kento kaku
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楽しさも苦しさも全力で、賀来賢人インタビュー

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)、ニット ¥95,000、NAMACHEKO (ナマチェコ)/ランド オブ トゥモロー 丸の内店 03-3217-2855

kento kaku

model: kento kaku
photographer: tetsuo kashiwada
stylist: kodai suehiro
hair: kazuhiro naka
makeup: dash
writer: mayu sakazaki
editor: daisuke yokota

Portraits/

2007年に俳優デビューして以来、映画、ドラマ、舞台と、多くの作品を経験してきた賀来賢人。つい目が離せなくなってしまう表情や動き、ステージを選ばずシリアスからコメディまで演じられる幅の広さ、本人が持つ自然で気負わないキャラクターなど、その魅力は語り尽くせない。主演ドラマ『今日から俺は!!』で一気にファン層を広めたとはいえ、これまでにも印象的な役を数多く演じてきた経験が、今の人気につながっている。普遍的な魅力をたたえたシャネル「J12」とも共通する賀来賢人の輝きはどのように磨かれたのか、これまでの日々を振り返る。

楽しさも苦しさも全力で、賀来賢人インタビュー

7月からは主演ドラマ『アフロ田中』、そして手練れのベテラン俳優たちと共演する舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』が同時にスタートする。今年はこれまでよりさらに、役者としてさまざまな場所で名前が囁かれることになるはず。本人に話を聞くと、ひとつひとつの作品を器用に楽しんでいるように見えて、「この仕事がすごく好きかと言われるとわからない」と、そのつらさを正直に語る姿が印象的だった。悩むときも苦しむときも、その後に待つ楽しみも、すべて全力で取り組んで受け止める。自分が積み上げてきたもの、そして今の自分に必要なものを客観視しながら、真摯に語ってくれた。

―新しいシャネル「J12」の時計をつけてみて、感じたことを教えてください。

すごく素敵でした。普段はわりとクラシックというか男っぽいデザインを選ぶことが多いので、こういう上品だけどカジュアルな格好にも合う時計っていうのが新鮮で。ラグジュアリーすぎず、性別や年齢も問わないデザインも好きですね。純粋にいいな、つけてみたいなって思いました。

―デザインは変わらず、新しくリニューアルされています。

作りがすごく繊細だと感じました。結構小ぶりなので女性的になるのかなって思ったんですが、つけてみると、シンプルな中に上品さがあってオールシーズン使えそう。スーツにも合うだろうし、シチュエーションを問わないスタイルだなと思いました。自分ももうすぐ30歳になるので、こういう時計を一本持っている大人な男性になっていきたいなと(笑)。

―白と黒の「J12」、どちらが自分に合いそうですか?

自分だったらシャツ一枚ざっと着て、白の「J12」をアクセントにしたいですね。普段は黒っぽいものを選びがちなんですが、実際につけてみると、白は洋服にもすごく映えるなと思いました。

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)

―白と黒という色には、相反する存在とか、表裏のような要素があると思います。自分の中に二面性みたいなものはありますか?

わりとそのまんまというか、そんなに裏表はないと思います。思ったことは言うし、年々我慢とかもしなくなってきて。今は本当に感じたことを言葉にするというのを心がけていますね。

―昔は抑えていた?

そうですね、まあ若いからという理由で片付けられたり、悔しい思いをすることもいっぱいあったんですけど。最近は年齢が追いついてきて、ちょっとずつ見られ方も変わってくるじゃないですか。だからそういうときに自分の意見だったり思いを伝えるというのが生きていく上で大事だなって思うようにはなってきたし、責任もあります。今はちゃんと自分で考えて、自分で発信するっていうのを意識しています。立ち振る舞いとかも見られていないようで見られてますし、そこは大人として気をつけないと(笑)。

―デビューして10年以上が経っているので、色々な変化があったと思います。振り返って感じることは?

