Stella McCartney
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ファッションデザイナー Stella McCartney (ステラ・マッカートニー) インタビュー

Stella McCartney

Writer: Manaha Hosoda

Portraits/

暖かなイタリアの陽光が降り注ぐ、昼下がりの庭園。夜にはミラノ市内某所で2020年春ウィメンズコレクションと2020年春夏メンズコレクションのプレゼンテーションを控える Stella McCartney (ステラ・マッカートニー) 本人が優しく私を出迎えてくれた。華やかなレッドカーペットも素敵だけれど、やっぱり彼女には緑がよく似合う。常に第一線を走り続けてきた強い女性、そんな印象のある彼女だが、「日本は大好きよ」とチャーミングで気さくな笑顔をのぞかせる。

今回、息つく間もなく世界中を飛び回る彼女の貴重な時間を割いてもらい、プレゼンテーションで発表される最新コレクションについていち早く話を伺った。加えて、先日ローンチされた The Beatles (ビートルズ) のアニメーション映画『イエローサブマリン』にインスピレーションを得たアイコニックな「All Together Now (オール トゥゲザー ナウ)」コレクションについても。そして、今や Stella McCartney の代名詞となった”サステナビリティ”、はたまた彼女が捉える世界の” 今”とは?

ファッションデザイナー Stella McCartney (ステラ・マッカートニー) インタビュー

インタビュー中も終始フレドリーで明るく、ポジティブなオーラを纏う彼女。尽きることなく溢れ出てくる言葉からは、彼女の熱い情熱と強い意志、そして純粋な愛情がひしひしと伝わって来る。ウィットに富んだこの聡明な女性は、デビュー当初からブレることなく、自分の信念を貫いてきた。それこそまさに、世界中の女性が Stella McCartney に夢中な理由かもしれない。

—ミラノ メンズ ファッションウィークでコレクションを発表するのは今回が2回目となりますね。今回のコレクションについて教えてください。

今夜はメンズとウィメンズのコレクションを両方見せますが、どちらも互いを補完しあうコレクションになっています。ウィメンズのタイトルは「Force for Nature (自然へのフォース)」。私はこれまでも相反する要素に取り組んできました。マスキュリンとフェミン、脆さと強さの概念…今回はコレクションの中心に自然を置くというアイディアから始まり、自然の強さを表現することにしたんです。勿論、Stella McCartney のコアとなるのはマインドフルネス、そしてファッション業界においてより良い市民でありたいという想い。自分たちの出来る限りで最善を尽くしています。

—今回はコラボレーションもあるそうですね。

もう随分前のことになりますが、私の友人のひとり Jonathan Safran Foer (ジョナサン・サフラン・フォア) が「Eating Animals (邦題:イーティング・アニマル―アメリカ工場式畜産の難題)」という本を書いたんです。その時点では、私たちはまだ知り合っていないのですが、彼がその本を手紙と一緒に送ってくれたんです。手紙には「あなたがファッション業界でしてきたことを尊敬しています」とありました。原材料や製造方法など私たちはファッション業界でずっと変な生き物でした。レザーを使わず、地球と動物に敬意を表してきたんです。本当に素晴らしい本でした。私は彼に早速電話して「私たちが取り組んでいることを言葉にして欲しいの。助けてくれないかしら?」と聞きました。彼は承諾してくれたんですが、その時は機会がなくて、結局そのままになってしまったんです。これは3年前のことですが、わたしたちはそこから友人になりました。それから、彼が書いている本の抜粋を送ってくれたんです。そのひとつが9月に出版される「We Are the Weather」という本。そこで私たちは”Under the Umbrella of Forceful Nature (力強い自然の傘の下)”コラボレーションすることになったんです。みんなに私たちのしていることが響くような言葉やフレーズをその本から選びました。多くの人にとっては気の重い会話かもしれない。ただ、そこには希望が溢れていて、快活な精神があるんです。そうした会話を恐ろしいと感じる人もいるかもしれないけど、私たちは何も説教しているつもりはないんです。毎日世界を救うために何かしていないからといって、ひどい人だなんて思いません。私たちはただ解決策を作りたいだけなんです。より明るく、喜びに満ちた経験を。今回のコレクションはそうした思いとともに作りました。

(iPadでルックブックを開いて)今回のルックブックのバックグラウンドには私が撮影した写真も使われてるんです。改めて見た時に、「あっこれはスコットランドだわ」なんてどこで撮ったのかを思い出しました。ルックブックで自分の家族旅行を見るなんて、なんだか変な気分。(笑)

