【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画
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【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画
TFP Recommended Movies
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を週替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
3月26日〜3月31日
『レイブンズ』

©︎Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films
伝説の写真家・深瀬昌久と、彼の最愛の妻であり最強の被写体・洋子をダークでシュールに写し出したラブストーリー。森山大道らとニューヨークの美術館 MoMa にて展覧会を開き、大絶賛を浴びた日本を代表する写真家・深瀬昌久を演じたのは、ハリウッド製作ドラマ「SHOGUN 将軍」に出演するなど国際的な活躍をみせる浅野忠信。深瀬の78年に渡る波瀾万丈な人生を、実話とフィクションを織り交ぜながら大胆に表現した。写真に取り憑かれた天才の狂気と、撮ることでしか愛し方を知らなかった純粋さを、繊細かつワイルドに演じた浅野忠信の魅力が炸裂する。そして、夫を闇堕ちから守ろうとする洋子を全身全霊で体現したのは、『由宇子の天秤』『敵』などに出演した瀧内公美。洋子は美しさに満ちており、常に深瀬のミューズとして作品の主題であり続けた。2人の歪な愛は、どこまでがリアルで、どこまでがフィクションなのだろうか。疾風怒濤の愛の物語が、スクリーンに放たれる。
公開日: 3月28日(金)
監督: Mark Gill (マーク・ギル)
出演: 浅野忠信、瀧内公美、古舘寛治
HP: ravens-movie.com
『ベイビーガール』

©︎2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
映画界の最前線を駆け抜けるスタジオ A24 が、ハリウッドを代表する女優 Nicole Kidman (ニコール・キッドマン) を主演に迎え、刺激的な映画をリリース。彼女が演じるのは、ニューヨークで CEO として大成功を収める女性、ロミー。優しい夫ジェイコブと子どもたちと暮らし、仕事もプライベートも充実させた誰もが憧れる生活を送っていた。ある時、インターン生として入社したサミュエルは、ロミーの中に眠る欲望を見抜き、挑発を仕掛ける。行き過ぎた駆け引きがヒートアップし、ロミーは危ない橋を渡ることになる。本作では、すべてを兼ね備えながらも満たされない渇きを抱える主人公と、彼女を誘惑するサミュエルをスリリングに写し出す。物語の主導権を握るサミュエルを務めたのは、『マレフィセント2』、『キングスマン ファースト・エージェント』などに出演する Harris Dickinson (ハリス・ディキンソン)。CEO のロミーを巧みに操り、激しく揺さぶる役を見事に演じ切った。ユーモアとロマンティックの交錯する展開の果てに、何が待っているのだろうか。ぜひ映画館で見届けてほしい。
公開日: 3月28日(金)
監督: Halina Reijn (ハリナ・ライン)
出演: Nicole Kidman、Harris Dickinson、Antonio Banderas (アントニオ・バンデラス)
HP: happinet-phantom.com/babygirl
『エミリア・ペレス』

©︎2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA COPYRIGHT PHOTO : (C)Shanna Besson
メキシコの麻薬王が女性として新たな人生を歩むという破天荒なストーリーを、異色のミュージカルで描く。メキシコシティで弁護士として働くリタは、麻薬カルテルのボス、マニタスから「女性としての新しい人生を用意してほしい」と依頼される。リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。それぞれの人生を送っていた4年後、マニタスはエミリア・ペレスとしてリタの前に現れ、彼女たちの運命は大きく変わっていく。フランスの名匠 Jacques Audiard (ジャック・オーディアール) が手がけた本作は、ゴールデングローブ賞で最多4部門受賞、アカデミー賞®では作品賞、監督賞を含む最多12部門で13ノミネートを果たすなど、現在、世界が最も注目する作品の一つ。また、マニタス、エミリア・ペレスを演じた Karla Sofia Gascon (カルラ・ソフィア・ガスコン) は、本作でカンヌ国際映画祭において初となるトランスジェンダー俳優として女優賞受賞という快挙を成し遂げた。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみといった対比を唯一無二の物語に落とし込み、クライム、コメディ、ミュージカルといったあらゆる演出で魅せる。魂を揺さぶるエンターテイメントを、スクリーンで体感して。
公開日: 3月28日(金)
監督: Jacques Audiard
出演: Zoe Saldana (ゾーイ・サルダナ)、Karla Sofia Gascon、Selena Gomez (セレーナ・ゴメス)
HP: gaga.ne.jp/emiliaperez
『ミッキー17』

©︎2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
『パラサイト 半地下の家族』で世界にその名を轟かせた Bong Joon-Ho (ポン・ジュノ) 監督が新たに発表するのは、使い捨てワーカーによる権力者たちへの逆襲エンターテイメント。人生失敗だらけの男ミッキーが一発逆転のため、何度でも生まれ変われる「夢の仕事」のはずだった。だが、彼がサインした契約書は、過酷な任務で命を落としては何度も生き返るという内容が書かれていた。ある日、使い捨てられる日々を送るミッキーの前に自分のコピーが現れ、事態は一変。ミッキーはコピーたちとともに復讐に出る。本作の舞台は、労働が搾取される近未来の社会。ブラックユーモアたっぷりな SF エンターテイメントでありながら、現代にも通ずる社会問題を鋭く切り取った。キャストには『TENET テネット』『ザ・バットマン』などに出演し、ハリウッドでも頭角を現しつつある Robert Pattinson (ロバート・パティンソン) や、大ヒット TV ドラマ「ウォーキング・デッド」で脚光を浴びた Steven Yeun (スティーブン・ユァン) などを抜擢。予測不可能な Bong Joon-Ho の世界観が、観る者を衝撃の渦に包み込む。
公開日: 3月28日(金)
監督: Bong Joon-Ho
出演: Robert Pattinson (ロバート・パティンソン)、Naomi Ackie (ナオミ・アッキー)、Steven Yeun (スティーブン・ユァン)
HP: warnerbros.co.jp/mickey17
『BAUS 映画から船出した映画館』

©︎本田プロモーションBAUS/boid
多くの観客と作り手に愛され、惜しまれつつも2014年に閉館した吉祥寺 バウスシアター。約90年に渡る長い歴史と、その場所を守り続けた家族を巡る物語が誕生した。時は遡ること1927年。活動写真に魅了され、青森から上京した兄弟・サネオとハジメは、吉祥寺初の映画館、井の頭会館で働き始める。兄は活弁士、弟は社長として劇場の発展を目指していたが、戦争の足音がすぐそこまで迫っていた。井の頭会館は、ムサシノ映画劇場、そしてバウスシアターへと形を変え、時流に翻弄されながらも生き残り続けてきた。映画上映のみにとどまらず演劇、音楽、落語など「おもしろいことはなんでもやる」という無謀なコンセプトで、いつしか文化の交差点に。本作ではそんな唯一無二の場所を守り、娯楽を届け続けた家族の長い道のりを辿っていく。弟サネオ役には染谷将太を、兄ハジメ役にはロックバンド・銀杏 Boyz の峯田和伸をそれぞれ抜擢。また、夏帆、鈴木慶一、橋本愛らが登場。日本を代表する俳優陣・制作陣が、本作に息を吹き込む。
公開日: 3月21日(金)
監督: 甫木元空
出演: 染谷将太、峯田和伸、夏帆
HP: bausmovie.com
『教皇選挙』

©︎2024 Conclave Distribution, LLC.
全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。その総本山であるバチカンのトップを決めるローマ教皇選挙「コンクラーベ」の様子を、緊張感たっぷりに映し出す。ローマ教皇が死去するか、辞任した時に教皇選挙が開催される。世界中が固唾を飲んで注目する一大イベントは、外部からの介入や圧力を徹底的に遮断しており、秘密のベールに包まれている。内部では、世界中から集まった有力な候補者たちが政治家に見えてくるほどのパワーゲームが繰り広げられていた。差別、スキャンダル、陰謀……熾烈なパワーゲームが、先読みを一切読めないミステリーへと観る者を誘っていく。選挙を取り締まるローレンス枢機卿の苦悩が最高潮に達し、新教皇誕生が差し迫ったとき、バチカンを揺るがす大事件が勃発するのであった。監督は Netflix で配信された戦争映画『西部戦線異状なし』で高く評価を得た Edward Berger (エドワード・ベルガー) 監督。一瞬も見逃せない緊迫感に、スクリーンを包み込む。
公開日: 3月20日(木・祝)
監督: Edward Berger
出演: Ralph Fiennes (レイフ・ファインズ)、Stanley Tucci (スタンリー・トゥッチ)、John Lithgow (ジョン・リスゴー)
HP: cclv-movie.jp
『ジェリーの災難』

