fumi nikaido
fumi nikaido

「通過点のような存在でありたい」俳優・二階堂ふみが生きるまっすぐな姿勢

fumi nikaido

interview & text: Yoshiko kurata
photography: Kazuyoshi Shimomura

Portraits/

俳優・二階堂ふみは、近年「俳優」という肩書きが持つイメージを超えて自身の信念と言葉を実直に語りはじめている。その中のひとつに、アニマルライツを考えたアクションがある。アニマルライツとは、言葉の通り「非倫理的扱いをなくし、動物が動物らしく生きる権利」を意味し、一見聞くと当然大切にすべきことだと理解できるが、まだまだ衣食住さまざまな所で犠牲を生んでるという。

これまでその問題意識を言葉で表現してきた二階堂ふみは、10月25日に発売した木の実由来のファッションブランド KAPOK KNOT (カポックノット) との共同開発でアイテムを販売し、アニマルフリーファッションを形にした。瞬く間に一部完売したアウター3型は数量限定で受注販売し、それらの収益の10%を「アニマルライツを追求する団体」に寄付する循環まで考えたコラボレーションとなった。

取材中もなにひとつ迷いのない芯の通った姿勢が印象的だったが、「アニマルライツを知っていくうちに、自分に自信が持てるようになりました。それまでは自分に自信がないから物質的なもので身を固めたり、そうじゃないと自分のコンプレックスに耐えきれなかったんです」と過去の自分を振り返る。KAPOK KNOT とのコラボレーションについて、どういう存在でありたいかを話す表現者の未来への眼差しは澄んでいた。

「通過点のような存在でありたい」俳優・二階堂ふみが生きるまっすぐな姿勢

―これまで二階堂さんは、アニマルフリーファッションの可能性と魅力について、メッセージやアクションを通して伝えてきましたね。ファッションを通して伝える今回の取り組みを体験してみていかがでしたか?

洋服を作ることの大変さを改めて感じましたね。トレーサビリティをしっかりと確保して、なおかつしわ寄せや犠牲を生まないことも大切にすると選択肢がより狭まってきて。その選択肢の中で洋服を作ること自体が、今後のファッションの課題なのかもしれないと思いました。でも、その限られた選択肢の掛け合わせもどんどん知っていくことによって、さらに透明性があるものを選べる学びと楽しさもたくさん得られました。今回発表したアイテムは、これまであったらいいのになと考えていたものを作りました。まずは今回の取り組みを通して、羽毛のライフピッキングや雇用問題、環境負荷など含め消費者としても社会的責任が重要であることを知っていただけたら嬉しいです。

―写真家・下村一喜さんとアイデアを出し合いながらメインビジュアルを撮影されたそうですね。

それぞれ違った個性を持つ人物が6ピースを纏っているイメージで撮影しました。肌の色、体型、性別関係なく、さまざまに自分の個性を尊重して着ていただけたらと想像しながら表現する楽しい撮影でした。

―今回のコラボレーションで使用されているカポックという素材について、どのような可能性を感じましたか?

初めてカポックを知ったとき、かなり衝撃的でしたね。現地の東南アジアでは昔から馴染みのある素材として日常生活に取り入れられてきたそうですが、木を伐採せずにどんどん自生するので循環に適した素材だと驚きました。これまで代替品として使われてきたリサイクルポリエステルでは、アヒルを守れたかもしれないけど、片一方で土に還らないため汚染につながり、最終的にそれらを食べる海洋生物や野生動物を傷つける可能性も十分にありました。実際、自分自身も洋服を買うときに、そういった生産背景を見ながら何が正しいか常に迷っていたんですよね。そんなときにカポックに出会い、新たにファッションの可能性を広げられるんじゃないかと感じました。KAPOK KNOT の場合は、実際に現地の方々とお話しして、雇用問題もクリアにしながら土に帰る機能を持つものとして植物由来の素材を使って形にしているので、本当に新たな素材だなって。

―先ほどお話しされていた通り、アクションをする際に選択肢が狭まることにハードルを感じる方もいらっしゃると思うのですが、二階堂さん自身、どのように最初のアクションに繋げ、継続させていますか?

