shizuka ishibashi
shizuka ishibashi

自然でいることの強さを知る女優、石橋静河 インタビュー

ドレス ¥340,000 *予定価格、ブラウス ¥187,000 *予定価格、ニット ¥76,000 *予定価格、すべてMIU MIU(ミュウミュウ) | Photo by Toshio Ohno

shizuka ishibashi

Photographer: Toshio Ohno
stylist: koji oyamada
hair&makeup: tomoko takano
Writer: Sota Nagashima

Portraits/

凛とした佇まいの彼女が微笑むとき、スクリーンにパッと華が咲く。 初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で多くの新人賞を獲得し一躍注目を浴びた女優、石橋静河。『きみの鳥はうたえる』やNHK連続テレビ小説『半分、青い。』など話題作に続々と出演し、今回新たな青春映画の傑作『いちごの唄』にても魅力的なヒロインを演じた彼女に話を聞いた。今作について、人生観、目指す女優像、24歳の注目女優が考えること。

自然でいることの強さを知る女優、石橋静河 インタビュー

ロックバンド、銀杏BOYZの峯田和伸による楽曲から生まれた映画『いちごの唄』。本作は大切な人を失くしてしまった男女が10年後に再会することから話が始まる。毎年七夕の日にだけお決まりのラーメン屋にて待ち合わせをし、会話をし、環七通りを散歩する。私達はヒロインである石橋静河のどこか寂しそうで複雑な表情に心配させられ、時折見せるとびっきりの笑顔に安堵する。主人公であるコウタ同様、映画を観る観客もそんな彼女の表情に一喜一憂してしまう。今作について、人生観について、目指す女優像について、今映画ファンたちが熱い眼差しを送る女優・石橋静河に話を聞いた。

—まず一番最初に今回出演の話をもらった時、どう思われましたか?

役が決まる面談の前に脚本を読ませていただいていたんですが、今回初めて岡田惠和さんの脚本を読み、すごく面白くて魅力的なお話だと感じたし、今まで私がやってきた作品とは少し違うテイストで挑戦にもなるだろうなと思いました。

—今までと違うというのは、具体的にどういった点が?

今作の古舘佑太郎さんが演じたコウタや、私が演じたあーちゃんは結構重い過去を抱えていたりするんですけど、そういう抱えているものが作品全体のトーンになるのではなくて、また別のより多くの人に扉が開かれたような作品性を持っていると感じて。

—過去に辛い体験をしたことがある人じゃなくても共感できるような?

そうですね。ベースに峯田さんの音楽があるというのもあるし、そういうことも抱えつつも青春映画としてどこか柔らかい雰囲気に包まれているので、フィクション感があるというか。あえて、作り物として取り組む必要があるのかなと思い、そういう意味で挑戦になるなと思いました。

—実際に演じてみて、今回の役所は難しかったですか?

ずっと悩んでいました。これまでも心の中に色々な葛藤を抱えつつも生きているというような、悩み多き女子を演じることは多かったんですが(笑)。今作もそうではあるんですけど、コウタから見たあーちゃんという存在を演じなければいけなかった。バックグラウンドにヘビーなモノがあるけど、コウタから見えるあーちゃんはそうではないし、そのコウタの視点がカメラの視点、映画の視点となっている。

—ただ役になりきるだけでなくてカメラの視線、コウタからの視線を意識しなくてはいけなかったと。

そうですね。こういう苦しみを持っていて、こういうことがあってと役を解釈する作業とは別にまた違う面が見えないといけない。コウタから見た魅力的なあーちゃんは、自分があーちゃんの気持ちになっているだけでは足りなくて、どこか技術的なことが必要なんだとやりながら感じました。

シャツ¥113,000、スカート¥110,000、シューズ¥113,000、 すべて Stella McCartney (ステラ マッカートニー)

—なるほど。今作は音楽がバックグランドにある映画ですが、普段から音楽はよく聴かれますか?

