AMBUSH® (アンブッシュ®) デザイナー、YOON (ユン) インタビュー
Yoon
日本を拠点にするファッション業界人で、世界的な評価を受けるはさほど多くない。AMBUSH® (アンブッシュ®) の YOON (ユン) はその中で数少ない真のクリエイターであり、Pharell Williams (ファレル・ウィリアムス) や A$AP Rocky (エイサップ・ロッキー) をはじめ名だたるスーパースターがラブコールを送るスタイルアイコンだ。
AMBUSH® (アンブッシュ®) デザイナー、YOON (ユン) インタビュー
Portraits
日本を拠点にするファッション業界人で、世界的な評価を受けるはさほど多くない。AMBUSH® (アンブッシュ®) の YOON (ユン) はその中で数少ない真のクリエイターであり、Pharell Williams (ファレル・ウィリアムス) や A$AP Rocky (エイサップ・ロッキー) をはじめ名だたるスーパースターがラブコールを送るスタイルアイコンだ。
韓国系アメリカ人として、そして日本を拠点にしながらも世界中を飛び回るジェットセッターとして、彼女が見出した今の時代におけるナショナリティのあり方、そして “マイ・スタイル” の秘訣を聞き出した。
— 東京を拠点に、世界中を飛び回る YOON さんですが、生まれと育ちはアメリカとのこと。どのような幼少期を過ごされたのでしょうか?
私が育ったのは、シアトルという町。シアトルと聞くと、今ではすっかり近代的になって、お洒落なイメージがついていますが、当時はまだ田舎町でした。ちょうど90年代、アメリカの音楽シーンが活発だった時代だったので、音楽をよく聞いていました。Nirvana (ニルヴァーナ) が大好きで。
— おお、意外にグランジキッズだったと。
もちろん今でも好きです!音楽はなんでも好きですね。
— 今でもファッションと音楽は YOON さんにとって欠かせない要素ですが、グランジキッズだった幼少時代から、ファッションに興味を持ったのはいつのことでしょうか?
やっぱりグランジの影響は大きかったと思います。ちょうどグランジがマスカルチャーに伝播して、ファッション業界でもグランジファッションが流行ってた時だったので。その後大学に入ってからはヒップホップを聞いたり、もっと幅広い音楽に触れ合っていましたね。
— グランジは今でもファンの多いサブカルチャーの一つですが、最近では特にファッションブランドがミュージシャンを広告塔に起用することが増えてきました。何故ファッションシーンはこれほどまでに音楽を必要としているのでしょうか?
みんな憧れの対象が欲しいんだと思います。俳優さんはある種のロールモデルだけど、アーティストは自分の個性で新しいロールモデルを作り上げている。そして彼らの周りで生まれる同胞意識は、ファッションでは作り出せないものだから。
— ただ見かけだけを取り繕うだけでは今の時代ファンを獲得出来ないと。時に、大学ではグラフィックデザインを勉強されてたんですよね?
はい、ボストンの大学に行っていました。私の尊敬するグラフィックデザイナーの Paul Rand (ポール・ランド) に師事した教授の授業が楽しくて、今でもすごく覚えています。グラフィックデザインの授業なのに、パソコンを使うなって。
— アナログですね。
アナログというより、その教授の方針だったんです。パソコンで何でも出来るからこそ、実際に手を動かして物を作る工程を大切にしなさいと。だって Photoshop (フォトショップ) で修正するのはいとも簡単に出来ますが、それがハンドドローイングだと失敗は許されない。だから初めに構図を綿密に決めて、完成系をより克明にイメージする必要があるんです。
— グラフィックデザインのような平面的な感覚と、3D で物事を捉える感覚を持ち合わせているからこそ、ジュエリーデザインや空間デザインにも生きてくる、と。9月にオープンされる AMBUSH® (アンブッシュ®) 初の路面店も、普通のショップとは違ったアプローチを取り入れているとのこと
9月2日にオープンする AMBUSH® WORKSHOP (アンブッシュ® ワークショップ) ではブランドの旗艦店であると同時に、商品だけでなくブランドの世界観を様々な角度から表現出来るようあえてコンセプトを設けていません。ワークショップの名前の通り、アーティストやクリエイターとのコラボも打ち出していく予定です。
出る杭は打たれる
— AMBUSH® のジュエリーといえば、インパクトのあるデザインももちろんですが、ユニークなコンセプトも毎シーズン楽しみの一つです
AMBUSH® は、音楽だったり、ストリートカルチャーだったり、私の好きなものをあらゆる側面から分析して取り込んでいるイメージ。そこに私の思想もたまに入ったりして。
— 今日付けてる指輪も面白いデザインですね。釘、ですか?
