大きな傘のもと、シー ニューヨークの2人が生みだすハーモニー
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Sean Monahan & Monica Paolini
photography: asuka ito
interview & text: mami chino
2006年、メディア・テクノロジー業界で活躍していた Sean Monahan (ショーン・ モナハン) が、ファッション業界で働いていた Monica Paolini (モニカ・パオリーニ) からインスパイアされる形でスタートした Sea New York (シー ニューヨーク)。モダンでありながらもフェミニンなディテールが光る、ひねりの効いたデザインで、世界中の女性を魅了している。
ニューヨークを拠点とする Sea New York だが、日本では渋谷PARCOでポップアップストアを5月26日(日)まで開催中。Clarks Originals (クラークス オリジナルズ) のワラビーや岡山デニムなど日本限定アイテムが発売される他、2024年プレフォールコレクション「Harmony」シリーズのフルラインナップを世界最速で手に入れることができる。ブランドにとって日本初となる今回のポップアップストアは、デザイナーの Paolini とMonahan にとっても特別なものになったと、オープン直前に実施したインタビューで語ってくれた。
大きな傘のもと、シー ニューヨークの2人が生みだすハーモニー
Portraits
ヴィンテージのレースや刺繍のファブリックなどクラフトマンシップに溢れる素材をベースに、モダンなシルエットへとアップデートさせる Sea New York のデザインは、ブランドスタート当時から多くのファンを抱えている。実は、その反応が特に強かったのが日本らしく、意外なことに初めてインポートをしたのも日本なんだとか。そんなブランドスタート時のエピソードや、デザイナーの2人が幼馴染であることなど、18年目を迎えるいまだからこそ気になることを中心に話を聞いた。
―確かに日本には Sea New York のファンが多く存在しますが、意外とブランドの成り立ちを知ってる人は少ないかもしれません。改めて、どういうきっかけでブランドをスタートさせたのかを教えてください。
Sean Monahan (以下、M):そうですね、まず僕が2006年に一人でスタートしました。それで当時別の会社でデザインをしていた Monicaと一緒に働きたくて声をかけたんです。彼女が加わったことで、デザイン面でよりクラフトやハンドメイドのものにフォーカスするようになりました。
Monica Paolini (以下、P):そうそう。ブランドスタート時、私は別の会社の仕事をフルタイムで掛け持ちしている状態だったから、Sea New York の仕事は週末にしかできなくて。そこを辞めて、やっとフルタイムでできるようになったのが2009年の頃ですね。
―ブランドをスタートする時、最初に作りたかった服や、その時に考えていたイメージがあれば教えてください。
P:私はとにかく昔からヴィンテージが本当に好きで、熱心に集めていました。でも一点だからこそサイズが合わないものが多いのも事実……。それをもう一度着れるようにしたかったというアイデアと、せっかくならもっとモダンにアレンジしてみてはどう? というアイデアからスタートしていったんだと思います。最初に作っていたのはヴィンテージのクロシェを使ったピースだったかな。
M:彼女はレースや刺繍の入ったナプキンをたくさん持っていて、世界中のフリーマーケットから集めていましたね。彼女の家の地下室や倉庫にぎゅうぎゅうには詰め込まれているんですよ。本当にたくさん! でも、そうやって集めていたものが、いつの間にか Sea New York のアイデンティティそのものにも繋がっていったから不思議だなと。
P:デザインをする上で、私はついフェミニンなデザインだったり、ヴィンテージのオリジナリティを活かしすぎたもの作ろうとしてしまいますが、それを見た Seanが、もっとモダンに、もっとトムボーイにした方がいいって意見をくれるんです。時にはそれで兄弟喧嘩みたいになることもありますが、そうやって素直に話し合えるおかげでいいものを作れている気がします。そういえば、Sea New York もかれこれ18年目だから、デビュー当時のコレクションはもはやヴィンテージとも言えますね(笑)。
―幼馴染ながらお互いのスタイルには目が離せなかったとか、幼少期からの友達ならではのエピソードを教えてください。
M:正直、ずっと目が離せなかったんですよね!(笑) 彼女のおばあちゃんが買っていた『VOGUE (ヴォーグ)』の雑誌を常に持ち歩いているような女子高生で、週末は片道2時間もかけて FIT (ニューヨーク州立ファッション工科大学) にも通っていました。彼女はその頃からファッションへの情熱で満ち溢れていましたね。一方、僕はパーティざんまい(笑)。
P:本当、パーティばっかり(笑)。でも、こうして考えると、彼がたくさんの人と繋がってくれたおかげでブランドが大きくなったとも思えるんですよね。
M:だからいまだって、オフィスになるべく長居しないようにしているんです。
―Paolini さんはヴィンテージに惹かれるようになったのはいつからですか?
