hajime sorayama
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巨匠と呼ばれる今も、 新たな表現を追求するアーティスト、 空山基の現在地。

hajime sorayama

photography: michi nakano
interview & text: kazuhiko yuzawa

Portraits/

艶やかな女性のロボットを描いた「Sexy Robot」シリーズで世界を驚かせて以来、光の反射を生かした透明感ある表現を追求し続けているアート界の巨匠、空山基。その表現は、絵画から彫刻、動画など多岐にわたる。そんな空山のロボット作品を概観できる大規模レトロスペクティヴ展『SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-』が、東京は銀座の CREATIVE MUSEUM TOKYO (クリエイティブミュージアムトウキョウ) で開催されている。Dior (ディオール) の Kim Jones (キム・ジョーンズ) や The Weeknd (ザ・ウィークエンド) といった世界のビッグネームからもコラボレーションを熱望されるアーティストの現在地を尋ねた。

巨匠と呼ばれる今も、 新たな表現を追求するアーティスト、 空山基の現在地。

アーティストにとって、
「光・透明・反射」は永遠の課題。

—まず、今回のレトロスペクティヴ展についてお聞きします。空山さん自身が展示構成にも携わっているとうかがいましたが、そこで気を遣ったことはどんなことですか?

レトロスペクティヴといってもロボット限定だから、普通に展示したらどうしても単調になるじゃない。でも放っておいたら、作品のコンセプトごとに展示しようとしたりするから、そういうのは絶対に止めてくれって言ってね。だって、観に来てくれる人にとってはそんなことどうでもいいんだから。なので今回は、頭で理解するんじゃなくて観て感じて楽しめるように、色を軸に赤の展示の次はピンクの部屋という感じでグラデーションになるような構成を考えています。図録は好きじゃないから作らないけれど、その代わりにロボット以外の作品も含めた作品集をÉditions Treville(エディシオン・トレヴィル)で制作してます。その作品集も同じく色を軸とした構成にしていて、ノンブルは入れません。ノンブルが入っていると、ピンナップしたときに台無しになっちゃうからね。私は子供の頃に好きなアーティストの画を切り抜いて部屋に飾ったりしてたんだけど、ノンブルがすごい邪魔だったわけ。ノンブルなんて作る側の都合でしかないんだからさ。その長年の恨みつらみをここで晴らそうと思ってね (笑)。

—展覧会タイトルを『光・透明・反射』にしたのは?

あれはいつも私が言ってること。でも僕が始めたことでも何でもなくて、不透明な絵の具で光の反射を描いて透明感を出すという試みは、ダ・ヴィンチの昔からみんなやってることなんですよ。でも全員が失敗してきたわけ。「光・透明・反射」はいわば絵描きにとっての永遠の課題だったんだけど、それを私は実現しているという自負があるから、敢えてコンセプトとして言ってる。嫌味でしょ(笑)。

作品に完成はなく、
空山の進化は止まらない。

—以前、空山さんは自分の作品に完成はない、と話されていますね。

はい、永遠に完成はありません。私の手許から離れた作品もすべてデータにして保存してあるから、気になったところは今でもちょこちょこ手直ししてますよ。あのダ・ヴィンチもモナ・リザを15年間直し続けてたし、以前、ルーヴルに夜中に忍び込んで自分の絵を手直ししようとして捕まった画家がいたでしょ。彼なんか画家の鑑ですよ。画家はみんな多かれ少なかれそういう思いを抱いていると思うけどな。

—たしかに作家の感覚も変わるし、技術だって上がりますからね。

そうだよ。今、私が作っているセクシーロボットの彫刻は3Dプリンタで制作してる。それはなぜかというと、風になびく髪の毛の軽やかさを出したいから。彫刻で髪の毛の繊細な動きを出すことは、ギリシャ・ローマの時代から誰もできなかった。そりゃ大理石から彫りだしてたら無理だよね。でも技術が進歩した今なら、3Dプリンタで表現できるんだよ。もちろんまだまだ不十分だけど、それでもベタッとした髪の毛と比べたら雲泥の差がある。

—3Dプリンタを使うことに抵抗はありませんでしたか?

