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ニューエイジ・レジェンド、ララージと旅する音の宇宙と瞑想体験

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interview & text: saki yamada

Portraits/

音を通じて自分と観客の間にエネルギーを通わせ、次第に紡がれる一夜の奇跡体験。1970年代から即興と瞑想を融合して作り上げてきた Laraaji (ララージ) のパフォーマンスで気付かされるのは、それが特別なことではなく、自分の内側に静かに眠る一部そのものであるということだ。Brian Eno (ブライアン・イーノ) や細野晴臣らとの共演を経て、彼の中に浮かび上がってきたカオスや笑いといった人生に密着するキーワード。身近/実践可能な要素を取り入れながら、宇宙的なヴィジョンを構築していくからこそ、彼のライブは瞑想的で深く心に残るのかもしれない。

5年ぶりの来日(東京公演にはスペシャルゲストに Marihiko Hara を迎える)を控えた Laraaji は、インタビュー中ずっと笑顔を絶やさず、大らかに語りながらも、その言葉の端々に揺るぎない信念が感じられた。

ニューエイジ・レジェンド、ララージと旅する音の宇宙と瞑想体験

—前回の来日から約5年が経ちました。再び日本で演奏できることについて、今どんな気持ちでいますか?

すごくピースフルな気持ちでワクワクしているよ。京都、東京、札幌で心温まる経験ができるのを楽しみにしている。日本は私にとって本当に刺激的な場所でもあるから、探求するのがすごく楽しいんだ。

—パフォーマンスに関しては、何かプランはありますか?

電子ツィター、カリンバ、声を使った即興演奏というのがテーマになる予定だ。そして、ピアノがあればピアノも使おうと思う。あと、大きな吊り下げ式のドラがあればそれも使おうかと。まだ何が準備できるかわからないけれど、電子ツィターを使うことは確か。あれは私のシグネチャー・サウンドだからね。

—では、ショーは大部分が即興で行われる予定なんですね?

そうだね。もちろん練習もリハーサルもするし、決まっている部分もある。でも最終的には、創造的な意識の状態に入り、どの方向に進んでいくかを音楽に委ねようにしているんだ。

—あなたのパフォーマンスは、静寂と共鳴が同時に存在しているような独特の空気を感じます。演奏中、リスナーとの関係性はあなたにとってどういうものですか?

とてもいい質問だね。私とリスナーの間には隔たりはなく、私自身も観客なんだよ。私たちは皆一つで、ひとつのある超越的な空間の中で私とオーディエンスは繋がっている。私は、その空間で至る所に存在している音楽をチャンネリングしているだけで、私とオーディエンスは分離してはいないんだ。

—皆がひとつになるというのはあなたの音楽のコンセプトのひとつでもありますね。私はそれが大好きです。聴く人の存在やエネルギーに関してはどう思っていますか?

私がパフォーマンスしている時は、彼らも一緒にパフォーマンスしてくれるんだ。皆私が演奏する音楽のジャンルを認識して、心からそれを受け入れてくれる。中には演奏を聴きながらヨガのポーズをとる人までいるんだよ。床に座ったり、目を閉じたりね。彼らはそうやって想像の世界に入り込み、場合によってはサイケデリックなイメージを頭の中で広げ、非常に投入感のある体験をしているんだ。

—あなた自身もパフォーマンス中に瞑想しているんですか?

瞑想の状態に意識を持っていこうとはしているよ。

—どのようにして自分の音楽スタイルを築き上げているのですか?

実験を重ね、たくさん演奏し、それを録音してたくさん聴き返すことで、自分が好む部分が何かを追求しているんだ。そして、レコーディングやパフォーマンスの準備として、瞑想、沈黙、ポジティブな自己暗示ができるよう訓練している。それを重ねることで年月を経て自然に現れてくる即興的な要素が私の音楽の基盤になっているんだ。私の音楽には、私が長年使ってきた自発的な語彙が自然に注ぎ込まれている。私の演奏スタイルは、1979年に演奏を始めた頃から私の中に現れてきた語彙に基づいているんだよ。だから、私の楽器の扱い方は、瞑想的な理解の流れの中で築き上げられてきた。目には見えない世界を指し示すため、私は音を用いて私たち自身が宇宙と一体であるという記憶を活性化し、音を通して永遠性路調和の海を指し示している。だから、私はツィターの36本の弦を、調和の取れた和音や調和の取れた感情に調律するんだ。そして、その弦とやりとりする中で、私は宇宙全体とのやり取りを表現しているんだよ。ツィター、カリンバ、そして自分の声を通して、とても平和で、時には流れるような、また時には混沌とした、もしくは詩的な、あるいは静かな音を奏でることで、私は宇宙全体のイマジネーションを自由に操っているんだ。

—それは素敵ですね。演奏中にどんなイメージを呼び起こすのか気になります。具体的にどのようなイメージか教えてもらえますか?

