ai yoshikawa
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「舞台上で自分を解放できたら」10年ぶりの舞台に挑む吉川愛の“演技観”とは

ai yoshikawa

photography: kaho kikuchi
interview & text: nozomi takagi

Portraits/

幼少期から数々のドラマや映画に出演し、映画『ハニーレモンソーダ (2021年)』では第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、破竹の勢いで成長を遂げている吉川愛。彼女が今年10月より挑むのは、シェイクスピア『マクベス』に登場する“マクベス夫人”を主人公とした舞台『レイディマクベス』だ。世界初演となる今作はレイディマクベス役・天海祐希をはじめ、豪華俳優陣が揃う。

今回、吉川はレイディが自身のキャリアを断念するきっかけとなった、レイディの娘役を演じる。舞台出演は2013年以降二度目となる彼女が、本作にかける想いとは。台本制作も大詰めに入った6月末、吉川に話を伺った。

「舞台上で自分を解放できたら」10年ぶりの舞台に挑む吉川愛の“演技観”とは

 

—吉川さんにとって『レイディマクベス』は人生二度目の舞台出演となりますよね。

不安もあり、楽しみでもあります。初めての舞台は『雨と夢のあとに (2013年)』でした。その時は緊張して思い通りの演技ができず、悔しい思いをしたんです。今回はそうそうたるキャストの皆さんに囲まれているのもあり、背筋が伸びます。勉強をさせていただくこともすごく多いと思いますし、ご迷惑をおかけすることもあるかもしれません。ただ精一杯自分ができることにはチャレンジしたいです。

―今回共演される天海祐希さんや鈴木保奈美さん、要潤さんとは過去にも共演されたことがありますよね。

要さんは私が小学校4年生のときに「ハガネの女 (2010年)」で初めて共演しました。その時は担任の先生と生徒、という間柄だったんです。その一方鈴木さんは「インフルエンス (2021年)」で共演させていただいたのですが、シナリオの時系列的に現場でお会いすることはなくて。一緒にお芝居できなかったからこそ、楽しみにしています。そして天海さんは「緊急取調室 (2019年)」でご一緒したのですが――実はもっと昔、スタジオの廊下ですれ違ったことがあるんです。まだ私も小さくて、母親と手を繋いでいるような歳でした。天海さんは廊下をランウェイのように歩いていらっしゃったんです。初めて女性に対し「かっこいい」と思い、子供ながらに見とれてしまいました。

 

―幼い頃から憧れの存在である天海さんと、今回は“母娘”という間柄で共演するわけですね。

大変光栄です。母親であるレイディが、娘にとってどういう存在なのか。全貌が見えていませんが、想像を膨らませているところです。でもなんとなく、違う世界線ならすごく娘を愛している人間なのでは、と捉えています。

©︎2023 レイディマクベス

―吉川さんはご自身が演じる「娘」という役について、最初にどういった印象を持ちましたか?

 一見するとかわいそうな子。でも、クールな側面も持っているイメージがあります。少なくとも、気持ちを前面に出すようなタイプの子ではないのかもしれません。実はそういうところだけ、自分に近い部分を感じています。私も喜怒哀楽などの感情、特にネガティブな面は、あまり人前に出さないんですよね。

―娘のようにシリアスな役を演じるとき、意識することは?

シリアスな役は全般的に、普段の私自身とはかなり離れた位置にあると思っています。ただ「ずっとポジティブなタイプだったかな?」と自分を省みると、別にそうでもなくて。生活のどこかで負の感情を抱く瞬間は必ずあるんです。そうやって素の自分との共通項を探し出しながら、役作りをするようにしています。ただ、ポスター撮影の時に話を伺ったところ、物語の序盤と終盤を飾る重要な役なんですよね。しかも他の登場人物には役名がついているのに、私とレイディマクベスには名前がないという。

―シェイクスピア作品に登場する他の夫人たちには名前があるのに、マクベス夫人(レイディマクベス)は唯一名前がない。娘に名前がついていないことも、重要な鍵になりそうですよね。

じわじわとプレッシャーを感じ始めています。実はシェイクスピアの『マクベス』を、今まで読んだことがありませんでした。普段は原作や原案ありきの作品の場合、イメージを固めすぎないよう、台本の中だけで想像を膨らませることが多いんです。原作に忠実に演じる必要があるときだけ手に取る、という感じ。だから今回もあえてシェイクスピアを読まずに挑もうと思ったのですが……『マクベス』は読んでみようと決めました。

―『レイディマクベス』の稽古は8月中旬からスタートします。舞台稽古に向けて準備していることはありますか?

実は、台本を受け取ってから本腰を入れることが多いんです。重要なセリフや行動をマーキングしながら「今回はこういう役なんだ」ということをインプットしていくというか。

―では現時点では、まさにこれからウォームアップを始めるところですね。

まだ情報が少ない段階で考え始めてしまうと、ずっとそれしか考えられなくなってしまうんですよ。迷走したくないからこそ、あえて深く考えない状態を作っています。ドラマや映画と違って舞台は稽古期間が用意されているので、稽古を通して考えを深めていきたいです。そして稽古中はなるべく早く、自然な演技ができる状態まで自分を持っていきたいな、と思っています。

―約1ヶ月間の稽古期間を経て、2023年10月にはいよいよ公演がスタートします。最後に本番に向けた意気込みをお聞かせください。

まずは、自分を解放したいです。演技において感情を描いているうちに、「なんでこうしなかったんだろう」「あのときこういう演技をすればよかった」と反省することが多々あります。そういった「こうすべきだった」を解消し、舞台の上で満足できる演技ができたら良いな、と思っています。とても楽しみです。

©︎2023 レイディマクベス