とにかく、今回のコレクションでは彼の文学をプリントにして視覚化できたら面白いと思ったんです。そして、それを人が気付かないようにしたかった。そのために、本から抜粋した言葉を円形で書いてもらったんです。本人直筆で。今は全てがタイプされていて、その人のハンドライティングをあまり見ることができないので、彼本人が直接書くというアイディアが気に入りました。また、彼の「believing, be living」という言葉はすごく賢くてチャーミングだと思ったので、綺麗なリボンに刺繍しました。

私たちは太陽が雲に風を吹き込んでる「We Are the Weather」のモチーフも作りました。「We Are the Weather」と書かれたニットやエンブロイダリーもあります。ただ、私は今回のコレクションを環境的なコレクションとして見せたくなかった。ストリート、もしくは90年代のレイヴカルチャー、スケートカルチャーのようなムードにしたかったんです。

また、これまでに見たことのないような使い方で、同じカラーを繰り返し登場させています。今シーズンは、カラーパレットも非常に重要だったんです。花やガーデンから着想を得た美しいカラーをたくさん使うことで、「Force of Nature」を表現しました。

メンズウェアでは、ウィメンズウェアを賞賛しています。モチーフや色使い、実用性など、ウィメンズとメンズの間には大きな繋がりがあります。Stella McCartney では女性がメンズを着て、男性がウィメンズを着たりしてるんです。「We are the Weather」のバッグをメンズに持たせたり、中性的な面を見せるため、アイテムの幾つかはウィメンズとメンズで共有しました。

—何かオススメのアイテムはありますか?

今回のコレクションではドレスが重要でした。オールインワン、ドレス、テーラリングは非常に大きな存在です。もし本当に素敵なドレスがあったら、昼から夜まで使えます。女性のために服をデザインする女性として、全ての服が生活をより快適にするものである必要がありますし、それと同時にファッショナブルで着る人が自信を持てる服であって欲しいんです。コレクションの全てをエフォートレスで快適にしたかった。美しいボタニカルなドレスもまた、「Force of Nature」を表現しています。不気味でトリッピーなパターンもありますし、チュールをベースに花びらをあしらったドレスも。この花びらは手で潰しても全然平気で、そのままスーツケースにもいれられるんですよ。もっと潰した方がいいくらい。(笑)円形にカットされたサーキュラードレスもあります。Stella McCartney は循環型(サーキュラー)なので、円形(サークル)を大切にしているんです。

—今回のコレクションでは、60%以上がサステナブルな素材から作られていると伺いました。本当に素晴らしいことだと思います。

本当にそうなんです。賛成よ、ありがとう。私のチームの素晴らしい仕事のおかげです。私たちのサプライヤーとの会議がちょうど数日前にありました。私たちと一緒に働く人たちがみんな集まって、サステナブルについて実りのある会話をしたんです。非常にポジティブな。私たちは科学者と、製造業者と、そして農家と仕事をしています。ポジティブな影響が60%まで達したというのは、ブランドにとってのスタート地点にすぎません。

そして、サステナブルであるための別の方法としてタイムレスな服をデザインするということもあります。私にとって Stella McCartney の服は一生モノ。今回のコレクションにも登場していますが、キャメルのコートにはまるで病気のように取り憑かれていて、たくさん持っています。もし良いデザインで上手く作れれば、売ることもできるし、借りることもできるし、誰かにあげることだってできるんです。それが私の循環型についての考え方です。今回のコレクションでは実際にアップサイクルしているアイテムもあります。前のコレクションで使った生地を燃やしたり、捨てたりするのではなく、デニムにアップサイクルしたんです。

—プレスリリースには「これまで私たちがファッション業界において根付かせたいと願っていたことがついに理解されるようになったと感じています。そのため、これをより大胆な方法でコレクションに取り入れる最適なシーズンだと実感しています。」とありました。今回のコレクションの構想はずっとあったのでしょうか?

洋服にメッセージを込めたかったんです。それが、私たちのしていることの全てだから。もしかしたら全てとは言えないかもしれませんね。私たちだって完璧ではありません。それでも私たちが成し遂げた60%にメッセージがあるんです。60%がサステナブルであるということは見ただけではわからないと思います。しかし幾つかのピースでは、それをわかってもらいたかった。「We Are the Weather」コレクションでさえ、私が Jonathan Safran Foer とタッグを組んでいることや彼の本が環境についてだということに気づかないかもしれない。私のしていることはわかりづらいかもしれませんが、このシーズンでは洋服の上で視覚的に表現したいと思いました。

—また、「All Together Now」という特別なカプセルコレクションもローンチされますね。『イエローサブマリン』を映画館で改めて見て、現代に向けて強いメッセージを発信する必要を感じられたということですが、詳しく教えてください。