©︎2023 Forces Unseen, LLC.
定年退職後の男性が警察に強要され、不法捜査に加担させられたという事実を映画化。そしてなんと、この信じがたい事件をベースに脚本を書き、本作の主演を務めたのは、事件の被害者であるジェリー・シューだ。彼自身の身に降りかかった災難を、リアルかつサスペンスフルに描く。69歳ジェリーはある日、中国警察から緊急の電話を受ける。その内容は、国際的なマネーロンダリング事件の捜査で自身が第一容疑者になっていることを知らせる電話だった。ジェリーは逮捕と中国への強制送還を免れるため、スパイとして捜査に協力。数週間にわたって秘密裏に行動する彼だったが、ついにすべてを家族に打ち明けることに。すると彼らは、驚愕の道を選ぶのだった。前代未聞、異色ずくめの本作は、スラムダンス映画祭やサンタバーバラ国際映画祭など40もの世界映画祭で多くの賞にノミネートされ、最優秀主演男優賞を含む受賞歴を獲得。平凡で、どこにでもいる男性だったジェリーが、憧れてきたアメリカンドリームを本作で実現。奇跡の連続のような作品に、誰もが目を奪われるはず。
公開日: 3月20日(木)
監督: ロー・チェン
出演: ジェリー・シュー、キャシー・シュー、ジョシュア・シュー
HP: jerry-movie.com
『ノーバディーズ・ヒーロー』

©︎2021 CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA / UMEDIA
現代フランスを代表するフィルムメーカーでありながらも、日本劇場未公開であった Alain Guiraudie (アラン・ギロディ) 監督の作品が、一挙に3作放たれる。彼の特徴は、セクシャリティやマイノリティに対する偏見や先入観なしに、人間の愛と欲望という普遍的なテーマを意外な切り口で展開すること。今回紹介する『ノーバディーズ・ヒーロー』では、娼婦への愛に苦しむ男を描く。季節はクリスマスを控えた冬。独身男性のメデリックは、見ず知らずの娼婦・イザドラに一目惚れし、必死に口説こうとするも、嫉妬深い彼女の夫に邪魔されてしまう。その頃街では、大規模なテロが発生。近隣住人はパニックに陥り、愛に突き進むメデリックの周りで予期せぬトラブルが起こり始める。周囲を巻き込んでいく騒ぎの結末はいかに。『カミーユ、恋はふたたび』など、監督としても活躍する Noemie Lvovsky (ノエミ・ルボフスキー) がイザドラを演じ、『ボレロ 永遠の旋律』の Doria Tillier (ドリア・ティリエ) が仕事とプライベートの区別のない女性、フロランスを演じる。日本で Alain Guiraudie が広く知られるきっかけとなるだろうこの機会に、ぜひ映画館に足を運んでみてはいかが。
公開日: 3月22日(土)
監督: Alain Guiraudie
出演: Jean-Charles Clichet (ジャン=シャルル・クリシェ)、Noemie Lvovsky 、Ilies Kadri (イリエス・カドリ)
HP: alain-guiraudie
『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』

©︎2023 THE SWEET EAST PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ニューヨークのインディペンデント映画シーンを牽引してきた撮影監督 Sean Price Williams (ショーン・プライス・ウィリアムズ) が、衝撃の監督デビュー。不思議の国を彷徨うようにアメリカ国内を巡り、個性豊かな人々によってさまざまな事件に巻き込まれる少女を描く。物語のヒロイン、リリアンは、同級生たちと修学旅行でワシントン D.C. を訪れていた。ひとり冷めた目で周囲を眺める物憂げな彼女は、仲間と抜け出して行ったカラオケバーで銃乱射事件に巻き込まれてしまう。派手なパンク・ファッションのケイレブに導かれ「秘密の扉」をくぐると、奇想天外な旅が待ち受けていた……。監督は本作を「アメリカの空に放たれたフレア(発行弾)のような作品だ」と語る。リリアンが不思議な世界で出会うのは、お気楽な活動家アーティスト集団、感傷的なネオナチ男、エレクトロ好きのイスラム主義者など。それぞれのイデオロギーが無数に交錯する現代のアメリカを、恐怖とユーモアたっぷりに反映した。本作は、世間知らずな少女の成長物語なのか、はたまたロードムービーなのか。あなただけの正解を見つけてみて。
公開日: 3月14日(金)
監督: Sean Price Williams
出演: Talia Ryder (タリア・ライダー)、Earl Cave (アール・ケイブ)、Simon Rex (サイモン・レックス)
HP: sweet-east.jp
『早乙女カナコの場合は』

©︎2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
柚木麻子による小説『早稲女、女、男』を、『ストロベリーショートケイクス』『三月のライオン』などで知られる矢崎仁司が実写映画化。俳優陣には橋本愛、中川大志、山田杏奈など、日本映画界を牽引する豪華キャストが集結した。橋本愛演じる早乙女カナコは、大学の入学式で出会った青年、長津田と付き合うことに。そのまま3年が経ち、大手出版社に就職が決まったカナコと脚本家を目指す長津田は喧嘩が絶えない。大学を卒業し、編集者を目指し奮闘するカナコと長津田はすれ違い、出会ってから10年を迎える。それぞれが抱える葛藤や悩みは、恋の行方をどのように動かすのだろうか。本作は、10年におよぶラブストーリーを中心としながら、女性の生き方や女性同士の関係を描く。さまざまな形で知り合う女性たちは対立するのではなく、互いを鼓舞し、エールを送る。現代を生きるあらゆる世代の女性たちが自分らしく一歩を踏み出すための、普遍的な物語が誕生した。本作は、これを観る一人一人に向けた、あなたの物語かもしれない。
公開日: 3月14日(金)
監督: 矢崎仁司
出演: 橋本愛、中川大志、山田杏奈
HP: saotomekanako-movie.com
『ドマーニ! 愛のことづて』

©︎2023 WILDSIDE S.r.l – VISION DISTRIBUTION S.p.A
本国イタリアで600万人を動員し、世界的なヒットを記録した『バービー』『オッペンハイマー』を押しのけて2023年イタリア国内興行収入ランキング1位を記録しただけでなく、歴代興行収入ランキングでも『ライフ・イズ・ビューティフル』を抜いて第5位となった。イタリア全土が注目する話題作が、遂に日本にも上陸。本作のメガホンをとったのは、国民的コメディアン・女優の Paola Cortellesi (パオラ・コルテッレージ)。舞台となるのは、1945年5月、戦後まもないローマ。パオラ演じるデリアは、家族と一緒に半地下の家で暮らしていた。手をあげる夫や寝たきりな義父の介護など生活の問題は山積みで、いくつもの仕事を掛け持ちする多忙な日々。ある日、デリアのもとに届いた一通の謎めいた手紙が、彼女の運命を大きく左右する。本作で写し出されるのは、戦後ローマで逞しく生きる市民と、権利を渇望する女性たちの姿。パオラは、現代にも通ずるテーマを巧みなストーリー展開とユーモラスな演出で主役を見事に演じきった。愛する娘の将来と夫の暴力に悩む主婦役を自らが務め、次世代への願いを込めた本作を、ぜひスクリーンで体験してみては。
公開日: 3月14日(金)
監督: Paola Cortellesi
出演: Paola Cortellesi、Valerio Mastandrea (バレリオ・マスタンドレア)、Giorgio Colangeli (ジョルジョ・コランジェリ)
HP: sumomo-inc.com/domani
『バッドランズ』

