恋や料理、読書のための余裕が生まれる服を作る。ルメールのふたりが考えるファッションの役割
christophe lemaire & Sarah-Linh Tran
interview & text: hiroaki nagahata
Lemaire (ルメール) には、Christophe Lemaire (クリストフ・ルメール) と Sarah-Linh Tran (サラ=リン・トラン) が手がける服を唯一無二の選択肢として捉える熱狂的なファンダムが存在する。またこのブランドから、ファッションというよりもライフスタイルという言葉を連想する人も少なくないだろう。青山の店舗 SKWAT (スクワット) にはアートブックを中心に取り揃えた書店 twelvebooks (トゥエルブブックス) が併設されているが、「服と本」という組み合わせがこれほどしっくりくるところは他にない。実際、自分のまわりにも何人か、Lemaire のカラーパレットに影響された暮らしを送る人たちがいる。デザイナーのふたりは、Woody Allen (ウディ・アレン) が1978年に撮った映画『インテリア』から多大な影響を受けたと公言しているが、まさにそのフィクショナルな世界観をファッションを通して現実の一部に浸透させたというわけだ。
一方で、Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) や Demna (デムナ)、Alessandro Michele (アレッサンドロ・ミケーレ) など多くのポップアイコンが登場した2010年代のファッションシーンにおいては、Lemaire は紛れもなく孤高の存在であった。ポップアート的な意味合いにおいてロゴを使うこともなければ、突拍子もないコラボで人々を驚かせたりすることもない。狂騒を横目に、ふたりはブティックで直接布に触れてはじめて理解できるような、奥深く謙虚なデザインを発表し続けていた。
その在り方の特殊性について、本人たちに様々な角度から訊く。
恋や料理、読書のための余裕が生まれる服を作る。ルメールのふたりが考えるファッションの役割
Portraits
ーまず、2023年春夏のコレクションの話から始めましょう。かねてよりおふたりは映画からの影響を色んなところで語ってきましたが、ムービーではまさに、人々が脚本に従って動いているところをカメラが追いかけてキャプチャするという映画的な手法がとられています。つまり、「Lemaire の服はある世界の中に存在するワードローブである」という見方もできるかと思うのですが、まずこの手法を選んだ経緯から教えてもらえますか?
Christophe Lemaire (以下 CL):仰るように、私たちはファッション誌よりも映画のようなアートフォームから影響を受け、そのスタイルをコレクションを通して体現しています。日常生活でも、街行く人々の動きや仕草をよく観察しているので、ファッションよりもスタイルに対してより強い思い入れがあるんだと思います。その上で、ランウェイにおいて私たちが重視しているのは、いかにして Lemaire の服を納得がいく形で見せられるか、ということです。
ー今お話されたような意味において転換期になったのは、ショーを再開した2011年でしょうか? それまでの Lemaire といえば、今よりもスタイルよりファッションの印象が強かったように思うので。
CL:その通りです。その時点から、もうクラシックなショーのルールでやりたくないと思うようになった。Sarah-Linh の影響が大きくて、彼女は私よりもイメージを想像することに長けているんですよね。今回も、映像編集やライティングの人材を映画の世界から引っ張ってこよう、という提案をしてくれたのは彼女だったんです。
Sarah-Linh Tran (以下 SLT):通常のファッションショーでは服を見る時間があまりに短いじゃないですか。それに、見る距離の問題もあります。日常生活で人と話す時は、お互い80センチくらいの距離にいますよね。
ーつまり、通常のランウェイは実際に人が服を見る時のシチュエーションから程遠いと。
SLT:そうです。街中で女性が前を横切る時、自分の赤ちゃんを暖めるために大きなコートをかけてあげる時、そこで布がはためく……そういう瞬間にこそ、服は生き生きとしはじめる。日常的なちょっとした瞬間が、シンプルな服に感情をもたらすんです。
ー服が本当の魅力を放つ瞬間に目を凝らしているわけですね。
SLT:そうです。ショーでもそれを再現したかった。また Christophe が言っていたように、これを映像として成立させるためには、「美しく切り取る」必要があります。映画は、物語だけではなく、そこにしかるべき色彩や編集が組み合わさって芸術になります。そこで私たちは、映像の世界で経験豊富なフランスの撮影監督に声をかけました。そこに、ダンスパフォーマンスや舞台を作る人、モデルなど様々な分野の人たちが共存しているわけですから、これはもう大きな家族みたいなものですね。
ーモデルはいつもどのように選んでいるのですか?
