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広がるミレイの音楽世界 「皆さんと盛り上がるための曲を準備しています」

グッチ並木にて

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photography: hiroki watanabe
interview & text: mami hidaka

Portraits/

映画音楽に興味を持ち、映像を学べる大学に進学したという milet (ミレイ)。デビューと同時に映画やドラマの主題歌への起用が続いている彼女の音楽は、自然と映像と密接な距離にある。『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』の主題歌にもなっている新曲『checkmate』は、さまざまな楽曲を展開する milet の多面性を昇華させた新境地的作品だ。
そんな milet が艶やかなドレスに身を包み、GUCCI (グッチ) 並木オープンのスペシャルプレビューに登場。ライブパフォーマンスを終えた彼女に、多彩な音楽活動の背景を聞き、ミステリアスな魅力に迫った。

広がるミレイの音楽世界 「皆さんと盛り上がるための曲を準備しています」

─ 新曲『checkmate』は、重厚感のあるグルーヴとアグレッシブなリリックが融合した迫力の作品ですね。これまで以上にグローバルなソングライティングも際立っています。

もともと『賭ケグルイ』のファンだったので、映画の1作目やドラマ、アニメを見返したり、事前にいただいた脚本を読み込んで、さらにその世界に没入しながらつくった音楽です。『賭ケグルイ』のイメージに沿ってリリックにギャンブルなワードを散りばめたり、生意気でアグレッシブなメロディーを模索していったことで、これまでの自分になかった新しい色を出せたと思います。

作詞フローとしては、先に英語詞を書いてから、前後で韻を踏んだり、バランスを見てパンチの利いたワードを取り入れながら、パズルで遊ぶように日本語詞をはめていくことが多いです。そうすることで、英語詞と日本語詞が飛び交い、言葉のボーダーが曖昧な表現になるんです。『checkmate』に関しては、最初から完全に英語詞メインの楽曲をイメージしてつくりましたが、日本語詞のハマり方がとてもお気に入りです。

4月29日のオープンに先駆けて開催された「グッチ並木」のスペシャルプレビューにて。GUCCI のドレスを纏い、ヒット曲『us』など 3曲を披露。

── 多彩なコラボレーション歴から、コミュニケーションを大事にするアーティスト像があります。コラボレーションや即興ベースの制作の醍醐味を教えてください。

デビュー曲『inside you』のプロデュースを手がけてくださった ONE OK ROCK の Toru さんとは、コロナ禍でも完全リモートで共作していました。Toru さんからまだなにもメロディがついていないトラックを送っていただいて、私がメロディとリリックをつけてお返しして、フィードバックをもとに直して……の繰り返しで完成したのが前作『Who I Am』になります。

以前まで、主に現場で即興ベースの作曲をしてきましたが、コロナ禍で往復書簡的な作曲フローに切り替えてみて自分的には「意外とこれでもいけるな」と。リモートでは一度トラックをお預かりするので、そのたびにゆっくり自分の内側に浸り、過去を振り返ったり未来を考えたりしながら曲をつくることができるという利点があることを知れました。もちろんスタジオで一緒に制作する方が即興でできるし、現場特有のバイブスがあって楽しいのですが、リモートでの制作も違う面白みがあり、自分と向き合ういい時間になりました。長い時間をかけることで改めて自分の個性や思考を知り、それが音にも表れてきた気がします。どんな環境下でもつくり続けることへの自信と覚悟が生まれ、いまは私が大好きな海外のアーティストさんに 「なにか一緒につくろうよ」 と誘っているところです (笑)。

GUCCI の新作ドレスを着用。GUCCI は「毎年季節ごとに開催するショーの数を減らし、年に2回だけグッチの物語の新たな章を発表する」と2020年5月に発表後、春夏と秋冬、クルーズ、プレフォールのコレクションを支配していた言葉を捨て、独自のスケジュールでコレクションを発表している。先月15日にはGUCCI ARIAコレクションをオンラインで公開。次回のコレクションは11月3日ロスで行われると先日発表された。ドレス ¥825,000/GUCCI (グッチ)

── 今日はGUCCI のドレスを纏ってのライブパフォーマンスで、音楽とファッションの密接な関係を再認識するとともに、milet さんの新しい魅力を発見できた気がしました。milet さんを含め、アーティストがビッグメゾンとコラボしたり、ファッションアイコンになるケースが増えてきましたが、milet さんご自身のミューズはどなたかいらっしゃいますか?

私のミューズは Björk です。音楽はもちろん、その音と共鳴するようなファッションも彼女を好きな理由の一つです。GUCCI のクリエイティブ・ディレクター Alessandro Michele (アレッサンドロ・ミケーレ) が手がけた Björk の『The Gate』という MV の衣装は幻想的で神々しくて忘れられません。彼女は唯一無二の絶対的な存在感を放ちながら、どんな心境のときにもスッと入り込んでくれる大切な人です。

私自身もやっぱり衣装を着ると、カチッとスイッチが入りますね。とてもありがたいことに今日は2着のドレスを着せていただき、新しい自分になった気分でした。黒をベースにピンクラメのドットが施されたドレスは、華やかでありながら少しの毒っ気や鋭さがあり、GUCCI が醸し出すオーラを肌で感じています。淡いピンクのシフォンドレスは、キラッと光るストーンがエッジィな雰囲気。どちらもビター&スウィートのバランスが素敵です。

普段の私の一張羅は、好きなバンドの Tシャツです(笑)。なかでも Kula Shaker やくるりが好きで、気合を入れたいときは験担ぎでその Tシャツを着ています。

 

── 最後に、今後の展望を教えてください。

長い自粛期間のなかで、自分自身の気分を上げるためにもアップテンポの曲ばかりつくっていますし、音楽の力で周りの落ち込んでいる人たちをポジティブな空気で包みたいです。コロナ禍の間にも何度かライブをさせていただく機会がありましたが、お客さんはみんなマスクをして声を発してはいけないという状況ですが、このご時世でもライブにお越しいただけるファンの皆さんに感謝しつつ、同時に、誰もが思い切り声を上げて楽しめるライブが恋しくもなります。コロナショックで 「当たり前だと思っていたあの日々はなんだったんだろう」 と思ってしまうほど、ぐるっと世界が変わってしまったので、コロナ前のステージからの景色を目標にしながら、その日が戻ってきたときに皆さんと盛り上がるための曲を準備しています。