©️2025 WBEI
1950年代末、アメリカで実際に起きた連続殺人事件をもとにしたロードムービー。のちにカンヌ映画祭にてパルム・ドール賞を受賞するなど、名匠と謳われる Terrence Malick (テレンス・マリック) 監督のデビュー作が、本国でリリースされてから半世紀以上を経て、ついに日本上陸を果たす。本作で描かれるのは、明日なき若者と少女の逃避行。ある日、ゴミ収集作業員の青年キットが、学校ではあまり目立たないがバトンワリングが得意な少女ホリーと恋に落ち、交際に反対するホリーの父親を射殺してしまう。行き場のない2人は犯罪を繰り返し、警察に追われる日々を送っていく。物語はホリーを通して展開。殺人や強盗といった犯罪に緊張感や現実感が乏しく、まるで夢の中の出来事のように描かれている。どこまでも続くと思わせる2人だけの逃避行が、鮮烈かつ詩情豊かに表現され、映画史に燦然と輝く一本に仕上がった。キット役は、後に『地獄の黙示録』にて主演を務める Martin Sheen (マーティン・シーン)、ホリー役は『キャリー』でタイトルコールを演じた Sissy Spacek (シシー・スペイセク)。数々の映画監督に影響を与えたクライムロードムービーの傑作を、ぜひスクリーンで感じてみてはいかがだろうか。
公開日: 3月7日(金)
監督: Terrence Malick (テレンス・マリック)
出演: Martin Sheen、Sissy Spacek、Warren Oates (ウォーレン・オーツ)
HP: badlands2025.com
『いきもののきろく』
永瀬正敏が原案、主演を務め、東日本大震災および原発事故後をイメージした世界で取り残された男女の話を制作。撮影から11年の時を経てついに全国公開される。ストーリーは、廃墟のような街で運河に流れ着いたゴミを拾い集める男が、突然現れた女に出会い、男の日常が少しずつ変わる様子を描く。舞台は名古屋市内を流れる中川運河。映画『泥の河』の舞台でもある地で、井上淳一と永瀬正敏のコラボ作品が誕生した。はじめ永瀬は、荒涼とした廃工場でひとり筏を作り続ける男をテーマにしたプロットを書き上げ、井上がそこに東日本大震災後のイメージをプラス。そして、黒澤明が原爆の恐怖に真正面から向き合った隠れた名作『生きものの記録』と同じタイトルを題した。井上は本作について、「『生きものの記録』の主人公・三船のその後の話だ」とコメントを残している。女を演じるのは、『福田村事件』のミズモトカナコ。当時まだ学生だったミズモトは、永瀬相手に一歩も引けを取らない堂々たる演技でスクリーンに強い存在感を放っている。本作は2013年に撮影され、当時は短編を上映する環境がなかったが、さまざまな映画のかたちが生まれ状況が変化。永瀬正敏が贈る喪失と再生の物語が、満を持してスクリーンに蘇る。
公開日: 3月7日(金)
監督: 井上淳一
出演: 永瀬正敏、ミズモトカナコ
HP: dogsugar.co.jp/ikimononokiroku
『Playground 校庭』

©️2021 Dragons Films/ Lunanime
小学校に入学した7歳の少女ノラと、3歳年上の兄アベルの等身大の目線から、子どもを取り巻く過酷な環境や社会的恐怖を映し出す。内気なノラは学校に入学してからなかなか居場所を見つけることができなかった。ある日、兄のアベルがいじめられている現場を目撃し、ショックを受ける。アベルはノラに、いじめのことを秘密にすることを命令。一方的にいじめを受けるアベルを見過ごすことしかできないノラは、やり場のない寂しさ、苦しさを募らせる。さらに唯一の理解者であった担任の先生も学校を去ることに。友達にのけ者にされ、ひとりぼっちのノラはある日、校庭で衝撃的な光景を目撃する。ベルギー出身の Laura Wandel (ローラ・ワンデル) 監督が本作で表現したのは、息の詰まるような現代社会の恐怖と、人間が初めて社会に触れる瞬間。社会の縮図のような小学校で初めての恋や裏切りを経験し、精神的暴力に直面する。ノラが仲間外れにされる恐怖を感じ、家族以外の人に初めて認められたいと感じる様子を丁寧に捉えている。本作は、社会との結びつきやアイデンティティについて、もう一度見つめ直すきっかけを与えてくれるかもしれない。
公開日: 3月7日(金)
監督: Laura Wandel
出演: Maya Vanderbeque (マヤ・バンダービーク)、Gunter Duret (ガンター・デュレ)、Karim Leklou (カリム・ルクルー)
HP: playground-movie.com
『ケナは韓国が嫌いで』

©️2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.
2015年に刊行されベスセラーとなった小説『韓国が嫌いで』をもとに、韓国の若者が直面する現実をリアルなまなざしで描く。主人公は、ソウル郊外の小さな団地で家族と暮らす28歳会社員、ケナ。彼女は、片道2時間もかかる通勤や単調な仕事、古い価値観を持つ家族、恋人との不透明な未来など、取り巻く環境に不安を抱いていた。「自分には落ち度がないはずなのに、ここでは幸せになれない」と感じた彼女は、ニュージーランドへ移り住み、新たな幸せを見つけていく。本作のもととなった小説は、16カ国で翻訳され大ヒットを記録した『82年生まれ、キム・ジヨン』と同じ出版社から「今日の若い作家」シリーズとしてリリース。元新聞記者で、社会批評からSFまで幅広い作風で知られる作家チャン・ガンミョンが、現代の韓国社会を舞台に、生まれ育った場所で生きづらさを抱える女性が海外で人生を模索する姿を表現した。圧迫感を感じる現代を生きる人々は多いはず。本作は国を越えて、多くの共感を呼ぶに違いない。
公開日: 3月7日(金)
監督: Jang Kun-jae (チャン・ゴンジェ)
出演: Ko Ah-sung (コ・アソン)、Joo Jong-Hyuk (チュ・ジョンヒョク)、Kim Woo-gyeom (キム・ウギョム)
HP: animoproduce.co.jp/bihk
『ANORA アノーラ』

©︎2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©︎Universal Pictures
アメリカ社会の「声なき声」をすくいあげてきた Sean Baker (ショーン・ベイカー) 監督が贈る人間讃歌。主人公は、ニューヨークでストリップダンサーとして暮らすアノーラ。職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、夢のような幸せを掴みかけていたが、彼の両親は息子と娼婦との結婚に猛反対。厳しい現実を突きつけられ、アノーラの物語は第二章を迎える。本作で監督が表現したのは、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する、若きストリッパーの生きざまだ。身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを21世紀風に描き直し、セックス、美、富、社会的階級といったリアリティ溢れる要素を取り入れた。そしてパワーゲームのなかで利用されながらも、階級意識や偏見に抗うパワフルなアノーラ役に抜擢されたのは、新星 Mikey Madison (マイキー・マディソン)。また、ロシア新興財閥の息子イヴァン役には「ロシアのティモシー・シャラメ」と謳われる Mark Eydelshteyn (マーク・エイデルシュテイン) が登場し、本作が英語劇初挑戦となる。Sean Baker の作品史上、最もエンターテイメント性が高く、清濁合わせ呑む人間らしさに溢れた本作。アノーラの圧倒的パワーとエネルギーが、凝り固まった今の世の中を鮮やかに蹴り飛ばす。
公開日: 2月28日(金)
監督: Sean Baker
出演: Mikey Madison、Mark Eydelshteyn、Yuriy Borisov (ユーリー・ボリソフ)
HP: anora.jp
『石門』

©︎YGP-FILM
中国湖南省の長沙市。主人公の女性リンは、バイトでお金を稼ぎながら、客室乗務員を目指して勉強に励む日々を送っていたが、ある日自分が妊娠1ヶ月であることを知る。お腹の子の父親と別れたばかりの彼女は、子どもを持つことも中絶することも望まなかった。一方、郊外で診療所を営むリンの両親は、死産の責任を追及され賠償金を迫られていた。リンは両親を助けるため、賠償金の代わりに生まれてくる子どもを提供することを決心する。米批評サイト「ロッテントマト」で批評家の94%、観客の100%の支持を得た記録を持つなど、世界各地で絶賛がやまない本作。中華圏をはじめベネチア、トロント、ニューヨークなど、世界の主要映画祭で高く評価される『石門』が、ついに日本にも上陸する。本作を手がけた Huang Ji (ホアン・ジー) 監督と大塚竜治監督は、近年世界中でみられるフェミニズム映画の関心を予告していたかのように、長きに渡って「女性と性」というテーマを捉え続けてきた。世界で活躍する両監督が入念なリサーチをもとに、現代の中国を生きる女性の姿を静謐なタッチで写し、世界各地で起きているジェンダー問題とオーバーラップするかの如く、現代のあらゆる女性が抱える問題に警鐘を鳴らす。本作が、重々しい「石」の「門」を開く、一条の光を求める女性たちの声を代弁してくれるかもしれない。
公開日: 2月28日(金)
監督: Huang Ji、大塚竜治
出演: Yao Honggui (ヤオ・ホングイ)、Liu Long (リウ・ロン)、Xiao Zilong (シャオ・ズーロン)
HP: stonewalling.jp
『TATAMI』