やっぱり10年くらいやっているので、表現や芝居という部分では、もうできて当たり前になりつつあるじゃないですか。立ち位置もどんどん変わってきている。例えば主演ドラマだったら、公共の電波を使って、お金をいただいて、お客さんを楽しませるっていうこと。それはやっぱりプロとして最低ラインできているのが前提で、そこからどうお客さんを引っ張っていくか、もっと楽しんでもらえるかっていうのをしっかり考えられるようにはなってきました。今までは自分自身の成長のためにやっていたというか、できないことが少しずつできるようになるっていうことを繰り返してきたんです。でも、それは見ている人には関係のないこと。そこにすごく責任を感じるようになったし、上手いとか下手とか、そういうのはあんまり気にならなくなってきました。

―そうなるまでの時間の流れっていうのは、結構あっという間でしたか? それともひとつひとつステップアップしていったという感覚ですか。

地道にやってきたという感覚はあります。それこそ僕は、同年代の人が映像をやっていたときに舞台をやっていたりしたので、当時は腐りそうになった瞬間も結構ありました(笑)。でもその経験は決して無駄ではなかったし、ないといけない時間だった。そのときは遠回りだって思っていたけど、無駄なことはなかったって今は思えています。すごく大事な時間でした。過ぎてみるとあっという間でしたけどね。

―自分にとって引け目に感じるような部分が、後になって自分を助けてくれるということはありますよね。

そうですね。失敗も成長するきっかけにもなりますしね。今こう思えなかったら最悪ですよね、なんだったんだろうって(笑)。

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)

―俳優っていう仕事が面白いなって思い始めたのはいつ頃からですか?

いや、面白いなって思ったことがあんまりないんですよ。やっぱり大変なことが多いし、台本を覚えるのも大変だし(笑)。だからこの仕事がすごく好きなのかって言われるとわからない。でも、スタッフやキャストみんなで作った作品を視聴者の人が見て、そうすると反応が返ってくるじゃないですか。それはやっぱりすごく嬉しいことだし、やった甲斐があったなって思える。この前やったドラマ『今日から俺は!!』で言うと、子供からそのお母さんお父さんまで見てくれていたんですよ。普通に公園で子供と遊んでても、声をかけられたりして。それだけでもやってよかったなと思えるし、仕事のモチベーションになっています。

―そういう役に出会えるっていうのは大事ですよね。やっぱりそこからガラッと変わった部分はありますか?

変わりました、全然変わりましたね。本当にラッキーだったなと思います。

―映画、ドラマ、舞台と幅広く出演されていますが、感覚の違いはありますか?

自分にとってはあまり変わらないと思います。でも舞台には舞台の良さがあって、映像には映像の良さがあるので、幅広くやっていけたらいいなっていうのはありますね。でも最近思うのは、やっぱりなるべく多くの人に見てもらいたいってこと。だからどんなに小さな映画でも、どうやって色んな人に見てもらうか、どうやったら届くかとか、そういうことを気にするようになりました。

―あまりニッチな方向にいきすぎないとか。

そういうものの良さもあると思うんです。だからそれも含めて、じゃあ人に届けるにはどうしたらいいのかっていうことを考えるようになってきました。

―これまでの中で、記憶に残っている瞬間、自分にとって大きな一瞬みたいなものってありますか?

自信がついたなって思うのは、古田新太さんも在籍している劇団☆新感線に客演として入ったときのことです。10ヶ月くらいはずっと劇団員の人たちと一緒だったんですが、そのときに公演で色んな地方を回って、ああでもないこうでもないと説教やアドバイスをしてもらって。そのとき初めて舞台上でお客さんの反応を引き出せる感覚っていうのを身につけられたんですよ。それが「自分にもできるんだ」っていう自信になったし、初めていい反応をもらえた舞台だったので、これからは自分のやりたい表現をやっていこうってすごく思えたんです。そこからは、いい気持ちで仕事に臨めるようになりましたね。

―お客さんに伝わった瞬間っていうのは、やっぱり舞台上でも感覚的にわかるものですか?

うん、それは感覚ですね。とくにそのときは喜劇だったので、反応がわかりやすかったというのもあります。単純に笑うか笑わないかだし、確か80ステージくらいやったので、すごく勉強になりましたね。その経験が自分の力になっていると思います。

―舞台もそうですが、やっぱり映像でも周囲のリアクションというのは絶対ありますよね。

やっぱり自分一人だけで台本を読んでても、正解もわからないし、なんというか、だんだん頭がおかしくなってくるんですよ(笑)。だから反応をもらえるとすごくホッとするし、正解かどうかもやっぱりわかるので。

―お客さんだけじゃなく、スタッフや共演者たちとコミュニケーションをとりながら作っていくのが好きですか?

そうですね、部活の延長じゃないですけど、みんなでものを作るっていうのがやっぱり楽しい。それでやっている感じはありますね。もちろん色々な作り方があるんでしょうけど、僕はそういう方が楽しいです。

―7月5日から、WOWOWオリジナルドラマ『アフロ田中』の主演と舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』への出演が同時にスタートしますね。ドラマの方は『今日から俺は!!』に続いて原作のあるコメディ的なキャラクターですが、撮影をしてみていかがでしたか?