私は動物と共鳴し、それまであまり動物性素材に対して意識していなかった頃の自分に罪悪感を感じたことがアニマルフリーへの最初の動機となりました。最初は知ることによって着れるものが少なくなっていたんですけど、新たな素材に出会ったりして、最終的に自分の居心地の良い選択肢が広がっていったように感じます。例えば、レザーであればアップルレザーやキノコレザーなど新たな素材も生まれていますが、だからと言って今まで長い間世代を超えて使われてきた耐久性のあるレザーを否定しようとは思いません。二項対立で考えるのではなくて、いろいろな意見の中で最善を見つける作業をしていくことが大事だと思うようになりました。なので、まずは知った後に、自分に合った選択肢を取捨選択するようにしています。

―一定の基準をクリアしつつも、正解と間違いだけにとらわれるのではなく、自分のライフスタイルに合った選択肢を見つけていくことが持続に繋がるんですね。

50年前と違って、いまは人それぞれ違うライフスタイルを取り入れているので、一緒くたに何がダメで正解なのか決める必要はないと思います。いまも自然と隣り合わせで共存しているエスキモーの方々は、生きるために自分たちの手で動物の息をしめて肉を食べ、副産物として出た毛皮を身につけていて。その行為と、おしゃれの装飾のために毛皮があしらわれることは全く意味が違うものですよね。自分の文化的背景や生活スタイルの中で、出来る限り消費的搾取をせずに循環出来る最善のバランスを取ることが今後のファッションの課題だと思います。

―いま「サステナブル」という言葉がよくも悪くもトレンドキーワードになっているように思いますが、本質的にはそのようにじっくりと自分に向き合っていく中で見つけるものですよね。発信者、表現者として意識していることはありますか?

先ほどお話しした通り、ちゃんと自分のサイクルに則って生活しながら、動物を搾取するような構造に加担にしないことを広めていきたいです。やっぱり本質的には、動物を搾取することは美しくないことですし、人の豊かさを循環するには合わないこと。そうしたときにこれからの人類の新たなテーマとしては、人間以外のこととの共存があると思っていて。もともと職人の手が込んでいるものがファッションで重宝されてきた起源を辿れば、使い捨て消費されるものは今後時代にそぐわなくなっていくんじゃないでしょうか。生産性を上げるための製造方法ではなく、KAPOK KNOT のようにトレーサビリティを確保した上でもの作りをしていける時代になっていけば良いなと思っています。

―実際にご自身でアクションしてきた中で、変化を感じたことはありますか?

アニマルライツや環境問題を知っていくうちに、自分に誇りが持てるようになりました。それまでは、自分に自信がないから物質的なもので身を固めたり、そうじゃないと自分のコンプレックスに耐えきれなかったんです。でもアニマルライツや環境問題を意識するようになってから、自分のことも大切に思えるようになりました。だから、そのような循環を行うことで自分の心も循環するんだなって。もし搾取構造の中で消費を繰り返すと、自分もどこかで消費の対象となって全て自分自身に返ってくる。そういうことが起きない優しさの循環がこれからの新たな美意識として広がってほしいなと思います。

―「俳優」という肩書きから想像する従来のイメージを超えて活動していらっしゃいますが、どのような人物像でありたいと思いますか?

自分に興味を持ってくださった方が、違う分野に興味を広げる通過点としての存在でありたいです。なので、見る人にとって自分が最終地点じゃなくてよくて。例えば、今回の取り組みでも私を通して、カポックや畜産動物保護について知ってくださることが嬉しいんです。それはファッションに限らず映画でも同じで、劇場に見にきてくださって映画という文化を好きになってくれることも同じくらい嬉しいです。そうやって本来ファッションや映画などの文化も、人の心を豊かにするなくてはならないもの。自分が豊かになれば相手にも寛容的になって対立や戦争も生まれなくなると思うんです。一個人としては、環境問題含めて様々なことを学校で触れている次世代の方々と意見交換をして常に自分の考えもアップデートしていきたいです。そのような若い世代や専門家、研究者の方とお話ししながら、クリエイティブを通してわかりやすい形で発信していきたいです。

―今回の KAPOK KNOT とのコラボレーションを経て、今後やってみたいことはありますか?

今回売り上げの一部を動物愛護団体に寄付するドネーションの取り組みを行なっていますが、今後もなにかしらの形でドネーションは続けていきたいと思います。団体を存続させた先に意味と結果があると思うので。今回はお洋服という媒体を通して、アヒルのライフピッキングを含め自分が大切にしていることを認知していただけたらと思いましたが、次はもしかしたら違う形で発信するかもしれません。私自身もなにがあるのか模索中なので、さまざまな方々の意見を聞きながらアクションし続けたいです。