©︎2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved
2019年、日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化。映画史上初、イスラエル出身監督とイラン出身監督がコラボレーションを遂げる。「スポーツと政治」の問題を鋭く深く問う、ポリティカルスポーツエンターテインメント。作品の舞台は、ジョージアの首都、トリビシ。女子世界選手権にて、イラン代表であるレイラは順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に政府から棄権を命じられる。それは、敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるためだった。自分自身だけでなく家族も人質に取られた危険な状況下で、怪我を装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか、レイラは人生最大の決断を迫られる。オープニングからラストまで、スリリングな展開に目が離せない。本作で監督を務める Guy Nattiv (ガイ・ナッティブ) と Zar Amir (ザーラ・アミール) は、映画史上初となるイランとイスラエルにルーツを持つ2人が協働し世界で大きな話題を集めた。本作の撮影はすべて秘匿状態で行われ、映画に参加したイラン出身者は全員亡命。個人と権力の関係を問いかけ、悲惨な争いが続く世界に向け、命懸けで平和の祈りを込めた作品が放たれる。
公開日: 2月28日(金)
監督: Guy Nattiv、Zar Amir
出演: Arienne Mandi (アリエンヌ・マンディ)、Zar Amir、Jaime Ray Newman (ジェイミー・レイ・ニューマン)
HP: mimosafilms.com/tatami
『デュオ 1/2のピアニスト』

©︎2024 / JERICO – ONE WORLD FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 3 CINEMA
実在する双子の天才ピアニスト、プレネ姉妹の数奇な運命と人生をモデルにした音楽ドラマ。双子の姉妹、クレールとジャンヌは、幼い頃からピアノに情熱を注いできた。父親からアスリートのような指導を受け、ドイツにある名門カールスルーエ音楽院に入学したのち、ピアノのソリストを目指してコンサートのオーディションに励む日々。しかし、彼女たちは両手が徐々に不自由になる難病にかかっていることを知る。最悪な事態に直面しながらも、ピアノが人生のすべてであり、かけがえのない存在であることに気づく。彼女たちは自らの運命を変えるため、唯一無二の演奏方法に挑戦する。今回、双子の天才ピアニストによる実話を作品に落とし込んだのは、『コーダ あいのうた』『ふたりのマエストロ』をプロデュースしたことで知られる Frederic Potier (フレデリック・ポティエ)。そして Valentin Potier (バランタン・ポティエ) とともに作品をてがけ、親子監督として長編デビューを飾る。また主演の双子を務めるのは、Netflix (ネットフリックス) ドラマ「エミリー、パリへ行く」の人気キャラクター、カミーユ役の Camille Razat (カミーユ・ラザ) と、映画初出演の Melanie Robert (メラニー・ロベール)。ピアニスト生命を脅かす難病にかかったプレネ姉妹の苦難と成功を、ぜひスクリーンで見届けてほしい。
公開日: 2月28日(金)
監督: Frederic Potier、Valentin Potier
出演: Camille Razat、Melanie Robert、Franck Dubosc (フランク・デュボスク)
HP: flag-pictures.co.jp/duo-pianist
『ミュージック・フォー・ブラック・ピジョン ジャズが生まれる瞬間』
本作は Jakob Bro (ヤコブ・ブロ)、Bill Frisell (ビル・フリゼール)、Lee Konitz (リー・コニッツ)、Paul Motian (ポール・モチアン)、高田みどりなど、現代ジャズを代表する世界的に有名なジャズ・ミュージシャンたちの人生とそのプロセスを探求するドキュメンタリー作品。本作の撮影クルーは北米、ヨーロッパ、日本を通してデンマークの作曲家ヤコブ・ブロを過去14年間追い続けてきた。ヤコブだけでなく、これまでに彼と共演してきた世代や国境の違う音楽家たちとの交流や生きざまを丁寧に紡ぎ出す。また本作は撮影方法にもこだわり、「ただひたすらテープを回す」という伝統的なジャズの手法を採用。現代ジャズを代表するアーティストたちの親密で即興的な瞬間を捉え、彼らの個性的で豊かなスタイルはもちろん、セッションの中で生まれる独特のエネルギーや仲間意識にもフォーカス。そして予測不可能なライブ・ジャズの合間には、参加者たちが演奏することの感覚や音楽の意味について語ったポートレートも収録。ジャズ・ミュージシャンとしの人生やそのプロセスなど、興味深い語りはファン必見だ。さらに、撮影中に惜しくもこの世を去った Lee Konitz、Paul Motian らの最後の演奏も披露。本作は先駆的なミュージシャンであった彼らへ心からの敬意を表し、後世へと受け継ぐレガシーのような役割を果たす。ジャズファンも、ジャズを知らない人々も楽しむことのできる作品を、ぜひスクリーンで体感してほしい。
公開日: 2月28日(金)
監督: Jorgen Leth (ヨルゲン・レス)、Andreas Koefoed (アンドレアス・コーフォード)
出演: Jakob Bro (ヤコブ・ブロ)、Lee Konitz (リー・コニッツ)、Paul Motian (ポール・モチアン)
HP: musicforblackpigeons.com
『ブルータリスト』

©︎DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVES ©︎Universal Pictures
『戦場のピアニスト』の主演を務め、世界中を感動させた Adrien Brody (エイドリアン・ブロディ) が、とある建築家の数奇な半生を写し出す。主人公のラースロー・トートはハンガリー系のユダヤ人。第二次世界大戦下で起きたホロコーストを生き延びるが、妻、親類と強制的に引き離されてしまう。渡米した彼はアメリカ・ペンシルベニアで実業家ハリソンと出会い、家族の米国移住と引き換えに礼拝堂の設計、建設依頼を受ける。しかし、文化の違う米国での建設作業にはさまざまな困難がラースローを待ち受けていた……。戦争の翳りは消えず、さまざまに変容して人々を襲うこともある。歴史の汚点や異文化のギャップを背景に、1人の建築家が感じた苦楽をあなたも感じてほしい。
公開日: 2月21日(金)
監督: Brady Corbet (ブラディ・コーベット)
出演: Adrien Brody (エイドリアン・ブロディ)、Guy Pearce (ガイ・ピアース)、Felicity Jones (フェリシティ・ジョーンズ)
HP: universalpictures.jp/the-brutalist
『あの歌を憶えている』

©️DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
若年性認知症により近い記憶を忘れてしまう男性、ソールと、過去の記憶に傷を抱える女性、シルヴィアが偶然出会い、向き合っていくうちに未来に希望を見出していくヒューマンドラマ。監督は、『或る終焉』『ニューオーダー』などで知られるメキシコの名匠 Michel Franco (ミシェル・フランコ)。そして作中に何度も流れる曲「青い影」は、イギリスのロックバンド Procol Harum (プロコル・ハルム) のデビュー曲。John Lennon (ジョン・レノン) が「人生でベスト3に入る曲」と語り、日本でも松任谷由美や山下達郎が影響を受けたと公言している名曲と、心温まるストーリーがマッチし、痛みを抱えるすべての人々を優しく掬い取るような作品が完成した。記憶に翻弄されるソールとシルヴィアは導かれるように出会い、心がほぐれるような穏やかな時間を過ごしていく。そして、過去のトラウマと向き合わなくてはならないとき、シルヴィアのとった行動とは。人生が変わっていく様子を丁寧に紡いだ愛のヒューマンドラマが、あなたの心も温めてくれるはず。
公開日: 2月21日(金)
監督: Michel Franco
出演: Jessica Chastain (ジェシカ・ジャスティン)、Peter Sarsgaard (ピーター・サースガード)、Merritt Wever (メリット・ウェバー)
HP: memory-movie-jp.com
『飛べない天使』

©️2023 Nuiavan
都会の生活に疲れたOL・優佳は、会社の飲み会からの帰り道、枕を抱えて商店街を駆け抜ける青年を目撃。彼のまわりには白い羽が舞い、まるで天使のように去っていった。その後、その青年が道端で横になっているところに再び遭遇。聡太郎と名乗る彼は無邪気に優佳を連れ出し、2人の逃避行がスタートする。本作でW主演を飾るのは、『湖の女たち』や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など着実にキャリアを積み上げる福地桃子と、『まなみ100%』、『うみべの女の子』などで話題作に出演する青木柚。そして監督を務める新進気鋭の堀井綾香は、本作が映文連アワード2023で部門優秀賞を受賞するなど、次世代を担う新たな才能として注目を集めている。2023年12月に本作と短編「prologue」が、二本立てで『The Night Before』と題されて劇場公開された。今回は『飛べない天使』が単独で劇場に蘇る。若き才能たちが織りなす瑞々しい物語。
公開日: 2月21日(金)
監督: 堀井綾香
出演: 福地桃子、青木柚、前原瑞樹、さいとうなり
HP: nuiavan.com/tobenaitenshi
『セプテンバー5』