CL:私たちはかれこれ10年くらい同じモデルと仕事をしています。だから、彼ら、彼女らは私たちと一緒に歳をとっていく。そしてブランドと共に洗練され、成長していくんです。
SLT:時々新しい人をキャスティングをすることもあるんですが、どうしても最初はプロのファッションモデルらしく歩いてしまう。あの感じ、分かりますよね?いやいや、戦争じゃないんだからって。
ー(笑)。ファッションの世界には、そうやって改めて指摘されないと当たり前のように残ってしまう摩訶不思議な慣習がいくつもありますよね。「なんであの歩き方なんだろう?」というのは多くの人が一度は疑問に思ったことがあるはずなのに、いつのまにか「ファッションってそういうことだから」と納得してしまう。
CL:私たちが表現したいのは人生ですからね。戦争ではない。
SLT:かわいい=柔らかいではなく、柔らかいからこそ強い、ということ。それが私たちが服を通して伝えたいことの一つでもあります。
ー映画には俳優の人柄を思い浮かべながら脚本を書く「アテ書き」がありますが、お二人が服をデザインする時は特定の人物像を形作るところから始めるのでしょうか?
CL:いえいえ、決してそうではありません。気になっているイメージや参考資料、写真、映画などを元に、まずはシルエットから作り始めます。映画から影響を受けているとはいえ、私たちは何よりデザイン的な仕事に興味があるので。まず大事なのは、良い服を作ること。そこにストーリーが付与されていく、という順番です。
ー「良い服」とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
CL:自分らしいデザインでありながら、他の服と問題なくミックスできるようなものです。自分のシルエットを押し付けるようなことはしたくない。長く愛用できて、ワードローブとして良き友人のような存在になりたいんです。
ーふむ、わかりやすいですね。
CL:ここでスタイルの定義についても明確にしておきましょう。つまり、スタイリッシュとは? 私にとってそれは、街で誰かを見かけた時に「誰だろう? どこから来たんだろう? 何をやっているんだろう?」という謎を感じる人のことを指します。だから私たちがプレゼンテーションをする際も、このような謎を産み出そうとしている。だから、モデルは背が高ければ良いというものではありません。その人が信頼に足るルックスを持っているかどうか、フィッティングで色々と試す中で「よし、この人たちを信じよう 」と思えるポイントが訪れるかどうかを重視しています。
ーたとえば、数シーズンに渡ってランウェイに登場している加瀬亮さんのような俳優からも、謎みたいなものを感じ取っているのでしょうか?
