想像と創造の狭間で遊ぶ、南沙良インタビュー
sara minami
model: sara minami
photographer: tetsuo kashiwada
stylist: mana yamamoto
hair&makeup: ryoki shimonagata
writer: mayu sakazaki
editor: daisuke yokota
子供の頃からイマジネーションの世界で遊ぶのが大好きだったという16歳の女優・南沙良。頭の中でさまざまな女の子を演じては、彼女たちが身につけている洋服やアクセサリーをイメージして自分の手で作ってしまうこともある。そんな彼女だからこそ、作品の中で出会うさまざまなキャラクターを理解し、その複雑な感情を自分のものにできるのかもしれない。多彩な表情を持つ新しいシャネル「J12」を身につけた南沙良に、彼女を構成するさまざまな要素について話を訊いた。
想像と創造の狭間で遊ぶ、南沙良インタビュー
Portraits
2017年に『幼な子われらに生まれ』で女優デビューし、初主演となった2018年の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で鮮烈な印象を残した彼女。その後、いくつもの新人賞を受賞して、想像力と知性にあふれた南沙良という女優の登場を印象づけた。今年は雑誌の専属モデルを卒業し、俳優としての道を邁進していく。子供の頃から持っていた夢を叶えた女優として、そして一人の16歳の女の子として、さまざまな質問にまっすぐ答えてくれた。
―新しいシャネル「J12」の時計をつけてみて、感じたことを教えてください。
普段、腕時計をつけて撮影することはあまりないので、すごくドキドキしました。綺麗な時計なので、あえてカジュアルな洋服に合わせてもかっこいいんじゃないかなと思います。私だったらデニムやスニーカーに合わせてみたい。今日は素敵な時計をつけて、内面までちょっと綺麗になった気がしました(笑)。
―白と黒の「J12」、どちらが自分に近いですか?
どうなんだろう。白よりは黒寄りかもしれません。洋服では黒を選ぶことが多いんですが、内面的には両方あるような気がします。私は人前に出たり、話したりすることがあんまり得意じゃないので、そういう部分は黒に近いのかなって。でも、カメラの前に立つ仕事をしているので、それは自分でも矛盾してるなって思うことはあります(笑)。
―カメラの前に立つと変わる?
昔から、カメラマンをしていた父からよく写真を撮られていたんです。なので、自分ではそんなにカメラは意識していないとは思います。
―「J12」はシャネルのアイコン的な存在と言われています。自分にとってそういう存在や、憧れのものってありますか?
憧れというのか……私、すごく母と仲が良いんです。母が持っている強さだったり美しさだったり、そういう姿に憧れるときはあります。母も私と一緒で、あまり人と話すのが得意ではないんですが、自分をしっかり持っている人。見ていると、すごく強いなって思います。
―それは、考え方や生き方ということ?
そうですね、母は自分の思ったことは曲げないので、私は口喧嘩していてもすぐ負けちゃうんですけど(笑)。そういう内面の強さがあって、私はそうなっていきたいなと感じます。
―デビューして5年ほど経っていると思いますが、その時間を振り返ってみて感じることは?
私の中で、それだけの時間が過ぎたという感覚が全然ないんです。昨日、母に「私がお仕事を始めたときから、小さいときから何か変わった?」って聞いてみたんです。そしたら「あなた何も変わってないね」って笑われて(笑)。でも、本当にその通りだなと思って、ちょっと安心しました。形だけは少しだけ大人になったのかなって思うんですが、考え方や感じ方はまったく変わってない。だからこそ、これから自分がどう変わっていくのかなっていうのは、ちょっとドキドキしています。
―もともとモデルや俳優の仕事をやりたい、という気持ちはあったんですか?
私は昔から女優さんになりたかったんです。それを周りの人に言っていたら、叔父が雑誌のオーディションを見つけてきてくれて、それで受けてみようということになりました。
―その頃、女優になりたいと思った理由はどうしてだと思いますか?
小さい頃から、すごく、違うものになってみたくて。インコになりたくてインコを飼ってみたりとか、クラスの中心にいる子に憧れて、その子の髪型の真似をしたりしていました。そういう「違う人になる」っていうことをお仕事にしている女優さんってかっこいいなと思った。それがきっかけだと思います。その気持ちは、今も続いていますね。
―実際に演じるという仕事をしてみて感じたことは?
どうだったんだろう……でも、小さい頃からドラマの真似っこをしてみたり、映画を見て一人で台詞を言ってみたり、そういうことが好きだったんです。だから、いざお芝居をしてみると、やっぱりすごく楽しかったです。
―難しい部分もありますか?
まだ、大きな課題みたいなものを感じたことはないんです。でも、現場で監督さんと色んなことをお話しして作っていくっていうのは、やっぱり難しいし、すごく大変なことなんだなって初めてのときは思いました。
―今まで演じた作品で、とくに印象に残っているものは?
私がいちばん最初にお芝居の仕事をした映画が『幼な子われらに生まれ』という作品でした。そのときは、映画ってどうやって作っていくものなのか、自分はどうすればいいのか、どこに行けばいいのかもわからなかった。でも、三島有紀子監督が「お芝居をしなくていい。相手からもらったものを、役としてただ相手に返せばいいだけだから」っていう風に言ってくださって。それはすごく印象に残っています。お芝居を作るのって、そんなに凝って作るものではないのかもしれないって、そのときに思いました。
―その言葉は今でも思い出しますか?