©︎2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
平和の祭典で起きた衝撃のテロを、生中継に携わったテレビクルーの視点で描く。事件が起こったのは、1972年9月5日ミュンヘンオリンピック。パレスチナ武装組織「黒い九月」は、イスラエル選手団9名を人質とするテロを起こした。その様子を全世界に向けて TV 中継として報道したのは、ニュース番組ではなくスポーツ番組の放送クルーたち。過激化するテロリストの要求、機能しない現地警察、錯綜する情報……。緊張感あふれる状況で中継チームたちは選択を迫られるなか、刻一刻と人質交渉期限は迫っていく。本作では、極限状態でテロと対峙した人々の1日をノンストップのサスペンスで写し出す。社会性とエンタメ性を見事に両立した構成は、第81回ヴェネツィア映画祭で上映されると大絶賛を受け、一気にアカデミー賞をはじめとする賞レースの最有力候補に浮上。日本からもジャーナリスト、アナウンサー、映画評論家など、数々の著名人から絶賛の声が届いている。SNS の普及で人類全体がメディアになりえる現代は、観客1人1人に鋭い問いを投げかける。報道の自由、事件当事者の人権、報道による結果の責任は誰にあるのか。発信を続ける我々に当事者意識を与える傑作を、ぜひスクリーンで体感してほしい。
公開日: 2月14日(金)
監督: Tim Fehlbaum (ティム・フェールバウム)
出演: Peter Sarsgaard (ピーター・サースガード)、John Magaro (ジョン・マガロ)、Ben Chaplin (ベン・チャップリン)
HP: september5movie.jp
『ドライブ・イン・マンハッタン』

©️2023 BEVERLY CREST PRODUCTIONS LLC. All rights reserved.
舞台は真夜中のタクシー。ハリウッド2世代スターによって繰り広げられる、ワンシチュエーションの会話劇。ストーリーは、1人の女性がジョン・F・ケネディ空港でタクシーに乗り込み展開される。運転手はシニカルなジョークで車内を和ませ、世代の違う2人はなぜか波長が合う。会話を続けるうちに、歳を重ね、酸いも甘いも経験してきた運転手によって、女性の恋人が既婚者であることがあっさり見抜かれてしまう。もう2度と会うことのない関係だからこそお互い本音を打ち明けていく2人。他愛のないはずだった会話はやがて予想もしなかった内容へと発展し、女性は誰にも打ち明けられなかった秘密を告白し始める。『フィフティ・シェイズ』シリーズで注目され、幅広い役回りをこなす Dakota Johnson (ダコタ・ジョンソン) が乗客の女性役に、『ミステリック・リバー』『ミルク』で2度もオスカーに輝き、世界三大映画祭すべてで主演男優賞を受賞した Sean Penn (ショーン・ペン) が運転手役にそれぞれ抜擢。生い立ちや男女の価値観の違い、決して幸せばかりではない恋愛経験、大人になった今叶えたい夢。偶然出会った2人の会話は予期せぬ形で心の扉を開き、やがて秘密と本音を引き出す対話へと変わっていく。すべての大人に贈る濃密なヒューマンドラマをぜひ見届けて。
公開日: 2月14日(金)
監督: Christy Hall (クリスティ・ホール)
出演: Dakota Johnson、Sean Penn
HP: dim-movie.com
『聖なるイチジクの種』

©︎Films Boutique
2022年、若い女性の不審死をきっかけに実際にイランで起きた市民による政府抗議運動をきっかけに制作されたサスペンススリラー。背景は、市民による清風への反抗議デモで揺れるイラン。国家公務に従事する一家の主人・イマンは護身用に国から一丁の銃を支給されていたが、ある日家の中から銃がなくなっていた。イマンの不始末による紛失かと思われたが、疑いの目は妻、姉、妹の3人に向けられる。誰が、なんのために、操作が進むにつれ家庭内は猜疑心に包まれる。それぞれの疑惑が交錯する時、物語は予想もつかない方向へと狂い始める。本作のメガホンをとった Mohammad Rasoulof (モハマド・ラスロフ) は、自主映画でイラン政府を批判したとして8年の禁固刑と鞭打ちの有罪判決が下っていた。まさに命を懸けて本作を世界に届け、第77回カンヌ国際映画祭では審査員特別賞を受賞。また会場ではスタンディングオベーションで讃えられ、喝采を浴びたという。今、世界が注目を集める作品が遂に日本に上陸するこの機会に、ぜひ映画館に足を運んでほしい。
公開日: 2月14日(金)
監督: Mohammad Rasoulof
出演: Missagh Zareh (ミシャク・ザラ)、Soheila Golestani (ソヘイラ・ゴレスターニ)、Mahsa Rostami (マフサ・ロスタミ)
HP: gaga.ne.jp/sacredfig
『愛を耕すひと』

©2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
作家・翻訳家の Ida Jessen (イダ・ジェッセン) による歴史小説をもとに、デンマーク開拓史の英雄とその家族による愛の軌跡を描く歴史ドラマ。時は16世紀。貧窮にあえぐ退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉は、貴族の称号を懸けて荒野の開拓に名乗りを上げた。しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケルは自らの勢力が衰退することを恐れ、ありとあらゆる手段で彼を追い払おうとする。襲いかかる自然の脅威とデ・シンケルからの攻撃に抗いながら、さまざまな人々と出会うことで、ケーレンの頑なに閉ざした心に変化が生まれていく。原作を発売前に読んだ Nikolaj Arcel (ニコライ・アーセル) 監督は感銘を受け、俳優の Mads Mikkelsen (マッツ・ミケルセン) に声をかけたことから本作が誕生。『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』以来となる2人のタッグが実現した。「北欧の至宝」と呼ばれるマッツは本作で、荒野を覆う冷たい氷が溶けていくかのような繊細な感情の移ろいと豊かな表情を披露。壮大で美しい一大叙事詩を、彼の演技力で体現する様子に目が離せない。
公開日: 2月14日(金)
監督: Nikolaj Arcel
出演: Mads Mikkelsen、Amanda Collin (アマンダ・コリン)、Simon Bennebjerg (シモン・ベンネビヤーグ)
HP: happinet-phantom.com/ai-tagayasu
『オン・ア・ボート』

©2024 PYRAMID FILM INC.
株式会社ベツダイによって2023年に開催された映像作品コンテスト filmbum Film Awards (フィルムバム フィルム アワード) にて短編作品が最優秀賞を獲得した受賞記念に HESO 監督が製作したオリジナル作品。彼は主に CM、ミュージックビデオなどを手がけているフィルムメーカーだ。今回完成したのは、古典的な「歳の差婚」の物語。郊外の一軒家に、専業主婦になったばかりの高橋さらと、彼女より一回り年上の高橋忠が、会話こそあまり噛み合わないが穏やかな新婚生活を送っていた。そこへお祝いにやってきたさらの旧友・鈴木えだまめは、自由奔放な性格。家の前でタバコを捨て、冷蔵庫を開き、勝手に自身の友人を招き入れる始末。彼女の振る舞いに、神経質な忠はフラストレーションを溜める一方、さらはかつてと変わらぬえだまめの姿に忘れかけていた「あの頃」を思い出していく。この日をきっかけに夫婦生活は徐々に変化しはじめることに。若いさらと古風な忠という対照的な価値観を持つ2人を照らし、多様化した現代社会や結婚の本質に迫る。主人公のさらを松浦りょう、夫の忠を渋川清彦、自由奔放な友人えだまめを山本奈衣瑠が務める。3人の人生は、観る者にどのような感想を抱かせるのか楽しみだ。
公開日: 2月14日(金)
監督: HESO
出演: 渋川清彦、松浦りょう、山本奈衣瑠
『世界征服やめた』