SLT:まさに、彼はミステリアスですよね。なぜ彼はこの服を選んだのか、彼のパーソナルな歴史の中でこの選択はどういう意味合いを持つのだろうか……彼はとても自然体なのにエレガントで、何の意図もないように感じられるんです。彼は、自分の世界ではない、異なるコードのファッションの世界にただ存在し、さらにそれを観察しているのではないかと。そして、彼はそのことに好奇心を抱いている。
CL:彼は常に疑問を抱いていて、いつもたくさんの質問をしてくれます。私たちが何か指示を出す。そこで彼は訊く。「なぜ、そうしなければならないのか」と。観察力があり、繊細です。僕はそんな彼のことが大好きなんです。彼はフランス映画についても造詣が深いですし、私たちのこともよく理解していると思いますよ。
ー全ての指示の理由をきちんと説明しなければいけないということで、緊張感が生まれたりはしませんか? 彼の前であんまりボンヤリしたことはできないぞ、というような。
CL:ああ(笑)。たしかに彼はある種の激しさ、電気のようなものを放っている。彼が服を着ると不思議な存在感を放つのです。しかし、緊張感という言葉が持つネガティブなニュアンスはないかな。とにかく、良い役者。この一言に尽きると思います。
SLT:彼は何もしていないのよね……。
CL:そう、彼は何もしていないのに、あなたはそれを見ざるをえない。
SLT:そして、何かが起こっている。
ーちょうど昨日、お二人が『B.MAGAZINE』の中で影響を受けた作品として挙げられていた Woody Allen の『インテリア』を観ていたんですが、衣装がまさしく Lemaire 的な色合いとシルエットで驚いたんです。
CL:まさに、私たちのイメージボードには今も『インテリア』のスクリーンショットが何枚か貼ってありますよ。
SLT:この作品の中では、女性が街中を歩き回っているシーンが印象的です。孤独、悲しみ、自由、恋……様々な状態の女性を見ることができますし、彼女らの肌や服にも感情が表現されています。
ーSarah-Linh さんは物語のディテールに目をこらしているんですね。
SLT:そうですね。舞台美術や光のことも気にしています。この映画に登場する女性は、とても強いと同時に壊れやすい。自立した、ドラマチックな人間像なんです。実に多くの側面を観察することができます。
ーでは、あなたは「ファッション」という言葉をどのように解釈していますか?
CL:私たちはファッションやスタイルが大好きですし、常に興味を持っています。しかし一方で、私たちはファッションのシステムとは無縁。というか、そのある側面が私たちの視点に合わない、ということかな。これはなかなか厄介な問題です。無論、Lemaire はシステムの内部にいます。でも私たちは、「ファッションのソーシャルに参加したいのなら、こうすべき、ああすべき」と言われてすんなり従うタイプではありません。ロゴは本当にあった方がいいのか? なくても成立する方法はないのか? 常に自分が何を感じ、何を信じているのかを問うことが必要なんです。
ーおふたりの中でもまだ正解は出ていない?
CL:そうかもしれません。何にせよ、必要なのは私たちがいる世界を理解しようと努めることです。ファッションやスタイルが好きだからこそ、「その服を着ているのは誰なのか」について考える。何を作るにしても、何をするか、何を読むか、どのように話すか、どの文化を選ぶのか。好むと好まざるとにかかわらず全てが政治的な意味を含んでいますよね。だからある意味で、ドレスアップすることは人間関係に対する政治的な視点を持つことでもあるのです。私がファッションのあらゆる分野に関心を持っている、というのは、つまりそういうことです。
ー政治的な意図が表面化しないのが Lemaire の特徴でもありますが、そのポジショニング自体がとても政治的だといえます。個人的にこのブランドには「凛と強く立っている」という印象を抱いているんですよね。
CL:そういう意味では、最初に話したように、Sarah-Linh が加わったことがブランドにとって大きなターニングポイントでした。彼女は若い頃から、すでにスタイルについて強い視点を持っていました。私はイメージ作りが得意ではないので、今は彼女がその部分を担ってくれています。何より、弁証法的にものづくりができるようになったことが大きい。私たちは同じビジョンを共有していますが、時には意見がぶつかることもあります。ただ、むしろそれが重要なことなんですよね。
ーいったんひとりで突き詰めたからこそ最適なパートナーを見つけられた、という見方もあるんじゃないですか?