今回はコメディの質の違うというか、『アフロ田中』は真面目にやる面白さがあるので、真面目にやりきったんです。だからあんまりふざけてるっていう感覚がなくて、だからこそクスッと笑えたり、共感して泣いたりしてもらえたらいいなっていう思いでやっていた。やっぱり時代性によって何で笑うかっていうのも全然違うし、正解がないから難しいんです。でも改めて、コメディにも色々あるんだなというのを再確認できたというか、すごく面白い作品になっていると思いますよ。

―舞台の方は、今は稽古中ですか?

6月からなので、もう始まっています。キャストとしては本当に豪華で、大好きな先輩がいっぱい出るので、もう好き放題やれたらいいなっていうか、先輩に乗っかるつもりで(笑)。舞台ってやっぱり初日は緊張で吐きそうになりますけど、お客さんの反応をもらうときがいちばん嬉しいんですよね。だから作っている間は楽しいけどやっぱり大変。でも大変な経験をしたぶん喜びも倍増しますし、その瞬間に向けて頑張っています。日によってお客さんがまったく笑わない日もありますが、それも含めて、こじ開けていく感覚も面白いです。

―今までの経験の中で、「こういうことを大切にしたい」と思うこと、意識していること、大事にしていることはありますか?

なんですかね……でも、仕事とプライベートの切り替えはものすごく大事にしています。やっぱり切り替えて休まないと、ストレスが体調に出てしまうこともあって、なるべく良い環境で仕事に臨める方法を探している最中なんです。若いときは前日に遅くまで遊んでいても仕事ができたけど、最近は体調管理をとにかくしっかりやらないと追いつかなくなってきた。放出し続けてインプットがないといい表現もなかなかできないと思うので、そこはうまくやっていきたいですね。

―意識していても、なかなか難しいですよね。

そうなんですよね。常に頭の片隅には仕事のことがあるので……。運動したり、家族と遊んだりしてリフレッシュしています。バスケやトレーニング、格闘技なんかもやりますよ。そういう時間はすごく大切ですね。

―今挑戦していることや、これから越えたい壁、そういうものってありますか?

なんだろう?子育てに関しては課題はたくさんあります。どうやったらこの子に好かれるんだろうって、そういうことばっかり考えています(笑)。

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)、ニット ¥95,000、NAMACHEKO (ナマチェコ)/ランド オブ トゥモロー 丸の内店 03-3217-2855

時計 (J12) ¥632,500 *6月5日発売、CHANEL (シャネル)、ニット ¥95,000、NAMACHEKO (ナマチェコ)/ランド オブ トゥモロー 丸の内店 03-3217-2855

―「J12」はシャネルのアイコン的な存在と言われています。自分にとってそういう存在や、憧れのものってありますか?

憧れ……。でも、大人になっても遊びの効いてる人はいいですよね。子供の心を忘れないじゃないですけど、全力で仕事をして全力で遊ぶ、そういう人は羨ましいなって思います。そうなれたらいいなって。だから若いうちにいっぱい働いて、おじさんになってからいいバランスで生活できたらいいな。

―自分の中に理想像みたいなものはある?

ありますね。最終目標はマイク真木さんなんですけど(笑)。ああいう大人になるためには今のうちに頑張らないといけないので、基盤を作っていきたい。でも働きすぎても子供との時間がなくなるし、なかなかそのバランスが難しい。

―なにをいちばん大事にするかってことですよね。

そうなんです。結局なんのために働いてるのかっていうことがわからなくなる瞬間もある。自分のキャリアのためなのか、お金のためなのか、お金といってもそれは家族のためじゃないですか。今の自分はなんのために働いているのか、そういうことはすごく考えるようになりました。

―それは、時間の使い方っていうのにもつながってくる?

今まではしっかり仕事の基盤を作らなきゃっていう思いでずっとやってきて。最近はだんだん立場が変わっていって、例えば主演作をやるとなると今までとは違う集中力と体力が必要になってくる。だから年に何十本もっていうのはできなくなるし、自分でちゃんとバランスを取らなきゃいけないと感じています。作品を選ぶときはやっぱり直感ですが、今までの作品は全部やってよかったと思えるものばかり。後悔はないんです。だから今後もしっかり仕事をして、しっかり休んで、頑張っていきたいですね。