1974年に瞑想をしていた時に、音のヴィジョンが降りてきたんだ。それは非常に宇宙的なビジョンで、とても体験的なものだった。そのビジョンは、第三次元と第四次元を超える時間と空間を感じさせるもので、私は永遠を感じ、全ての創造物の統一性を感じた。それが降りてきた瞬間は、私はどうすればいいのかわからなかったんだ。でも、やがてその感覚を呼び起こせるようになり、その感覚が私の音楽を構成し、演奏する時にその感覚が表れるようになった。だからこそ、私は即興演奏をやるんだよ。その感覚が私を通して表現されるようにね。永遠、そして統一されたとても深い平和のそのヴィジョンを、私は感情の記憶として持ち続けているんだ。

—1974年のその時の瞑想は一人でやっていたのですか?それとも誰かと一緒に?

瞑想の訓練を始めたのは1972年で、1974年までには、私は深夜12時から朝の6時まで一人で何時間も瞑想するようになっていた。

—それは自宅で?

そう。1972年に瞑想とは何かを理解するために研究を始め、私をその状態に導いてくれる先生たちに出会った。そして、瞑想の呼吸法や、21分間動かずに座り続ける方法、一つの場所に集中する方法を学んだんだ。そして、自分自身から全ての肩書きや役割を剥ぎ取る方法も学んだ。その時間は、私はミュージシャンではなく、男性的なエネルギーも持たず、アメリカ人でもなく、地球の生き物でもない。ただ“私は存在する”という純粋な状態になるために、全てのラベルを自分から剥がすんだ。それによって私は、全ての問題は私自身ではなくそれらのラベルに属していることを学んだ。だから、ラベルから解放された状態では、深い平和の状態で過ごすことができ、時間をかけてそれが容易にできるようになっていったんだ。

—2025年になって、あなたの音楽表現はどのように変化していると思いますか?

音楽にもっとリズムの情熱を取り入れるようになったと思う。今私は、5つの異なるリズムを使っているんだ。流れ、スタッカート、カオス、叙情的、そして静けさ。そして、長い沈黙を残すことの価値にも気づいた。そして笑いに効果があることにも気づき、今ではパフォーマンスに笑いも組み込んでいる。笑いは癒しの言語であり、周りに広がる。そして、オーディエンスの緊張をときリラックスさせ、彼らも自分自身の笑いに浸ることができるからね。

—新しい音楽をリリースする予定はありますか?

一曲あるよ。「Holomin 1」というシングルが今リリースされている。そしてもう一曲、日本人ヴォーカリストの Saki が参加してくれているトラックもリリースされるよ。あと、ハープ奏者の Mary Lattimore (メアリー・ラティモア) のアルバムにも取り組んでいる。

—他のアーティストをプロデュースする時はどのような作業過程なのでしょう?

プロフェッショナルなスタジオで作業している。スタジオに行き、その中でアーティストと時間を過ごし、即興をやり、そのセッションの一番興味深い部分を編集するんだ。

—やはり即興はあなたの関わる音楽の核なんですね。

そうだね。もちろんアイディアについて話し合ったりもするけど。主にチューニングや音楽の内容。一般的に、今回の音楽のターゲット層は、深く聴き入るリスナーやニューエイジ音楽のリスナー、または平和的な音楽を好むリスナーが多い。つまり、ロックやジャズではないんだ。だから、ニューエイジやニューリスニング、もしくは瞑想的なリスニング・ミュージックといったジャンルを提案したりしている。そういった音楽には非常に穏やかな方法で耳を傾け、自然や宇宙、時空を超えた世界が思い起こされ、深い思考や瞑想に浸ることができるんだ。