CL:たしかにそうですね。それまでチームの人たちと強い関係を築こうとせず自分ひとりでブランドを築こうとしたんですが、やはり途中で限界を感じてしまいました。それに、歴史を振り返ってみると、ファッションにおけるサクセスストーリーはたいていデュオの物語なんです。
ーSarah-Linh さんのファッションという言葉に対する定義も聞いてみたいです。
SLT:私も Christophe と同じように、まず自分自身をドレスアップする最善の方法を見つけようとしています。私の中ではファッションをいつも家に例えているんですよね。そして、インハウスでは快適でなければならない……。私は服を家のように捉えているから、まず着心地がよくて、柔らかくなければいけないんです。
ー「家」というのは、まさにルメールの世界観を見事に一言で表していると思います。
SLT:ありがとう。服における快適とは何か。たとえばポケットのつけ方一つで、身に付けているものを忘れさせることもできます。また、Lemaire は器として大きいものでありたいからこそ、自国以外の日本やアジアの文化から積極的に影響を受けています。そして、文化的なボキャブラリーを増やせば増やすほど、ブランドのアイデンティティがより明確になる。ただ、同じ服を着ていても人によって印象が違うのは、本人のアイデンティティが服よりも強いから。
ーはい。
SLT:ファッションやデザインというのは、人々に何らかのサービスを提供することを意味します。私たちはいつもフィッティングの際に、「ここにポケットをつけたり、ボタンに気をつけたりすることで、着る人にサービスを提供できるね」と話しています。人の記憶と新しい習慣、日常生活の解決策を作ることが、今のデザイナーの役割なんだと思います。このブランドにはじめて参加した時、私はファッションについて何も知らなかった。分かっていたのは、ただ「こんなジャケットが欲しい、シャツが欲しい」ということだけで。
CL:それってすごく現実的なことだよね。
SLT:だって、日常生活に役立つ服をデザインすることで、心に余裕が生まれ、恋愛や料理、読書など他に大切なことを考えることができるようになるから。
CL:うん、まさにその通りだと思う。私たちが目指しているのは、一度着たら手放せなくなるような服。私たちのワードローブにも、大好きな洋服が何着かあって、それを着さえすれば一日中気分良く、自信を持って、快適に過ごすことができるんです。
SLT:私にとって、いま着ているジャケットはまさにそういう服かな。
CL:ありがとう。私は「No Brainer(考えるまでもない)」という表現が好きなんです。朝から会議があるのに寝坊しちゃって、ぜんぜん時間の余裕がない、目だって覚めきっていないような時に、「大丈夫、これなら気持ち良く、強くなれる」と思える服が必要ですよね。実用的で機能的な服、とも言い換えられるかもしれません。私たちは何もすごいものを作ろうとしているわけではない。「見てください、私がやったことを」なんて風に、華やかさや皮肉を演出するわけでもない。どこまでも現実的で謙虚なアプローチを心がけています。ただ同時に、アートや文学、映画を愛している、というわけです。
ーアートと日常の距離が限りなくない状態、とでもいいますか。
CL:そうです。私たちは人生を美しく、知的なものにすることに興味があります。なので、「より良いものを身につけたい」という願望を自分の作品に融合させようとしているのですが、とはいえあまり露骨にもしたくない。むしろ、色やディテールの選択、コラボレーションにこそ、その真価が潜んでいるのです。もちろん、ビジネスも大事ですよ。強いビジネスがあるからこそ私たちは生き残ることができるし、それによってチームもうまく機能して面白いものを作ることができる。しかし、ビジネス面だけでなく、私たちはよりスマートなものを提供し、コレクションを通じてファッションの体験に文化をもたらすことを目指しています。
ーそれは面白い話ですね。あなたが服作りにおいて掲げるコンセプトや狙いではなく、具体的なデザインの過程に神が宿っている、と。ちょっと話が逸れちゃうかもしれませんが、今日(日本におけるPR担当の)Hitomiさんが身につけているジャケットはサイズが少し大きいのですが、袖をまくって着用している姿が自分にとっては文化的だし、同時にファッション的に映りました。
CL:うん、はい、そういう光景を目にすることが仕事における一番の報酬ですね。Lemaire の服を着ることで人々が快適さを感じること、元気になること、それこそが究極の目標です。一方でそれは、着用者に依存しているという意味で理想主義的で、自分勝手な方法なのかもしれない。とにかく、自分たちの視点を大切にしながらも、自分たちのためにすべてをデザインしているわけではないんです。
ー今日のあなたの話を聞いていて、やはり Lemaire は他と比べようがないほど特異なポジションにいるブランドだなと思いました。おふたりが個人的にシンパシーを感じるデザイナーはいるんでしょうか?