©「世界征服やめた」製作委員会
俳優、アーティストとして活躍する北村匠海が監督デビュー。今は亡き孤高のポエトリーラッパー・不可思議/wonderboy の代表曲「世界征服やめた」を原案に、2人の青年の人生が大きく揺れ動く様子をダイナミックに描く。北村が声をかけたのは、ドラマ「美しい彼」シリーズや映画『キングダム』シリーズ、『ミステリという勿れ』といった話題作に続々と出演する萩原利久、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『遺書、公開。』などで頭角を表す藤堂日向。萩原が演じるのは、内向的な会社員の彼方。日々自分の無力さを感じている一方、彼の同僚・星野はどこか飄々としていて、物事を白黒はっきり決めていく、まさに真逆のような存在。彼方はある日、星野の選んだ決断によって大きく揺れ動くことになる。「死」の意味を知るとき、世界という大きく途方のない場所を見据えるよりも、自分の道を生きることを選択する。新進気鋭の監督、俳優が、全力で生きることの美しさを届ける。
公開日: 2月7日(金)
監督: 北村匠海
出演: 萩原利久、藤堂日向、井浦新
HP: sekaiseifuku-movie.com
『ヒプノシス レコードジャケットの美学』

©Cavalier-Films-Ltd
ロックシーンに最も影響を与えたといわれる伝説のデザイン・アート集団「ヒプノシス」に焦点をあてたドキュメンタリー作品。1968年、Storm Thorgerson (ストーム・トーガソン) と Aubrey Powell (オーブリー・パウエル) によってイギリスで誕生した「ヒプノシス」は、ケンブリッジで Pink Floyd (ピンク・フロイド) と出会い、ジャケットやツアーポスターの制作をスタート。のちに Peter Christopherson (ピーター・クリストファーソン) がメンバーに加わり、1970年代を中心に Pink Floyd、Led Zeppelin (レッド・ツェッペリン)、Paul McCartney (ポール・マッカートニー) など数々のアーティストのカバーアートを創作した。斬新、奇抜、洗練……あらゆる言葉がふさわしいそのクリエイティビティ溢れるデザインは、それまで宣伝用パッケージにすぎなかったアルバム・ジャケットを芸術の域に高めた。本作では、ストームとオーブリーが語る制作秘話、2人を支えたカメラマンやグラフィックのスタッフ、そして Pink Floyd メンバーをはじめとするレジェンドアーティストら本人が登場。貴重なインタビューや写真・映像を通して、彼らの美学を紐解いていく。これまで、いわゆる「ジャケ買い」からアーティストに興味を持ち、音楽を聴き始めるという経験をした人も多いのではないだろうか。本作を鑑賞し、正方形のレコードジャケットに詰まったロマンと芸術に触れてみてほしい。
公開日: 2月7日(金)
監督: Anton Corbijn (アントン・コービン)
出演: Storm Thorgerson、Aubrey Powell、Roger Waters (ロジャー・ウォーターズ)
HP: hipgnosismovie.com
『ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女』

©2023 LETTERBOX FILMPRODUKTION / SevenPictures Film / Real Film Berlin / Amalia Film / DOR FILM / Lago Film / Gretchenfilm / DCM / Contrast Film / blue Entertainment
舞台は1940年8月、ドイツのベルリン。ナチスの密告者となったユダヤ人女性の実話をもとに、第二次世界大戦下で行われたユダヤ人迫害の状況を写し出す。18歳のステラ・ゴルトシュラークは、アメリカに渡りジャズシンガーとして活躍するという夢を持っていた。だが彼女の両親はユダヤ人であったため、現実になることはなかった。3年後、工場で強制労働を強いられてたステラはある日、ユダヤ人向けの偽装パスポートを販売するロルフと出会う。彼と恋に落ち、パスポート制作の手伝いをしながら街を自由に歩き、自由な生活を送っていた。しかし、反ナチス運動を取り締まるゲシュタポに逮捕され、アウシュヴィッツへの移送を逃れるため同胞の密告を行うことに。命と引き換えに悪に手を染めた彼女は終戦後、裏切ったユダヤ人仲間から裁判にかけられる……。ユダヤ人迫害はドイツ国内をはじめポーランド、チェコなどヨーロッパ全土におよび、当時ヨーロッパにいたユダヤ人の約3分の2がホロコーストの犠牲になったという。彼女の生き方は現代の我々にどう写るのだろうか。ぜひスクリーンで確かめて。
公開日: 2月7日(金)
監督: Kilian Riedhof (キリアン・リートホーフ)
出演: Paula Beer (パウラ・ベーア)、Jannis Niewöhner (ヤニス・ニーブナー)、Katja Riemann (カーチャ・リーマン)
HP: klockworx.com/movies/stella
『映画を愛する君へ』

©2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema / Hill Valle
フランスの名匠 Arnaud Desplechin (アルノー・デプレシャン) が、映画の誕生から現在に至るまでの名作の歴史と映画の魅力を語り尽くすシネマ・エッセイ。『そして僕は恋をする』『あの頃エッフェル塔の下で』で主役を飾った架空の人物ポール・デダリュスが、本作ではデプレシャンの分身として登場し、彼の映画人生を追体験のように描く。祖母に連れられ、6歳で初めて映画館を訪れた日、14歳の頃に16歳と偽って映画館に潜り込んだ思い出。学生時代の映画館での上映会や、大学で映画を学んだ日々。映画とともに成長したデプレシャンの自伝的な作品でありながら、誰もが共感できるストーリーに落とし込んでいる。作中には世界各地の個性的な映画館が披露され、日本のシアターも登場。また、一般の観客が自らの映画体験を語るインタビューも収録。ドラマとドキュメンタリーをハイブリッドしたような構成も興味深い。コロナ禍を経て、映画館に足を運ぶ機会の少なくなった今、デプレシャンの映画、映画館へのラブレターともいえる本作がスクリーンに息を吹き込む。デプレシャンが贈る尽きることのない映画愛を、ぜひ映画館で受け止めて。
公開日: 1月31日(金)
監督: Arnaud Desplechin
出演: Louis Birman (ルイ・バーマン)、Françoise Lebrun (フランソワーズ・ルブラン)、Milo Machado-Graner (ミロ・マシャド・グラネール)
HP: unpfilm.com/filmlovers
『ザ・ルーム・ネクストドア』

©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. ©El Deseo. Photo by Iglesias Más.
本作で描かれるのは、病に侵され安楽死を望む女性と、彼女に寄り添う親友の最期の数日間。色鮮やかな映像とユーモアに溢れた作品で世界中を虜にしてきたスペインのスペインの名匠 Pedro Almodovar (ペドロ・アルモドバル) らしい、カラフルな世界観でかけがえのない日々を写し出す。重い病にかかり自らの意志で安楽死を望むマーサを演じるのは、Wesley Anderson (ウェス・アンダーソン) 監督や Jim Jarmusch (ジム・ジャームッシュ) 監督作品に常連の Tilda Swinton (ティルダ・スウィントン)。第82回ゴールデングローブ賞では、本作の演技が認められドラマ部門の主演女優賞にノミネートを果たした。その親友イングリッドを務めるのは、世界三代映画祭すべてで女優賞を受賞した Julianne Moore (ジュリアン・ムーア)。2人のオスカー女優が共演し、繊細で美しい友情を紡ぐ。治療を拒み、安楽死を選択したマーサは「人の気配を感じながら最後を迎えたい」とイングリッドに願い、2人は森の中の小さな家で暮らすことに。マーサは「もしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と告げ、最期の時を迎えるまでの短い生活が始まるのだった。みな一度は考えたことのある、人生最期の瞬間。その時、誰かがそばにいてくれたら。本作は、人生を見つめ直すきっかけを与えてくれるかもしれない。
公開日: 1月31日(金)
監督: Pedro Almodovar
出演: Tilda Swinton、Julianne Moore、John Turturro (ジョン・タトゥーロ)
HP: warnerbros.co.jp/movies
『リアル・ペイン 心の旅』

©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
『グランド・イリュージョン』や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』などに出演し、最近では監督としても活躍している Jesse Eisenberg (ジェシー・アイゼンバーグ) が監督、主演を手がける。彼とW主演を務めるのは、子役時代に『ホーム・アローン』でデビューし、TVシリーズ「メディア王 華麗なる一族」ではエミー賞主演男優賞を受賞するなど、着実にキャリアを積み重ねる俳優 Kieran Culkin (キーラン・カルキン)。2人が演じるのは、性格が対照的な従兄弟。デヴィッドとベンジーは長らく疎遠になっていたが、祖母が亡くなったことで数年ぶりに再会。彼女の遺言のもとポーランドでのツアーに参加した2人は、時に騒動を起こしながら、ユニークな人々とともに旅を続けていく。祖母にゆかりある場所を巡る中で、40代を迎えた彼らは自身を見つめ直し、さまざまなことに気づく。実力派俳優として知られる2人が展開する笑いあり涙ありの旅に、誘われてみてはいかが。
公開日: 1月31日(金)
監督: Jesse Eisenberg
出演: Jesse Eisenberg、Kieran Culkin、Will Sharpe (ウィル・シャープ)
HP: searchlightpictures.jp/movies/realpain
『籠の中の乙女』