—あなたの音楽は単に平和的なだけでなく、深い思考の世界へと引き込まれますよね。

深い思考、平和的な思考、平和的な感覚、そして至福。私たちが認識する多くの音楽は、ヨガや瞑想に親しむ人々が好むもので、彼らはヨガのための音楽に慣れている。シャバーサナという言葉は聞いたことあるかな?ヨガの最後のポーズで、非常に平和的で、ヨガを実践する人ならそのピースフルなポーズにとても馴染みがある。私は多くのヨガクラスで演奏を行ってきたけれど、ライブパフォーマンスでその特定のポーズの時に演奏すると、人々が本当に平和な状態に導かれることに気づいたんだ。

—それはすごいですね。あなたの多くのオーディエンスは皆それぞれ違った人生があり、異なる状況、異なる経験があります。あなたは音を通して彼らを結びつけ、平和に向かって一緒に進むよう導いているんですね。

私は人々を集めひとつにしているわけではない。私たちにはすでに自分たちが一つになっている場所が存在し、私はその場所を指し示しているだけなんだ。その場所とは、自分の中のど真ん中にある。全ての人の真ん中に、私たちはひとつであるという記憶が存在しているんだよ。

—なるほど。その場所に向かうよう導いているんですね。今回の日本公演で、何か試してみたいことなどはありますか?

もし銅鑼があれば試してみたいね。そしてピアノも。そして、私はいつもサプライズを楽しむようにしているんだ。東京にいる時は、私はいつも HANDS (ハンズ) に行って買い物をする。あと、京都にいるときは洋服屋を見るのが好きでね。京都ではユニークな服が見つかるんだ。あと、京都で寺を巡るのも好き。あと、私はベジタリアンだから、アメリカにはない美味しいベジタリアンフードを探すのも一つの楽しみだね。

—日本や他の国での何か感動的な思い出、経験はありますか?

私は人々が笑っているのを見るのが大好きだから、各地で笑っている人々を見ることが感動的な経験だな(笑)。

—何か“笑い”に関するプロジェクトを他のアーティストと一緒にやっていましたよね?

細野晴臣と一緒昔日本でレコーディングしたことがあって、彼がそれを「笑い」と呼んだのは覚えているよ。「laughter」という言葉が入ったタイトルだったと思う。あと、今思い出したけど、日本のハロウィンを見てすごく興奮したんだ。前回日本に行った時、ハロウィンの夜に到着したんだけれど、東京の人々がハロウィンに情熱を注いで仮装しているのを見てすごくクリエイティブにハロウィンを楽しんでいるんだなと思ったね。

—では、ここでファッションについても聞かせてください。音楽とファッションはあなたにとってどのように結びついていますか?

私にとっては太陽の色やオレンジが中心的なカラーで、それ系の色の服をたくさん着る。スピリチュアルな儀式でパフォーマンスする時なんかは全身白を着る時もあるけどね。そういう場ではミュージシャンは白を身につける決まりがあるから。でもそれ以外では、私は1985年からずっとサンカラー(太陽の色)を身につけているよ。

—サンカラーはあなたにとってどのような意味があるのでしょう?

サンカラーは夕日の色と日の出の色。夕日は自己を知る古い方法で、日の出は自己を知る新しい方法。つまりは変化を意味し、自己についての考え方の変化、アーティストとしての方向感覚の変化を意味している。1974年の経験を通じて、私の中には大きな変化が起こった。その経験は、私というアーティストが音楽の世界で何ができるのか、そして、音を用いて意識を永遠や普遍へと向けることができるという気づきを私にもたらしてくれた。オレンジ色は、私に起こったその変化を象徴しているんだよ。ただワールドミュージックを演奏することから、音を通じて宇宙的な意識を送り届け、統合的な感情を表現するようになった。この大きな転換を表しているのがサンカラーなんだよ。

—100年後の未来において、音楽は人々にとってどんな存在であってほしいと願いますか?

100年後には、私たちは人間の身体ではなく、代わりに光やエーテルの中に存在しているかもしれない。これらの身体は、いわゆる、連続した現在瞬間の中に滞在するのに適していると思う。そして、あらゆるものを容易に満たすことが可能でもある。そこに、分離という概念は存在しないんだ。

—アーティスト/ミュージシャンとして、あなたは何を創造したいと考えていますか?

私は、全てのリスナーがどれだけ平和な気持ちになれるかを思い出せるような体験を創造したいと考えている。そして、アーティストたちがより自由な環境で想像力がどこまで広がるかを体験できる場を提供したい。そのために、私の音楽は、より自由な環境を暗示し、ヒーラーたちが癒し、作家たちが書き、ダンサーたちが踊るための空間を作り出す。第三次元や第四次元よりもはるかに現実感のある空間をね。

—具体的にはどのような空間?