はい、移動中とかは基本的に聴いていますね。でも、ライブは直に来る感じがあるので、一番ライブが好きです。クラシックやジャズも好きなんですけど、日本語のヒップホップも好きだし、オルタナも好き、Joni Mitchell (ジョニ・ミッチェル) や(忌野)清志郎さんも好きだし…かなり満遍なく広く浅く聴いてます(笑)。気分によってコロコロ変わっちゃいます。

—幅広いですね。以前、出演されていた『きみの鳥はうたえる』のクラブシーンでも、音楽を浴び気持ち良さそうに踊る石橋さんを観て、本当に音楽が好きなんだろうなと思いました(笑)。

はい(笑)。ああいうクラブでのシーンの撮影って録音の関係で実際に音楽は流せないので、音が鳴ってる風の撮影をすることが多いみたいなんですけど、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督はそれを嫌がって実際に爆音でライブをしていたので、純粋に楽しかったです。身体が動く音楽はすごく好きですね。

—銀杏BOYZや峯田さんなどの音楽は聴かれたことはありましたか?

それが無かったんですよ。中学3年の時から留学していたので、それぐらいの年代の時からきっと皆さん聴き始めるんじゃないですか? だから、存在は知っていたんですが触れるチャンスが無くて。今回出演が決まって、撮影が始まる前から特に物語のベースになっている何曲かをずっと聴いてました。それに助けられる瞬間がすごくあって。撮影に入る前にあーちゃんのことをずっと考えていると、その抱えているものから身体も心もガチガチになっちゃったりしたんですが、そういう時に峯田さんの音楽を聴いてすごく救われました。峯田さんの言葉だったり、歌い方だったり、在り方は、そういう人たちの心に寄り添い安心して駆けこめる場所のような、そういう大きさがある気がしました。

—実際に石橋さん自身、ショッキングなことや悩んでしまうようなことがあったときは、どのように問題と向き合っていますか?

うーん、今まではとことん落ち込んで、納得するまで落ち込んでいたんですけど…。そういうのも必要な時はあると思うけど、毎回それをやっていると暗い人になっちゃうので。最近気をつけているのは、目の前で色々なことがどんどん起きているとそれに振り回されてしまうから、同じことが起きていても少し一歩引いたところで見ること。それができたら、しんどいという感情だけが全てにはならない。ちょっと離れていたほうが、自分の状況を把握できるじゃないですか。しんどいなって思うことも、嬉しいなと思うこともそういう風に捉えられないかなと思います。一度自分のことじゃないと思うというか…、全部自分のことと思うと一杯一杯になってしまうので。自分の考えていることを一生懸命悩んだりして解決するのも大事だけど、感情というものがあるとなかなか冷静に見られなかったりするので。それは日々気をつけたいなと思っています。

—ありがとうございます。最後に今後も話題作の出演が続々と控え、注目を浴びる機会もより増えていくと思いますが、目指している女優像などあれば教えてください。

何よりも面白い人間でいたいです。役者として成功するとかよりも…もちろんそうしたいし、良い作品に出会いたいし、良いものを残したいという気持ちもありますが、それって健康な心と身体があってこそだと思うので。自分がどう感じるかとか一つ一つ見ないでいようと思えば、そういなくても見過ごせる部分ってあると思うんですけど。そうしていってしまうと絶対に何かが欠けた状態で進んでいくことになってしまうと思うので、それって結果的に役者として表現をしなければいけない人にとっては、かなり大きな問題になってくるんじゃないかと思います。年相応なというか、ちゃんと自分が感じること、周りで起きることを無視しないで自然な人でいたいなと思いますね。そういうことが歳を重ねれば重ねる程、如実に現れてしまう仕事でもある気がするので。でも、やっぱり楽しみたいというのが1番にあります。楽しみながらお芝居したいし、人と仕事することも楽しみたいですし、周りにいる人ができる限り笑顔で笑いながら一緒に仕事できた方がいいなと思うので。楽しんでやれていればいいんじゃないかなと思います。