©︎XXIV All rights reserved
『哀れなるものたち』『女王陛下のお気に入り』などの活躍が記憶に新しい、ギリシャが生んだ名匠 Yorgos Lanthimos (ヨルゴス・ランティモス) の長編デビュー作が4Kレストア版にて蘇る。本作は、家族の絆を誰にも壊されたくない父親の「妄執」と、それに振り回されて育った子どもたちの生活を独創的な視点で表現。登場するのは、ギリシャの郊外に家を構える裕福な家族。一見普通に見える彼らの両親は、子どもたちをずっと家の中だけで育てているという秘密があった。邸宅には四方に高い生垣。「外の世界は恐ろしい」と信じながら成長した子どもたちは、外の世界から来た女性の出現によって大きな変化を迎えることになる。本作はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞。その後リリースした『ロブスター』、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』、『憐れみの3章』もそれぞれ主要な賞を受賞している。Yorgos Lanthimos が「カンヌ無敗伝説」を打ち立てる始まりとなったキャリア初期作品を、ぜひ劇場で鑑賞してみて。
公開日: 1月24日(金)
監督: Yorgos Lanthimos
出演: Christos Stergioglou (クリストス・ステルギオグル)、Michele Valley (Michele Valley)、Aggeliki Papoulia (アンゲリキ・パプーリァ)
HP: kago-otome.ayapro.ne.jp
『サンセット・サンライズ』

©︎楡周平/講談社 (C)2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
『二重生活』、『あゝ、荒野』で知られる岸善幸監督が、楡周平による同名小説を映画化。脚本には宮藤官九郎を招き、菅田将暉、井上真央、竹原ピストルといった豪華キャストが集結。都会から東北へと移住した青年が地域の住民らと織りなす生活をユーモラスに描く。時は2020年、新型コロナウイルスのパンデミックで世界中がロックダウンに追い込まれていた。菅田将暉演じる晋作は東京の大企業に勤めていたが、リモートワークを機に宮城県・南三陸に「お試し移住」することを決意。海の近い環境で趣味の釣りを楽しむ日々を送っていたが、町の人々は都会からやってきた晋作に戸惑いを見せていた。晋作は交流に難しさを感じながらも前向きに溶け込もうとするが、その先には予想できない展開が待ち受けていた。本作の背景には、コロナ禍の日本、過疎化に悩む地方、震災といった社会問題が写し出されている。解決の糸口が見えない問題を照らしながら、豊かなエンターテイメントに転化させたヒューマン・コメディ。
公開日: 1月17日(金)
監督: 岸善幸
出演: 菅田将暉、井上真央、竹原ピストル
HP: warnerbros.co.jp/sunsetsunrise
『ストップモーション』

©︎Bluelight Stopmotion Limited / The British Film Institute 2023
『マッドゴッド』や『オオカミの家』など、近年脚光を浴びるストップモーション・アニメの新たな話題作が日本に上陸。実写とストップモーション・アニメーションを駆使した独創的なホラー作品で知られる Robert Morgan (ロバート・モーガン) 監督が、現実と虚構が融合するような恐怖を届ける。物語は、偉大なストップモーション・アニメーターであるスザンヌ・ブレイクの愛娘エラが、母の病により中断された作品を完成させようと奮闘するストーリー。独学では作業が進まず、偶然出会った謎の少女の力を借りながら制作を進めるが、次第に現実と虚構の壁が崩壊し精神的に追い詰められていく。実写とアニメーションが交錯する映像とマッチしたストーリーが、本作に重層的な恐怖とスリルを与える。イギリス発、珠玉のサイコロジカル・ホラーで、これまで経験したことのない恐怖を感じてほしい。
公開日: 1月17日(金)
監督: Robert Morgan
出演: Aisling Franciosi (アシュリン・フランチオージ)、Stella Gonet (ステラ・ゴネット)、Tom York (トム・ヨーク)
HP: starcat.co.jp/stopmotion
『敵』

©︎1998 筒井康隆/新潮社 (C)2023 TEKINOMIKATA
原作は、筒井康隆の同名小説。穏やかな生活を送っていた独居老人がとあるメッセージを発見したことをきっかけに「敵」が現れる物語を、終始モノクロで表現した。主人公は、渡辺儀助、77歳。大学教授の職を辞めてから10年が経ち、妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に1人で暮らしている。預貯金で自分の余生を計算し、遺言書も書き終えて人生の最期へと向かっていく。そんなある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」というメッセージが表示される。彼の人生が徐々に狂い始める原因となった「敵」とはなんなのか。筒井康隆は本作に対し「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた。 」とコメントを残している。2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門では東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞の3冠に輝いた注目作品をお見逃しなく。
公開日: 1月17日(金)
監督: 吉田大八
出演: 長塚京三、瀧内公美、河合優実
HP: happinet-phantom.com/teki
『満ち足りた家族』

©︎2024 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK ALL RIGHTS RESERVED
家族の親密な描写を細やかに描きながら、人間の心理の奥底に潜む澱みや揺れ動きを緻密に捉えたサスペンス。弁護士の兄と医者の弟は、それぞれに美しい妻を持ち、子どもを育て、何不自由ない満たされた生活を送っていた。兄ジュワンは道徳よりも物質的な利益を優先する一方、小児科医の弟ジェギュは、どんな時も良心的であることを忘れない。両極端の信念を掲げる兄弟にとある事件が降りかかり、家族の運命を大きく変えることになる。キャストには『ペパーミント・キャンディー』の主演として知られる Sol Kyung-gu (ソル・ギョング)、そして Jang Dong-Gun (チャン・ドンゴン)、Kim Hee-ae (キム・ヒエ) など、韓国を代表する名優が集結。また監督は、『八月のクリスマス』『危険な関係』を手がけた名匠 Hur Jin-ho (ホ・ジノ)。彼の演出力への絶大な信頼から数多の俳優が出演を嘱望してきたという。本作でも彼らしい陰影に富む心理描写が作品に深みを与え、自身の最高峰ともいえる傑作を完成させた。完璧な美学を築き上げた彼の最新作に、世界中から熱い視線が注がれる。
公開日: 1月17日(金)
監督: Hur Jin-ho
出演: Sol Kyung-gu、Jang Dong-Gun、Kim Hee-ae
HP: michitaritakazoku.jp
『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』

©︎WOWOW / WOWOWエンタテインメント
2023年3月28日、71歳で惜しまれつつこの世を去った世界的音楽家・坂本龍一。彼が日本国内で16年ぶりにフルオーケストラとの共演を果たし、話題を呼んだ「Playing the Orchestra 2013」。そのアップデート版として、自らが指揮をとり実現した2014年の東京公演が、ついに映画化される。本作では、坂本がピアノを演奏しながら全曲を指揮、YMO の名曲から「Merry Christmas Mr. Lawrence」「ラストエンペラー」などの代表作、さらには彼が手掛けた映画音楽まで、多彩な楽曲が東京フィルハーモニー交響楽団の壮大な演奏とともに奏でられる。10年の時を経て「Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014」が、極上の音響環境と大スクリーンで鮮やかに甦る。彼の遺した音楽が時代を超え、私たちの心に響き続ける。その瞬間を劇場で体感してほしい。
公開日: 1月3日(金)
出演: 坂本龍一
HP: film/ryuichi-sakamoto
『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』

©︎2022 VHS Forever Inc.All Rights Reserved.
「カナダ映画の未来」と期待を寄せられる本作が、ついに日本上陸。舞台となるのは、レンタル DVD 全盛期である2003年のカナダ。人間関係がうまくいかない映画好きの高校生がさまざまなトラブルを引き起こす様子を描いた青春コメディだ。主人公のローレンスを演じるのは、若手俳優でラッパーとしても活躍する Isaiah Lehtinen (アイザイア・レティネン)。社交性がなく人付き合いの苦手な彼の願いは、ニューヨーク大学で Todd Solondz (トッド・ソロンズ) から映画を学ぶこと。学費を貯めるためにバイトをしている地元のビデオ店で、さまざまな個性的な人と出会い、不思議な友情を育んでいく。しかし、ローレンスは自身の将来への不安から大切な人を傷つけてしまう。本作は新星 Chandler Levack (チャンドラー・レバック) 監督による長編デビュー作で、自伝的要素を含んだ痛烈な脚本がトロント国際映画祭で高い評価を得た。理想と現実の狭間でもがく、不器用な高校時代が切なさを誘う一作。
公開日: 12月27日(金)
監督: Chandler Levack (チャンドラー・レバック)
出演: Isaiah Lehtinen、Romina D’Ugo (ロミーナ・ドゥーゴ)、Krista Bridges (クリスタ・ブリッジス)
HP: enidfilms.jp/ilikemovies
『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』

