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違うふたりだからこそ生まれる音楽。ジョックストラップの出会いの奇跡

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photography: kanade hamamoto
styling: hiromi toki
hair & make up: takahiro hashimoto
interview & text: ayana takeuchi
edit: manaha hosoda

Portraits/

ロンドンを拠点に活動するエレクトロニック・デュオ、Jockstrap (ジョックストラップ)。Black Country, New Road (ブラック・カントリー・ニューロード) のメンバーとしても知られる Georgia Ellery (ジョージア・エラリー) と、音楽学校の同級生だった Taylor Skye (テイラー・スカイ) による2人組だ。うっかりバンド名を画像検索すると、ドキッとする写真が多数ヒットするが、そんなサプライズはご愛嬌。彼らの音楽性はもっと驚きに満ち溢れている。本インタビューで、ファッションに関する質問を投げかけると TikTok のミーム“Weird Girl”についてコメントした Georgia。一見ミスマッチと捉えられがちなアイテムやテイストを組み合わせるトレンドだが、彼らの音楽性にも通じるものがある。昨年9月に発表されたデビューアルバム『I Love You Jennifer B』では、クラシック、ダブ、ハウス、ジャズ……それらの異なる要素を巧みに取り込み、バンドの特異な世界観を築き上げた。ロマンティックでシュール。破壊的でいて繊細。全く聞いたことがない予測不可能なサウンドで、Damon Albarn (デーモン・アルバーン) や Bjork (ビョーク) までをも虜にしている。さらに、CHANEL (シャネル) の2020-21年オートクチュールコレクションのキャンペーンフィルムで楽曲が使用されるなど、ファッション界からも呼び声が高いことも見逃せない。初来日公演のために東京を訪れた2人にインタビューを行った。

違うふたりだからこそ生まれる音楽。ジョックストラップの出会いの奇跡

―まずは、2人の出会いからおしえてください。

Georgia Ellery (以下G):Taylor とは、ギルドホール音楽演劇学校で知り合ったの。私はジャズの専攻で、Taylor は電子作曲を学んでいたんだ。友達になって、いろいろ話すうちに彼が手がけた曲を聞かせてもらって、James Blake (ジェイムス・ブレイク) を感じさせるダブの要素や、70年代のシンガーソングライターのようなボーカルが気に入ったの。自分の好きなテイストがすべて詰まっていたから「一緒にバンドやらない?」って誘ったのが始まりよ。

―セクシーなバンド名の由来は?

Taylor Skye (以下T):Georgia のアイデアで、バンドに誘われたときには既にこの名前が候補になっていた(笑)。インパクトが強かったし、大学生ということもあって、何かを成し遂げたいという気持ちも旺盛だったから、これに決めた感じだね。

―結成当初のバンドのコンセプトをおしえてください。

T:実はライブバンドとしてスタートして、メンバーが5人いたんだ。それが最終的に2人になった感じだよ。最初は Georgia が作った曲を僕に送ってもらってアレンジしていく形式をとっていたけど、いまは共同制作する機会が増えたね。

―Georgia は Black Country, New Road のメンバーとしても活動していますが、Jockstrap とどう差別化していますか?

G:Black Country, New Road はロックバンドで、みんなでリハーサル室に集まって制作するんだけど、あえて未完成の状態でライブに挑んで完成させる。一方で、Jockstrap は電子音楽が中心だし、曲が仕上がってからライブをするのでテイストもアプローチ方法も全然違うの。

―Georgia の Black Country, New Road としての活動も踏まえて、2人は大学時代から同世代に音楽をやっている友人が多い環境に身を置いているからこその、相互作用は感じますか?

T:僕はロンドンで生まれて、その後は郊外で育ったから、ずっとシティに戻りたいと思っていた。Mica Levi (ミカ・リーヴァイ) に憧れて彼女が卒業生だった、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校に進学したんだ。そこで、Georgia もそうだけど、今まで交わらなかったひとたちにたくさん出会って、自分と同じようなビジョンを持った初期のバンドメンバーたちにかなり触発されたよ。

G:私たちの学校は、楽器演奏のスキルを高める教育が強かったから、ミュージシャンとして有名になりたいという野心を持ったひとはそんなに多くはなかったの。だから、同じマインドのメンバーに出会えたのは、かなりラッキーだったと思う。

―では、最新アルバム『I Love You Jennifer B』についておしえてください。パンデミック中での制作で、社会状況から影響を受けたと感じることはありますか?

T:自分たちの作っているものは、人生で起きた出来事を反映しているから、具体的には思い浮かばないけど、パンデミックには何かしら影響を受けた作品になっていると思う。

G:リモートでなんでもやらなきゃいけなかったから、かなり試行錯誤はしたよね。あとは、ライブも見に行けないし、気軽に友達とも会えない状況だったから、インスピレーションを得る機会が格段に減ってしまったのがネックだった。それでも、踊りたいって気持ちに素直でいようと思って、グルーヴ感は忘れないでいようとしたことかな。

―2人で曲を手掛けるなかで、衝突したときはどう前に進みますか?

T:音楽的な共通言語はあるけど、考え方も意見も違う2人だということを受け入れている。だから、曲においての解釈や意味合いも違うことがあるけど、それがかえって良さだと思うようにしているよ。

G:編集段階で意見が割れることがあるけど、そこで諦めないでたくさん話し合って新しい方向性を見出して進んでいくことね。

―今回のファッション撮影をしてみての感想は?

T:素晴らしかった!

G:すごく素敵な衣装で楽しかった。過去にも人混みのなかで撮影したことがあるんだけど、プラットフォームシューズを履いて、自由に歩かなくちゃいけなくて……ドキドキしたのを一瞬思い出した。今回はカメラマンがディレクションしてくれたから、人混みが多くても安心だったわ!

取材当日の私服姿のふたり

―普段のファッションについておしえてください。

T:同居人が TikToker で、1000着くらい服を持っているから、よく彼からお下がりをもらってる(笑)。でも、まじで臭い洋服ばっかりで、ちょっと困ってるよ。

G:このチェックのトップスは、昨日ラフォーレ原宿で買ったの。日本のファッションに触発されてガーリーなテイストのものが欲しくなったんだ。ヘアピンも前回の来日でゲットしたの。TikTok のミームで“Weird Girl”が流行っているじゃない? 世界的にミスマッチでも気に入ったら着るスタンスが浸透したのは、日本のファッションの影響もあると思うわ。

―CHANEL の2020-21年オートクチュールコレクションのキャンペーンフィルムでも楽曲が使用されましたね。どんな心境ですか?

G:私たちを広く知ってもらえるきっかけになったし、ギャラもあったし、バンドの為になったと思う。その前に写真家で映像作家の Frank Lebon (フランク・ルボン) の紹介で Dior (ディオール) とも仕事をしたんだけど、立て続けにすごく嬉しかった出来事ね!