心が動く瞬間、モトーラ世理奈インタビュー
serena motola
model: serena motola
photographer: tetsuo kashiwada
stylist: mana yamamoto
hair&makeup: ryoki shimonagata
writer: mayu sakazaki
editor: daisuke yokota
雑誌、広告、映画と、モトーラ世理奈の姿を見ない日はないと言っていいほど、さまざまな表現物のミューズとなっている彼女。本人に自覚があるのかはわからないけれど、“モトーラ世理奈にしかない何か”に、今、多くの人が惹きつけられている。鮮烈なモデルデビューから5年。目まぐるしく過ぎていく毎日の中で、彼女が考えていること、感じていること。そして新しいシャネル「J12」との撮影について、ゆっくりと言葉を探してくれた。
心が動く瞬間、モトーラ世理奈インタビュー
Portraits
役者としては2018年に『少女邂逅』でデビューを果たし、現在は主演映画が2本控えるなど、驚くほどスピーディな飛躍を遂げているモトーラ世理奈。女優としてはまだまだこれからとはいえ、彼女がフレームの中に立つだけで“映画的”な空間ができてしまう、そういう人が現れることは意外と少ない。ファッションポストでの撮影が始まると、ふんわりとした儚さの中に一瞬、はっとするような表情と存在感を見せる。彼女はどんなことを考えて生きているのだろう、どんな瞬間に心が動くのだろう。インタビューでは20歳の女の子が感じている感情の機微を、等身大のままに語ってくれた。
―新しいシャネル「J12」の時計をつけてみて、感じたことを教えてください。
こういう時計ってちょっとゴツゴツしていて、かしこまったイメージがあったんです。でも実際に見てみたら、ツルッとしたセラミックの素材がすごく可愛くて、ラグジュアリーだけどカジュアルな感覚が新鮮で。自分の中で、腕時計のイメージが変わりました。衣装がすごくふわっとした優しい服で、そこにシャネルのラグジュアリーな時計をつけていて、でもすごくナチュラルな感じで……なんか、大人になったなって思いました。
―白と黒の「J12」、どちらが自分に近いですか?
白ですね。柔らかい感じがして、私だったら白がつけたいなと思いました。ホワイトセラミックの時計に、ちょっと派手なトレーナーとかを着てみたいです。
―白と黒という色には、相反する存在とか、表裏のような要素があると思います。自分の中に二面性みたいなものはありますか?
そうですね……やっぱりお母さんや家族といるときと、仕事をしているときの自分は違うと思います。家族といるときは、すべて解放している感じ(笑)。でも、お母さんは私の仕事の写真や映像を見ると、「変わらないね」って言うんです。自分自身ではやっぱり違う状態だと感じるので、それが面白いなって。
―お芝居や撮影のときは、スイッチが入る感覚はありますか?
そうですね。でも、まだ自分のどこにそのスイッチがあるのかはわからなくて、やっているうちに気づいたら入っている感覚なんです。だからその変わり目だったり、どうやったらスイッチが入るのかっていうことは、まだまだ探り中です。
―「J12」はシャネルのアイコン的な存在と言われています。自分にとってそういう存在や、憧れのものってありますか?
すごくざっくりになってしまいますが、自分の意思は持っているけれど、柔軟にものごとを受け入れられる人。そういう大人になりたいって思います。
―最近のお仕事で、この役にはすごく入り込めた、集中できた、と感じる作品はありますか?
初めてのお芝居だった『少女邂逅』という映画は、やっぱり最初は全然入り方がわからなかったんです。だけど、途中からすごく自分の中ですんなりきたというか……そうなってからは入り込まなくても自然と入り込んでいる、という感じがして。本当に自然とだったと思います。群馬県の高崎で10日間くらい泊まり込んでいたので、多分、その環境に慣れてきた頃から。あのときの感覚は、ずっと忘れないでいたいって自分でも思っています。
―環境だったり、周りのものから受ける影響も大きいですよね。
うん、そうですね。映画でも、衣装を着たり、実際にその現場に行ったりすることや、周りのものから得る影響がすごく大きいと思います。着るもので気持ちも変わりますし、普段から洋服も気分に合った色で選ぶことが多いです。今日はピンクの靴下から選びました(笑)。
―お仕事を始めてからは5年くらい経っていますよね。振り返ってみて、変化した部分というのはありますか?
