Mystery Jets
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ロックバンド Mystery Jets (ミステリー・ジェッツ) インタビュー

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これまで作品ごとに様々なサウンドに挑戦しながら、リリースされたアルバムはすべて傑作という恐るべきポップバンド、Mystery Jets (ミステリー・ジェッツ) は、“新しい”という概念をどう考えるのか。

ロックバンド Mystery Jets (ミステリー・ジェッツ) インタビュー

2016年は前半だけでも聴くべきアルバムが山ほどある。特に、Chance The Rapper (チャンス・ザ・ラッパー)、Rihanna (リアーナ、カニエ)、Beyoncé (ビヨンセ) など、メジャーの頂点で活躍するミュージシャンたちの新作が軒並み音楽的にもエキサイティングだったことは、何十後に音楽史を振り返る上で必ず触れられる“幸福な出来事”の1つに違いない。一方、バンド勢は相変わらず不振にあえいでいると言わざるをえないが (2000年代の興奮は幻だったのだろうか……)、その中で音楽的な探究心を失わず、同時に、普遍的な美しいメロディを書き続けるバンドがいる。

その名は Mystery Jets (ミステリー・ジェッツ)。テムズビートの一派として認識されていた初期から、ニューウェイブ〜アメリカーナと国境を超えて自らの音楽性を拡張してきた。一般レベルでは“実の親子が在籍しているバンド”というデビュー時の印象がいまだに語られることが多いが (お父さんはすでに脱退)、彼らほどその時代ごとの空気を敏感に感じ取り、自分たちの音に昇華させてきたバンドはいないということを、今こそ強調しておきたい。

なぜなら、ヒッピー全盛の時代に Stewart Brand (スチュアート・ブランド) が編んだ『Whole Earth Catalog』をモチーフに、ポップソングとしてのプログレが見事に機能している最新作『Curve Of The Earth』の内容があまりに素晴らしいから。そもそもメロディの強度が過去最高レベルであるということ以外に、細胞レベルから宇宙まで視点をあげていきながら人間の生活や歴史を語るというコンセプトのユニークさも含め、これはまさしく彼らにとっての金字塔だ。

今年5月、その Mystery Jets がライブのために来日。『The Fashion Post』ではその時代時代を彩る彼らのスタイルにも注目し、撮影衣装として UNDERCOVER (アンダーカバー) の新作コレクションを用意。インタビューでは、短い時間ながら、“新しいサウンド”について質問してみた。

(左) ジャケット ¥85,000、ロンT ¥22,000 全て UNDERCOVER | (中央左) ルームウェア ¥48,000 UNDERCOVER | (中央右) フード付きコーチジャケット ¥58,000、ハット ¥45,000 全て UNDERCOVER | (右) MA-1 ¥95,000 UNDERCOVER | Photography: UTSUMI | © The Fashion Post

(左) ジャケット ¥85,000、ロンT ¥22,000 全て UNDERCOVER | (中央左) ルームウェア ¥48,000 UNDERCOVER | (中央右) フード付きコーチジャケット ¥58,000、ハット ¥45,000 全て UNDERCOVER | (右) MA-1 ¥95,000 UNDERCOVER | Photography: UTSUMI | © The Fashion Post

 

—Mystery Jets というバンドは、アルバムごとにファッションがガラリと変わりますよね。洋服、つまりスタイルを変えることで自分たちの音楽的な気分も変わるということでしょうか。

Blaine Harrison(以下 Blaine):多分逆かな。僕たちは視覚的に強い感覚を持っていると思う。これまで自分たちのビデオやアートワークにも積極的に関わってきた。僕たちの服装はバンドのイメージの延長にあるものだから。つまり、ファッションは自分たちの音楽、あるいは考ていることを視覚上に体現しただけに過ぎないんだ。

—ファッションからはトレンドへの強い意識も感じます。そして、その軽やかさがこのバンドの魅力だと思います。

Blaine:もちろん自分たちの音楽性ありきだけど、ファッションシーンっていうのかな、そういう界隈の流行りも目に入ってくるし、気にしていないわけではない。ただ、どちらかと言えば、僕たちが服に選ばれてるんだよ (笑) 。

