barbara campos
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ジョゼフに新たな息吹をもたらす、CEOのバルバラ・カンポスが考えるクリエイティブ思考

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barbara campos

photography: daehyun im
interview & text: yoshiko kurata

Portraits/

1966年、英国にて創立したコンテンポラリーブランド JOSEPH (ジョゼフ)。ブランドとしてグローバルのビジネス規模を着実に広げ続け、現在は国際的ブランドとして認知されている。2022年にJOSEPH LIMITED (ジョゼフ リミテッド) は、再建計画により2015年以来初の営業利益を計上。その立役者として注目を集めているのが、2018年に新たな CEO として就任した Barbara Campos (バルバラ・カンポス)。ハーバード・ビジネス・スクールを卒業後、DIANE VON FURSTENBERG (ダイアン フォン ファステンバーグ) や FURLA (フルラ)、HUGO BOSS (ヒューゴボス) などでセールスやマーケティングを担ってきた彼女にとって、JOSEPH からの声がけは新たな挑戦でもあり、喜ばしい機会だったのだという。

近年、メゾンのディレクター交代に際してクリエイティビティとビジネスのバランスを担う CEO の存在にも注目が集まることが多い。ファッションデザイナーを夢見ていたという彼女が、ビジネスサイドからブランド、そして業界に新たな風を吹かせている想いを聞いた。

ジョゼフに新たな息吹をもたらす、CEOのバルバラ・カンポスが考えるクリエイティブ思考

―まずはシンプルな質問ですが、ファッションに興味を持ったきっかけを教えてください。

小さい頃からファッションには、いつも魅了されていました。というのも生まれ育ったフランスでは、文化的に装うことは、身近なものだったからです。服はただ単に防寒や着るだけのものではなく、自己表現の一種として取り入れる面白さを感じていて。フランスでは14歳で、自身の今後の進路について考えるオリエンテーションを受けるのですが、その時に実は将来の夢にファッションデザイナーと書いていました。でも、デザインに才能がなくて、先生たちにクリエイティブな進路はやめた方がいいと止められて挫折したんです。そこからビジネスサイドの勉強をしようと決意して、それもそれで自分に合った進路では合ったのですが、やっぱり心のどこかでファッションが好きという気持ちが捨てられませんでした。そのモチベーションがあったからこそ、キャリアとしては最初からファッション一本で続けられてこれたのだと思います。

―さまざまな職種によってファッション業界は成り立っているはずですが、日本では、まだまだデザイナー以外のキャリアについて言及されることは稀です。JOSEPH の CEO に就任するに至るまでのこと伺いたいです。

JOSEPH の CEO に至るまで、常にコマーシャルな仕事をしてきました。特に最初に勤めた HUGO BOSS では、いろいろなことをイチから学びましたね。どの会社に所属しても、クライアントや顧客が心から喜んでくれると確信できるプロダクトを勧めて、セールスに繋げることをモチベーションにしてきました。その考えは本物であることを示すと同時に、さらに顧客とも深い関係性を構築するアプローチにも反映され、おのずとマーチャンダイズやデザインに携わるようにキャリアが変化したのだと思います。業界の仕組みや背景を理解することは、顧客へより良いプロダクトを常に届けること。だからこそ顧客からのフィードバックに耳を傾けることは大切で、常に変化するニーズへの対応力を高める力にもなっています。

―JOSEPH 然り、ブランドに携わる際の基準はありますか?

強いブランド価値があり、顧客と共鳴するような明確な目的を持ち、さらに顧客のワードローブに意味のあるポジションが築けると感じたブランドと常に手を組んでいます。個人的なルールとして「公平性」と「リスペクト」は、譲れないポイントです。この2つがあることは、ブランドのためだけではなく、人々からの強い評価を受け続けることにも繋がると信じていて。リーダーとして良き手本を目指すべく、個人的に誠実さとリスペクトを根底的な価値観として持っています。

創業者の Joseph Ettedgui

―ファッション業界に限らず、クリエイティブな業界において、デザイナーやクリエイターの感性を活かしながらビジネスとのバランスを取る理解者は貴重な存在かと思います。いつもどのようにバランスを取っていますか?

クリエイティビティと理性のバランスの取り方は、デリケートなことですよね。国を問わず難しいことですし、極論をいえば、関係している個人によるものなんじゃないかなと思います。2つの世界をうまく融合させるには、右脳と左脳の両方が同じ目標に向かって調和しなければいけないです。個人的にはデザインに限らず、一緒に働くチームの思考プロセスにおいても、創造性を育むことに大きなやりがいを感じています。ビジネス目標が明確で達成できると保証できた上で、イノベーションの花が開くような環境をこれからも育てていきたいですね。