©︎ – 2023 – ALVA FILM PRODUCTION SARL – TAKES FILM LLC
フェミニズム活動家、ジョージア人作家 Tamta Melashvili (タムタ・メラシュヴィリ) が手がけた大ヒット小説を映画化。突然動き始めた運命に力強く挑む主人公エテロの姿が愛らしい、異色な青春ドラマ。ジョージアの小さな村に1人で暮らす48歳のエテロは、結婚したいと思ったことは一度もない。自家製のブラックベリージャムと同じくらい、独身の生活を愛していた。しかし、ある日彼女は危険な事故に遭う。人生で初めて死を意識し、突発的に男性との肉体関係を持つと、彼女の人生は大きく変わっていく。人生の後半期に差しかかり、新たな自分を見出していくエテロを演じたのは、舞台を中心に活躍してきたジョージア人俳優 Eka Chavleishvili (エカ・チャブレイシュビリ)。中年女性の葛藤と勇気を、ポップにオフビートに演じきった。変わらない毎日を過ごしていたエテロは、どのような将来を選択するのだろうか。
公開日: 1月3日(金)
監督: Elene Naveriani (エレネ・ナベリアニ)
出演: Eka Chavleishvili、Temiko Chichinadze (テミコ・チチナゼ)
HP: pan-dora.co.jp/blackbird
『型破りな教室』

©︎Pantelion 2.0, LLC
メキシコ・マタモロスの小学校で2011年に起きた実話を描いたドラマ作品。舞台となるのは、麻薬と殺人が日常と化したアメリカとの国境近くの小学校。子供たちは常に犯罪と隣り合わせの環境で育ち、教育設備は常に不足していた。意欲のない教員ばかりで学力は国内最底辺という悪環境に、新人教師のフアレスが訪れる。彼のユニークで型破りな授業は、生徒たちに探求する喜びを教えてくれた。クラス全体の成績は飛躍的に上昇し、10人の生徒が全国上位0.1%のトップクラスに食い込むまでの軌跡を描く。生徒に深く優しく寄り添うフアレス役を務めるのは、『コーダ あいのうた』に続く教師役ながら新たな魅力を発揮する Eugenio Derbez (エウヘニオ・デルベス)。未来を望むことさえしなかった子供たちが1人の大人に出会い、瞳が輝きだす瑞々しい演技に注目してほしい。
公開日: 12月20日(金)
監督: Christopher Zalla (クリストファー・ザラ)
出演: Eugenio Derbez、Daniel Haddad (ダニエル・ハダッド)、 Jennifer Trejo (ジェニファー・トレホ)
HP: katayaburiclass.com
『キノ・ライカ 小さな町の映画館』

©43eparalleleproductions
フィンランドの名匠 Aki Kaurismaki (アキ・カウリスマキ) が仲間と完成させた映画館「キノ・ライカ」を捉えたドキュメンタリー。映画館が存在するのは、北欧フィンランドの鉄鋼の町カルッキラ。深い森と湖と、現在は使用されていない鋳物工場が並ぶ人口9,000人の小さな町に、初めて映画館が誕生する。カウリスマキ自ら釘を打ち、椅子を取り付け、スクリーンを張って完成させた。まるで彼の映画の中の世界のようなその町で、住人たちは映画への期待を語ってくれた。カウリスマキから、映画を愛するすべての者たちへ。「キノ・ライカ」とカルッキラを通して、これからの映画館の可能性を見出していく。本作の監督を務めたのは、クロアチア出身のアーティスト Veljko Vidak (ベリコ・ヴィダク)。映画館開館までの作業を手伝いながら、カウリスマキとその仲間たちの声を1年かけて拾い上げた。カウリスマキの盟友として知られる Jim Jarmusch (ジム・ジャームッシュ) も登場し、とっておきの秘話を披露。豪華メンバーによる貴重な語りを、ぜひ映画館で体感してみて。
公開日: 12月14日(土)
監督: Veljko Vidak
出演: Aki Kaurismaki、Mika Lätti (ミカ・ラッティ)、Jim Jarmusch
HP: eurospace.co.jp/KinoLaika
『大きな家』

©︎CHOCOLATE
齊藤工による企画・プロデュースのもと、『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の竹内亮監督の最新作。東京のとある児童養護施設を舞台に、そこで暮らす子どもたちの日常に密着した。本作に登場するのは、死別、病気、虐待、経済問題など、さまざまな事情から親と離れて暮らす子どもたち。血のつながりのない職員、他の子どもたちと生活をともにしている。家族とも他人とも言い切れない繋がりのなかで、両親への思いや周囲の人間との関係、施設を出た後の暮らしなど、さまざまな葛藤を抱えながら成長していく様子を、あたたかい眼差しで映し出した。竹内が捉えるのは、彼らにとっては毎日の出来事でありながら、いつか終わりを迎える大切な日々の景色。そんな彼らに寄り添うように、アコースティックデュオ・ハンバート ハンバートが主題歌を手がけた。本作は配信、パッケージ化を行わない予定。劇場に足を運べば、あなたの「ふつう」を少し広げてくれるかもしれない。
公開日: 12月6日(金)
監督: 竹林亮
HP: bighome-cinema.com
『アット・ザ・ベンチ』

©︎2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.
ポカリスエットの広告や米津玄師の MV などで知られる映像監督・写真家の奥山由之が自主制作した、全5編のオムニバスムービー。第2編の脚本には8人組ユニット・ダウ90000の蓮見翔が、キャストには広瀬すず、仲野太賀、今田美桜、吉岡里帆、神木隆之介など錚々たる顔ぶれが集結。川沿いの芝生の真ん中にぽつんと置かれたベンチを巡って、訪れるさまざまな人たちの日常を写し出す。別れ話をするカップルとそこに割り込む男性、家出をした姉と、姉を探しにきた妹や、ベンチの撤去を計画する役所の職員たち。繰り広げられる等身大の会話は、まるで我々の日常の延長線上にあるかのようだ。また、本作は過去に動画配信プラットフォーム Vimeo (ヴィメオ) にて第1編、第2編が無料公開され反響を呼び、今回新たに3本のショートムービーが制作された。心地よい温度感と小さな違和感の調和を、スクリーンで楽しんでほしい。
公開日: 11月15日(金)
監督: 奥山由之
出演: 広瀬すず、仲野太賀、岸井ゆきの、岡山天音、荒川良々、今田美桜、森七菜、草彅剛、吉岡里帆、神木隆之介
HP: spoon-inc.co.jp/at-the-bench
『ルックバック』

©︎藤本タツキ/集英社 (C)2024「ルックバック」製作委員会
『チェンソーマン』などで知られる漫画家・藤本タツキが、2021年に「少年ジャンプ+」にてリリースした同名読み切り漫画の劇場アニメ化が決定。本作は、著名なクリエイターをはじめ、数多くの漫画ファンから反響を呼び起こし、「このマンガがすごい!2022」オトコ編第1位にも輝いたことで知られている。そんなファン待望である作品の監督・脚本・キャラクターデザインを務めるのは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』をはじめ数多くの劇場大作に主要スタッフとして携わってきた押山清高。そして、主人公の藤野に声を吹き込むのは、ドラマ「不適切にもほどがある!」や映画『あんのこと』で現在最も注目を浴びる俳優・河合優実で、もう1人の主人公・京本役には『あつい胸騒ぎ』『カムイのうた』で目覚ましい活躍を見せる吉田美月喜を抜擢。クラスからも称賛され、漫画の腕前に自信を持つ小学4年生の藤野と、一方で引きこもりで学校に来られない同い年の京本。正反対な2人の少女が、漫画へのひたむきな思いで繋がり、ある日すべてを転覆させるような事件が起こる。共鳴し合う少女たちの行先を、ぜひ見届けてみて。
公開日: 6月28日(金)
監督: 押山清高
出演: 河合優実、吉田美月喜
HP: lookback-anime.com