あんまり変わってないかもしれないです。でも、初めてのお仕事のことはすごく覚えていて。『装苑』の撮影だったんですが、カメラマンさん、スタイリストさん、ヘアメイクさんがみんな男の人で、みんなロン毛だったんです(笑)。それから、すごく静かな撮影で、どうしていいか何もわからず立っているうちに終わってしまって。これで合ってるのか、間違ってるのか、何もかもわからなくて……その瞬間のことはすごく覚えています。お芝居はリハーサルがあるので、練習期間というか、徐々に探っていける時間があって、いきなり本番という感じじゃなかったんです。でも、その雑誌の撮影は本当に一番最初の仕事だったので、ロン毛のお三方も含めて(笑)、忘れられないですね。
―5年という時間の流れに関しては、いかがですか?
すごく早かったですね。毎日早いなって思います。もし休みの日があったら、ゆっくりしたい。そういうところはお父さんに似ているんですが、最近久しぶりに一緒に過ごしていたら、本当にお父さんに似たんだなって実感しました(笑)。お母さんは朝9時には絶対に起きていて、それに対してお父さんが「休みなんだから、別に朝9時じゃなくても起きたいときに起きればいいじゃん」って言っていて。そういうところがすごく似ています。
―今までの経験の中で、「こういうことを大切にしたい」と思うこと、意識していること、大事にしていることはありますか?
ちょっと違うかもしれないんですけど、20歳になって、やっぱり学校のときの友達とは全然会わなくなって。学校では毎日友達に会っていたし、しょっちゅうグループで遊びに行ったりしていたんですが、だんだんそういうのが少なくなってきて、いつも遊ぶ友達っていうのもすごく限られてくる。やっぱり大人になると、一人になることが多いんだなって感じていたんです。だけど、昨日たまたま新宿駅で高校のときすごく仲が良かった友達に、めちゃくちゃ久しぶり、卒業ぶりに会って。自分の中では、もうあのときにみたいにはみんなに会えないのかな、結局一人なのかなって思っていたときだったんです。でも、やっぱり会ったら前と変わらずに話せるし、あのときの感覚と何も変わらなかった。それで、友達と家族は大切にしたいって改めて感じました。
―それは、すごくエモーショナルな瞬間ですね。最近、嬉しかったことや、心が動いたことってほかにもありますか?
3日前に免許が取れたことは、すごく嬉しかったです(笑)。午前中の学科試験で落ちちゃってショックを受けてたんですが、午後の試験で合格できました。山梨とかの温泉に車で行けたらいいなって思っています。
―今、何をしているときが一番楽しいですか?
やっぱり友達といるとき。最近はクルアンビンっていうアメリカのバンドが大好きで去年の冬くらいからずっとはまっているんですが、先週ライブに行ってきたんです。ベースが女の人なんですが、もうめちゃめちゃかっこよくて、ライブを見てたらベースがやりたくなって買っちゃいました。友達も一緒にはまっていて、二人でベースを買ったんです(笑)。クルアンビンのローラ・リーはいつも衣装が可愛くて、かっこよくて、生で見れて嬉しかった……。一緒にやってくれる人がいたら、バンドもやりたいです。
―これから新しい作品もたくさん予定していると思いますが、自分にとって新しいことや挑戦していることはありますか?
次の作品が一ヶ月くらい泊り込みで、ほとんど家に帰れないと思うんです。今までの映画でもそこまで長い期間っていうのはなかったので、それは今回が初めてのこと。やっぱり撮影は一人で寂しいんですが、映画を撮っているときの自分の集中している感覚って今まではあんまり経験がなかったんです。だから、次の作品も長いけど、どれだけ集中してできるのかっていうのはすごく楽しみです。
―やっぱり演技することは楽しいですか?
お芝居をやっていなかったら自分の人生しか生きられないけど、色んな役を演じることによって、それぞれの色んな人生を生きることができる。それがすごく楽しいです。