そうですね。今もずっと心の中にあります。
―公開中の『居眠り磐音』では時代劇に初挑戦されていますね。
やっぱり所作が難しかったです。時代や背景に合わせた所作指導を習ったんですが、私は普段の姿勢も硬かったり、綺麗な所作っていうのを意識することも少ないので、すごく大変でした。方言とか、そういう部分も難しかったなと思います。
―今までの作品を振り返ると、複雑なキャラクターを演じることが多いですよね。それには、「この人なら演じられる」という周りの評価もあると思いますが、苦労した部分はありますか?
でも、自分と共通点が多い役が多かったと思うんです。あまり自分のことを表に出さなかったりとか、共感できることが多かった。だから、そこまで苦戦したっていう部分はなかったかもしれないです。でも作品に入る前に、監督さんと必ずお話しするようにはしていました。自分の思いをちゃんと共有しておこうって。
―今回は時計の撮影ということもあって、時間の流れや、「決定的瞬間」みたいなことをお伺いしているんですが、忘れられない瞬間ってありますか?
ものすごく、くだらないことでも大丈夫ですか? これを言うとおかしな子だと思われちゃうかもしれないんですが(笑)。私、毎日散歩するように心がけているんです。それで、この前も同じように散歩をしていて、夕方5時くらいだったんですけど、まだちょっと明るくて。ぼーっと歩いていたら、気づいたら辺りが真っ暗になっていたので、帰ろうと思って、いつもとは違う住宅街を通るコースで帰っていたんです。そのとき歩いていた一本道が、すごく静かで、周りの家にバーッと明かりがついていて、なんか、私のために用意された道なのかなって思うくらい印象的だった。ものすごく綺麗で、なんか感動しちゃって、思わず写真を撮ってうわーってスキップして帰りました(笑)。自分で言ってても恥ずかしいんですが、そういう瞬間が大好きなんです。
―それは、すごくドキドキする瞬間ですね。やっぱり子供の頃から、自分の中でストーリーを作ったり、一人で空想して遊ぶことは好きでしたか?
すごく好きでした(笑)。一人で遊ぶか、兄に遊んでもらうかの二択だったんです。空想したりするのも大好きでしたし、今も好きなんです。本を読むこともあるし、外に出て、知らない人やそこに置いてあるもので想像していくのが楽しかった。そういう妄想や想像っていうのが自分の助けになっていて、ひとつの逃げ道だったのかもしれません。ずっとそこにいましたね。
―逃げたい瞬間があった?
私、昔から嫌なことや辛いことからは逃げちゃう性格なんです。だから、そういうときに妄想や想像っていう道に行っちゃうことがすごく多かった。何か作ったり絵を描くのも好きで、そういうことはずっと続けていました。
―今は洋服を作ることが多いんですよね。
そうですね、洋服や小物、ブローチやイヤリングとか。絵を描くことは今も大好きです。最近は靴を自分でアレンジしてみたんですが、靴に絵の具を塗っていくっていう作業をひたすらやっていて。塗ったり描いたり、ビーズをつけたり。まだちゃんとしたものを作る技術がないので、とりあえず今は身の回りにあるものをアレンジしたり変えていくっていうことをしています。
―身につけるものに自分が影響を受ける?
身につけるっていうよりは、何かを作って飾ったりすることですごく気分が上がるので、定期的にちゃんと作るようにしています。例えば女の子を想像して、その女の子が着ている洋服を作ったり、そういうのが好き。美術館や博物館に行くのも好きで、恐竜や生き物を見ると気分が上がります。昨日は『ジュラシック・ワールド』を2回観ました(笑)。なんか、大きいものに惹かれるみたいです。
―それはどうしてだと思います?
なんでだろう? 自分はこんなに小さいのかって実感するのが楽しいのかもしれないです。怪獣映画もよく観ていて、最近は『ランペイジ 巨獣大乱闘』っていう映画がすごかったです。ひたすら大きい怪獣が出てくるだけの映画なんですけど、もう楽しくてしょうがなかったです。
―自分自身では、こういう作品、こういう役を演じてみたいっていうものはありますか?
私、ヤンキーになりたくて。今すごくヤンキーになりたい時期なんですけど、実際になってしまうと色んな人に怒られそうなので(笑)、映画や作品を通してやってみたいなっていう気持ちはあります。
―ほかに挑戦してみたいことは?
BBQをするっていうのが今年の目標なんです! ちょっと今どうやってやろうか考えているんですが、BBQ、山登り、それとお泊まり。それが今年いちばん挑戦したいことです(笑)。
―今までの経験の中で、「こういうことを大切にしたい」と思うこと、意識していること、大事にしていることはありますか?
生活をすること。小さい頃から、それが自分の軸の真ん中で、すごく大切にしていることだと思います。部屋にお花が一輪飾ってあって、毎日お散歩に行って、週末には博物館に行って……そういう毎日にあたたかいお布団があれば最高に完璧なんです。そういう、好きな人たちと過ごす生活っていうのはこれからも大切にしたいなって思っています。
―仕事の面でもそういうものはありますか?
お芝居を始めたときから、型にはまらない表現ができる女優さんになりたいって思ってきたので、それはずっと大切にしています。そしてお芝居だけじゃなく、色んなことを表現できる人になりたいな。