『イエローサブマリン』は若い頃に見たきりだったのですが、大人になって再び見ると色々なことがレイヤーされた本当に素晴らしい映画だと思ったんです。子供の頃はカラフルなアニメーションというところしか見ていませんでしたが、それを超えたサイケデリックな一面、色彩、そして勇気…全てに圧倒されました。とても勇気のあるかっこいい映画なんです。ビジュアルコンテンツも信じられないほど素晴らしくて、とてもインスパイアされました。「Love」や「Lucy In The Sky With Diamonds」、そこで使われている音楽も忘れていましたが、今回は「Lucy In The Sky With Diamonds」のシーンから着想を得たピースもあります。このシーン覚えてるかしら?本当に素晴らしいシーン。コメディックな「イエローサブマリン」らしくはありませんが、すごくフェミニンで美しいんです。そんな作品を祝福したかった。それに、そろそろ自分に The Beatles とコラボすることを許してあげても良いかなと思えたんです。そう自信が持てるようになるまで、47年かかりました。

「All Together Now」というタイトルをつけたのは、リヴァプール出身のハタチそこそこの子達が書いたリリックだと信じられなかったから。50年経った今、私たちの世界で起こっている政治的な問題を見ると、「All Together Now」というメッセージがこれ以上ないほど正しく感じるんです。人々が一緒に団結すれば、それは素晴らしいことになるでしょう。非常に重要だと思ったので、「All Together Now」という言葉を選びました。大胆なアイテムからフェミニンなアイテムまで、実に様々なアイテムが揃っています。映画のもう一つ素晴らしいところは、「All Together Now」を全ての言語で言っているところなんです。

—日本語もありますよね。

ちゃんと訳されてるのかしら?なんて素晴らしいんでしょう!彼らを誇りに思います。オフィスではひとつもあってないんじゃないか、なんて冗談を言っていましたが。(笑)

—私はパッチがたくさんあしらわれたコートが好きでした。特にお気に入りのアイテムはありますか?

私もお気に入りです!これはアップサイクルで、昔のコレクションの生地とビートルズの古いパッチを組み合わせています。選ぶのはなかなか難しいけど、父の顔のセーターは気に入ってます。なんて言ったって、父ですしね。(笑)キッズは最高なんです。これまでに見たことがなかったようなものを作りたかったんですが、全て気に入っています。4人の顔があるファーフリーファーのコートも好きですね。「All You Need is Love」のジャンパーも素敵。ギターバッグやレコードバッグもあるんです。それにスニーカーも。

—すでにサステナビリティについて触れてきましたが、あなたはブランドを通して常に強いメッセージを伝えてきました。わたしは Stella McCartney からサステナビリティを学びました。サステナビリティは近年ファッション業界にとっても無視することのできない重要なものになったと思います。今注力しているプロジェクトはありますか?

ワオ、そんなこと言われたのは初めて!最高に嬉しい褒め言葉です。私たちは常にサステナビリティにフォーカスしてきました。会社にはサステナブルに取り組む大きな部署があって、彼らは物事をより良くするために日々励んでいます。それはこれからも継続していきます。地球にとってファッション業界は2番目に有害な業界で、取り組まなくてはならないことは山ほどあります。ただ、チームで取り組んでいくというのが非常に大切なんです。今力を注いでいるのは、生物多様性。私たちはオーガニックコットンを使うだけではなく、その土壌にも注意を払っています。ほとんどの人はオーガニックコットンを使うだけで終わってしまいますが、私たちはより深く関わっているんです。土壌は二酸化炭素を吸収し、保持してくれますが、その土壌の機能が破壊されると全ての二酸化炭素が大気に放出されてしまうんです。そうならないよう、私たちは土壌に栄養を取り戻すため農家と一緒に正しい方法で農業が行われるように管理しています。私たちが使っているサステナブルなビスコースは調達するのに3年もの歳月がかかりました。1年でファッション業界のためだけに1億5千万本の木が伐採されているんです。そして、私たちの中心となるのが、動物を殺さないということ。これが最もポジティブな影響を与えるんです。

—あなたの行動に倣うファッションブランドの数は年々増加しています。ファッション業界にとって大きな進歩のように思いますが、こうした業界の現状をどのように捉えていますか?