P:たぶん高校生かと。私たちが住んでいたニューヨークの北部の街にはスリフトショップが山のようにあって、70sとか80sのクレイジーなデザインの服をゴミ袋に詰め込めるだけ詰め込んで買っていました。いまでこそそういう古着屋はたくさんあるけど、当時はそういう服を買う人が周りにいなかったから、選びたい放題だったんですよね。さっきも話しましたが、その時、Sean はパーティに明け暮れていたから……。私と時間の使い方がまるで違っていたからおもしろかったんですけどね。
―たしかに全然違う高校生時代ですね。
M:他にすることが何もなかったんですよ。本当に何もない街で。
―では、今回のような路面店でのポップアップストアは初めての試みですよね。もともと日本のファッションスタイルについてはどんなイメージをお持ちでしたか?
M:独特な着こなし方があるような気がします。思いもしなかったアイテムをミックスしてくるような感じの。
P:以前 Sea New York をおもしろく着こなすには? を考えていたときに、世界中のファンのコーディネートをチェックしたことがあります。その時に一番印象的だったのが日本の女の子たちでした。彼女たちの着こなしがインスピレーションになってデザインしたこともあるんですよ。なんとなくタイトな感じは好みじゃなくて、レイヤードが上手、それでバギーとか大きなシルエットのものを大胆に着ている感じ。私はそこまで上手にできないけど、あのレイヤードのスタイルは大好きで、見ていてすごく刺激的でした。
―今回のポップアップでは日本にいるお客さんとどんなコミュニケーションをとっていきたいですか?
M:まずは「Harmony」のフルコレクションを直接見ていただき、ブランドのフィロソフィーを感じとっていただけたら。僕たちが世界中で探して魅了されたクラフトを取り入れたコレクションで、それをモダンに昇華させるだけじゃなく、その制作過程もアップサイクルやリサイクルであることを重視しています。単にコレクションというよりかは、大きな傘のもと今後も広がっていくプロジェクトでもあり、僕たちがどうやいう考えやマナーを持って服づくりをしているかをより理解してもらえるものになっています。
P:あとは、今ってすごく円安だからこういう海外からのブランドのイベントも、日本人にとってはなかなかハードルが高くなってしまっていると思うんです……。
M:そう。僕たちは、ただインポートブランドとしてポップアップストアをやりたかったわけじゃなく、もっと日本のファンに寄り添いたいと考えています。なので、まずは価格帯をドメスティックブランドと同じくらいになるように見直しました。ジャパンエクスクルーシブの岡山デニムやTシャツは日本製にこだわった上で、さらにお手頃な価格帯にアレンジすることができました。
―なんと粋な計らい…。
M:というのも、2009年にアメリカで起こったリーマンショックの影響で、僕たちも当時は最悪の経済状況でした。でもその時、日本がすごくよくしてれたことを覚えています。Sea New York にとって海外で初めてバイイングがあったのは日本でした。
P:しかも当時はアメリカより熱心に買ってくれていたくらいなんです。
M:オンラインストアや Instagram を通じて、日本にたくさんのファンがいることを知っていました。それがあったから、今は世界中に展開できるほどのブランドにまで成長を遂げることができたと思っています。なので、いつか日本で盛大にポップアップストアをオープンさせたいって思っていたんです。今のところ、日本だとセレクトショップに何点かアイテムを取り扱ってもらっているだけですが、こうして今回のようにお客さまがフルコレクションを一度に見れる機会は初めてなんじゃないかと。
―日本限定アイテムのひとつでもある岡山デニムですが、そこで Sea New York らしさを表現する上でこだわったポイントを教えてください。
M:ウォッシュにこだわったのと…。
P:もともと私たちは何本かのデッドストックのデニムをパーツ別に解体して、それを別々に組み合わせたアイテムを作っていました。それが次第に Sea New York のデニムのシグネチャーとなったので、今回もその発想を取り入れました。
M:僕たちはデニムそのものの作りに特化したいわけじゃなく、すでに存在している素晴らしいものにひねりを加えることで、無駄なくかっこいいアイテムを生み出せるんじゃないかと考えています。
―では最後に、今後のビジネス展開やブランドの方向性について教えてください。
M:まずはこの「Harmony」をもっと知ってもらいたいです。これを考えるまで2、3年はかかりましたし、もっとファンや僕たちのスタッフにもシェアしていきたい。今後はものづくりをする上で、すべての生産プロセスを見直していきたいし、地球に寄り添っていかないといけない。そのためにデザインにも理由づけをして、ただファッションを楽しむだけじゃない表現のあり方を探っていきたいと思っています。