―JOSEPH に携わろうと思った決め手を教えてください。

2018年11月に JOSEPH に参加したのですが、ブランドへの個人的な思い入れが決め手となりました。フランス人であるなら、人生の大半を通して JOSEPH について知っていくと思います。創業者の Joseph Ettedgui (ジョゼフ・エテッドギー) は、フランス人として常にフランスのマーケットで強い存在感を放っていました。そんな彼のビジョン、そして今までに創り上げたレガシーを称賛してきました。一方で、当時JOSEPHは、もうファッション業界のレーダーから外れてしまったようにも感じていました。そこでお声がけいただいた時に、ブランドをまた活性化できるチャンスだとワクワクしたのです。ブランドの DNA に立ち返りつつ、ファッションとの関係性を再構築するために磨き上げて現代的に仕上げていく。そうすることで、業界と消費者の両方に対してブランド本来の美しさや歴史を強調しながら、JOSEPH を素晴らしいブランドとして蘇らせたかったのです。

―長い歴史を持つ JOSEPH ですが、ブランドの前身となったのはブティックだったそうですね。KENZO (ケンゾー) や Yohji Yamamoto (ヨウジヤマモト) をはじめに、当時における若手ブランドをサポートする役割も担っていたと聞きました。

創業者の Joseph は、新進気鋭のブランドをサポートする先駆者でした。KENZO や Yohji Yamamoto のデザイナーたちとと親しい仲だったこともあり、自身のお店を通してイギリスに彼らを紹介するような役割を担っていました。また、MARNI (マルニ) が世界的に認知されるずっと以前から、MARNI 専門店を経営していたほど、PRADA (プラダ) や MARNI といった今や世界的なブランドを初めてお店で取り扱い始めた人物としても知られています。ファッション界で信じられないほどの人脈を持ち、尊敬され、称賛されていました。彼のマーチャンダイジングにおける天賦の才能とトレンドを予測する能力は、JOSEPH とともにサポートしてきたデザイナーの成功に大きく貢献したのだと今もなお感じます。

―2024年には Mario Arena (マリオ・アリーナ) を新たなクリエイティブディレクターを起用しました。今後 JOSEPH は、業界内でどのようなポジションを築き上げていきたいですか?

現状、タイムレスなデザインと現代性への架け橋となるブランドとして、独自のポジションを築いています。品質やクラフツマンシップ、飽きることのないスタイルを大切にするような知的な顧客に支えられています。今後の目標は、より JOSEPH を手頃な価格のラグジュアリーブランド内のグローバルリーダーに位置付けていきたいですね。

―今後の具体的なビジネス戦略を教えてください。

ビジネス規模を倍増させたいと考えています。特にオンラインは大きな可能性を持っているので、成長のためにより注力していきたいです。現在事業の15%を占めていますが、今後30%まで伸びると見越しています。主要地域は、店舗を構えているイギリスとフランスですが、北米、ヨーロッパ、特にスカンジナビア諸国とドイツに今後のチャンスを感じています。ほかにも、 新店舗コンセプトの展開、ブランドの刷新、新パッケージ、グローバルな成長、店舗の拡大、ウェブサイトへの継続的な投資など楽しみな企画をさまざまに計画中です。また、トップスやドレスなどまだ未開拓なカテゴリー、そしてバッグとシューズによるブランドの拡大など正規の値段でよりビジネス規模を広げていきます。新規顧客を獲得には、アクセスしやすい価格帯でプロダクトを展開していく予定です。

―今後、アジア、そして日本マーケットへの戦略はどのように考えていますか?

アジアはとても重要なマーケットとして見ていますが、まだほとんど未開拓ではあります。特に日本は、JOSEPH の美学に共鳴するような非常に知的なマーケットがあり、観光客も多いため、アジアにおける中心的な場所になると考えています。日本での知名度を高めることは世界的な知名度にも繋がると思うので。一方で、日本のマーケットにおいて考慮しなければならない点は、地球温暖化による気候ですね。これからますます暑くなるなか、グローバルなコレクションにも影響を与える課題のひとつでもあると思います。今まで、そうした日本の四季に合うように生地の厚み、配送のタイミングを慎重に調整することで問題を解決してきました。

もうひとつの課題は、急増する外国人観光客への対応です。喜ばしいことでもあり、いつかその数が減少する可能性にも備えなければと思っています。なので、ローカルな顧客とのつながりをより強めて、国内のマーケットにしっかりとブランドの認知を根付かせることに今は注力しています。ポテンシャルを最大限引き出すために、実際に行っている方法としてローカライズしたマーケティングとインフルエンサー戦略を行っています。私たちのコレクションがグローバルなものであることに変わりはありませんが、ストーリーテリングとブランド・アドボカシーに対するアプローチは、日本のオーディエンスに響くようにローカライズしています。

アジアマーケットでは、これからは中国へのさらなる進出と、韓国でのプレゼンスをより強めることを目標としています。アジアの顧客は、パリやロンドンのような主要なマーケットで買い物をすることも多いので、国内外問わず今後も注力していきたいマーケットとして大事にしていきたいです。