私たちは変化していくべき業界で働いています。ファッション業界が変わっていることは正しいことです。原材料はどこから来てるのか?洋服はどこで製造されてるのか?ファッション業界は同じ10種類の素材をずっと使ってきました。100年間にわたって、同じ素材を。そうした素材とどうやってこれから付き合っていくかを見直す時です。これが私の人生の全てだからこそ、もっと自分をつねっていかなければいけません。こうした会話をするために、たくさんのステージをくぐり抜けてきました。私のキャリアの大部分はアウトサイダーで、”Eco-weirdo (エコな変わり者)”として生きてきたんです。

—あなたがファイターであると大きく見出しにしている記事もありました。

そうね、そうだと思うわ。ただ、私は誰かのために戦うファイター。地球のために、業界のために戦ってきました。常にコミットし続けるためにも。私たちが先陣を切る必要があったんです。ファッション業界でいつも苛つくのは、人を区別するところ。そのせいで自分を嫌いになってしまう人もいると思います。ずっとそのことには気づいていました。私は男性にも女性にも自信をもって欲しいんです。人を落ち込ませるのではなくて、良い気分になって欲しい。ファッション業界は時に疎外感を人に与える古臭い風潮があります。そうした点も変わるべきなんです。私がブランドをスタートした最初の頃、インタビューはいつだって父のことばかりでした。いつしか仕事について話せるようになり、今ではインタビューのほとんどでこうした会話ができるようになりました。私は正しい方向に進んでいる。だからこそ、次は何を話せば良いかと考えています。ジャーナリストが他のデザイナーにどんな質問をしているのか気になりますね。私がもしガラクタを作れば、それはガラクタでしかないし、それは結果的に私の行きたくないところに行き着くことになる。それじゃ意味ないんです。私は修行を積んだファッションデザイナーですし、作るものは見た目が良くて、みんなが欲しくなるものでなければいけません。それが第一。個人的には、もし私がいなくなったとしても、ずっと残るものを作っていきたいですね。

—幼い頃からベジタリアンで、夢はファッションデザイナーだったとお伺いしました。どうしてファッションデザイナーだったんでしょう?

クリエイティブな家族に生まれ育って、医者や銀行員になりたいなんて一度も考えたことがなかった。何かクリエイティブなことをするだろうと思っていました。音楽以外で。(笑)田舎で育ったので、ランドスケープデザイナーになれるかもと思ったりもしました。 花と働くこととファッションデザイナーであることはそう変わらないかもしれません。正しい素材と土壌が必要で、色、形、高さが重要だと。ただ、私の大きな情熱はファッションでした。そんなこと自分が言うなんて信じられないけど。(笑)私の生活は片や、オーガニックファームで両親と暮らし、デニムとシャツを履いていて、その一方で母と父がステージに立ち、グリッターが輝く衣装でグラムロックを披露してたんです。私は両親のワードローブで育ちました。その中に座っているのが好きだったんです。両親は長いワードローブを共有していて、お互いの服が混じり合ってました。彼らは古い服をたくさん持っているので、私は時々スタジオに持って帰ったりするんです。「すごく素敵じゃない?これは母のものよ。」なんて言ってると、1週間後にはみんながその服を着た父の写真を見つけてくるんです。(笑)そうした経験もわたしに強い影響を与えていると思います。

—あなたは多くの女性の憧れの的です。近年は男女平等も非常に注目を集めています。あなたはそのことについてどう思っていますか?

わたしは平等を信じます。ピリオド。これがゴールじゃないかしら?インタビューでこうした質問ができるというのは本当に素晴らしい時代になったと思います。みんなに勇気を与えるし、夢があります。女性であることは私の誇りです。女性を雇用できるということも。それと同時に男性を雇用できるということも誇りに思っているんです。社内には素晴らしい父親たちや夫たちがたくさんいます。まだ道のりは長く、非常に複雑な問題ですよね。何といっても私は2人の男の子と2人の女の子の母親ですから、簡単ではありません。ただ、わたしは男女平等であることを信じているんです。

—ありがとうございます。世界には困難に立ち向かっている女性がたくさんいると思います。そんな彼女たちのためにもあなたがどうやって難しい状況を乗り越えてきたか、最後に教えて下さい。

それは、その人の環境次第だと思います。原因によっても解決法は変わってくるでしょう。私は素晴らしい家族のもとに生まれ、非常に恵まれていたと思います。多くの女性が苦しんでいるような困難をきっと経験していないかもしれない。ただ全ての女性がそうであるように、私はそうした難しい状況に置かれた時、そこからなんとか抜け出そうと頑張ります。当たり前ですが、私は女性たちのボスになろうなんて思っていません。わたしは妻であり、姉であり、娘なのです。まだまだ男性が多い業界ですが、男性と同じポジションに立てているということをラッキーに感じています。女性としてこういう風に会話できることにも、いつだって自分の考えを話すことができることにも感謝しています。

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