CL:Sonia Rykiel (ソニア・リキエル) は心から尊敬しています。当時彼女は必ずしもメジャーなデザイナーと思われていなかったかもしれませんが、女性をより自由に、官能的にしたという意味では、とても進歩的な仕事をしましたよね。もちろん、特に70年代には女性を解放したいと願うデザイナーは他にもいたと思うのですが……
ーメンズウェアの分野ではいかがでしょうか?
CL:Comme des Garcons (コムデギャルソン) や ISSEY MIYAKE (イッセイミヤケ)、Yohji Yamamoto (ヨウジヤマモト) のように、80年代に日本のデザイナーが西洋のワードローブをどのように解体していったのか、そこに興味があります。
ー普遍的なパターンを再構築して現代の生活にフィットさせるという点では、Lemaire から今挙げてもらった日本デザイナーの文脈を感じ取ることも可能です。ルメールを象徴するアイテムであるあのパンツの形も……。
SLT:カーブした形状のことですか?
ーそうです。
SLT:このカーブがあることによって、より地に足の着いた感じがするんです。このデザインは柔道着を参考にしました。柔道着のパンツは腰の位置が少し高いので、体が固定されている感じがしますよね。しかし同時に、肌と生地の間に空間があることは重要で、それによって可動性が担保される。だからルメールのパンツは、ゆったりしていると同時にホールド感もある、というバランスを追求しています。それにこれはトップスのシルエットを選びません。タイトでもルーズでもすんなり馴染むんです。
CL:日本の大工さんとかも同じバランスで服を着ていますよね。
SLT:繰り返しになりますが、服作りにおいて重要なのは着用者の動きであり、それをできるだけ自由にすることなんです。
ー今のようなお話はやはりスタッフ間で細かく共有しているのでしょうか? Lemaire は社内にデザインスタジオがあって、デザインからパターンメイキング、縫製までが完結する体制が整っていますよね。
CL:服作りにおいては、基本的に頑固で、執着心が強く、最後は謙虚でなければいけません。自分が描いたデザインを立体化する過程では、「こうじゃない!」みたいにフラストレーションが溜まることも多々ありますし、良い工場を探すのも容易ではない。そこで円滑にコミュニケーションを行うためには、まず自分自身が人間として成長する必要がありました。すなわち、Lemaire の変遷とは私の人生の話でもあるんです……。
SLT:チームワークを良くするためには、自分たちが何をしたいのか、常に明確にしておかなければなりません。だから、一緒に仕事をするだけでなく、離れて過ごす時間も必要なんです。そうすることで、私たちのビジョンや好きなものを理解してもらえます。さっき Chritophe が言ったように、すべては政治的なものだから。
CL:そうだね、まさに。
SLT:そういえば、Christophe は相手が踏み込んでくることでコミュニケーションをとっている実感を得られるタイプじゃない?
CL:そうかもしれない。ヨーロッパは日本と違って個人主義なので、たとえ良い仕事をしたとしても、「必ずしも自分が物語の一部である必要がない」と思っている節があるんです。仕事とプライベートを簡単に切り離すことができる、というか。良し悪しはよく分かりませんが、とにかく、ヨーロッパでは社風を作るのが難しい。自分のところがうまくいっているのかどうかも分かりません(笑)。チームのみんなと同じ価値観を共有するのに、これっていうレシピがない。だからこそ、Sarah-Linh が言ったように、自分自身ではっきりさせないといけません。
ー先ほどチラッと「ルメールは自分の人生の話でもある」とお話されていましたが、Christophe さんはやはり無意識的に「自分の名前=ブランド名」にしたんじゃないですか? かつてそのことを後悔していると別のインタビューで話していたこともありましたが。
CL:ブランド名を Lemaire にしたことに関しては、いまだに後悔していますよ。私はとっても真面目だから、これで正しかったのかと時々考え込んでしまうんです。みんなには「良いブランド名じゃないか」と言われるんですが、ただのファミリーネームですからね。もっとコンセプトのある名前のほうが良い気がしてならない。ただ、法的な理由でブランド名を変えることができなかった。でも、別にいいんです、今はこれでやっていけそうなので(笑)。