Mystery Jets – Telomere (2016)

 

—今作において最も重要な参照点は70年代のプログレですよね。今はそこまで盛り上がっていなくても、Mystery Jets の手にかかると次のトレンドになりうるように感じてしまいます。

Blaine:小さい頃にプログレが流行っていたから、僕たちにとっては懐かしい気持ちを呼び起こす音楽なんだ。そもそも今回のアルバムを作るときに、Mystery Jets というバンドのあり方について改めて考える必要があった。原点に立ち返って、どうしてこのバンドを組んだのか思い出してみたんだ。音楽的にいえば確かにプログレっぽいけれど、自分たちのルーツにあるものを表現するという意味で、あくまで自然な流れだったのかもしれない。未来を見ると同時に、過去を振り返っているってことが、今作においては大切だったんだ。

Mystery Jets – Bubblegum (2016)

 

—そもそも、なぜあなたは音楽を選びとる必要があったのでしょう?

Blaine:若いときは、“音楽は自分たちの中にある見知らぬものを呼び覚まして、己を成長させてくれるもの”っていう考えがあった。バンドがなければ、自分を卑下したり、同じ過ちを繰り返したりするばかりだったから、これで良かったと思ってる。90年代にはブリットポップのシーンが盛り上がっていて、僕たちが好きじゃないバンドが有名になっていた。アンチ・ブリットポップだったんだ。むしろそれより20年前、70年代に起きていたことに関心を抱いてたから。

William Rees(以下W):でも、ちょっと皮肉だよね。当時のアーティストたちも、音楽的には70年代をフォローしてたんだから。

Blaine:まだ若くて駆け出しのミュージシャンっていうのは、自分の好きなアーティストをまるっきりコピーするんだ。だから、音楽を聴けば何に影響を受けているか、すぐにわかる。だけど、時間が経つと自分の音が確立されてきて、自分が世に送り出せるオリジナルな音楽が出来上がる。僕自身、3枚目のアルバムでようやく自分の音楽を受け入れることができた。本当のミュージシャンになるには、自分の音を発見しないといけない。


Mystery Jets – Serotonin (2010)

—ずばり、音楽的に“新しい”とはどういうことだと思いますか。

Blaine:面白い質問だね。すべてのものが何かしらに影響を受けている。過去があるからこそ、新しいということがあり得るんだ。たとえば The 1975。彼らのセカンドアルバムはファーストを完全に凌駕していて最高だった。80年代のポップミュージックの影響が色濃いけど、メンバーはモダンな演奏技術を兼ね備えている。歌詞も現代風だよね。質問には答えられていないかもしれないけど、The 1975みたいな音楽は未来と過去を融合しているから、興奮させられるんだ。


The 1975 – The Sound (2016)

—Mystery Jets の新作も、複数の引用が入り混じっているからこそエキサイティングだと思いました。

Blaine:でも僕らだって、他のミュージシャンをコピーしてたことがあるよ!たとえば、セカンドアルバムのときは特定のバンドを真似ている曲があったり。だけど、コピーするといっても、自分のスタイルはあったと思う。何というか、インスピレーションを有り難く受け入れる気持ちでやっていたんだ。意識的に影響を取り入れるのと、無意識に影響されてしまうのとでは、全く異なるからね。僕らは常に意識的にやってきたし、The 1975だっても同じだと思う。良い音楽っていうのは、すべてが過去を辿りながら新しいものを取り入れてる。それって音楽に限ったことでもないしね。

William:Hunter Stockton Thompson (ハンター・S・トンプソン) って知ってる?『ラスベガスをやっつけろ』を書いた作家で、ジャーナリストとしても活動していた。彼がクリエイティビティの循環について、「If you lift it, then twist it (盗むなら、ひとひねりしなさい)」と言ったことがあるんだけど、僕はこの格言が好きなんだ。最終的には自分の責任だってことだよね。


Mystery Jets – Young Love (Featuring Laura Marling) (2008)

