに込めた想いや、グローバルアンバサダーに日本を代表するタレント渡辺直美を起用した理由などを語ってもらった。

©︎kate spade new york

©︎kate spade new york

―「シティ サファリ」がテーマの2020年春夏ランウェイショーは、NYのノリータ地区にあるエリザベス ストリート ガーデンで開催されました。この公園を舞台に選んだ理由は?

まず頭に浮かんだのは、私がニューヨークに引っ越してきた16年前、一番最初に住んだイーストビレッジのような雰囲気。大都会にいながら、身近に自然が感じられる場所を探していて、エリザベス ストリート ガーデンはがぴったりだと思いました。また、この周辺地域は再開発の計画が進んでいて、住民の方々が公園取り壊しの反対運動をしている真っ只中なんだとか。自分たちがショーをすることでこの公園がフィーチャーされ、反対運動のサポートに繋がれば、と考えたんです。

また、公園の通路をランウェイとして使用することで、後で廃棄しなければいけないような、ショーだけのための大掛かりなステージやセットを一切作りたくなかった、というのもあります。

 

―モデルたちは、双子のインフルエンサー、Reese & Molly Blutstein (リース&モリー・ブルスタイン) から女優の Debi Mazar (デビ・メイザー)、60代の大学教授兼インスタグラマーの Lyn Slater (リン・スレイター) まで、ダイバーシティな視点でキャスティングされていましたね。

今回のショーで特に伝えたかったのは、女性の個性や自分らしさを祝福するメッセージ。いろんな職業、年齢、体型、肌の色……ライフステージもライフスタイルもまったく違う、さまざまな女性に出演してもらいました。犬を散歩させていたり、包装されたワインボトルを持っているなど、それぞれの女性のリアルライフを反映したヴィジョンを見せたかったのです。

 

―モデルたちが植物を植えたプランターを抱えた演出も印象的でした。

ショーが終わってメディアやバイヤーが帰られた後、いつも公園を利用している住民の方々に、お礼の気持ちとして、アイスクリームを振るまったんです。演出に使った植物も、その場で配りました。この公園を存続させるための寄付が集まるように、誰もが参加できるようにしました。

©︎kate spade new york

©︎kate spade new york

―ショーを通して、サステナブルで温かいメッセージが伝わってきます。

コレクションのアイデアは、自分が世の中で関心があることから湧き上がることが多いです。と同時に、温もりや優しさというのは、ブランドのアイデンティティを語る大切なキーワード。女性を美しく着飾らせる以上に、着る人に自信を与える。そんな “女性をエンパワーメントするブランド” としての魅力を考えたとき、自然がくれる前向きなパワーや、都会にいながら自然を発見する喜び…そんなアイデアが浮かびました。

私にとって、“女性をエンパワーメントする”というのは、「あなたは自分で自由に選択・決定していいんだよ」と伝えること。kate spade new york を通じて、お客さまに自分で自分を輝かせるチョイスを与えることが、私の使命だと思っています。

 

―クリエイティブ・ディレクターに就任して3年目。新生 kate spade NEW YORK を発展させる上で、意識した点は?

これまでの顧客が愛しているブランドのDNAを活かしつつ、洗練されたモダンなツイストを加えること。その二つのバランスはとても重要です。ブランドカラーのグリーンを、コレクション全体を通して深みのあるグリーンにアップデートしたり。カゴバッグや、レース、ツイードなどのアイコン素材も、現代的にアップデートしています。

 

ー前職の GUCCI (グッチ) や MICHAEL KORS (マイケル コース) では、アクセサリー部門で活躍されており、ウェアのデザインを手がけるのは kate spade NEW YORK が初だったとか。デザインアプローチに違いはありましたか?

新しいことにチャレンジする際は、その新しさに怯えるのではなく、これまでの経験をどうしたらポジティブに変換していけるのかを考えるのが好きです。過去にジュエリーやハンドバッグのデザインを多く手がけてきた私は、ディテールや機能にこだわる人間。ウェアでも同じアプローチが通用すると思っています。女性がそれを着て行く場所、目的、着心地のよさ……そういった要素を一つ一つ想像しつつ、ブランドらしい世界観や色、パターンを掛け合わせていくと、自然と理想のデザインが浮かびあがってきます。

また、シグニチャーのスペードを回転させるとハートに変化する新アイコン「スペード・ハート・ツイストロック」のアイデアは、これまでのキャリアを活かして誕生したものです。

―現職に就任以来、広告キャンペーンには現代社会で活躍する幅広い女性を起用されていますね。今年はグローバルアンバサダーに渡辺直美さんを起用されました。その理由は?

個人的にずっとナオミのファンでした。そしてkate spade というブランドにも、ごく自然にフィットすると思いました。「すべての女性がありのままの自分を愛し、自由に自己表現できるよう応援する」という、今年ブランドが掲げたメッセージを体現する存在として、ナオミはパーフェクトな存在。彼女が登場したキャンペーン広告は、すでに大きな反響を得ています。秋にはコラボバッグの発売も予定しているので、楽しみにしていてください。

 

―プライベートでは、サーフィンが趣味だそうですね。

夫と息子の家族3人で、サーフィンを楽しんでいます。こないだのクリスマスホリデーは、コスタリカにサーフトリップに行きました。島国アイルランド出身なので、海には特別な思いがあるんです。自然の中にどっぷりと浸れるので、気持ちがいいのはもちろん、波に乗っている間は余計なことを考えず無になれる。忙しい日々の中、とても貴重な時間です。