【写真家たちの目線】 vol.10 西野壮平
photo and words:
sohei nishino
今、あなたが見ている明日はどんな景色ですか? のアンサーとなる1枚を、それに紐づく言葉とともに寄せてもらう本企画。写真家が写真家に繋ぐリレー形式でお届けする。
第9回に登場した築山礁太が紹介してくれたのは、国内外から高い評価を得ている写真家の西野壮平。代表作は、東京や大阪、ニューヨーク、パリ、ベルリン、アムステル、上海など世界中の都市を歩き回り、そこで撮影された膨大な写真群を地図に則り手作業でコラージュした「Diorama Map」シリーズだ。同氏のレンズを通して再構築された都市風景からは、私たちの知っている日常、そしてこれまで見たことのない新たな表情が立ちのぼる。自由に動き回ることのできなくなった生活の中で、同氏の作品はまだ見ぬ景色に続く未来への希望と重なり合う。
築山からは以下の紹介文を寄せられた。
「人との出会いには恵まれてるなとつくづく思う。2016年僕は写真学校に入学した。当然のように写真家を志していたし、自分のやりたい事もぼんやりとあった。入学から数ヶ月、学校内の雰囲気や同期の人たちに対して何か違うなと感じていた、もっとシンプルでそして素直でいいはずだと。そんな時初めて出会った写真家が西野さんだった。伊豆のアトリエに約2週間制作アシスタントとして滞在していた期間は今でも鮮明に覚えている。西野さんの姿を見ていたら何かから解放された気持ちになり会話や体験の中から些細な発見など毎日のように自分の前に現れてきた。西野さんと一緒の時間を過ごして写真家は職業でもあるかもしれないが生き方なんだなと気がつく事が出来たし今の自分にとって、とても重要な出会いだったと思っている。
今年は写真家として西野さんと関われる事になり、また会えるのを楽しみにしています。」
【写真家たちの目線】 vol.10 西野壮平
早く海を渡りまた以前のように旅をしたいという想いと
以前のような”何モノでもないこと”を味わう旅ができるのかという不安が心に同居する。
私は糸と糸を編むように写真によって世界を知覚している。
中世のラテン語の「mappa」は地図という意味であるが、もともと布地を指す言葉として使われていたらしい。
それは昔、地図は布に描かれていたということから由来しているようだ。
どこで見たか定かではないが、
以前ヨーロッパの片田舎の教会で、聖書に出てくる物語を伝えるために作られた巨大なタペストリーを見た時にその迫力と織物としての存在感に圧倒されたことがある。それと同時に織物として物語を紡ぐ作業は何万枚もの写真を織り合わせていく自分の作品にもどこか親和性があるように感じた。それからというもの布切れを集めたりインドの織物などのテキスタイルにも関心を持ち始めた。
スペインバスク地方にあるサンセバスチャンという街を訪れた時、
高台からビーチを見下ろし、波打ち際に押し寄せる波をずっと眺めながら、
寄せては返しの繰り返しの中に現れる波の模様が風に靡く布のようだったことをふと思い出した。
(文・西野壮平)