エテリアルな空間。エテリアルとは宇宙的であり、無限の空間、永遠の空間を意味する。人々は、森や林を歩いたり、川辺に座ったり、海を眺めたり、山を見つめたりすることで、瞑想的な場所にいることができる。私は、この瞑想的な感覚をリスナーたちに提供したいと考えているんだ。なぜなら、現代のニュースは多くの人々を不安にさせ、現代の世界では多くの人々がリラックスする方法を知らないから。だから、私の音楽がリラックスするための音楽体験を求めている人々に役立てば幸いだと思っているよ。

—このカオスな世界で、あなたはどのようにして感情や意識を調整しているのですか?

カギは、世界にいるのではなく宇宙にいるのだと理解すること。私は世界だけに存在しているのではなく宇宙に存在している。世界は私を狂わせるが、宇宙は平和だ。永遠の今こそが平和なんだ。だから私は、宇宙的に考え、世界で行動している。世界の混沌を見ても、それが私の混沌でないと私は知っているんだよ。瞑想やヨガ、実践を通してうちなる平和や静けさと繋がっていれば、朝目覚めた時にその平和と一緒に目覚め、その平和を携えて歩むことができる。私は世界の中を動いているけれど、世界が私の唯一の環境ではない。私は永遠の今の中に存在しているんだ。だから、私には選択肢がある。そして、何を選択するかを自分で判断しているんだよ。音楽は自分の内側に集中し、感情と体をリラックスさせ、無意識のストレスを解放するのに役立つ。無意識のストレスとは、人が内なる自己をストレスや不安の状態においていることを意味し、音楽はその人に落ち着きをもたらすことができる。音楽は野獣を鎮めるという言葉を聞いたことがあるかな?これはよく聞く言葉の表現なのだけれど、私もヨガの時に音楽をよく使うように、音楽は癒しやリラックスに使うことができる。音楽は、人の体をより平和な状態に動かすのに効果的なんだ。

—それは素晴らしいメッセージですね。ただ、あなたはカオスがあなたの音楽にとって根本的な要素の一つと言っていましたよね?

そう。私が音楽に取り入れようとしている5つのリズムのうちの一つがカオス。薫は解放のために必要なもので、常に現在に存在し、即興的な状態を維持するものだから。昨日起こったこと、古い思考を手放すその過程がカオスなんだ。カオスな状態は自由の象徴であり、現在の瞬間にある自由を意味する。私は、カオスの中に留まるのではなく、5つのリズムの一つとしてカオスを通過するんだよ。流れるリズムからスタッカートへと動き、混沌、抒情的なリズム、そして静けさへと移り変わる。この5つのリズムを通過する過程は、私たちを癒す薬の旅みたいなものなんだ。

—とても興味深いですね。

私も、以前は混沌を否定的なものや破壊的なものだと考えていた。でもカオスは、どこかに立ち往生して抜け出す方法がわからない時、全てを解放して手放すために役立つものなんだ。アーティストにとって、混沌は停滞や創造の壁にぶつかった時、そこから抜け出すための手段となる。混沌に飛び込み、全てを解放し、全てを手放し、新しいアイディアが自然に湧き上がるのを待つ。それが、新しいものを生み出すためのスペースを作るための方法なんだ。Brian Eno がプロデュースした『Ambient 3: Day of Radiance』を聴くと、打楽器の混沌が生み出す解放される感覚を体感できると思うよ。

—最近 Brian Eno のドキュメンタリーを観ました。あなたも観ましたか?

私が登場するドキュメンタリーは観たよ。あの作品で、彼は多くのことを説明しているんだけれど、彼は地球のための素晴らしいアイディアをたくさん持っているんだ。例えば、“The Earth as Your Co-writer”というのを聞いたことはあるかな?それは、アーティストがロイヤルティを地球と共有するというプロジェクト。そして“Earth Percent”は、ロイヤルティの一定割合がより良い地球のために活動する企業を支援するために使われるという仕組みなんだ。Brian には、非常に刺激的で素晴らしいアイディアがたくさんある。彼が私とレコーディングした時は、私のツィターに新しいサウンドをもたらすための美しいアイディアもたくさんくれたしね。

—ありがとうございます。本当はもっと聞きたいことがあるのですが、時間がないので今日はこの辺で。

話の続きはまた日本で。エアコンの効いた部屋でね(笑)。