—The 1975以外に「このタイミングでこの引用はいいな」と思った最近のミュージシャンをいくつか教えてくれませんか。

Blaine:うーん、Tame Impala (テーム・インパラ) が唯一のバンドかな。今は世の中がインディーズミュージックに引き込まれているけど、中でもオーストラリア出身の彼らのサイケデリックな音楽にみんな熱中してる。だけど、Kevin Parker (ケヴィン・パーカー) はポップソングを書くでしょ。素晴らしいプロデューサーだよ。ギターのサウンドも、ドラムを叩く強さも、ボーカルの遅れ方も、綿密に計算されてる。だけど、馴染みやすい音楽で。何度も聴かないとオーディエンスが彼らのコードや、ギターのペダルの使い方や、ノイズのすごさに気づかないのが、彼らの音楽が素晴らしいことを証明していると思う。まあ、そんなことは忘れようか。ポップソングだからね(笑)。

—Tame Impala 以外ではどうでしょう。今の時代はメジャーなミュージシャンのほうが冒険しているという見方もありますが。

Blaine:そう思う。Kanye West (カニエ・ウェスト) や Beyoncé (ビヨンセ)……

William:Justin Bieber (ジャスティン・ビーバー) も。

Blaine:まさに!Justin Bieber と Max Martin (マックス・マーティン) の曲 『Beauty And A Beat ft. Nicki Minaj』は最高だよね。今までよりずっとポップミュージックが面白くなってる。プロダクションやサウンドも面白いし、とにかく曲自体がいい。あらゆるジャンルの良いところをかじってる。今のポップミュージックはクールだね。


Justin Bieber –Beauty And A Beat ft. Nicki Minaj (2012)

—例えば昔のアングラな音楽でさえポップに聴かせるといった点で、こうしたポップアーティストとミステリー・ジェッツの文脈はリンクしていると思います。

Blaine:ありがとう。その通りだよ! 僕らはメインストリームとアンダーグランドを同時に取り入れてる。僕らの音楽には、2つの要素が詰まってるんだ。

Mystery Jets –『Curve Of The Earth』(2016)

Mystery Jets –『Curve Of The Earth』(2016)

<プロフィール>
ブレイン・ハリソン、ウィリアム・リース、カピル・トレヴェディ、ジャック・フラナガン、ヘンリー・ハリソンから成るUK出身ロック・バンド。 2006年にはフジロックにて初来日。80’s、プログレッシヴ・ロック、サイケデリック・ロックと全ての良いとこ取りをしたようなキャッチーなサウンドでここ日本でも高い人気を誇る。2010年6月には名門レーベル<ラフ・トレード>移籍後初となるサード・アルバム『セロトニン』をリリース。そして12年4月、オリジナル・メンバーであるカイが脱退するも通算4作目となるアルバム『ラッドランズ』をリリースしHostess ClubWeekenderで来日。15年11月、新メンバー、ジャック・フラナガンを迎え入れ5枚目のニュー・アルバム『カーヴ・オブ・ジ・アース』を2016年1月15日にリリース。国内外のメディアで絶賛を持って迎えられた。2015年11月にHostess ClubWeekenderにて3年振りの来日を果たし、続く2016年5月に約5年ぶりとなる単独来日公演を行った。
HP: hostess.co.jp/mysteryjets

(左) ジャケット ¥85,000、ロンT ¥22,000 全て UNDERCOVER | (中央左) ルームウェア ¥48,000 UNDERCOVER | (中央右) フード付きコーチジャケット ¥58,000、ハット ¥45,000 全て UNDERCOVER | (右) MA-1 ¥95,000 UNDERCOVER | Photography: UTSUMI | © The Fashion Post

(左) ジャケット ¥85,000、ロンT ¥22,000 全て UNDERCOVER | (中央左) ルームウェア ¥48,000 UNDERCOVER | (中央右) フード付きコーチジャケット ¥58,000、ハット ¥45,000 全て UNDERCOVER | (右) MA-1 ¥95,000 UNDERCOVER | Photography: UTSUMI | © The Fashion Post

 

問い合わせ先/UNDERCOVER (アンダーカバー) 03-5778-4805
HP: www.undercoverism.com

Photographer (Portraits)/UTSUMI
Styling/Shunsuke Okabe
Interviewer & Writer/Hiroaki Nagahata
Special Thanks/Marie Sasago