ありませんよ。私が表現したい表情を出せる可能性があるなら、何だって使います。私が次に取り組んでいるのは妖精の彫刻。妖精の儚げな羽根を3Dプリンタで表現しようとしてるの。透明な素材で羽根を作ってその先を細ーいテグスのようなレジンにすることで、空中に消えていくような表情を出したいと思ってる。つまりそれがうまくいけば、空間を彫刻が制圧できるわけ。私は空間と彫刻の間のエッジを消して、空間に溶け込ませたい。空間全体を彫刻に同化させるような感覚だよ。でも、私がそんな注文を出すもんだから、共同作業している原型師は円形脱毛症になっちゃった(笑)。

—いやはや、ご苦労さまです。

でもその原型師は、私の無茶なアイデアを面白い、挑戦しましょうって言ってくれた。やる前から無理ですって諦める人には、私は頼まないのよ。ちゃんと面白がってくれる人と一緒にやりたいわけ。

—巨匠と呼ばれるようになった今も、アートの最前線で制作を続けてるんですね。

そういうおべんちゃらは要りません。ただおかげで、若い頃から不満に感じていたいろんな課題に挑戦できるようになった、というのはあるかな。

—最近のコラボレーションについても教えてください。

今やってるのは、台湾の STARLUX (スターラックス) 航空とのコラボレーション。エアバス2機を金と銀に塗装してます。金や銀で塗装すると普通の塗装より20%くらい重くなって燃費が悪くなるらしいけど、新進気鋭の航空会社が存在感を示そうとすれば、そういうことをやらないとね。それに併せて、「AIRSORAYAMA」仕様のMA-1を Alpha Industries (アルファ・インダストリーズ) と制作したり、機内安全ビデオ、機内アメニティも AIRSORAYAMA 仕様にすることで、全体として差別化を図ろうっていうコンセプト。コラボなら他にもいろいろありますよ。チタン合金の金銀の自転車、吉乃友酒造のスパークリング純米大吟醸をパッケージしたり。あと金と銀のギター。The Weeknd の Abel (アベル) っているじゃない。グローバルツアーのステージデザインに「Sexy Robot」を登場させたり、彼とはこれまでもいろいろやってきたけど、これからもまだ何か驚かせることがあるかもしれませんよ。その時に Abel が言ってたんだけど、STARLUX AIRSORAYAMA 仕様の MA-1を Lady Gaga (レディー・ガガ) にあげたら、この光ってるジャケットはカッコイイって大喜びしたらしいよ(笑)。私の「光・透明・反射」というコンセプトを面白がってくれる相手とコラボすると、そこから新しい発想へとどんどん拡がっていくから面白い。それに私一人じゃできないことが実現して、つまんない世の中をちょっと面白い方に動かせるかも知れないからね。

—攻殻機動隊の草薙素子像もありますね。レトロスペクティヴ展にも出品されていますが、こちらが最新作ということになりますか?

そうですね。すでに始まってる攻殻機動隊展にも跪いている像を出してるけれど、こちらは立像。

—士郎正宗さんとはお付き合いがあるんですか?

私は士郎正宗さんの画は好きでリスペクトしてますよ。以前、世田谷美術館で彼の大規模な展覧会があったんだけど、攻殻機動隊だけの展示だったんだよ。だから知り合いの画廊にお願いして、彼のアナザーサイドの個展を開いてもらったこともあるくらい。私は寺田克也、Rockin’Jelly Bean (ロッキン・ジェリー・ビーン) と3人で『3バチ展』というのを数年おきにヴァニラ画廊でやってるんだけど、この夏くらいに久しぶりにやろうって話していて、そこにスペシャルゲストとして士郎正宗さんにも参加してもらうことになっている。私は「乱入」って言ってるけどね(笑)。

—陰のフィクサーですね。

だって面白いじゃん(笑)。私は死ぬときに、あー、面白かったって言って死にたいだけだよ。

—この作品には珍しくタイトルが付いてますけど、それも士郎正宗さんへのリスペクトの表れですか?

いや、それは私が付けたんじゃないよ。私は作品にタイトルは付けないから。タイトルなんて、キュレーターとか編集者が扱いやすくするために付けるんだよ。私は画で勝負してるんであって、文字を入れたら負けだと思ってるの。画で勝負している人間にとって、文字というのは言い訳でしかないから。

—それならこの『The Fashion Post』の記事も文字は展覧会情報だけにして、あとは作品の写真を大判でズラッと並べるだけにしましょうか。

おっ、それがいいよ。展覧会情報もサイトのURLだけでいい。

—いやいや、すみません。せっかく興味深い話をしてくださったんだから、ちょっと書かせてくださいよ。

記事を書かなかったら仕事にならないんだろうしね(笑)。