これは今年の4月に発表した「HALBSTARKE」というコレクションの一つ。Karlheinz Weinberger (カールハインツ・ワインバーガー) の写真や、彼が捉えた50年代ドイツのアンダーグラウンドシーンにインスピレーションを受けたんだけど、裏テーマで日本のことわざをストーリーに組み込んでいるんです。日本人はよく「出る杭は打たれる」って言いますよね?
— 出る杭は打たれる、でもその杭があまりに曲がりくねっていたら打たれないと。
その通りです。日本は昔から自己表現がしづらい国だと言われてきました。個性を表現するよりも、周りと同調することを求められると。だからこそ私は自分の意思を強く持った人たちにエールを送りたいし、自分もそうありたいと思っているんです。そんな思いを込めてデザインしたのがこのリングなの。私なりのパンクスピリットですね。
— 長い間日本はモノカルチャーだと揶揄されてきましたが、インターネット世代にとってもそれは同じことだと思われますか?
若い子たちはもちろんインターネットを通じてたくさんの情報を得ているし、それによって世界で何が起こっているか関心を持つ人も多い。でも実際アクションを起こす段階になったら、やっぱり日本人のルーツは大いに影響しているように感じます。
二元論で考えるのはあまり好きじゃないのですが、日本と対局の考え方を持つのがアメリカ。教育のシステムがそもそも全く違うんです。自己表現をしなければいけないと教えられるので。
エンターテイメントを見ていても同じ。他の国ではアーティストがパワーを持っていて意思決定をするのに対し、日本では多くの場合、事務所の意向によってアーティスト像が作り上げられる。どっちがいい、どっちが悪いで判断するつもりはないけど、私は自分のビジョンを持っているアーティストに共感しますね。
— 言語的な障壁も大きく関係しているのではないでしょうか?
英語を話せないというのは多くの日本人が抱えるジレンマですよね。でも島国だからこそのユニークな点があるところも忘れてはいけないと思います。様々な国から入ってきた文化を、日本流にアレンジする柔軟な感性と探究心は他のどんな国にも負けないはず。
よく「日本人が海外で勝負するために必要なこと」をよく聞かれるんです。日本人は奥手だから、それを克服するには何が必要かって。正解なんて私には分かりませんが、ナショナリティを言い訳にしているうちは自己表現するなんて無理ですよね。これだけ情報に溢れていて、コミュニケーションツールも豊富にある時代に躊躇しているなんて時間の無駄。
これは個人的な見解ですが、多くの人は何事も最初は真似ごとから始めるものだと思っています。でも本当の意味でのクリエイターを志すなら、ある時から真似ごとをやめる決断も必要です。周りを見て、真似をして、そして自分の中で反芻する。自分が誰なのかを見つけるのに、近道なんて無いんです。
<AMBUSH®>
2008年 自主的にジュエリーデザインを追求していた VERBAL & YOON が AMBUSH® を発表。2人の生み出す東京カルチャーを反映したユニークな作品は変化・変容を繰り返し、洗練されたコレクションジュエリーへと進化を遂げていく。 2015年 パリメンズファッションウィーク期間中には初の展示会を開催し、更に同年世界のファッションビジネスを中心とするオンラインニュースサイト『Business of Fashion』 が発表する「ファッション界を変える世界の500人」に VERBAL & YOON の2人が精選。繊細な技術と唯一無二のデザインで表現されたジュエリーは、各界のインフルエンサーにも絶大な支持を受け、Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン) のメンズアーティスティックディレクターの Kim Jones (キム・ジョーンズ) や、Maison Kitsuné、sacai、UNDERCOVER といった現代を代表するクリエイターやブランドとのコラボレーションを実現させ、その影響力は世界規模で拡大し続けている。2016年秋には東京にてブランド初となるショップオープンを予定しており、従来のショップ形態の枠を超える新たなクリエイションやカルチャーを発信するスポットとして大きな注目を集めている。
AMBUSH® WORKSHOP 店舗情報 | |
ショップ名 | AMBUSH® WORKSHOP |
オープン日 | 2016年9月2日 (金) |
住所 | 東京都渋谷区渋谷1-22-8 1F |
営業時間 | 12:00-20:00 *不定休 |
電話番号 | 03-6451-1410 *9月2日より開通 |
HP | www.ambushdesign.com |